月桃夜

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 61
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103198314

感想・レビュー・書評

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  • 戦後、1953年まで奄美大島はアメリカだった。
    このことはほとんどの人が知らない。
    戦後ですらそうなのだから、近世の奄美の歴史なんてなおさら。

    薩摩藩の支配下の元、ヤンチュという債務奴隷によって砂糖黍は作られ、
    黒砂糖は、薩摩藩の財源となり、江戸幕府が恐れるまでの力を持った。
    島のヤンチュたちの生活は悲惨で、毒のあるソテツの実を食べなければならないほど。

    と知識として知っていた奄美の歴史が、物語として動きだす。
    はじまりは、現代の奄美の海。
    漂うカヤックの上、世界の終わりを待つ鷲が、死にかけた茉莉香に200年前の島の兄妹の話を語る。

    血の繋がらない兄妹の悲しい恋愛、とありがちな物語だが、「言葉」に囚われる山の神や兄・フェイクサの夢中になる「碁」、妹・サネンの憧れる奄美の女性の刺青(針突:ハヅキ)という小道具で飽きさせない。
    とっちらかりそうになりながらきれいにまとまる。

    ヤンチュの女ミヤソが七夕夜、短冊に願いごとを書いてもらおうとして、
    「…どうしよう、願いごとなんて、なんにも思いつかないよ」と言い、その夜、天の川の下で首を吊る場面の切なさ。

    自分のルーツである奄美大島の物語を読めたのは嬉しい。

  • 不思議な本でした

    生まれは選ぶことができない
    運命に流される・受け入れる

    シマンチュ・ヤマトンチュ
    奄美・薩摩
    藩・幕府

    搾取する者されるもの

    考えるとうんざりする

    どこかに頼らないと生きていくのは難しい
    あこがれだけで生きていくのは難しい

    でもどんな状況でも人はなにか希望を見つけて生きている

    岩樽という人が最後に魅力的に描かれていたのが印象的

  • 【第21回ファンタジーノベル大賞】
     内容は、どちらかというと暗くて重いのだけど、読後はなぜか清々しい。なんだろう。自分でもその源がわかりません。
     好きな作家さんが増えそうな予感。
     21回の大賞をダブル受賞した『増大派に告ぐ』をゴールデンウィークで読む予定。

  • ファンタジーはちょっと苦手かなと思いながら読み始めましたが、予想以上に面白くあっという間に読んでしまいました。物悲しい話でしたがあらためて日本の歴史に目を向けることが出来ました。

  • 元々ファンタジー作品が苦手でほとんど手に取らない。
    帯コピーに惹かれ図書館で借りて読み始めたら、鳥が喋る…無理かも、、と思いつつ読んでいくうちに、いやそんなファンタジーなどと片付けられない深い作品だった。

    折しも大河の西郷どんで舞台になる中、薩摩と琉球の狭間で揺れ、独特の制度が残る奄美大島。特にこの作品は奴隷ともいえるヤンチュ、ヒザの扱いが苛酷に描かれ、このような悲しい歴史があったことを知らず驚いた。
    フェイクサのサネンに対する想い、兄、男を超えた大きなものがある。子どもから少年少女、青年、大人に育っていく過程は男女ともに目をみはる美しさがある。
    サネンに思い描く通りの針突を入れたら、どんなにか美しい女性になっただろう。
    現代版の方は設定が少し曖昧だが、たまに出てくる場面としては程よく、フェイクサの語りが力強く感じられ、良かった。

  • 奄美大島の悲恋のお話し。読者の胸をえぐり、心を揺さぶってきます。ファンタジー大賞待ったなし。

    この本、中古で入手したんですが、読んでてページから果実の匂いともとれる様な甘い香りがしたんです。比喩じゃなく。読み進めたら花の香りが重要な話でびっくりΣ(゚д゚;) きっと前に持ってた方の粋な計らいです。ありがとう御座います。

  • 古い時代の沖縄を舞台に
    当時、兄妹として育った2人と、
    現代、兄への苦しい思いを抱えて海を漂う妹を交差させて話が進みます。
    とても不思議なテーストの話で、印象に残りました。

  • まだ奄美が琉球の一部だった頃のお話です

    現代と過去を行き交う一匹の鷲と、現代を行き去ろうとする一人の女性の会話から広がる200年前の世界…

    似て異なる、それとも逆?

    自分が自分として生きることすら困難だった時代…

    現代を生きる自分の姿と重ねることで幸せを感じることが出来ます

  • 悲しく苦しい大人のファンタジー。
    フィエクサとサネンはこの世の終わりで逢えるだろうか。

    奄美の歴史やヤンチュについて調べてみたくなった。

  • 200年前の奄美を舞台にした切ない小説でした。一生自由になることの出来ない兄妹の葛藤。奴隷としての生活がリアルに感じとることができた。
    サネンの最期の言葉に感動した。

著者プロフィール

遠田潤子
1966年大阪府生まれ。2009年「月桃夜」で第21回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。16年『雪の鉄樹』が「本の雑誌が選ぶ2016年度文庫ベスト10」第1位、2017年『オブリヴィオン』が「本の雑誌が選ぶ2017年度ベスト10」第1位、『冬雷』が第1回未来屋小説大賞を受賞。著書に『銀花の蔵』『人でなしの櫻』など。

「2022年 『イオカステの揺籃』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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