- Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103202219
感想・レビュー・書評
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"私たちは、いつも旅の途中にいると思うのです" 『地球の歩き方』を作った熱い旅人たちの物語
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学生時代、なんちゃってバックパッカーだったので、地球の歩き方にもお世話になりました。私よりかなり前の世代からの話から始まりますが、あの詩的な表紙の秘密や内容やカバレッジの変遷が分かって楽しめた一冊です。
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やられた、と思った。こんな本を書いてみたかった。それは自分が「旅環境が大きく変化する時代」を経てきたように思うから。
猿岩石前後のバックパッカー隆盛期に旅をし、最近はメディアの変化(特にソーシャルメディア)、『旅行人』の休刊といった時代の変化をまさに体験してきた。
自分が経験した時代のみならず、いくつかの旅のミニコミにかかわってきた経験から、先輩方を見るにつけ、往年の旅人はスケール、覚悟が違うと強く感じてきた。その一連の変化をはっきりさせ、記録し、まとめたいと常々思っていた。 -
75年、DSTとリクルート、大学生協が御三家として学生の「自由旅行」を提供していた。やがて「地球の歩き方」を創刊する4人組みは、自由旅行の伝道師であった、彼らは、自分自身が体験した自由旅行を語り、学生は海外を長期間自由旅行しなくてはならない・・・と、どんどん送り出していく。そして、自由旅行を経験した学生たちが、その感動をレポートで届けてくる。自由旅行のノウハウや、安宿やレストランの情報を寄せてくる。それらから「地球の歩き方」は始まった。4人組みは自由旅行だけが学生の旅行だと確信していた。学生のために、ユーレイルパスの発行元とは直談判を繰り返して1年以上かけて大手旅行社からその販売権を奪い取る。大手旅行社は「不当」に高い価格でそれらを学生に売っていたのである。彼らが日本のバックパッカーを作った、とたぶん言っていいのだろう。彼らのおかげで、僕も85年、ヨーロッパへ行くことになるのである。
たぶんこれと同様の熱さが大学生協にもあったのかもしれない。70年代のヨーロッパを旅行するアメリカ人の多くが持っていたという、そして4人組も感動して、「地球の歩き方」の参考にしたという「ヨーロッパ一日10ドルの旅」を大学生協事業センターは出版しているのである。きっと熱があったのだろう。
この本を読むと、学生の旅行でバックパッカーがメインストリームだった時代は80年を挟んで10年程度しかなかったことがわかる。そして今、この国の学生は海外を旅することはなくなった。今、海外を自由に旅行しているのは、40代らしい。4人組のおかけで、70年代の後半から80年代の中盤までにバックパックを担いで旅した者たちは、いまだに旅の自由に囚われたままなのである。
「地球の歩き方」は変わった。かつては、投稿者の情報で埋まっていた。真贋定かではなかったが、それでもよかった。投稿者の名前には、旅した年と大学名が添えてあった。それが、旅を身近にしてくれた。これだったら、僕も行けるかもしれないと・・・。そのコメントが背中を押してくれた。僕にとっては、残念な変容である。今、バックパッカーはどんなガイドブックを手に、長期の旅にでけるのだろうか?