沈まぬ太陽〈5〉会長室篇(下)

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著者 : 山崎豊子
  • 新潮社 (1999年9月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (315ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103228189

沈まぬ太陽〈5〉会長室篇(下)の感想・レビュー・書評

  • ド直球の社会派小説。

    あらすじ:
    戦後間もなく半民半官となった国民航空の社員、恩地元(おんちはじめ)は前任者から労働組合の委員長に推薦される。本人の意に反して無理やり押し付けられたその役割を、彼は真摯に受け止める。もとより議員や官僚の縁故採用が多く、本社勤務の彼らは日々半ドンのような状態で、それでも残業地獄の恩地や同期の行天(ぎょうてん)よりも高い給料をもらっており、また整備士などは人数不足ゆえ酷使された上、汚い労働者として見下されていた。そんな状況に疑問を持っていた恩地は副委員長の盟友・行天とともに動く。ストライキなど強硬手段をちらつかせ、勝ち取った労働条件の改善。だがそこで示された移動命令。恩地は海外転勤となる。行先は中近東アジア。事実上の左遷に奥歯を噛みしめた。
    貼られた「アカ」のレッテル、規則無視の僻地たらいまわしで果てはアフリカへ――。心をいやしてくれるのは彼が仕留めたライオンや像の剥製たちだ。また順当に出世する行天といつの間にか溝は深まっていた。
    重なる事故により国民航空は世間からの非難の目を向けられる。その騒ぎもあり、経営者側の社則無視により海外へき地勤務を続けていた恩地は足掛け十年を経て帰国し、遺族係を経てトップが入れ替わり民間企業から初代会長として迎えられた国見の会長室勤務へ。彼の指導のもと「空の安全」のため再び動き出すことになったのだが、利権を守ろうとするトップたちによりことごとく潰されていく改編の機会。そして調べれば調べるほど明らかになる深い闇はどこまで続くのか。汚職・杜撰な経営の果てにあるものは――?

    壮絶としか言いようのない展開に、夢中になって読んだ。直球の社会派小説ってこんなに面白いんだ。最近の作家の作品にはない重厚な物語に圧倒された。「萌え」みたいな要素は、ライトノベルや漫画に任せておけばいいんだよなあ、とつくづく思った。堅実で、まさに読む価値のある小説だ。
    すごいのがフィクションと一概に言えないことだ。労働運動をしたため僻地へ十年とばされ、昇進の道も閉ざされた。そんな非人道的な人事が実際にあったのだ。
    恩地が持ち出した「片目の猿」のたとえがすべてを表している。普通の人が異常に見える――。それほど腐敗した経営陣に、初めの頃抱いた怒りを通り越し絶望すら感じた。会社をなんだと思っているのか。そしてその航空会社を利用する客をなんだと思っているのか。経営陣だけではなく、政治家や取引会社まで巻き込み巨大な私利私欲に塗れた金を生み出す装置を作り出していた。
    読者の側としたらこの巨悪が暴かれ、恩地が救われる展開を期待していたのだが、最終巻の半分を過ぎてもそういう方向にはならない。いまだ悪習が描かれている展開に夢中になりながらどうなるんだろう、なんて思ったのだが。なんともドラマチックなラスト…! 簡単に救われる展開にしなかったのがまた重く響いた。そしてそれすらも実際にモデルとなったと言われる人物が味わったものなのだ。
    なによりも印象的だったのが恩地と行天の対比。志一つに戦っていた二人だが、経営陣の策略で行天が離れていく。左遷された恩地と利権を利用しつつ権力の世界へ足を踏み入れ、出世していく行天の明暗が残酷なまでに鮮やかだ。

  • 納得いかない。でも、これだけの問題ある組織なので、ハッピーエンドはないよなあ、とも思う。仕方がない。
    いくつか予定通り溜飲を下げる事項もあるが、恩地さんがうかばれない。

    繰り返しになるかもしれないが、著者はクズの人間の描写がとてもよい。だからこそここまで読みふけってしまうのだと思う。

    自分も、経営者とはならないだろうが、人としての言葉を発せられるよう、ありたいと思う。理想だけでは組織は動かないが、理想を忘れてはいけない。

  • 池井戸潤の小説のように勧善懲悪で終わって欲しかったけど、こういう終わり方も良いのかもしれない。
    日本航空はこんなに腐敗していたのだろうか? もちろん小説だから全て真実ではないだろうが、親方日の丸だから無責任体質は推して知るべしだろうね。
    結局はこのままの体質で、2010年の経営破綻に至ったのは当然だろうね。
    でも二度と御巣鷹山の悲劇は繰り返さないことを切に願います。

  • 【配置場所】特集コーナー【請求記号】913.6||Y
    【資料ID】19905623

  • 解説できる程正確に理解できない。でも曖昧にはわかる。「誰の責任も問われないなら、なんでもできる」といった事例は歴史上、枚挙に暇がない。
    ここに出てくる悪人役達もそれぞれの理屈と正義で動いていて、社会悪に手を染める予感を利権を守ることを是とした言い訳で振り払いながら日々を過ごしている。決して「世界征服を企む悪の組織」などではない。
    それでも心の何処かで悪が裁かれて欲しいと思いながら読み進んだ。細井の告発に期待させながらも残りページが少なくなるのに焦り、何ともフラストレーションが貯まるエンディングであった。
    企業告発で誰かに責任を問う反面、人間という生き物の愚かさや虚しさも描かれていると感じた。

  • 読むのが苦しかった。

  • 本当うにあったのか

  • ナ、ナイロビ?

  • スッキリしない。全くスッキリしない。下巻も半分を過ぎたのに出るわでるわ悪事の数々。最後はばったばったと悪い奴等が捕まったり、クビになったりするのかと我慢しながら読み進んだが、国見会長は更迭、恩地さんは再度ナイロビへ左遷。あとがきに有るようにこの小説は事実を再構成して書いた物という事なので、実際もこんな感じだったのだろうと考えると、怖くもあり、虚しくもある。著者は実際にアフリカに赴き、恩地さんのモデルとなった方に話を聴いたとの事。つまりその時点で彼はまだアフリカにいたので有る。その後JALがどう変わったのか?変わってくれたのか?非常に気になる。あとがきまでしっかり読んで欲しい本である。

  • 疲れたorz
    ストレスたまったorz

  •  「この作品は、多数の関係者を取材したもので、登場人物、各期間・組織なども事実に基づき、小説的に再構築したものである。但し御巣鷹山事故に関しては、一部のご遺族と関係者を実名にさせて戴いたことを明記します。」(本書最終ページ注意書きより)

     “飛行機を目的地まで安全に飛ばせばよいだけ”の航空会社から、利権を吸い取るだけ吸い取ろうとする魑魅魍魎(ちみもうりょう*)なる輩たちの存在には疲れる。
     反体勢力の策略により、絶対安全の確立・労使関係の安定化・経営体質の刷新・公正な人事の確立を再建策として掲げた会長は更迭に追い込まれ、それを補佐する会長室も解散。
     しかし、会社再建に向けて“現場”が立ち上がるであろう雰囲気を残して物語は終わるのだ。

     *魑魅魍魎=人に害を与える化け物の総称。また、私欲のために悪だくみをする者のたとえ。▽「魑魅」は山林の気から生じる山の化け物。「魍魎」は山川の気から生じる水の化け物。
    (goo辞典より)

  • 鐘紡伊藤会長の苦闘と敗北。そして主人公の左遷。暗い結末です。読み終わって、著者が「これは小説として書いた事実です」とあとがきで書いていたことが印象に残りました。そして、取材協力者の実名がズラッと並び、事実の重さにびっくりしました。小説を読み終わった後でこんなに吃驚したのは初めてです。これは企業告発そのものだったのですね。

  • 1-5はシリーズ。1にレヴュー

  • 久々に、次が読みたいという欲求にかられた。

    この主人公に比べたら、
    自分のサラリーマン人生は、なんて平凡なんだ(笑)

  • 映画を見る前に読んでおこう、と、考えておきながら読み始めたのは3月でした。全5巻もあるので、さすがに覚悟がいりますしね。映画も見る前に終わっちゃったので、DVDを待ちましょう。自分自身が、組合というものをほとんど意識することのない環境で社会人生活を歩んできてしまっているがゆえ、あまりにも現実離れしている部分はあるものの、きっとここに書いてある組合関連の堕落や会社側との癒着の大半は真実なんでしょうね。安全面への取り組みについてや、御巣鷹山のところを読むと、本当にJALに乗りたくなくなってしまうのですが、ちょうどそれを読んでいるときに出張でJALに乗って九州に行かなければ行けなかったのが皮肉で。主人公の恩地さんのモデルになった人や国見会長のモデルになったカネボウの伊藤さんは、実際にはあそこまで清廉潔白で素晴らしい人でもなかったらしいですが、そのあたりを割り引いても、JALが過去に行ってきたことの非道さは消せない事実として残るでしょう。稲盛さんがどこまであの会社を変えてくれるか、本当に楽しみですが、あの本を読むと絶望的な気分になってしまうのは、私だけではないでしょう。

  • 航空会社や組合の勉強にもなった。働くことについて考えさせられる本やった。そして、人間の心の動きが面白い!

  • このシリーズ、すっかりのめり込みました。この小説の時間軸の後、結局この会社は破綻してしまうのですが。。。やっぱり事実を基にした小説は私の好物であることを再認識。またこんな小説に出会えることを祈って。

  • 改めて思うと、某社にとっては行天なんて人がいなかったのに行天という人がいて、自分の労組時代の部下を使って会社の金を業務上横領し、官僚に贈賄をし、労組とは縁を切って出世の道を行くなんてとんでもない人がいたと世間に思われるなんてものすごくいやだろうな。行天はこの会社での命を絶たれたけど、恩地は依然としてアフリカだなんてハッピーエンドにはならないなあ。

  • この小説を読む前は、あの御巣鷹山の事故のことは、日本航空のジャンボ機が墜落したというレベルでしかなかった。
    そんな自分にとって、この「沈まぬ太陽」は、以前から読んでみたかった作品で、まったく期待を裏切らなかったすごく良い内容でした。


    ひょんなことから組合の委員長をやることになった恩地が、その報復人事によって中東やアフリカをたらい回しにされる様子を描いた「アフリカ編」。
    自らの信念を貫くために僻地に流刑となり、過酷な状況が自分や家族の心を蝕んでいく。。
    家族がいる自分としては明日は我が身で、背筋が凍るような内容です。

    史上最悪の航空事故となってしまった、あの事故が描かれている「御巣鷹山編」。
    あまりにも激しい事故現場なので、亡くなった方のご遺体が完全な形で収容されることは少なく、少しでも肉親の体を集めようと必死になる遺族の姿には心うたれ、思わず涙してしまいます。

    事故を引き起こした日本航空を立ち直らせるために会長となった国見、またその会長室付けの部長職となった恩地が、政官民でグルになっている悪しき体制を相手に奮闘する様子が描かれている「会長室編」。
    私利私欲を満たすためによってたかって日本航空を食い物にしてきた連中が、その利権を奪われることを恐れ、あの手この手で国見と恩地の妨害をしていく様子には、経営破綻した今日の日本航空を産み出した土壌が読み取れて、感慨深かった。あと、自分の会社もそんな雰囲気があるところがあるので、怖かった。。


    そして、最後にある著者によるあとがきがなによりも驚いた。この作品はあくまでもフィクションという立場をとっているので、僻地に流刑された恩地の話はフィクションなんだろうと甘く見ていたら、ある人物に取材するためにナイロビに飛んだとの記載が。。。
    それを見た瞬間、底無し沼のような日本航空の深い闇を見えた思いがして、本当に恐ろしくなった。。。。。。。

  • いよいよ恩地と国見がクライマックスへ向う。事実半分、フィクション半分らしいが、半分でも十分に恐ろしい。そんな会社の火中の栗を拾った稲盛氏にも驚く。何度も外部から人を招かないと建て直せない会社って存続させたほうが良いの?因みに、映画は上手く集約しているが小説とは大分違うのでご注意を。

  • 会長室篇終了。
    勧善懲悪で物語が進むわけではまったくないので、読後感もよくはない。けれどこれこそノンフィクション所以で、゛世界で一番危険な動物゛について目をそむけたくなるくらい克明に描写している。
    終盤、成田空港で運び屋のインドネシア人が補導され、行天に特捜部から電話がかかってきたところで暗に事態の好転を示しているのかもしれないけど、これは単に作者なりの付け足しにすぎないと感じた。
    あくまでも物語をうまくまとめるためにそういった描写が必要であっただけで、一連の汚いやり取りは今も未解決のまま残っているのではとおもう。

    社会とは、会社とはこういう部分を少なからずはらんでいることを知っておくことはとてもだいじ

  • 国見会長は更迭で恩地さんはまたアフリカ…。それでいいの?

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沈まぬ太陽〈5〉会長室篇(下)の作品紹介

巨額のドル先物予約の疑惑をはじめ、航空会社の不正と乱脈が次々と明るみに出始めた。しかし、政・官・財が癒着する腐敗構造の中で、会長・国見と恩地はしだいに追いつめられていく。ドル先物予約疑惑を、隠蔽するために"閣議決定"にまで持ち込んだ…。徹底取材をもとに、企業社会の最暗部に迫る第五巻、待望の完結篇。

沈まぬ太陽〈5〉会長室篇(下)の文庫

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