黙示

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (369ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103233220

作品紹介・あらすじ

農薬散布中のラジコンヘリが小学生の集団に墜落した!撤き散らされる薬剤、痙攣する子供、散乱するミツバチの死骸。若手養蜂家、農薬の開発責任者、農水省の女性キャリア、それぞれの戦いが始まる。この国の農業に、起死回生の道はあるのか?農薬は「悪」なのか?米国企業の密かな戦略、中国の挑発、仕組まれた罠。待ち受けるのは絶望か希望か。「沈黙」の果てに示される未来は-。

感想・レビュー・書評

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  • 農業の問題を鋭く突いた、真山仁さんの「黙示」です。

    自然教室を開催中の茶畑に、操縦不能になった農薬散布中のラジコンヘリが・・・
    通常、人が散布する時の100倍以上の濃度の農薬を“暴露”(ばくろ)してしまいます。
    そして、その中に偶然居た、農薬開発者の息子が重傷に・・・


    冒頭からいきなり引きこまれます。

    農薬の問題、遺伝子組み換え作物の問題、TPP、
    爆発的な世界人口の増加と、将来の世界的食糧不足・・・

    ズバズバと投げつけられ、直視させられる農業を起因とする問題。
    圧倒されました。

    どの問題も聞いた事はあっても、当事者では無いような気持ちでいました。
    そんなハズはなく、間違いなく誰もが当事者。

    先日Facebookで、工場的に生産され、殺され肉になっていく家畜達の動画を見ました。
    目をそむけたい。でも知らなければならない現実と、間違いなく訪れる未来の問題。

    この本の結末がどうなったのかは、書きませんが、他人ごとではない。
    ノンフィクションのような小説です。

  • 2013年2月発刊 初出「沈黙の代償」2011/12-2012/10 小説新潮

    静岡の茶畑での自然教室の最中に、農薬散布ヘリが飛来して 教室参加者が高濃度の農薬に曝露。 その中に 当該薬品の開発責任者の息子もいた...... というオープニングで 食の安全と安定供給を考えさせる作品。
    農薬開発製造会社の研究員、もと戦場カメラマンの養蜂家、農水省にあっては珍しい意欲的な官僚 の 3つの視点を軸に全世界的な気候変動やTPPもからめて話が進む。

    「ハゲタカ」もそうだったが、バランスがいい。
    是非論に終始しては突破口は見つからない。
    ここ10年の間に増えた旱魃、止まらない人口増の中で人々を食わせていくには、どうしたらいいか?という背筋が凍るような課題。
    関係者の真摯で誠実な対応をもってバランスをとりながら 進んでいくしか解決の道がないのは、成熟社会がかかえる多々の問題に共通して言える事だろう。

    TPPに参加しなければ、日本の優秀なタネまでもがアグリコングロの知的所有物にされかねない、という問題.....うーん、これって常識?
    消費者も勉強しなければ、と思わされた。

  • 農業問題に焦点を当てている。世界規模の食料を問題を解決するためには、日本が出来ること、するべきことは何であるのか?GMO(遺伝子組み換え食品)を利用することは必要なのではないかという視点である。
    プロローグの、蜜蜂と農薬の話は、物語の伏線である。安全な農薬でもすべてに無害なわけではない。被爆されれば、アレルギーを起こす人もいる。農業は、国の政策で保護されるところもあるが、減反している。高齢化して、若者は参加しない。
    解決策としてGMO。★反対の立場は、人体への影響が未知であること。☆促進の理由、高齢化対策として、重労働の軽減、生産性の向上。品種改良を長期で行ってきたが、それを短縮した方法である。天候や砂漠化などに対応できる品種改良は、有効手段となる。
    政権により、政策も変わる。現実社会でも、物語と同じ、農業問題が表面に現れてきたようだ。

    今回は個性のあるキャラクターがいない。多くの登場人物のなか、飛びぬけた人はいない。

  • 極端な二元論はよくない。
    農薬開発者も養蜂家も、お互いの意見を聞く姿勢があるし、ある程度の妥協点を探ろうとしていたのは共感が持てた。
    蓮舫のような仕分け人や頭の倦んだお花畑は、聞く耳をもたず、自分が正しいと思っているのでたちが悪い。
    9条原理主義や原発反対と同じく、「反対のための反対」と思った。

  • 「プライド」の「一俵の重み」と「蜜蜂が消えた夏」に繋がっている感じ。

  • GMOや農薬が抱える問題について、感情論ではなく社会問題として捉えた経済小説。相変わらず真山さんの作品は面白い。

  • 今回もかなりリアルに現実の問題にメスを入れる。ネオニコ農薬を完全に否定するのではなく、企業勤めの研究者や農水官僚の葛藤を描く。でも裏にはいつも「ジャーナリストがどうあるべきか」というテーマがある。今回はデタラメなメディアに加えて、無責任な市民や実在する企業が出てきて、よりリアリティがある。準主役として官僚がでてくるが、現実に彼らのように大きな視野、長期的な見通しをもって動いてる人間がこの国にいるだろうか?
    ちなみに連載時の題名は「沈黙の代償」。カーソンへのオマージュ

  • 農薬や遺伝子組み換え植物の話しで、小説とはいえ現実に起こっている出来事が散りばめられたに楽しい読み物だった.農水省の女性キャリアの秋田一恵、養蜂家の代田悠介、農薬メーカーの技術者である平井宣顕.この3人がうまく絡んで話が進む.途中で変な代議士も登場するが、それぞれの個性が全面に出る形で楽しめた.

  • 食と農に関する問題を題材とした社会派小説。ハゲタカの真山仁さん著。

    面白くて一気に読みました。

    農水省の若手キャリア・農薬開発の研究者・養蜂家、3人の視点を軸にストーリーが進んでいき、農薬反対からのGMO(遺伝子組換え)や世界的食糧危機などの話題に広がっていきます。

    普段、道楽的有機農業をやっている私ですが、農薬やらGMOやら、先入観だけの批判は不毛で、問題の本質を正しく理解することが大切だなと思いました。で、農業に多様性は必要なんだろうと。

    食という身近な問題にも関わらず、知らないことはたくさんあると思うので、いろんな人がこの本を読んで、食について考えるきっかけになれば良いなと思います。

  • 食の安全とは何か?日本の、世界の農業に何が起きているのか!?
    社会はミステリーです。

    農薬開発に携わり、自身の開発した農薬が農業を、日本の食を支えてきたと自負する研究者。
    そして農薬が蜂に害を及ぼすと、農薬反対を訴えてきた養蜂家。
    放射能汚染された農作物の担当をした農水省の若手女性キャリアは、食の安全と農家守ることの厳しさに打ちのめされていた。。。

    そして、農薬反対派を利用しようとする政治家、外資企業・・・。
    その裏には、農薬が必要なくなる画期的な遺伝子組換え作物の研究開発があった!!
    経産省も乗りだし、様々な思惑が。

    悪か、善かという判断より、今できる最善の策を提示することが大事だと思った。

    農薬と放射能と遺伝子組換え、何が怖いのか、私たちには全く分からない。
    でも改めて農業を営む方々に敬意を表したい。

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著者プロフィール

1962年、大阪府生まれ。同志社大学法学部政治学科卒業。新聞記者、フリーライターを経て、2004年、企業買収の壮絶な舞台裏を描いた『ハゲタカ』でデビュー。映像化された「ハゲタカ」シリーズをはじめ、 『売国』『雨に泣いてる』『コラプティオ』「当確師」シリーズ『標的』『シンドローム』『トリガー』『神域』『ロッキード』『墜落』『タングル』など話題作を発表し続けている。

「2023年 『それでも、陽は昇る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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