日本、買います: 消えていく日本の国土

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103237426

作品紹介・あらすじ

いま、私たちの足元は、大きく揺らいでいる。遅々として進まない地籍調査、「幽霊地主」を量産させてしまう現行の登記システム、外資による土地買収の横行、国境・国土管理機能の喪失…。過失ともいえる不作為によって放置されたままになっている諸問題を徹底的に追及し、生産財であり環境財であり唯一無二の社会的共通資本である「土地」「国土」の不明化・死蔵化・無価値化をしっかりと防ぐための提言を、多角的に示す書。

感想・レビュー・書評

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  • ▼日本の土地売買、トラブルになっても警察も登記を扱う法務局も民事不介入だって。これではゴネたり屁理屈言ったり、声の大きい方が有利。私たち一般人には太刀打ちできないと感じます。

    ▼地籍の不備が悪徳業者や外国資本に悪用されて、泣き寝入りさせられるのはどうせ私たちなんだろうと思うと、腹立たしくて。

    ▼不動産実務者の言う「土地の売買制度はザルで、実際には機能していない」→土地情報の管理は地方自治体の仕事らしいけど、制度が機能しておらず、ただ書類のファイルをするだけなら管理していないのと一緒かも。

    ▼表に出したくない土地買収なら、届け出をしないかダミー会社を噛ませる(P82)→こんないい加減な仕組みが通用しているなんて大問題でしょ?

    ▼農地の違法転用が発覚しても、大半は反省文を書くだけで追認されてしまうらしい。中学生じゃあるまいし、反省文程度で改善されるわけないじゃない。いつの間にか駐車場や資材置き場に変わっていても、なかなか元には戻せないので、やっちゃったモン勝ち。驚いたことに民主党の輿石東議員もそんな違反者の一人だそうで、国会議員さんだし、絶対違法転用のこと知らなかったわけないだろー、確信犯だろーと感じます。


    ▼国有地や公有地のネットオークション売買も実施されているという。入札には国籍も問わないとか。どう考えても危機感を持っていない状況に情けなく感じます。土地の売却後の所有者の行方を追えないケースも増えているというし、もうどうなってるの?日本の土地売買制度は・・・。不安と心配のあまり、先を知りたいような知りたくないような。

    ▼こんな不備だらけのシステムで、悪用されないわけがない。行政に不信感が。日本をボロボロに壊すために、わざと制度を不備だらけで放置しているんじゃない?と疑いたくなります。日本を乗っ取るつもりがあるんじゃない?

    ▼問題があることがはっきりわかっているのに、対策を先送りにしたり調査を怠ることは、わざわざ日本を潰している行為に等しいと思います。

    ▼この本にもやはり日本国土を狙う外資のことが書かれていました(最近、その手の内容の本が続いてしまったので)。それだけ事態は深刻なんだと思います。

    ▼日本の土地を中国資本が買う。沖縄の軍用地まで買っている。しかも登記欄には外国人の名前が出てくることはあまりなく、国籍欄もない・・・いつのまに外国の仲介業者に転売されて、あの手この手で土地の買収・国土の切り売りが行われている恐怖。国防や資源保護の面からも早急に制度規制が必要だと感じました。日本はいろんな面で無防備すぎます。外国人への土地所有や開発に規制をかけなければ、いずれ取り返しがつかないことになることは容易に想像できます。外国では土地所有に関してそれなりの規制があったり、対策が取られていたりしているのに、日本だけ無防備。こんな状態でTPPとか、もっと危ないんじゃないかと、素人ながら心配になってしまいます。

    ▼政策提言として「国家安全保障土地法」「所有者不明土地対策法」「条例等による地域ガバナンス力の強化」が挙げられていましたが、とにかく一刻も早く何とかしてほしいと思いました。

    ▼ところどころの細かい注釈もいろいろと勉強になりました。

    ▼巻末の引用文献に読んでみたい本、興味を持った本がいくつかあったのでメモ。特に小松左京さんの「日本、売ります」は読んでみたい。

  • 外資の土地買収における問題を、詳細に解説している。

  • ①日本は地籍と言う基盤インフラが未整備な中、②利用規制が緩々であるにもかかわらず、③当事者間だけですべての売買行為が完結でき、④外資規制も皆無である。
    第4章のまとめにこう有るが本書の内容はこれでほぼ言い表されている。
    提言としては安全保障上重要な土地は区域設定をし、利用規制、売買規制、国有化を行う。地籍を明確にするとともに売買の事前届け出を義務づける。所有者が不明な資産については時効をもうけ一定期間で公有地にできるようにする。地方に関しては地域特性に応じて条例等の規制を設ける。

    外国、特に中国の土地取得を合法的なものでありながらいたずらに問題視し、いかにも中国が侵略しようとしている様な書き方をしているのはいただけない。上にある様な制度をほっておいた方が問題なのは明らかであり、中国人からすれば自国では土地は買えない(工場50年、住居75年の借地権が買えるだけ)し場合によってはすぐ立ち退きに合うのに、すぐ隣に買いやすい国が有るなら買っておけと言うことだ。変なリゾート開発なんかはされたくないので利用制限をとっとと着けましょうよねえ。これは相手が日本人でも同じだが最近の日本はそんな元気無いからなあ。

    今まで知らなかったが日本の土地法政は
    ①地籍(土地の境界、所有者の情報)が未だ5割しか確定しておらず、
    ②売買届出や不動産登記が不備であり、
    ③国境離島、防衛施設周辺など、安全保障上重要なエリアの土地取引や開発に関する規制が不十分である。一方で、
    ④民放では土地の「取得時効」等が保証され、
    ⑤個人の土地所有権が現象的には行政に対抗し得るほど強い。
    だそうだ。

    地籍の問題は根が深い。大都市圏は特にそうで大阪の92%、東京の79%は地籍が確定していない。どういうことかと言うと登記上の公図がいい加減で漫画にしか見えないものが混ざっており、実際の地図と場所がずれていたり、面積が違っていたりするのだそうだ。一番でたらめな所は形も全然違っている。2004年の新潟県中越地震の際には地籍調査の完了区域の道路復興は2ヶ月で終了したが未了の地区は復興に1年を要した。境界がはっきりしないと手が付けられないのだ。

    どうも太閤検地の昔から測量の際に巻き尺を目一杯ひっぱり登記上の面積を減らして年貢(固定資産税)を少なくする手が使われたのが始まりのようだ。また終戦後はどさくさ紛れに何でもありだったようだし。

    日向では小学校の校庭にみかんの木を植えた男がいた。どうもこの男の祖先が小学校の拡張の際に畑を売ったのに登記を変更せず、庁舎が火事にあって契約書が消失。日向市役所は気がつかずにこの男に固定資産税を払わせ続けていた。裁判になったが20年以上の占有が強く男の負けだった。
    大阪では「大たこ」裁判があった。時効取得により占拠していた屋台の有る土地は自分のものと訴えを起こしたがこれは「大たこ」の負け。逆に不法占拠の訴えを起こされ撤退することになった。永らく不法占拠を認めて営業許可を出していたのも大阪市なのでどっちもどっちである。

    地籍は民事が絡むので難儀な話だが利用規制なんか地方条例でさくっと縛ってしまえば簡単に住むだろうと思うのは単純すぎるのだろうか?

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著者プロフィール

1954年、兵庫県生まれ。姫路大学特任教授、国土資源総研所長。九州大学卒業後、農水省入省。農水省中部森林管理局長、東京財団上席研究員、青森大学教授を経て現職。博士(農学)。専門は辺境社会学。著書に『領土消失』(角川新書、共著)、『日本はすでに侵略されている』(新潮新書)、『日本、買います』(新潮社)ほか。

「2023年 『サイレント国土買収 再エネ礼賛の罠』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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