ふがいない僕は空を見た

著者 :
  • 新潮社
3.53
  • (386)
  • (857)
  • (831)
  • (235)
  • (65)
本棚登録 : 5591
感想 : 1058
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103259213

作品紹介・あらすじ

これって性欲?でも、それだけじゃないはず。高校一年、斉藤卓巳。ずっと好きだったクラスメートに告白されても、頭の中はコミケで出会った主婦、あんずのことでいっぱい。団地で暮らす同級生、助産院をいとなむお母さん…16歳のやりきれない思いは周りの人たちに波紋を広げ、彼らの生きかたまでも変えていく。第8回「女による女のためのR‐18文学賞」大賞受賞、嫉妬、感傷、愛着、僕らをゆさぶる衝動をまばゆくさらけだすデビュー作。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 「セイタカアワダチソウの空」が凄絶だった。
    ヤングケアラー問題を具体的に書いた物を読んだのが初めてで、想像を絶する絶望感だった。

    登場人物はみんな心が壊れる一歩手前のような感じ。幸せは他者との比較で決めるものではないけど、自分の現状がいかに幸せかを強く感じた。

  • うひゃあ苦手な感じのやつや

    ストレートで爽快な物語を読んだ後だったのでなおさらそう考えたのかもしれないけど
    この深い感じ
    苦手や

    性描写がダメってこともないんだけど苦手な感じのやつやった


  • 窪美澄さんの作品は『水やりはいつも深夜だけど』に続き2作目

    妊娠・出産をテーマにした作品が多い作家さんとは知っていたが、本作は露骨で生々しい性の描写が多い作品だった。

    小さな街で起こる出来事と、それを取り巻く人々の生き様や描写が湿っぽくて息苦しさを感じた。

    主人公の卓巳だけでなく、バイト先で勉強を教えてくれる田岡や、団地に住む友人の良太とあくつ…
    それぞれの心の隙間に、性への固執や、妬みや歪みが生じている様子がリアルで、好き嫌いの分かれそうな作品だと思う。

    問題を起こした卓巳目線での心理描写が、後半に殆ど無かった為、その後の卓巳の行動や態度は何を意味するのかを汲み取る事があまり出来なかったのが残念だった。「ふがいなさ」という点では共感できる箇所もあったが、良くも悪くも女性目線に徹しているように感じた。

    装丁デザインも一見すると綺麗な青空とシャボン玉だが、地面から見上げた構図で、全体に蔓草が絡んだ小さなトンネルとその先には屋根が朽ちた廃屋のような建物や枯れ果てた植物が印象的だった。読後に改めてみると、現実が辛くても上を向いて生きていくしかないと物語っているようだった。

  • ずっと気になっていて、やっと読んだ作品。
    5編の話はそれぞれ違う目線から描かれている。
    最初の話は性描写が激しくて、えー?っていう感じがしたが、読み進むにつれ引き込まれていく。
    最後には同じ年頃の子をもつ私は、母親目線で涙が溢れた。
    それは温かい涙かな。

  • 図書館で見かけて面白そうだったので、手に取りました。窪美澄さんは初読です。

    不思議な世界観でした。主人公の高校生。自分があるようで、ない。でも、起こったことについては、深く傷付いたり、うまく処理出来ない。刹那的に犯罪にも近い行動をしているのに、後悔しているのか何なのかもよく分からない。

    その主人公の友人。良太も複雑な家庭事情。団地で暮らしぶりは極めて良くない。コンビニのバイトの先輩から勉強の手ほどきを受けて覚醒したかと思ったけど、先輩は猥褻罪で捕まる。大学へ進学してこの生活から抜け出せそうだったのに、その間近でつまづく。

    主人公の母は、多忙で身を削りながら助産院を切り盛りしている。子供の生に関わる大事な仕事なのに、病院からは心無い言葉をかけられる。その上、子供は不登校で絶望のフチに。

    全てが暗くて寂しくて未来が無い。
    わたしには、絶望の中に光が見出せなかった。

  • 低所得層が多い団地に住む人間模様をそれぞれの視点でストーリーが進んでいく。
    初めから性的描写がすごくて面食らってしまったけど、話の展開はぐいぐい惹き込まれる感じがした。
    産まれた家庭が裕福じゃないとそこからの巻き返しはかなり難しい。そこから抜け出そうと必死に戦うけど状況がそうさせてくれないもどかしさを痛感する。願わくばもう少し展望を期待できるようなところまで書いてほしかった。

  • 話の内容は◎、文章(文体?)が△
    これは文章が下手とかではなくて、個人的な好みに合わなかったという意味です
    ストーリーや着眼点はめちゃくちゃ好きなのだが、描写(とくに性描写)があからさまというか露骨な言葉が多くて好みに合わず…。逆にその辺が気にならない人はいいかもしれない

  • 聞いていた通り、なかなか人前で読めるような本ではないし、人に薦めるのも難しい。

    目を背けたいことが世の中にも、自分の心の中にもあって、でも、それを直視することの困難さこそが生きることなのかも。

    ものすごく心にも頭にも残る本。

  • R-18だけあって最初のページからきわどかった…
    5編に別れているけど登場人物は友達や彼女や皆繋がってます。
    それぞれエピソードは全く違うけど、どれも読後切ないような気持ちになる。
    窪先生はエモいんだよな。
    泣いてしまった。 https://t.co/ewcvBixJtX

  •  図書館より。
     男子高校生と主婦の不倫関係を中心に据え、その当事者や周りの人々の姿を描いた連作

     連作の初めを飾る『ミクマリ』の性描写がいきなり強烈。女による女のためのR-18文学賞の大賞だったので、多少の性描写は覚悟していたのですが、その斜め上を普通にいかれてしまいました……。

     連作としてはどうなんだろ? 『ミクマリ』は男子高校生目線、2編目の『世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸』は主婦目線の話となっていて、自分自身初の官能的な小説だったので、その描写の生々しさに加え、それぞれの上手くいかないモヤモヤした感情も想像することができ、良かったと思うのですが、3編目、4編目と話が当事者の二人視点でなくなってくると、なぜ連作でこの話を書いたのかな、と思ってしまいました。

     それぞれ出来が悪いというわけではないのですが、冒頭の二人がドラマチックだっただけに、他の登場人物にもそういう話を背負わせると、ちょっと話の軸が見えなくなってしまった印象です。独立した短編集ならあまり気にならなかったと思うのですが……。

     それぞれの短編に安易なハッピーエンドや、問題がすべて解決された描写を用意せず、かと言って全くの救いがないようにも描かないのがこの連作のミソなのかな、と思います。そういう点ではとてもリアルな作品でした。生きるって上手くいかないよなあ、でも生きないとなあ、としみじみ思った作品です。

    第8回女による女のためのR-18文学賞〈大賞〉受賞作『ミクマリ』収録
    第24回山本周五郎賞
    2011年本屋大賞2位

全1058件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1965年東京生まれ。2009年『ミクマリ』で、「女による女のためのR-18文学賞大賞」を受賞。11年、受賞作を収録した『ふがいない僕は空を見た』が、「本の雑誌が選ぶ2010年度ベスト10」第1位、「本屋大賞」第2位に選ばれる。12年『晴天の迷いクジラ』で「山田風太郎賞」を受賞。19年『トリニティ』で「織田作之助賞」、22年『夜に星を放つ』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『アニバーサリー』『よるのふくらみ』『水やりはいつも深夜だけど』『やめるときも、すこやかなるときも』『じっと手を見る』『夜空に浮かぶ欠けた月たち』『私は女になりたい』『ははのれんあい』『朔が満ちる』等がある。

窪美澄の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×