晴天の迷いクジラ

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著者 : 窪美澄
  • 新潮社 (2012年2月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (295ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103259220

晴天の迷いクジラの感想・レビュー・書評

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  • ひとつ前に読んだ「ファミリーポートレイト」をひきずっちゃうなぁ。
    コマコほどではないにしろ、恐ろしい母の呪い、痛々しい心の叫びが重なります。

    母親からの愛情を感じられず家を出て、仕事に忙殺されて彼女にフラれて、うつ病の薬が手放せない由人。
    圧倒的な絵の才能が有りながらも泥沼から抜け出せず、子供のまま子供を産み、育児ノイローゼからすべてを捨てて逃げ、そしてまたすべてを失った野乃花。
    強迫めいた母親のためにいい子であろうと頑張り続けても自分を見てもらえず、やっとできた友達を失い、生ける屍のようになった正子。

    ぼろぼろの3人が道連れに、湾に迷い込んで出られなくなったクジラを見に行く。
    それぞれの過去話は重苦しく痛々しくて、子供を捨てた野乃花でさえ嫌いになれず、必死にもがく様子にひりひりしました。
    3人もクジラも、死の淵が一歩先まで迫っていたけど、そこを踏み出さずにいることはそんなに難しいことじゃないってことに気付いたラストは、すーっと心が凪いだ。
    クジラの町で出会う人々、特におばあちゃんがいい。

  • 湾に迷い込んでしまったクジラを観に行く3人。それぞれの抱えているものが一人ずつ語られた後で、その3人があたかも家族のように過ごす数日が本当に温かく思えた。
    むき出しの「生きる辛さ」が心にちくっとした。でも、最後は人間ってたくましいよなぁって、なんだか笑顔になれていた。

  • 北関東の農家の次男として生まれた平凡な由人。

    漁師の娘として生まれ、
    物心ついたころから、絵を描くことが好きだった野乃花。

    潔癖症の母親に育てられた“いい子”になろうと頑張る正子。

    誰もが懸命に生きているのに・・・。
    何処で間違えたのだろう。
    上手く生きていくことが出来ない。

    それぞれの想いを抱えながら、
    迷いクジラを見守る。

    うつ病。虐待。リストカット。
    新聞やテレビで見慣れた単語が、
    深く、重く、心を締め付けていく。

    絶対に死ぬな。生きているだけでいいんだ。

  • こんなに読んで人の心に訴えてくる、いや人の日常や人生に影響を与え続ける小説を書くのは、氏と角田光代が断然である。
    とっても辛く絶望的な部分が多く、結末も希望と言う嘘くさくはないけれど
    これは特別な人たちの物語では決してなく、今現代に生きる人々の誰もが思い当たる登場人物たちだ。
    物語も主人公たちの感情描写にも反古はなく、連作短編集の傑作。間違いなく今年の小説の代表作の1本だろう。

  • 心の病は、目に見えない。
    サボっているだけだろう。
    弱い人間がなる病気だ。
    社会には、まだまだ大きな偏見がある。

    農家の次男で自己主張が苦手な由人。専門学校で知り合った恋人からひどい振られ方をした上に、会社は明日どうなるかわからない。会社の先輩のススメで心療内科に行くことに。

    絵を描くことが好きで好きで堪らない少女・野乃花は、高校の教師のツテで絵画教室に通えることに。貧しい家庭で育った彼女には夢のような話だった、はずなのに運命が大きく野乃花の人生を予期せぬものにしてしまう。

    長女を幼くして亡くした反動で、母に極端な過保護な育てられ方をした正子。

    三人が、それぞれの家族、友人、恋人等との関係性の中で心を病み、一時は死を考える。
    うつは、時に死に至る病となる。

    現代の治療の最先端は、薬中心の一方的な対面治療から、本来その人が持っている回復しようとする人間本来の力、生命力、レジリエンスを、人との関係性の中で引き出して行く方向になっている。

    三人の主人公が、苦しんで苦しんで苦しみ抜いて辿り着いたところ。

    心病んだ人たちの、一生懸命生きた人たちの、レジリエンスの物語。

  • 激務と失恋の痛手でうつとなった由人、
    倒産直前の由人の勤める会社の社長野々花、
    極端な潔癖症で過干渉な母に追い詰められ、心を壊していた女子高生正子。

    死と隣り合わせ、自ら命を絶つことを覚悟していた3人が、ひょんなことから、浅瀬に迷い込んだクジラを見に行くことに。
    そこで出会った人との時間、それぞれとの時間で、生きることを考えていくようになる。

    窪さんの本、やっぱり好きです。
    途中、ちょっと自分的に停滞した感があったのですが、最後は、グッと気持ち掴まれました。

    3人とも、ホントにきつかったと思う。
    あんな思いしていたら、心を壊すのも分からなくもない。
    結局は、クジラと言うよりは、雅信さんちのおばあちゃんと雅信さんのおかげ、だったかも。

    今度は、窪さんのデビュー作『ふがいない僕は空を見た』を、是非読んでみようと思います。

  • 由人、野乃花、正子。三者三様の生き辛い事情を抱えている、この物語の主人公たち。ふとしたきっかけで座礁したクジラを一目みてから死のうとするが・・・。
    3人のそれぞれの物語は過去から遡り、軽すぎず重すぎず、でも読み手の心にその痛みが素直に入ってくる、絶妙なさじ加減のエピソードでした。(もっと掘り下げれば、3冊の本ができてしまいそう。)
    彼と彼女らは、旅先で出会った人々の温かい心に触れて、そんな人たちにもやはり辛い過去があって、一人では冷たくて仕方なかった指先を、誰かに温めてもらったり、もうダメだと思っていた自分が、誰かを温めることができると知ったとき。。「まだ、頑張れるかもしれない。もう少し、生きてみようか」と思い至ったりするんだろうな・・・そんな読後感でした。
    くじらの描写もよかった。一度座礁したクジラが沖に帰っても2日以内の生存率は半分だそうだ。それでも、クジラは納得してその生を閉じるだろう。やれることはやったのだから。
    (だけど僕は死なない。たぶん。)

  • デザイナーの由人、その会社の社長の野乃花、女子高生の正子。

    3人はそれぞれに傷を抱え、精神的に追い詰められていた。

    それぞれが死を選びそうになった時、
    野乃花の故郷に近い湾に迷い込んだクジラを
    由人は見に行こうと社長の野乃花に提案する。

    途中で正子を拾い、3人はクジラを見に行く。

    その村で出会った雅晴とおばあさんの家でお世話になりながら、3人はそれぞれに回復していく。

    どんなにつらいことがあっても死んじゃダメだって
    思い詰めている当人に言うのは、酷なのかもしれない。
    でも、そういってくれる人が身近にいるだけで
    力になるんだって、そう思える。

    雅晴もおばあさんも3人からしたら赤の他人なのに、
    死について、思うことがあって、
    それに裏打ちされた言葉は強い。

    あんなに暗く後ろ向きだった3人が徐々に
    前向きになるのは、なんだかうれしかった。

    3人のバックボーンが丁寧に描かれていたから
    同じ境遇ではないけれど、きちんと感情移入して読めたし
    おばあさんが正子に語った話では泣いてしまった。

    クジラが海に帰るのと同時に
    彼らは回復する。

    これからも迷うことがあったとしても
    きっと彼らは大丈夫なはず。

  • 誰も幸せじゃなくて、読むのが辛いながら、やめられず。
    辛くて苦しい話、好きだ。

    言いたいことが言えないのって、苦しいな。
    溜め込んで溜め込んで、ぎりぎりで生きるのって、苦しいな。

    後半、だーだーと涙が出る。
    ばーちゃんに弱い。


    「絶対に死ぬな。生きてるだけでいいんだ」

    わたしが、一番キツかったときも、誰にも言えなかったけど、今、生きててよかった。
    読み終わって、色々なことを思い出し、目が冴えてしまった。

    完全な、ハッピーエンドではないけれど、清々しい気持ちで読み終わる。

  • 鬱病に陥った青年
    過去に我が子を捨てた女社長
    母親の屈折した愛情から逃れてきた少女
    達が鯨をキッカケに再生への道を歩み始める


    鯨を見たから癒されたという感じではなく、それぞれがそれぞれの悩みに全力でぶつかっていった感じが良かった。

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晴天の迷いクジラの作品紹介

壊れかけた三人が転がるように行きついた、その果ては?人生の転機に何度も読み返したくなる、感涙の物語。

晴天の迷いクジラのKindle版

晴天の迷いクジラの文庫

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