乙女の密告

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (121ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103276616

感想・レビュー・書評

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  • 【第143回芥川賞】うーん...やっぱり芥川賞って感じでよくわからない。私の読解力がないだけなのか何なのか。アンネの日記を通して自分を見つける?見いだしていく?って感じなのかな。真実はどこにあるのかを探してる感じ。

  • ある女子外国語大学のゼミで起こった物語。主人公:ミカ子の所属しているゼミでは、「アンネ•フランク」の本を使いスピーチコンテストに向けた練習が行われている。ミカ子はいつも最後の一文が出てこないと悩み続けていた。その一文には、アンネがある信実を出した一文だと言う。その一方で、ゼミ内では「先生がいつも一人で職員室で誰かと話をしている」とあるゼミ生が目撃し噂が流れた。その標的となったのがゼミ内でも優秀な先輩であった。ミカ子にとって先輩は、憧れの先輩であり、先輩が暗記の紙がボロボロになるまで練習していることを知っているミカ子は、先輩が私たちを密告するような行動をするはずないと、真実を探そうと動き始める。その信実を探す行動が、アンネが望んでも変えることのできない信実を受け止めながらも、前向きに生きていく姿を知る。
    ゼミ内で起きた騒動の犯人は先輩ではないことがわかり安心し、最後ミカ子はスピーチコンテストで出てこなかった最後の一文が言えたところで物語が終わる。

  • 乙女は大変ですね。すらすら新幹線で読めました。映像化しても面白そう。

  • 少し古風な「乙女の園」のおはなし。
    アンネの日記を読んでみよう。そういえば、ちゃんと読んだことがなかった。

  • とても良かった。

    乙女特有のルール。
    アンネの世界と自分を重ね合わせて、自分の正体を探る主人公。

    ドイツ人の教授が面白い味を出していてなぁ。
    アンゲリカ人形しかり、ひよこタイマーしかり。

    読みたいリストに入っていたこの本だけど、何で読みたいって思ったんだっけ…と思ったら、これ、芥川賞を受賞した本だったのね。
    この独特な感じ、納得。

  •  「乙女」という言葉は美しい。
     けれど、美しいバラには棘があるとも言う。この作品には、そんな「乙女」の多面性が描かれていると思う。
     
     『乙女の密告』でいう「乙女」とは、舞台となっている京都の外国語大学の女子学生たちのことを指している。とくに描かれているスピーチゼミの乙女たちは全員二回生から四回生なので、だいたい19歳~22歳。しかし麗子様は四回生なうえに何度も留年してしまっている年齢不詳な「乙女」もいる。「乙女」というからには、もちろん全員が処女である。19歳~22歳の女子が揃いも揃ってみんな処女なんて、最近ではほとんどありえない。むしろ20歳を超えても処女だったら、「ヤラハタ」とか呼ばれて嘲笑の的にされることさえあるこのご時世。「乙女」たちはそれとまったく逆の価値観を持っている集団だ。「潔癖」で「汚らわしいものを嫌悪」するのが、「乙女」なのである。
     けれども、「乙女」たちは清く正しく美しいかというと、決してそれだけではないことを、この作品は暴いてみせる。麗子様はバッハマン教授に「乙女らしからぬこと」をして、スピーチの原稿を書いてもらっているのだ、という噂が流れると、「乙女」たちは一斉に麗子様を見放す。噂が真実かどうかはどうでもいい。噂を共有することで、お互い「乙女」であることを確認し合うのだ。

     さて「乙女」たちに与えられているスピーチの課題は、「ヘト・アハテルハイス」=『アンネの日記』の一部である。主人公であるみか子(もちろん乙女)は、アンネ・フランクに「ロマンチックな悲劇のヒロイン」のイメージを抱いている。バッハマン教授の嫌う「少女幻想」だ。

     『アンネの日記』がもつ重要な意義とは、迫害された多くのユダヤ人一人ひとりに名前があったことを思い出させることだ、とバッハマン教授は言う。『アンネの日記』にまつわる考察もこの作品の一つの読みどころだが、とにかく、バッハマン教授が考えるそれは、「乙女」たちがもつ、お互いに集団から逸脱することを許さない性質とはむしろ逆のものだ。「わたしは密告します」というみか子の叫びは、アイデンティティを確立するうえで避けては通れない「乙女」への訣別なのだ。


     ……などと真面目くさって書いていたら疲れた。
     アンネに悲劇のヒロイン的なイメージ抱いてる女なんてそんなにいるのかなぁ? 厳島神社にオクラを奉納したり、壬生寺のノートに「悪・即・斬」って書くようなアレと似たようなものかねぇ。。。

  • 独特の世界観に引きずり込まれるようにあっという間に読んでしまった。乙女。密告。普段の世界では縁のない言葉たちがおどっているのに一気に読ませる筆力は凄い。桜庭一樹の世界観に通ずるようなところがあるように思えた。『アンネの日記』を読んだことがないので読まなければ。2011/283

  • 内容紹介を聞いたとき、何だか難そうというイメージがありましたが、いざ読み始めたらとっつきやすかった。おそらく赤染さんが京都出身とあってか関西人の持つ特有なユーモアがあったおかげで、世界観に引き込まれたのだと思う。
    特にバッハマン教授のキャラが浮き立っていて面白かったです。

  • 民族の長い歴史の中で苦悩し続けられてきたユダヤ人のアイデンティティを、一人のモラトリアム人間のアイデンティティと一緒にしちゃいけないだろう。。。

  • 最近の芥川賞受賞作品。京都外国大でドイツ語を学ぶ女子学生たちの生態を描いたとも言うべき本。著者はこの大学出身で、現実には36歳のようですから、その当時のことなのか?今の大学の雰囲気とは少し違うような印象がありました。アンネ・フランクについて当世の女子大生が興味を持つのか? 密告は大学内で流れた黒い噂の密告とアンネ逮捕に至る密告が二重になっています。しかし、アンゲリカ人形をいつも抱いているなんて、こんなおたくっぽいドイツ人教授(パッハマン)がいるのかなどと思ってしまいます。この作品が芥川賞というのは、最近の受賞基準がよくわかりません。近時では直木賞の方が優秀作品が多いと言われることが分かるように思います。

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著者プロフィール

1974年京都府生まれ。京都外国語大学卒業後、北海道大学大学院博士課程中退。2004年「初子さん」で第99回文學界新人賞を受賞。2010年、外国語大学を舞台に「アンネの日記」を題材にしたスピーチコンテストをめぐる「乙女の密告」で第143回芥川賞を受賞。著書に『うつつ うつら』『乙女の密告』『WANTED!! かい人 21 面相』がある。2017 年急性肺炎により永眠。エッセイの名手としても知られ、本書が初のエッセイ集となる。

「2022年 『じゃむパンの日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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