ラブレス

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103277224

感想・レビュー・書評

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  • 標茶、弟子屈、釧路と道東満載。その点、桜木紫乃は地域の作家と言えるのだろうか。こういう小説があると、この土地が文学から見放されていないんだな、と思う。
    どんな不幸に見舞われても、決して絶望することのない姉妹の物語。百合江は、男や娘など家族に寄りかかりながら、里実は自分自身を絶対的なものにしようとしながら、不幸に向かっていく。百合江は一人では進めないが、アクシデントに対して諦念を持って受け入れることができる。里実は、人を利用しながらというところもあるが自分自身だけで生きて行けるが、突発的な出来事に対し柔軟性を持たない。
    個人的には、百合江の生き方に共感できる。が、さすがに子供一人いなくなっては、なかなか生きてはいけない気がする。

    今まで女性作家の作品をおもしろいと思えることがなかったけど、これはなかなか面白かった。
    ただ、作中の登場人物の名前をなかなか覚えられなくて困った。個性が無いからなのか、自分の記憶力に欠陥があるからなのか。

  • タイトルや本の装丁の奇抜さからは想像もできないほど
    やさしく、せつなく、誠実な女の一生が描かれています。
    東日本大震災後の、暗雲立ち込めるこの国の現実のなかで 自分は、こういう小説を望んでいたような気がします。

    「不幸も幸福も長くは続かない」と、 いくたの荒波を甘んじて受け入れ、 風のなすまま次の場所へ流れていく百合江。

    人は風のように生きていく人と 岩のように生きていく人とがいます。 岩のように堅実な人生を送ろうとする妹、里実は 姉、百合江をなじりますが、どちらの人生が幸福なのかではなく 自分自身の生きやすい生き方を貫くことが、 人生の逆境を支えるのだと、この作品を読んで痛感します。

    生きていれば悲しいこと、つらいこと、いっぱいあるけれど 「それでも生きていく」という、作者のゆるぎないメッセージが、 読者へのエールとなって胸に響きます。深く静かに‥。
    直木賞候補作。

  • 丸善アンドジュンク堂梅田店のSさんが、mbsラジオでこの作品のことをお話になってたのを聴いて手に取った。
    『サヨナライツカ』でも『マチネの終わりに』
    とも違った、ある女性の生涯をノンフィクションばりの精緻な筆致で見せてもらった。
    私が、気無しには手にすることのない著者だったのだが、いつか読み返したいと思える数少ない作品のひとつになった。

  • 『ホテルローヤル』は直木賞受賞時の話題を記憶しており、なるほど「ラブホテル」が主人公とは珍しや
    泥臭くに落ちそうも、さにあらず、なかなか洒脱でおもしろい短編集だと唸った次第

    そして、長編はいかに?と読んだ『ラブレス』
    姉妹のものがたり
    肉親への愛、連れ合いへの愛、子供への愛

    姉妹の性格が真逆
    能天気な姉としっかり者の妹
    極貧から出発して頑張っても、いい時が少なくて
    めでたしめでたしにはならない
    つつましい庶民で終わってしまう人生

    愛はしあわせか?愛とはなんぞや?
    しあわせな顔をして死にゆく姉を見て
    妹が、娘が、姪がそして元夫が、元恋人が
    それぞれに、こころ突き動かされたのであった

    もちろんこんなふうに波乱万丈ではないけれども
    昭和どっぷりの、もろわたし達世代のものがたりじゃないか
    みんな、悩みましたよ、悩みながら時代を潜り抜けてきましたよ

    と読後感が演歌調になってしまうのでもあった
    文章はしんねりとはしておらず、短編に比べるとむしろそっけない

  • 重たく過酷な人生を軽やかに生きたオンナ、百合江の一生を描いた、2011年下期の直木賞候補となった作品。
    はっきり言ってその2年後に直木賞を受賞した「ホテルローヤル」より、小説としての読み応えがある作品だ。
    (この作品が候補になっていなかったら、2013年の受賞もなかっただろう)
    惜しむらくはラストが、メロドラマ的なハッピーエンドになってしまったところ。
    百合江の「救い」として、このようなラストが用意されたのだろうが、もう一人の男の方が自然だし相応しいような気がする.......のは、男としての同性に対する身贔屓だろうか。

  • 北の国に生まれた女の壮絶な一生。この作家は時間軸で人生の浮き沈みを表現するのが上手。

  • 壮大な女性たちの物語だった。
    百合江の生き方、自分はしたいとは思わないけれども、いさぎよくて好き。
    でも、自分は里実タイプ。
    特に心に残ったのは、理恵と祖母との交流。

  • 最後、涙が出てしまった。
    ユッコちゃん、だいすきよー
    だいすきが、平仮名で書かれているのも、納得できる。
    重い
    重い
    話ではあるけれど、読み甲斐あり!
    ラブレスではない…

  • 一気に(といっても2日で)読み終えた。そして装丁とのつながりに首を傾げる。もっともっと意味のある力強い物語なのに!
    最初は登場人物の名前が覚えにくくて、それでも読み進めたいという気にさせられた。
    「愛」と「縁」の違いが分かるっていうことは逆に不幸せなことなのかもしれない。
    ハギが大福を食べるシーン、好き。女は逞しいなぁ。
    北海道の開拓地の厳しい寒風を想像しながら一人の女の人生が終わる、と思い込んでのラスト。茫然とした。
    どなたかも書いていたけれど、いい映画を観て映画館から出たときのような感じ。席を立って歩いても、現実に戻れない。思い出すと涙が溢れてしまう。物語に取り込まれたまま。
    いい小説ってすごい。

  • 女性が書いた女のための小説。描かれている喜び、つらさ、あきらめがすんなりと共感できます。
    タイトル、表紙からはうかがい知れない世界がページの中に広がっていました。
    不幸な生い立ちが人をどのようにするのかは人それぞれ。それぞれのやり方で頑張るしかなかった来し方が詰まっていました。
    卯一やハギの使う北海道弁が亡くなった父を思い出させて、また一度訪れた釧路のさみしい風景がよみがえって胸が詰まりました。

    泉屋のスパカツ。NHKBSのこころ旅で火野正平さんが立ち寄ろうとしたら定休日だったお店かしら。モスのご当地バーガーでも登場して、けっこうメジャーなんだなと知りました。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「女のための小説」
      ふ~ん、、、女性を取り巻く状況や、心の内が判るのかな?
      「女のための小説」
      ふ~ん、、、女性を取り巻く状況や、心の内が判るのかな?
      2013/09/06
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著者プロフィール

一九六五年釧路市生まれ。
裁判所職員を経て、二〇〇二年『雪虫』で第82回オール読物新人賞受賞。
著書に『風葬』(文藝春秋)、『氷平原』(文藝春秋)、『凍原』(小学館)、『恋肌』(角川書店)がある。

「2010年 『北の作家 書下ろしアンソロジーvol.2 utage・宴』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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