春風伝

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103280125

感想・レビュー・書評

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  • 「素より粗にして狂」「動けば雷電の如く、発すれば風雨の如し」「おもしろきこともなき世をおもしろく」長州藩士・高杉晋作、諱「春風」27歳の短い生涯を疾風のごとく生き、時代を変革した男。幕末で一番好きな「高杉晋作」。
    山岡荘八「高杉晋作」から始まり、司馬遼太郎「世に棲む日々」「竜馬がゆく」「十一番目の志士」の晋作、池宮彰一郎「高杉晋作」、古川薫「高杉晋作」と読んできたが、さて、葉室麟先生はどう描く。
    出だしはゆるゆるとしたいつもの書き出し、やはり歴史上の人物は苦手かと思いきや、中盤から後半にかけて、晋作の行動を浮薄な尊王攘夷と区別したり、お得意の女性の描き方をからめて誰の晋作でもない葉室流晋作になっている。
    「この戦は日本国を守る戦である。」

    奇兵隊進発時の土民呼ばわりの差別演説に明確な意味づけ、馬関戦争和平交渉役で高杉が彦島租借問題を頑として受け入れていなければ、香港になっていたことなどの意味づけをきちんと描いている。

  • あるいは、大敵と違う恐ろしさから目をそむけたくて、仲間内で争っているのかもしれませんが
    薩摩はイギリス艦隊の来襲により、城下を焼かれると言う苦渋を舐めさせられたため、攘夷を捨てて幕府に寝返った
    晋作は「人は艱難をともにできるが富貴はともにできない」と言ったと伝えられた
    私が守ろうとした国とは、情が濃やかで、美しく、そして温かき、まさに女人のごときものなのです。望東尼様は私が守りたかった国そのものなのでございます

  • 颯爽とした革命児の原点は上海体験が大きく影響しているとは、、。疾風怒濤の行動力と反転力ながら、結構ハードボイルド!?…先見の目は理念・理想よりも現実的。奇兵隊の構成内部なども描かれ、より晋作を知らされる♪

  • 司馬遼太郎の世に棲む日日には、あまり描かれていなかった、上海の留学についてや、藩の内情について、分かりやすく描かれている。

    幕末の人物はよく聞いた登場人物が出てきて、作家ならではの人物像がそれぞれ違うので、違いを楽しめる。特に龍馬の扱いも、さっぱりとしておりよかったかも。

    個人的には、やはり登場人物たちの若さにあまりある、濃密な人生の激情と、為し遂げたことの大きさに、改めて驚嘆した。
    晋作は、明治の元勲たちのひとつ上の世代であり、やはり生き延びていたらどうなったかに思いを馳せずにはいられない。

    今度は、いかにして元勲たちが身を起こしたか、そして日本がどのように動いて近代になっていったのか、読んでみたい。

  • 高杉晋作の…ますます好きになりましたぁ。
    諱(いみな・本名)高杉春風(はるかぜ)というのですね。
    で、春風伝。
    字・暢夫。通称・晋作。なの、だ、そう。

    驚いたのは、脱藩なんども繰り返しているところ…
    しらなかったぁ。
    そして。呼び戻され、長州を一枚岩に仕立て上げた!

    哭泣
    一掬の涙

    梅と桜

  • 疾風のごとく生きるとは、ひとより先を歩むこと。高杉晋作―時代を変革した男は生き方すべてが新しかった。詩と女を愛し、敵をも魅了した英傑の奇策に富んだ嵐の生涯。この戦は日本国を守る戦である。死しても負けることは許されぬと心得よ。長州藩士・高杉晋作。本名・春風。幕府を守るべき彼が、欧米列強に蹂躙される上海の姿に日本の未来を見た時、「レボリューション」の天命は下った。民衆を率いて四カ国連合艦隊と幕府から藩を守り抜き、徳川治世を散らす嵐となった男の奇策に富んだ戦いと、二十八年の濃密な生涯を壮大なスケールで描く。。。晋作の壮絶な人生に言葉がありません。。。

  • 488頁の大冊だが、既知の地名もたくさん出てきて楽しく読めた.高杉晋作の活躍が主な内容だが、多くの人と接触し多くの知識を得ているが、それを自分のものとして戦略を決断していく姿勢に感動した.知恵袋としての横井小楠の存在が光っている.商社員として坂本龍馬を扱っているのが面白く、妥当なものと感じた.竜馬自体、あまりにも過剰評価されている傾向なので、納得できた.

  • まさに疾風迅雷の如き人生だ。四境戦争に勝利した直後、若干27歳で死去。成し得た功績を振り返ればとても27年の人生とは思えない。
    最近では「龍馬伝」の伊勢谷友介が好演していたが、実際は遥かに若い、松山ケンイチや山下智久ぐらいの俳優が演じないといけないわけだ。
    司馬遼太郎好きなのでどうしても「世に棲む日々」や「花神」と比べてしまうが、躍動感のある司馬作品から見ると随分大人な臈長けた高杉晋作に描かれている。それが悪いというわけではないが、美玲、おうの、雅、と3人のイイ女を渡り歩いても憎まれない、ちょっとイイ男過ぎ。
    「神に愛された男」は天運に恵まれた故、若くして天に召されたのかな。読後感は爽快の一言に尽きる。

  • あれだけの事をして27歳で散ってしまうのは本当に無念だと思うが、この時代そういう若者がたくさんいたのだと圧倒される。生き残った者が勝ちという考えに納得するが、このように生きぬくことは本当に美しい。

著者プロフィール

1951年、北九州市小倉生まれ。西南学院大学卒業後、地方紙記者などを経て、2005年、「乾山晩愁」で歴史文学賞を受賞しデビュー。07年『銀漢の賦』で松本清張賞を受賞し絶賛を浴びる。09年『いのちなりけり』と『秋月記』で、10年『花や散るらん』で、11年『恋しぐれ』で、それぞれ直木賞候補となり、12年『蜩ノ記』で直木賞を受賞。著書は他に『実朝の首』『橘花抄』『川あかり』『散り椿』『さわらびの譜』『風花帖』『峠しぐれ』『春雷』『蒼天見ゆ』『天翔ける』『青嵐の坂』など。2017年12月、惜しまれつつ逝去。

「2023年 『神剣 人斬り彦斎』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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