盲目的な恋と友情

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (243ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103283225

作品紹介・あらすじ

これが、私の、復讐。私を見下したすべての男と、そして女への――。一人の美しい大学生の女と、その恋人の指揮者の男。そして彼女の親友の女。彼らは親密になるほどに、肥大した自意識に縛られ、嫉妬に狂わされていく。そう、女の美醜は女が決めるから――。恋に堕ちる愚かさと、恋から拒絶される屈辱感を、息苦しいまでに突きつける。醜さゆえ、美しさゆえの劣等感をあぶり出した、鬼気迫る書下し長編。

感想・レビュー・書評

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  • 「盲目的な」というより「歪んだ」あるいは「屈折した」恋と友情という方がしっくりくる。
    屈折しすぎて逆に怖いもの見たさのような感覚になり、印象に残る。
    表紙の女性のしっぽがとても不気味でそれでいてこの女性の顔が可憐で可愛い。とにかく表紙の不気味さも不気味なのだご、何となく可愛くて、ツボってしまった。

    前半の「恋」の章は、『愚かな恋の物語り』。美しい女子大生・一ノ瀬蘭花と彼女の大学にプロの指揮者・茂実星近との歪んだ恋の始まりから末路までが綴られ、そこにちらほらと蘭花の親友・傘沼留利絵が登場する。

    後半の「友情」は、『独占欲の強い友情の物語り』。傘沼留利絵の美醜の性格形成の果てに蘭花が飛び込んでくる。

    女性の持つ自尊心と嫉妬心があからさまに表現されていて、終始ゾクゾクする。

    タカラジェンヌの母をもつ女子大生の一瀬蘭花は、自分の美貌に無自覚であった。大学のオーケストラに迎えられる指揮者は、カッコよくなくても、指揮者という肩書が何倍にも株を上げて、オケの女性たちの憧れとなっている。そして、そんなオケの指揮者として美形の茂実星近が迎えられ、2年の夏から彼女と付き合うことになる。
    オケで注目の彼。師事・室井の力によりステータスの高い生活を送る茂実の彼女という地位に酔いしれる蘭花。
    茂実が室井の妻と関係があったことがわかっても離れることができない。世間体の高い彼の彼女というプライドが、別れのタイミングを逸してしまう。

    小学生の時から笑われる女子側にいた傘沼留守利絵。友達がずっといなかった留利絵に大学になってようやく、話の通じる友・蘭花ができた。
    しかも彼女は、みんなが一目を置く美少女。そんな彼女の一番の友であるということを周りから認めてもらうことに執着しすぎて、道を外してしまう。

    世間を知らない少女たちの行動、考え。加えてプライドが高く、自分が一番でないと納得できない彼女たちの結末に、軌道修正できるきっかけはいっぱい合ったのに…と思いながらも当然の流れのごとく結末を受け止めてしまう。

    恋に堕ちる愚かさ、恋から拒絶される屈辱感。醜い女性心理、肥大していくプライド、嫉妬に縛られて、想定外の行動で終わる結末。

    人間の心のどこかに理解できないこんな感情が潜んでいるのではないかと考えてしまう作品であった。
    (この歪みに結構ハマってしまった…笑)

  • 読んでいて軽い既視感。
    なんだかこの話、朝井リョウの「スペードの3」に似てない?
    女性の尋常じゃない自意識だとかスクールカーストのトラウマだとか。
    今この手のテーマが若手の作家の間の流行りなのか。
    ブラックな感じも共通してて作者を伏せて読んだらどっちがどっちだか分からないかも(笑)
    お二人の作家は同期で仲良しらしいから影響されあってるのかな?

    でもね、正直個性が感じられなかった。
    私が辻村さんの作品をほとんど読んでないせいもあるのかもしれないけれど・・・。
    女性独特の心理を巧みに描写しつつもミステリーに仕上げるってのが彼女の特徴なのか。
    この作品以外に読んだことあるのは「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」
    これも巷の評価ほど感心しなくてずっと辻村さんから遠ざかっていたけれど今回たまたま手に取ってみた。
    またしても外れちゃったみたい。

    これぞ、辻村!!と言う作品を読まないと。
    以前にブクログ仲間さんにお勧めいただいた本があったはずだな。
    まずはそれを読まないと始まらないか。
    若い作家さんの小説に入り込めないのはもしかしたら自分の年齢のせいかなとも思うけれど。
    どうなんだろう。認めたくないけど・・・。

    • koshoujiさん
      こんにちは。
      辻村さんの作品では、
      「名前探しの放課後」「スロウハイツの神様」のどちらかを是非読んでみてください。
      全く違う”白辻村”...
      こんにちは。
      辻村さんの作品では、
      「名前探しの放課後」「スロウハイツの神様」のどちらかを是非読んでみてください。
      全く違う”白辻村”のハッピーエンドを堪能できると思います。
      「名前探し」を読む場合には、先に「ぼくのメジャースプーン」を読んでおいた方が良いかもしれませんが。
      2014/07/17
    • vilureefさん
      koshoujiさん、こんにちは。

      お勧めありがとうございます。
      辻村さんの作品てリンクしているものが多いみたいですね。
      ファンに...
      koshoujiさん、こんにちは。

      お勧めありがとうございます。
      辻村さんの作品てリンクしているものが多いみたいですね。
      ファンにはたまらないですよね(*^_^*)
      「スロウハイツの神様」が気になっているので今度チャレンジしてみますね♪

      “白辻村”“黒辻村”って言い方、良いですね。
      今度は白辻村を堪能します!
      2014/07/18
  • 前編は盲目的な恋。
    美しい大学生、一瀬蘭花と、恋人の茂実星近。
    そして蘭花の親友傘沼留利絵。
    彼らの関係を蘭花目線で描いている。

    こちらは女性なら何となく理解できるのかも。
    恋は盲目とはよく言ったもので、悪魔的に心を支配され、それ以外は何も見えなくなってしまう。

    何となく退屈な本だなぁと思いながら読んでいたのだが、、、


    後編は盲目的な友情。
    前編と全く同じ時間軸で、蘭花の親友、傘沼留利絵目線で話が進行する。

    後半になってから物語のスピードが加速した気がした。

    女って、怖いな。。。

    留利絵の気持ちには感情移入できず、私の目には少々狂気的に映ってしまった。

  • 盲目的な恋と、盲目的な友情。
    美しい女子大生の初めての恋が燃え上がるが‥

    一瀬蘭花は女子高から私立大学に進みます。
    音大ではないけれど、百人を擁するオケ部で、第一バイオリンのメンバーに入りました。
    指揮者は若手のプロがやって来ることになっていて、指揮者は誰とでも選び放題で付き合えるという話は聞いていたのです。
    そんな指揮者でしかもかなりの美形な茂実星近と2年の秋になって蘭花は付き合い始め、あれこれありつつも5年という異例の長さで恋人として続きます。だがそれは‥

    恋に積極的な美波は、初心者だがオケ仲間でもあり、蘭花の親友でした。
    1年生の頃は美波は蘭花のことを、初恋どころか思春期もまだのようだと言っていたりして。
    そんな美波のことを嫌う傘沼留利絵は、群を抜いてバイオリンが上手い。
    痩せていて生真面目で、化粧っ気もない。
    素直な蘭花は、教育熱心な家庭に育った共通点を感じ、演奏会などの話も面白くて気が合うと感じていました。

    世間知らずな蘭花の一人称で語られる出来事。
    初めての恋に縛られ、他の女性の存在に衝撃を受けたり、相手が崩れていっても別れられない。
    ありそうではあるけど、どこかでどうにかならなかったのかと、もどかしい。
    良い面も不幸を招いてしまい、生かされなかった‥
    美しさが災い?

    留利絵の一人称で語られるパートはもっと怖くて、そうなった事情に気の毒さはあるが‥なんとも歪んだ考え方。
    盲目的な友情って‥そういうことだったのかと思うと、恋のパートもさらに怖くなってくる‥?
    人柄のいい男性が一人も出てこなかったような‥
    こうなるしかなかったような書き方で、鮮烈な印象はあるし、なめらかで、わかりやすいけど‥
    後味は悪いですね(苦笑)
    これはホラー?
    普通に成長していると思った女の子が一歩間違えばこうなりかねない、なりますよ~というブラックな味です。
    嫌ミス的な意地の悪さ?‥というほどでもないかなぁ‥こういうのも書けますよ、っていう印象でした。

  • 前半が「恋」。後半が「友情」。
    よくあるセットモチーフだがどう結びつけるのかと思ったら、ほぉーなるほどぉーと思いながら読んだ。
    相変わらず人物描写や、それに伴う人間関係や各人の行動言動描写などは卓越していて、さすがだなぁと。
    ただ、題材もあってかどの登場人物も好きになれんなぁという気持ちもあって、好みかどうかで星をつけるとしたら3かな。
    ラストはそっちかーとなかなか面白かったが、それを踏まえて前半を読むと、恋に盲目なだけあって彼女の都合の良さが読んでる最中より読後の方が強く感じられた。
    後半の彼女は、恋に盲目な「親友」に「それはあなた自身の快楽と欲だ」と指摘するが、そういう彼女自身も友情に盲目で、彼女自身の快楽と欲を最終的に優先したのだなあと思った。
    しかしここまで来ると、これは恋でこれは友情なのか?という疑問が湧く。恋や友情という名を借りた別のおどろおどろしい何かのような。
    ただどちらも次第に飢えていく「欲望」だったのだろうかと。
    ああでも後半の彼女が飢えていたのは、友情だけじゃないな、全てだ。
    「どうして、いつの日も、友情は恋愛より軽いものだというふうに扱われるのだろうか」という考えには同調したが、そんなことを思う彼女も、自分が誰かの一番に選ばれるなら友情でなくてもよかったのだろうなと思うので。たまたまそれになれそうなのが女友達だっただけで。
    月並みで分かりにくい感想になった。
    あっ、ヒグチユウコさんのカバーイラスト最高!
    ジャケ買いみたいなもんだったので、多分この装丁がなければ苦手な題材だ〜と避けて読まなかったと思うので…
    読後改めてカバー絵を見ると、2匹の猫の衣装がお揃いに見えて片方だけ少し装飾が豪華だったり、2人並ぶ少女の片方の顔が見えなかったり。
    どんな意図で描かれたのか気になります。

  • 読み始めてから、止まらないってなかなかない。
    見たいような見たくない、人の心の中。

    盲目的な恋と友情。
    題名の通り激しい恋と友情のお話。
    蘭花の気持ちも瑠利絵の気持ちも半分わかる。
    全部わかってしまったら、同じ道を歩むことになりそうで怖い。依存してしまうとなくなることが怖い。比べてしまいそうで怖い。
    正しいとかはないんだろうけど生きていくって大変って改めて思う。
    クライマックスのまさかに何度も読み直してしまった。読む価値あり。
    でも、一回読んだらいいかなw

  • ドロドロでした。生まれながらの不平等さ、抗うことの出来ない本能。何がアタリなのか、ハズレなのか。何がシアワセで何がフコウなのか…。
    辻村深月のドロドロ加減好きです。
    そして、装丁が今をときめくヒグチユウコさんでした♥️

  • 一人の美しい大学生の女と、その恋人の指揮者の男。そして彼女の親友の女。

    鬼気迫るとはこの事。留利絵の肥大していく承認欲求と嫉妬。
    読み辛い方もいるかと思いますが、私はこの句読点の使い方が好きです。一種の心理描写だと思って読みました。

  • 華やかな結婚式。その場にいる誰もが、新郎が“あの男”ではないことを祝福していた。

    前半は、美しい新婦・蘭花の『恋』のパート。
    蘭花は、学生時代、所属していたオケの指導に来た新進指揮者の茂実と恋に落ちた。しかし彼は、師事する指揮者の妻と不倫関係を持ち、そのことを隠そうともしない。やがてそのスキャンダルが明るみに出たことで、二人の関係はさらに歪んでゆく。

    後半は、新婦の親友・留利絵の『友情』のパート。
    外見に強いコンプレックスを持つために、女性としての華やかさを誇る周囲の学生たちに嫌悪感を持つ一方で、蘭花と教養やオケでの演奏技術の高さで釣り合うのは自分だけと自負し、「蘭花の一番の親友」であることに執着するようになった留利絵。蘭花のためにならない茂実を排除しようとするが…


    「かがみの孤城」や「ぼくのメジャースプーン」といった作品群とは全く違う系統というか…

    女の美醜・恋愛カーストの上位者とそうでないものとの歪みまくりの関係について、ねっとりドロドロとまとわりついてくるような、救いのない物語。
    けれど、盲目的な二人の女たちの心理は、ものすごく容赦なく残酷さもあって気色悪いんだけれど、こういう心の動きもあるのかな…と思わせる迫力。
    面白くなかったとはいえない。途中でやめられない力があるのは間違いない。
    けれど、人におすすめはできない。読み返したくない。女は怖い。

    まだまだ未読の多い辻村深月さんの作品群。
    ちょっと用心しながら開拓していこう…

  • 留利絵さんのコンプレックスが重過ぎて。。異性はもちろん、同性からも人気がないのは、しょうがないような。こういう人は、割り切って趣味に没頭した方が絶対幸せになれると思う。

    一瀬蘭花さんの鈍感力も半端ない。留利絵の天敵、美波さんが一番人間的には共感する。

    結末は、薄々予想出来たようで、読みきれず。ミステリーとしては、まずまず面白かったけど、読後感はよくはない。いやミスです。

  • 友情

    私は留利絵、そのものだと思う。
    親友という言葉で、特に蘭花にそうよんでもらいたくて、じたばたしてる、幾つになっても。
    それを素直に言葉に出せる留利絵は、すごい!

    茂美の惹きつけられる容貌も、気になった。どんなにいい男なんだろう。

    読んでいて、ずっとこんな思いで過ごしてきた私自身の内面を文字に起こされ、恥ずかしくなるほど。

    話がどうなるかよりも、女の敵は女であることが、よくわかる。

    あと全体に変わった名付け。

  • さあ、どっちだ、どっちだ??
    最後に感動の涙を流させてくれる講談社路線か?
    はたまた、じめじめとした女の嫌らしさを描いた文藝春秋路線か?
    といっても、これは実際には新潮社の発行物だけどね------。

    ということで読み始めた辻村深月の書き下ろし最新作。

    冒頭
    あの人が死んでしまったら、とても生きていけないと思った、あの幸せの絶頂の一日から六年が経ち、あの人は死んでしまったのに、私は、まだ、生きている。

    大学のオーケストラに定期的に指導にやってくる指揮者たち。
    彼らは女子大生の憧れの的であり、団員の誰とでも付き合える別格の存在だった。
    なかでも、元タカラジェンヌの娘蘭花の前に現れた茂実星近は完璧な外見を擁していた。
    主人公蘭花と茂実の盲目的な恋、蘭花の周りを彩る留利絵と美波との複雑な友人関係。
    登場人物が個性的で、しかも内面のドロドロというよりも、それを遥かに超えたズブズブの底なし沼のような感性の描き方が、まるで湊かなえの作品であるかのような感覚を覚えた。

    作者辻村深月自身の言によれば、最近の作品は“”白辻村“と黒辻村”があるという。
    デビュー当時から、ベタでもハッピーエンドを書き続けると言っていた作品群は白辻村、最近の、女性の内面をどこまでも深く描く、私にしてみれば読後感のあまり良くない作品群は黒辻村のようだ。
    この作品は明らかに黒辻村。
    だから、読み終わって、がっかりでした。
    私が彼女に求めているのは、あくまでも前半は様々な伏線を張り巡らせ、終盤見事にそれを回収して感動の涙を流させてくれる白辻村作品だからだ。

    ということで、驚愕のラスト、異性への恋と同性との友情の並列的比較という問題提起で話としては面白かったのだが(さらには装丁も素敵だった)、彼女に期待していた作品ではないので、評価は3。
    今年はデビュー十周年記念ということで、あと二冊今年中に発刊されるらしいので、できればどちらも白辻村作品であることを心の底から願うばかりだ。
    “スロウハイツ”や“名前探し”を超える作品の誕生を期待したい。

    でも、辻村さん自身の作品に向かう考え方が変わってきているようなので、あれ以上の感動に再遇するのはもう無理なのかもしれん。
    人間って十年で全く変わってしまうんだね。悲しい。

  • 前半は恋のパートで蘭花の視点で描かれていて、後半は友情のパートで留利絵の視点で描かれている。
    同じ出来事を違う人物の視点からもう一度描かれているところが面白かった。
    前半の恋のパートは、ダメ男から離れられないドロ沼にハマってしまう蘭花が痛々しくて読んでて挫折しそうになった。
    でも、後半の友情のパートは、留利絵のコンプレックスが丁寧に描かれていて面白かった。

  • 蘭花の恋の章と留利絵の友情の章で互いの目線から同じ時期が書かれていて面白かった。
    恋は盲目という言葉をモチーフに友情も盲目的になるのだと唸らされる。
    自分に自信のない留利絵の気持ちはあー、あるあるそんなこと、と思うし、誰もが認める美人に生まれてたらなぁ…なんて思うこともある。
    人の痛いとこを突く作品。

  • ヒグチユウコさんの装画がとにかく可愛くて装丁買い。初めて読む辻村深月がこれなのはあまり正しくない気はするけどまあいいや。中身は恋パートと友情パートで語り手がチェンジする二部構成になっていて、どちらもタイトル通り「盲目的」。

    大学のオーケストラに所属する蘭花が、イケメン指揮者の茂実星近という男と恋に落ちるも、実はこいつがとんだダメンズでさんざんな目に合わされ、しかしうまいこと死んでくれたおかげで別の人と結婚するまでが蘭花視点の「恋」。「友情」のほうでは、蘭花と同じ第一バイオリンの友人・留利絵視点で、基本的には同じストーリーが繰り返されるのだけれど、茂実の死の真相がこちらで明かされるサスペンス仕立て。

    蘭花は大変な美人なのだけれど、本人はその点に自覚が薄いのか無頓着なのか「恋」ではあまりその点について語られていない。ただただ、うっかりダメンズに引っかかってしまった大学生の女の子の、それでもそのダメ男を諦めきれないダメな恋愛のお話でしかない。

    怖いのは、圧倒的に留利絵の「友情」のほう。容姿に劣等感を持ち、美しい姉と比べられ、しかしその姉が美貌ゆえにある不幸を引き当ててしまうことすら内心羨んでしまうほど劣等感が複雑骨折した留利絵のキャラは大変つらい。恋愛ではなく友情に依存してゆく彼女の心理をこれでもかというエピソードの積み重ねで描写されていて、嫌なんだけど上手いんだなあこれが。

    そこそこ可愛くて軽くて合コンばかりしていて最終的にかなり良い男をゲットする美波というもう一人の蘭花の「親友」がいるのだけれど、彼女のキャラ設定も配置も絶妙。留利絵は美波をライバル視し大変憎悪するけれど、本当に友人にすべきは美波のように偏見もなくバランス感覚の良い子のほうだろう。留利絵は悪意にしか受け止めないけれど、読者には美波が留利絵を思いやる行動をとっていることが伝わるし、花火のとこで出てきた男の子も、留利絵はバカにされた、と被害妄想に陥ったようだけど、もしかしてあの男子は留利絵に好意を抱いているから照れ隠しでとった行動だったのでは?と私は思ったので、つまり結局、留利絵自身の被害妄想体質が、いつまでも彼女を劣等感から抜け出せない元凶だろう。自分を変えるという発想が彼女にはない。

    そして友情の名のもとに留利絵は蘭花に依存したわけだけれど、留利絵がいなくても、茂実というクズ男に恋した時点で蘭花の結末は同じだっただろうし、「感謝」という「見返り」を求めた時点で留利絵の蘭花に対する友情も底が見えていた。読後の後味は大変悪いのだけど、エピソードの構成やキャラ配置が絶妙で非常に巧いので感心してしまい、それほど不快と思わなかったのは救い。

  • 女の恋と友情。
    これは小説なので、かなり特異で耽美的で、登場人物も現実離れしていて、偏執的で、盲目的なのだけど。
    それでもヒヤリと心を撫でられたような現実的な表現があって、知らぬうちに彼女たちに共感して引き込まれてしまいました。

    勿論わざとミスリードするように書いてあるんでしょうけど、二視点からの書き分けはなかなか面白い。
    まぁ、ラストの展開より、二人の感情の過程や表に出さない部分が面白いんだけどねー。

    盲目的に恋に溺れる美少女、蘭花と、盲目的に親友という関係に執着する地味女、留利絵。
    美波ちゃんが一番普通だったね。
    物語の中では、蘭花がけっこう好きだなと思う。

  • 前半「恋」。完全に共依存な関係。ダメ男に耽溺する主人公。甘美な時期は瞬く間に過ぎ去り、熟れすぎて腐りゆく果実のようなぐちゃぐちゃな関係に。

    恋愛に対して純粋すぎて免疫がほとんどなかったことが、このような関係に陥った要因なのでしょうか…

    後半「友情」。こちらは友人関係に溺れる女の子が主人公。自分がこの人の一番でありたい。ある種の独占欲。

    対象の性別は違っても、相手を思う気持ちが強すぎて、行き過ぎて、一線を超えてしまう二人はとても良く似ていると思います。

    冷静に、客観的に見ると常軌を逸している二人ですが、純粋で真面目で融通が利かない不器用さが招いた結果かもしれなくて、そう思うと二人に哀れみを感じ、悲しい気持ちになってきました。

    いわゆる“黒辻村”作品で、気持ち悪さすら感じる内容でしたが、不思議とページをめくる手を止められず… 不気味でおぞましい印象ですが、どこか美しさすら感じる読後感でした。

  • 同じ事象を経験しても、容姿とか心情含め様々な見方がある。
    辻村さんのお話は、客観性はなく、一人ひとりの主観でもって物語を成立させているところに毎回唸ってしまう。

    若さとバカさは紙一重、とよく母親に言われたけど、これはひとことで言えばそれ。

  • さすが辻村さん。
    ストーリーとしてはなんとなくありがちな感じですが、女友達の友情、恋愛、男同士の余裕の中で生まれる友情…が鋭く描かれています。

    見た目が美しい女とみにくい女、どちらも鈍感で自分本位。善良と傲慢を思い起こす。見逃しがちな心の機微が読み手をドキリとさせます。

    不思議なことに、見た目が美しい女性が主人公という設定だけで読んでいて華やかな気持ちになる。

  • 好きじゃない

    いやそんな感想どうかとも思うけど感想は感想だ
    これで良しとしよう

    物語には生み出されるものと吐き出されるものがあってこの物語は…
    うんなんかそれっぽいこと言おうとして失敗してるなわしw

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著者プロフィール

1980年山梨県生まれ。2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。11年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、12年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、18年『かがみの孤城』で第15回本屋大賞を受賞。『ふちなしのかがみ』『きのうの影ふみ』『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』『本日は大安なり』『オーダーメイド殺人クラブ』『噛みあわない会話と、ある過去について』『傲慢と善良』『琥珀の夏』『闇祓』『レジェンドアニメ!』など著書多数。

「2023年 『この夏の星を見る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

辻村深月の作品

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