国銅〈上〉

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著者 : 帚木蓬生
  • 新潮社 (2003年6月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103314110

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国銅〈上〉の感想・レビュー・書評

  • 長門産の極上の銅を命がけで掘りだし、精錬し、舟で運び、鋳込む。若き国人も初恋の人、絹女に見送られ、十四人の仲間とともに都へ向かった。一たび故郷を後にすれば、再会かなわぬことも覚悟して…。着想から十年。「名もなき使い捨ての人足がいたはずだ。どうしても描いておかねば…」。著者のたぎる想いが胸をうつ、堂々の天平ロマン、ついに結実。

  • 天平時代が舞台。医師を登場させる歴史小説が多い作家だが、今回は鋳物職人+薬師(薬草)の才能がある主人公。

    長門の国の銅山の人足として駆り出された国人。
    敬愛する実兄を事故で失い、「銅山を抜けだせ」とのその遺言にしたがってか、都での大仏建立に携わるようになる。

    上巻は上京をめざして、十五人の職人たちが舟道中で終わる。

    実直で生真面目な国人。聾唖者だが,苛酷な労働にも前向きな黒虫、和解したのちは味方となってくれる親方衆、学びの師である景信など、魅力的な人物が多い。古代のプロレタリア文学というべき様相。

  • 長門の奈良登りで銅を作るための人足として働いていた国人は仲間の人足ら15人と共に、奈良の大仏鋳造ために都へと上ることになった。長戸での苦役の間に、兄の広国や相方で聾唖の黒虫を亡くしていたが、悲しむ間もないままに2ヶ月足らずの旅路にでる。都で待っていたのは目を見張るほどの盧舎那仏像であった。型をとり、自分たちが長門で作った棹銅を溶かし流し込み、鋳込んで行く毎日。心優しい衛士との出会い、日狭女との逢瀬、同じ人足である逆や、組頭との交流。常に清くあろうとする国人だからこそ集ってきた人々との5年の日々。「そなたも仏だ」と言われた言葉を胸に生きていく決意をする国人。1300年前の大仏建立に己のすべてを捧げた人足達の生き様を描ききった作品。
    初帚木作品。感動してしまいました。1300年も前に作られた大仏が今、時を越えてなお、みなに愛されています。(当時のまま残っているのは台座の部分くらいのようですが)その陰に何千人という人々のたゆまぬ努力と苦しみや、喜びの日々があったのだと、胸につまるものがありました。とにかく国人の人柄がすばらしく、常に向上心を持ち、回りの人々に思いをかけてやさしいところが良かったです。国人の素直な心持が周りの人々までも辛い苦役から守っていたのではないかと思いました。辛い事があっても常にその中の希望を模索する国人。その心が私達に今も語りかけてくれている気がします。長門や周防といった私が子ども時代を過ごした場所の名前が出てきたのも親近感があり、旅の道中の過酷さが知れるようでした。それにしても、あの時代にあんな大きな大仏を作ろうとし、また作った人々に頭が下がる思いです。

  • この頃結構まとめて借りてきて読んでいる作家さんです。
    人物の感情描写とかがとても上手でついつい引き込まれてしまいます。

    奈良の大仏創りを人足の視線から描いた作品です。実は自分、奈良に行ったこと無いんですよね。それでもその昔に大変な数の人間が奈良に集められ、あれだけの大きさの物を創り上げた事実にすごいなあ~と圧倒されます。今のような便利な機械も無く、創り上げられる。昔海外で大聖堂を見て宗教の力ってすごいなあ~と思ったものですが日本にもあったんですよえね。

    創った人、維持する人、訪れる人。その全ての人々が大仏の中の一となると良い。そんな小説でした。

  • 【国銅 上】 箒木蓬生さん

    長門周防地方「奈良登り」の榧葉山で取れる銅は秀逸である。

    穿子により掘り出された岩は釜屋に運ばれ大火で燃やされ
    焼ハクとなる。その焼ハクは吹屋で棹銅に生成される。
    その棹銅はやがて貨幣や鋳物に生まれ変わるのだ。

    国人はココで人足として課役についていた。

    入って一年目が過ぎた頃、奈良登りに国司の使いが来、
    慮舎那仏像立の詔(るしゃなぶつぞうりゅうのみことのり)を
    告げて帰った。

    天使さまが、都に大きな仏像を造ることを発願したものだ。

    その仏像の建立のため、国中から銅が集められており、
    奈良登りも人足を増やし今まで以上の銅を納めなければならなくなった。

    国人が穿子として切口の中に入り、鎚と鏨とを使い岩を剥がす作業
    に明け暮れていた時であった。

    やがて国人は釜屋、吹屋と棹銅を作る全ての役場を経験する。

    国人は課役の合間をぬい、榧葉山に住み着いている僧の景信から
    「字」や「薬草」の見分け方や作りかたを教わっていた。

    国人が課役について4年経った頃、奈良登りに都からの使者が来た。

    大仏建立につき、棹銅の扱いに詳しい人足を数名、都へ送れという
    内容であった。

    国人以下数名がは棟梁から都行きを命じられた。

    都へ行くには、川を下り海を越え一月以上もの月日がかかる道中であった。



    苦役にも不満も言わず服し、様々な経験を積んでいく国人
    その間には、事故で兄と朋輩の黒虫を亡くすという辛い経験もしている。

    都行きの道中も平穏ではない。。

    様々な苦労とともに、その苦労と同じ分だけの知識と体力を
    つけていく国人。。

    物語は、これから大仏作りの本題に入っていくのだと思う。

    今現在、実際に見ることの出来る大仏が出来上がるまで、当時
    どれぐらいの時間がかかり、どれだけの人が亡くなったのか
    そんなコトに思いを馳せる物語です。

    下巻へ続く・・なんちゃって。(^^)v

     

  • この本すっごいです。。
    使い捨てのように扱われて働かされた奈良の大仏造りの人夫たち。
    そんな人たちの苦労に想いをはせることもなく、大仏さん見上げてすっげーと思ってました。
    考えてみたら、あんな巨大で精緻な建造物、並大抵の苦労じゃ造れないですよね。

    人夫の生活を通じて、今の生活、学べることの幸せを感じます。

  • 長門周防に住む「国人」は、流行り病で両親が身罷った後、兄と共に銅の鉱山で働かされていた。ある朝作業者達が集められ、大仏を造立するという天子の詔が発表され、より一層の働きをするように各人に指示がでる。
    そんな中、国人の兄が事故が元で亡くなってしまう、兄の菩提を弔う内に墓標に書かれた文字を兄と面識のあった僧景信から文字や薬草の知識などを幅広く習いだす。

  • 奈良天平文化の象徴ともいえる奈良の大仏。
    日本の仏教が大きく花開いた時代に華々しく登場した大仏は華やかな光に包まれて誕生し、今もその光に包まれている。

    この物語はそんな大仏に使うための銅を掘り出す労役に従事させられ、そして故郷長門の国から奈良の地まで連れて行かれて大仏建立の作業に従事した、当時の人々を描いたヒューマンドラマです。

    普段私たちが目にするこの時代の文化は貴族達が中心で、当時の一般の人々がどんな生活をしていたのかはほとんど目にすることがありません。
    教科書には載らない当時の人々が何を食べ、何を着、何を考えていたのかが生き生きと描写されていてそういった意味でも勉強になる本です。

  • 帚木氏の作品は非常に好きでよく読みます。その中でも特に大好きな本です。
    奈良の大仏造りに関わる一人の聡明な青年を描いており、悲惨な状況ではなく、その人の中に備わる聡明さに焦点が据えられています。
    私は男性性の中にある青春小説のような感じも受けました。
    後半の歌を詠むところがとても好きです。

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国銅〈上〉の作品紹介

長門産の極上の銅を命がけで掘りだし、精錬し、舟で運び、鋳込む。若き国人も初恋の人、絹女に見送られ、十四人の仲間とともに都へ向かった。一たび故郷を後にすれば、再会かなわぬことも覚悟して…。着想から十年。「名もなき使い捨ての人足がいたはずだ。どうしても描いておかねば…」。著者のたぎる想いが胸をうつ、堂々の天平ロマン、ついに結実。

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