聖灰の暗号 下

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 106
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103314158

作品紹介・あらすじ

教会が犯した大罪が、今、暴かれる。聖者も農夫も、粛々と炎に包まれていった…抹殺された人々の声なき声、魂の呻きがよみがえる-。異端審問の真相に挑む歴史大作。

感想・レビュー・書評

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  • <衝>
    【注:本感想文はかなりのネタバレになっています。すまぬ】
     さて下巻はいきなり過去のその出来事の詳細な記述から始まる。上巻の読了から少し時間が空いてしまったので読み始めた瞬間は これは一体なんだっ と思ってしまった。しかしあまりにも衝撃的な内容で一旦置こうと思っても読むのが止められなくてそのままどんどん読み進む。そしてとうとう,あ これは上巻の最後でようやく見つけた件の 古き手稿だ と言う事に気づいた。そういえば体裁も全体にページの中で一段下がって配置されていて何だか違うなぁと思ったのだった。

     この700年前の古き「手稿」の記述は一つの文章がとても長い。読点「,」でどんどん繋いでいって長く続く。「。」句点で一旦文章が終わるのには四六判単行本で軽く10行は費やしている。これは最近の小説作品としてはかなり珍しいことだと思う。ならば読み辛いか というとそんな事は無くて 良く考えられた上で読点で繋いでいく文章とはこんなにも分かり易くてしかも読みごたえがあるものなのだなぁ と 目からうろこ 状態なのであった。

     がしかし,見方を変えると本書の内容はローマ教会ヴァチカンを首魁とする世界で一番多くの人が信じているらしきキリスト教主流派の否定/誹謗/中傷であり 世間全体多数派から見るとごく少数意見なのであろう。でもその中身は絶対に被迫害者の方が善でありヴァチカンは悪だ。
     そして,人は皆自分が悪だ などとは絶対に思ってはいない。自分こそ正義だと信じている。信じているからこそ平気で戦争もするし人も殺せるのである。人が人である限りこれは絶対に無くなりはしない生業である。すまぬ。

  • ・<良き人>アルノー・ロジェが一点のよどみもなく語っている間、パコー大司教は稲妻に打たれたように口もきけず、<良き人>が静かな口調で、ガラテアの信徒への手紙4の6で聖パウロがガラテア人に語った言葉に「あなたは神の子、神はその子の聖霊をあなたに送った」とありますと言いかけたとき、大司教はようやく手を上げ、獄吏にこの呪われた男を連れていけ、というように顔をしかめたため、獄吏がアルノー・ロジェを立たせようとすると、その<良き人>は獄吏の手を肩で振り払い、大司教を睨みつけ、だから、あなたの坐っている椅子、あなたの身につけている衣、頭にいただいている帽子、そしてあなたが日々を過ごす教会や大聖堂、礼拝堂に、神は一切宿っていないのです、何故ならば、あなた自身の心に、神がいないからです、と言い放っていた。
     
    ・「アキラ、わたしが精神科医になって学んだことがひとつある」運転席でクリスチーヌが頷く。
    「何だい、それは」
    「物事って、何とかしているうちに何とかなる」
    「何とかしているうちに何とかなる」
    須貝はそのまま反復した。
    「そう、精神科って外科や内科と違って治療の道筋が見えないことが多いでしょう。でも諦めずに、何とかしていれば、本当に何とかなる」
    「一種の楽観主義だ」
    「そう言い切ってしまうと、少し違う。どこかずっと苦労はつきまとっている」
    「希望を忘れずに苦労する?」
    「それともちょっと違う。もうちょっと、あたふたしていい」

  • 正直、手稿がなければ途中で投げていた。それくらい、他の部分がぬるくてひどい。ロマンスが生まれるのは別にいいが、描き方がチープでロマンチックでも何でもない。殺人事件も結末を含めて貧相だし、もう少しハラハラドキドキできるような厳しい展開にするか、いっそのこと手稿の部分だけで物語ったほうが、何倍も読みごたえのある面白いものになったのではないか。題材や手稿の書き方、内容がとても魅力的だっただけに、他のお粗末な面がもったいなく、力の入れ具合のバランスが悪すぎると思った。

  • 第二の手稿が見つかり、カタリ派の信徒や聖職者たちの悲しい過去が明らかになった。須貝たちは第二の手稿の暗号から、第三の手稿が隠されているところを探る。
     しかし、カタリ派のことを公にしたくない者によって、また殺人が起こる。
     
     中世の魔女狩りや、ユダヤ人の虐殺もこんな感じだったのだろうと思います。
     本の良いところは、難しい歴史でも面白く書かれていて理解しやすいし、そこからまた別の本を読んだり調べたりして興味が広がるところだと思いました。

  • ローマ教会から異端派とされたカタリ派についての小説。犯罪と絡めてスリルある展開だった。11.1.10

  • 暗号をめぐるミステリー小説。

    この著者も、最初の頃は医療系の小説書いてたんだけど、最近は、まったく違うジャンルに行っちゃった。
    ただ、今も気になるから新刊出るとつい読んじゃう。

  • 読み終わって色々考えた記憶があるけれど、忘れてしまった!のでもう一度読む

  • 聖灰の暗号(上)参照。

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著者プロフィール

1947年、福岡県小郡市生まれ。東京大学文学部仏文科卒業後、TBSに勤務。退職後、九州大学医学部に学び、精神科医に。’93年に『三たびの海峡』(新潮社)で第14回吉川英治文学新人賞、’95年『閉鎖病棟』(新潮社)で第8回山本周五郎賞、’97年『逃亡』(新潮社)で第10回柴田錬三郎賞、’10年『水神』(新潮社)で第29回新田次郎文学賞、’11年『ソルハ』(あかね書房)で第60回小学館児童出版文化賞、12年『蠅の帝国』『蛍の航跡』(ともに新潮社)で第1回日本医療小説大賞、13年『日御子』(講談社)で第2回歴史時代作家クラブ賞作品賞、2018年『守教』(新潮社)で第52回吉川英治文学賞および第24回中山義秀文学賞を受賞。近著に『天に星 地に花』(集英社)、『悲素』(新潮社)、『受難』(KADOKAWA)など。

「2020年 『襲来 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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