水神(下)

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著者 : 帚木蓬生
  • 新潮社 (2009年8月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (281ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103314189

水神(下)の感想・レビュー・書評

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  • 帚木蓬生氏が2009年に書き下ろした庄屋や農民達を主人公とした珍しい歴史小説『水神』を読了。2016年の最初い読む本なのでちょっと骨太な物を思い面白そうだと思いながらも積読本であった上下刊を取り上げ読む事にした。結局この作品を選んだ事は大正解で大感動の作品だった。電車の中で読んでいるときに不覚にも泣きそうになってしまい困ったほどだ。まずこのお話は1660年前後の九州福岡県久留米地方を舞台にした実話だということだ。もちろん残された資料に基づいて構築された大部分が作られたお話であるのはわかってはいるのだが、この小説を読み始めた数ページ後には作り話ということを完全に忘れ去り、ドキュメンタリーを読んでいるような気持ちで読み進めていた。水利が悪く、他の地方で豊作の折にも年貢を収めるのがギリギリであった地方の意識の高い五人の庄屋が堰をつくり水利改善を行い農民を救いまたその地方をいまあるような豊かな土地へと変貌させたという壮大な、江戸時代の『プロジェクトX~挑戦者達』みたいなお話だ。まさに中島みゆきの『地上の星』がBGMに似合う小説だった。著者は精神科医であり二足のわらじで小説家をされているそうですがそれまた驚きです。おすすめです。

  • みんなの気持ちが一つになっていくところ,読みながら気持ちが高揚して,祈りながらページをめくりました.孤高の武士の切腹に,どんなに完成の姿を見たかっただろうかと思い,切なくてたまりませんでした.一人の庄屋の思いから,五人の庄屋へ,そしてこのような大きな事業へと発展したこと,奇跡です!

  • 身代と命を賭けた五庄屋と、その五庄屋、ひいては百姓たちを守るために自決して嘆願書を出した源三衛門。彼らが同時代にいたことの奇跡。ほぼ実話ということには驚きました。藤兵衛が助左衛門に語った話が好きです。菜種畑の夢は叶ったのかなぁ。オイッサ、エットナ。取水の日、筑後川からまるで龍のように勢いよく、轟々と流れてきた水には、百姓たちと一緒に感動しました。

  • この作家の歴史物はスロースターターで前半部がもたもたしているのでイライラさせられるが、後半部になると必ず泣いてしまう。よくある江戸人情ものでも、武士の剣客を競うものでもない。なのに泣ける。

    筑後川にかかる大普請の号令がおり、いよいよ工事がはじまる。反対派だった庄屋や百姓たちも意気投合していくさまは気持ちがいい。『火天の城』でもあったが、大きな事業のために国民一丸となるという構図はやはり心が洗われる。

    タイトルの「水神」がいったい何を意味するのかは最後で明らかになるが、ある人物の嘆願書の部分、これは泣ける。上巻のやたらともったりとした展開はこのためにあったのだろう。構図としては『天に星、地に花』と似てるのだが、けっして神がかり的なことを扱ったのではない。

    昔の人は他人のために命を賭けて尽くした。ひるがえって今の世の政治家にこれだけの志があるだろうか。税が重く暮らしが苦しいのはどの時代も同じ。それでも世の中を良くしたい、功名心のためではなく利他心のために。現代人もこのように生きねばならないことを諭してくれる名作である。

  • 熱く胸を打つ。
    何事も起こらずに無事工事が成功してくれと祈った。
    まぁ、小説なのでいろいろありますね。

    五庄屋だけでなく、村人、商人、みんな魅力的な人たちだった。

    物語にハマりすぎて、自分の話し言葉に方言が移った。

    美しい風景が目の前に広がるようだった。
    是非映像化してほしい。

    百姓は国の宝、初めて聞いたがよか言葉だと思った。

  • 堰をつくるために奮闘した5人の庄屋を巡る内容です。
    堰をつくることにより水不足が解消されることがわかっていても、いつまでも実現できなかった裏には、そこに関わる人間の個人的な利害から飛躍できなかったということなのでしょう。

    堰づくりの計画が大きく動くきっかけは、単なる庄屋の個人的な行動から藩命となったことですが、これは結局農民の総意をまとめて動かす民主主義的発想ではなかなか計画を進められない現代にも通じる日本人の特性なのかと思いました。

    本書は、史実により過ぎているせいか、僕の想像を越えない範囲でおさまり、少し物足りなさを感じました。

  • 郡奉行から正式の達しが出、いよいよ念願の堰渠造成工事に取り掛かる。完成を目前に控え、皆それぞれ期待を胸に水門を開けるが…。

    責任を取った源三衛門はじめ、まっすぐな強い思いで工事に臨む人々の心に打たれる。個人的には柱を切る場面が一番ウルッときた。
    勤勉に働き生きる人々に清々しい気持ちにさせられる半面、他の著者の本と比べると困難が少なく、トントン拍子にいきすぎだなーと感じる面も…。
    読後は良かったなぁ、とほんのり温かい気持ちになれるのだけどもう少し見せ場がほしい感じ。

    余談ですが先日「犬と鬼」でダム造成など公共事業のダークサイドについて読んだ後にこの本を読み、本当に昔の人はこんなに心清かったのか、一体いつからこうなってしまったのか…と悶々としてしまった。

  • 久しぶりの帚木蓬生作品だった。
    筑後川の流域にある江南原は大河の近くに位置するにも関わらず、長年水不足に悩まされていた。村々のある台地が川よりも高い場所にあったからである。
    村に水を引くために5つの村の庄屋が身代を賭して堰と水路の工事を藩に上申する。
    物語はこれを淡々と語るのみ。
    水不足に悩む村人たちの様子、水路構築に賭ける庄屋たちの気概、横で見ながら支援する老武士、最初は反対していたが工事が進むに連れて支援の意思を見せる他の庄屋達。
    堰の完成直前に悲しい事故が起きるが、ある人物の命を張った嘆願で庄屋、村人たちには最低限の難しか及ばずに済む。
    筋を書くとこれだけで抑揚もさして大きくないのだが、なぜか引き込まれる小説だった。
    この淡々とした中にも日々の生活を細かな叙事的な表現の積み上げで表していることが、読み手を筑後流域の情景に引きこむ。
    庄屋たちの積年の思いを少しずつ感じて読む進めることが、終盤の長い嘆願書に込められた思いに胸を打たれ、目頭が熱くなる。
    水路開通を祝う村人たちに想いを沿わせられる読後感は、本当に爽快で幸福感が湧き上がる。
    良い小説だった。
    帚木蓬生の、また違った一面を見ることができた。

  • 静かに物語は進行する。このまま何事も起きませんように、と途中願ってしまった。
    当たり前、の影で、こんなふうにいろんな尊い人が礎になっていてくれているのだなと思った。ご先祖様を尊ぶ気持ちというのは、こういうところから生まれるんだろう。
    読み終わっても胸の奥になにかじんわりしたものが残った。

  • 筑後川の工事を成功させるために立ち上がった庄屋たち。川と格闘する農民たち。
    後半は、映画「黒部の太陽」よろしく工事における人間ドラマが描かれる。
    江戸時代初期というと、河川工事に体する技術的な進歩があまりなかった様に思っていたが、この本に描かれる江戸の河川工事技術はレベルの非常に高いものだと思えた。
    測量方法・水位の調整方法・洪水対策などなど、河川をコンクリートで固めるだけの現代の河川工事に対して複雑な思いになった。
    筑後川をめぐって、武士・庄屋・農民がそれぞれ、己のいくさを精一杯戦う重厚な人間ドラマに感動でした。
    言葉づかいでおかしなところさえなければ、文句なしの5点!
    いきなり現代風の表現が出てくると、その瞬間冷めてしまうんですよね、この手の時代小説は。

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水神(下)の作品紹介

反乱と無情な抵抗。全てを飲み込む大河との合戦に終止符を打つためには、神への供物が必要なのか-一大事業がはじまった。巨石を運び、水門を築く百姓たち。大河の土手には、工事が失敗したら見せしめに庄屋たちを吊るすための五本の磔柱が立てられた-入魂の書き下ろし千枚、この感動、比するものなし。

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