- Amazon.co.jp ・本 (547ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103314202
作品紹介・あらすじ
当然の飢餓、沈みゆく艦船、銃撃の中での手術。人を生かすために全力を尽くせども、ただ無力さを思い知らされるだけ-精神鑑定をし、出産を手伝い、密林を逃げ惑い、抑留され、邂逅にむせび、マラリアに脅え、枕元に手榴弾を置く-フィリピン、ビルマ、ニューギニア、ラバウル、シベリア-十五人の若き軍医が故郷から遠く離れた戦地で触れた「あの戦争」の無情なる深層。戦争文学の比類なき到達点。現役医師の著者、入魂の「戦争黙示録」ここに完結。
感想・レビュー・書評
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やはり重いです!
軍医の体験の短編集です
フィリピン、マニラ、ルソンの何ヵ月にも及ぶ行軍
戦死と言っても、餓死や放置によって死んでいく兵士立ち上げの無念さを軍医の目から書いてあります
大げさに脚色されていたり、お涙頂戴的な表現ではないので、ドキュメンタリードラマを観るようでした!
当然の事ながら読後感は重いです!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
軍医の見た戦争。
飢えと病によって命を失った方のあまりの多さに驚きました。
そして、終戦後の、「武器を使わない殺戮」。
戦争というものは、終わってもなおこんなにも命を粗末に扱うものなのかと、悲しくなりました。
戦争は二度と繰り返してはならないと、改めて深く胸に刻みました。 -
配置場所:摂枚普通図書
請求記号:913.6||H
資料ID:95120629 -
「蠅の王国」の続編。戦争の実像に迫る作品。あとがきにある「きけわだつみのこえ」「俘虜記」に興味を覚えた。2015.3.24
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必要以上にグロくなく、必要以上に感情的でなく、かといって淡々とし過ぎているわけでもなく描かれていおり、かえって情景や人の気持ちが見えるような気持ちになりました。
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大東亜戦争における軍医たちの物語。
淡々と、悲惨な様子も感情を高ぶらせずに書かれているので、余計に写実的に読める。
飢えや病気との闘い、連合軍による捕虜の虐待など当然のごとく悲惨な話が多いが、中国人の校長とお互いの言葉を教え合って漢詩を習ったり、慰安所設営の責任者になってしまい原隊の軍曹に融通をきかせてやったりと、戦争は悲惨だけで語りつくせるものではないとよくわかる。 -
「蝿の帝国」と対になる短篇集(レビューの内容も同じです。あしからず)。個々の話は特定のモデルがいないという意味ではフィクションであるが、実際の第二次世界大戦に従軍した軍医たちの手記を元に構成しているので、書かれていることが実際にあったかなかったかというレベルで言えば、どれも「あったこと」が書かれているといって良いだろう。
戦争は体験した人それぞれにとってそれぞれの戦争があり、1つのストーリーで書き表すことができないということが本書の執筆になっていったのだろう。
軍医という側面から戦争の様々な姿を描いた本書の価値は大きいと思う。 -
軍医の目から見た戦争。
命が消えていくことを淡々と描いている。
戦争の空しさ、命のはかなさについて考えさせられる。 -
【読書その91】医療への関心を高めるために今年創設された文学賞である日本医療小説大賞(日本医師会主催)の第1回の受賞作のうちの1つ、『蛍の航跡』。著者は、作家で精神科医の帚木蓬生氏。先の大戦において15名の軍医が直面した壮絶な戦争。著者は、徹底した調査・分析に基づき、豊富な医学の知識を十分に生かし、非常に緻密な状況描写を行う。
もう一つの受賞作の『蠅の帝国』についても読んでみたい。 -
『蠅の帝国』に続く太平洋戦争中の軍医たちの黙示録だ。
前作とこの作品で30人の若き軍医たちの体験が鮮明に描かれている。
こちらの作品は日本から遠く離れた戦地を舞台にしているようだった。
暑い密林地帯で病魔と飢餓に苦しむ兵を介護する軍医がいるかと思えば、極寒の地シベリアへ捕虜となって送られ、重労働にあえぐ軍医もいる。いったいあの戦争はどれだけの規模で、ちっぽけな日本が世界を相手に戦ったというのだろう。
世界地図で確認してみた。
日本国軍の足跡は、北は満州・樺太・アリューシャン列島
南はインドネシア、東はマーシャル諸島、ギルパート諸島、ソロモン諸島、
西は中国、ビルマ(現ミャンマー)とまさしく大東亜に及ぶ広範囲。
こんなに広い範囲に不十分な食料と装備で送りこまれ、
物資の補給も国からはほとんどない生活をおくっていたとは・・・。
敗戦となれば捕虜になるのを避けるため、見つからないように逃げ惑う日々だったという。
彼らの心の支えは「生きて国に帰ること」だけだった。
そんな兵を医療で助けていたのは軍医たちだった。
兵のいるとこに軍医ありだが、彼らの戦う相手は、戦傷よりも病魔と飢餓。
戦争の行く末よりも今の現実が第一だった。身近にいる、傷ついて病にたおれ飢え死にしていく兵士や住民たちをまず、救おうとする。
その想いも「生きて一緒に国に帰ろうなあ」。
極限の窮地でも医者の任務を果たそうとする彼らからみた戦争は、
本当に無意味なものだっただろう。
医者である作者は「普通の医者たちが、命令によって送り込まれた場所で、いかにして全力を尽くしたのか。それを書き残しておかなければならないという使命感」で書いたという。
「その意味でこの二作は、軍医たちに捧げた「鎮魂記」であると同時に「医学史外伝」でもある。そう自負しています」とも。
戦後65年も過ぎ、あの戦争についての真実を忘れないよう、重い口をひらき語ってくれた軍医たちと、その記録を短編にして書き綴った作者に脱帽の思いだ。 -
短編集て読みやすかったが、似たような設定が多く、最後は飽きてきてしまった。
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医療を学び、医者として人生を歩む行程の中、
予想だにしていなかった立場に立たされながらも、
人を生かし、活かす為に行うはずの治療や医療がままならない現実の中の無力感や無念さは私には理解出来ないし、
分かるはずも無いが、感じ、考え、知ろうとする努力や、
軍人、と一言では言えない、それぞれの人生があったのだ、と、
当たり前の事を忘れないようにしたいと思いました。
日本兵のすべての人々が正しい事、
正義感に溢れた人々では無い事も、真実で、
敵国の人だろうが友人になれる事も事実で、
目の前の病人、けが人を見つめる事しか出来ない真実、
自国ではない国の未来を見つめる事も事実で。
無条件降伏をした敗戦国の捕虜の戦後の様子や、
戦中での生活の様子、
それぞれの立場を想わせてもらえる読書時間でした。 -
辛くて 悲惨で でも 当事者の軍医殿たちは 淡々と業務を遂行している。数多くの名も無き兵士たちの闘いの下で 我々は 生かされてるんだと しみじみ思ってしまった。
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軍医たちの黙示録。
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軍医という事で、人殺しからは免れているようですが、終戦前の亡者の群れの地獄からは逃れられず、戦争の哀しさを見せ付けられました。
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第二次世界大戦日本軍の15人の軍医の話.特に敗戦間近や敗戦後の悲惨な様子が描かれている.舞台はシベリアや中国大陸、マレー半島、ニューギニアなど多岐にわたる.薬も食べ物もなく赤痢やマラリヤに罹患し絶命して行く軍人たち.正確な資料に基づいてまるで著者自信が従軍していたのではないかと錯覚させるくらいである.なかには現地人とのほのぼのとした交流も混じっている.