楽園のカンヴァス

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著者 : 原田マハ
  • 新潮社 (2012年1月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103317517

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楽園のカンヴァスの感想・レビュー・書評

  • アンリ・ルソーって、けっして好きな画家じゃなかったのに
    頁をめくる手が止まりません。

    倉敷、ニューヨーク、バーゼル、パリ。
    2000年、1983年、1906年。
    時間も場所も飛び越えて交錯する、壮大な謎と運命の物語。

    ブクログ仲間さんたちが絶賛されていたこの本。
    すぐ図書館に予約したのだけれど半年たっても届かず、
    それでも気になる原田マハさんの本を、『キネマの神様』、『旅屋おかえり』など
    周りからじわじわと迫るように読み進めてきました。
    キュレーターという経歴から、理知的で冷静な物語世界を予想していたら
    思いがけずぽろぽろ泣いてしまうような温かい作品ばかりで、すっかり虜になって。

    そして、ついに届いた『楽園のカンヴァス』。
    こうに違いない!と思っていた、「キュレーターだった原田マハさん」がいました。
    しかも、絵画への深い洞察と知識の上に、溢れるような情熱と愛を纏って。

    食事に事欠いても、絵を描き続けずにはいられないルソーと
    貧しい暮らしの中でカンヴァスや絵具を買って届ける、ジョゼフとヤドヴィガ。
    内なる情熱を作品として生み出さずにはいられない芸術家と
    その美しさを崇拝し、守り、永遠に遺さねばと思う人々。

    生み出す人と、守り伝える人、という図式は
    いつしか新しい命を宿し、力強く育てていくヤドヴィガや織絵の物語にも重なって
    この世に生まれ落ちるすべてのものは、等しく尊いのだと訴えかけているようで
    胸が熱くなります。

    もし本当に『夢をみた』という作品が存在していたとしたら
    その絵の中のヤドヴィガは、すっと伸ばした左手に
    秘密だけではなく、情熱だけでもなく
    未来への希望を握りしめているのです。きっと。

  • 予約してから届くのが長かった(^^ゞ 届いて果たして・・・

    芸術や美術品には詳しくないから、他の方のように
    楽しめるのか、とっても不安でした。
    私に理解が出来るのかな?格式&敷居が高いのでは?
    とも思いました。そして初の原田マハ作品。


    でも心配ご無用で、中盤からぐいぐい引きつけられて
    後半は感動して泣けて、胸は熱い想いでいっぱいになるし
    読書スランプもぶっ飛んでいきました。

    アートの力ってすごいね。
    今年読んだ中で一番かも。


    『芸術家のミューズ(女神)になり、永遠に生きる』

    なんて、素敵な物語なんだろう。
    ひと言で言い表すなら・・・もう感無量。
    読了後、感動してブルブルして感想書けませんでした。
    落ち着いて一呼吸置いてからじゃないと無理、で
    今落ち着いてから書いてます。
    書ききれない想いが胸にいっぱいで、どうしましょ。

    スピンオフみたいなの書いてくれないかな~。

    本当に最高の【楽園】でした。ありがとう!原田さんって神だ。
    直木賞あげたい。

  • ──なんとスケールの大きな小説だろう。言葉が出ないほど幸せな気持ち。心が震えた。
    こんな素晴らしい作品に出会えたことを誇りに思う。ブクログの皆様に感謝。

    アンリ・ルソー。
    不思議な色彩と変わった構図の絵を描く画家だという認識しかなかったが、この本を読み終えたとき、この表紙にもなっている彼の「夢」の絵をみると愛おしさを覚えるほど好きになった。
    文章を追いながらも、絵画のタイトルが出ると、すかさずパソコンで検索しその絵を実際に画面で見ながら小説の続きを読んだ。
    ルソー展が開催されたら、絶対見に行きたい。
    そんな読後感を抱かせてくれた稀に見る秀逸な作品。
    読み初めからページを捲る手のスピードは一向に衰えず、期待に胸を高ぶらせながら、最後まで読み終えた。
    そして訪れたなんとも言いようのない満足感と、感動。
    自分という人間が、一回り大きくなれたような感さえ覚えた。

    表紙にもなっているルソーの絵画「夢」をモチーフに繰り広げられる、キュレーター(学芸員)の世界。
    今では一介の監視員に身を落としてしまった織江とMOMAのアシスタントキュレータであるティムとの真贋対決。
    だがそれは本来、彼女と彼の二人の対決になるはずではなかった。
    まさに偶然と奇跡が起こした、でも必然であった運命のめぐりあい。

    数十年前、ピカソ、ルソー、アポリネール。パリはまさに芸術の炎で燃えていた。
    この絵は本物なのか? 
    その謎を解く鍵は、絵の所有者によって提示された七章からなる古書を読み解くこと。
    それを毎日一章ずつ読んでいく。
    ああ、なんと1日の長いことか。時の流れのもどかしいことか。
    この古書は誰が書いたのか。
    章の最後に書かれた謎めいたキャピタル(大文字)は何を意味するのか。
    最後まで読み終えたとき、どんな綴りになるのか。
    もう、考えただけで胸が躍り、とまらなかった。

    「古書」から伝わってくる数十年前の古きパリの日常、あるいは熱情。
    私は完全に感情移入して物語に入り込んだ。織江になりきって。ティムになりきって。
    一週間後、最後まで「古書」を読み終えた二人の出した答えは。
    驚くべきティムの解釈。それは織江を思いやる優しさゆえだった。
    これを愛と呼ばずしてなんと言おう。
    対して織江の出した答えは──。
    この場面、胸が熱くなるほどの二人の絵画に対する愛情が伝わってくる。
    感動で心が打ち震え、唇が乾いた。
    そして二人のルソーへの愛情は十数年後の再会への糸口へとつながっていく。
    それはこの絵画に向き合った1週間、ともに「古書」のなかの同じ空気を吸い、夜会を共にし、ピカソに出会い、ルソーを心から尊敬し愛したティムと織江だけに共有できる思い、信頼が芽生えたからこそだ。
    ルソーに愛されたヤドヴィガのように絵画の形としては永遠に残らなかったけれど、織江とティムの二人は永遠を生きたのだ。

    うーむ。自分でもまどろっこしい。
    この感動をどう他人に伝えたいのか上手く表現できない。
    もっと書きたいことはやまほどあるが、それを書いたら優に一週間はかかる。
    それほど素晴らしい小説です。
    是非是非みなさまご一読ください。手元に置いておきたい珠玉の名作です。

    読み終えた今は、しゃかりきになってルソーの絵画をパソコンで検索して眺めています。
    もはや私は完璧にアンリ・ルソーという画家のファンになってしまいました──。

    註:直木賞選考時、この作品のなかで瑕疵と評されたのはインターポールのジュリエットの部分だと推測するが、私はさほど重要な瑕疵だとは思わない。
    そんな瑣末なものを凌駕する壮大さをこの作品は持っている。
    重箱の隅を突くだけが選考委員の役目ではあるまい。良いものは良いと評価すべきではないか。
    素直に二... 続きを読む

  • ようやく読めた。原田さんの最高傑作。

    MoMAのアシスタント・キュレーター ティムと、ソルボンヌで美術史を学び、コース最短の26歳で博士号を取得し、論壇を賑わせるオリエ・ハヤカワ。
    怪物バイラーは二人に、ルソーの「夢をみた」という作品の真贋を問い、勝者にはその取り扱い権利を譲渡すると告げる。

    現在、倉敷の大原美術館で監視員をしている早川織絵の回想から始まるスイス・バーゼルでの忘れがたい7日間の思い出。

    ミステリとしての完成度よりもこの世界観、ルソーやピカソへの優しいまなざしが心地よく、あっという間に引き込まれてしまった。

    文庫版は買おうと決めました。(お母さん、本増やしてごめんなさい)

  • アンリ・ルソーの幻の名画を前に、2人のキュレーターがその真贋について判断を下す。
    どちらの評価が正しいのか?
    真実はどこにあるのか?

    1983年、スイスのバーゼルのコレクター、バイラーに招待され
    ティムはニューヨークから、織江はパリからバイラーの屋敷に向かう。
    そこには、アンリ・ルソーの「夢」によく似た構図の作品が飾られていた。
    1日1章ずつ物語を読み、7日間かけて判断をせよと、バイラーは言う。
    果たして、その絵は真作なのか贋作なのか?
    物語は誰によって書かれたのか?内容はフィクションなのか?

    ティムに、なんとしても勝利をし、作品に関わる権利を手に入れよと、
    複数の人間がコンタクトしてくる。
    彼らは敵か、味方か?
    目的は何なのか?
    織江はどういう立場の人間なのか?
    ティムの目線で語られるシーンが多いが、誰もが怪しく、
    追い詰められるようで、ミステリーの要素もたっぷり。


    キュレーターとして、活躍していたマハさん。
    お気に入りの画家はルソーらしい。
    そのせいか、読んでいると
    ルソーに、芸術に、キュレーターという仕事に対する情熱が行間から窺える。
    実に「濃い」作品になっていて、読む側にも気合が満ちてくるような気がした。

    歴史とドラマ、事実と創作の境目がさっぱりわからず、混ぜこぜになって信じてしまい、
    後々違う解釈を見て驚いたり、がっかりしたりの私。
    今も「八重の桜」で松平容保@綾野剛クンに入れ込んで、苦しさの真っただ中にいる。

    それでも、このお話のようなルソーに愛情を傾ける人たちによって、
    芸術が受け継がれていくのなら、幸せだと思う。
    その周りの人も愛情を注いだ分だけ、神様からご褒美を頂けるような
    少しばかりの美しい真実に出会えたら、なおいいな。

    史実にしても、身の回りの出来事にしても、
    結局はある方向からの目線により語られるものであって、
    たくさんの線を引いてなぞっても、完璧に再現できるかというと難しい。
    真実とか、本当の思いとかって、どこにあるのでしょうね。
    世間を騒がす歴史ネタも、昨日のケンカの理由も
    すべてを明らかにしたいような、したくないような・・・。
    だからこそ、小説になる余地があるわけで
    まぁ、それを存分に楽しむのがよさそうです。

  • キュレーター(学芸員)だった経歴のある著者が、満を持して発表した作品。
    ルソーの名画に魅せられた人々が交錯する、凝った構成。
    絵画への愛が熱っぽく、引き込まれます。
    美術館の内幕物としても面白く、美術史の知識は余裕をもって描かれているのが、さすが。

    2000年、倉敷の大原美術館で、監視員をつとめる早川織絵は、思いがけない申し出を受ける。
    大規模な展覧会のため、アンリ・ルソーの絵を借り受ける窓口として、MoMA側から指名されたのだ。
    17年前に帰国、シングルマザーとして実家でひっそりと子育てをしていた織絵だったが‥

    1983年、スイスのバーゼルに、二人の若きキュレーターが呼び出された。
    MoMAつまりニューヨーク近代美術館のティム・ブラウン30歳。
    もう一人は新進気鋭のオリエハヤカワ26歳だった。
    大富豪で伝説的な絵画コレクター、コンラート・バイラーが秘蔵するルソーの知られざる作品「夢をみた」を見せられる二人。
    MoMAの所蔵作「夢」とそっくりな題材で、同じタッチの大作だ。
    これが真作か贋作か1週間後に講評し、バイラーが気に入ったほうにこの絵の処理権を与えるという。
    7日の間に与えられるヒントとして、毎日少しずつ古書を読まされることに。
    その内容とは‥

    ルソーの晩年、家族を失った孤独な暮らしだが、特異な作品に注目する人も出始めていた。
    近所に住む美しい洗濯女ヤドヴィガに惹かれ、何かとささやかなプレゼントや作品をあげている。ヤドヴィガは妙な絵を描く変人を最初は相手にしないが、しだいにその妙な絵にふしぎな魅力を感じ始める。
    若き日のピカソがルソーと関わりがあった様子も、いきいきと描かれていて、夢がありますね。

    世界的なオークションハウスや国際刑事警察機構まで登場、怪しげな要素が絡み合いつつ、真贋の判定やいかに?
    織絵がヒロインとするならやや説明不足で、何があったか推測は出来るけど、読者には不親切ですが~
    真のヒロインはヤドヴィガというか、彼女が入り込んだ世界、彼女の描かれた絵なのでしょう。

    芸術には人の運命を狂わせるほどの力がある。
    けれども、狂わされた運命が悪いとは限らない。ということでしょうか。
    第二の人生のスタートへ、希望の感じられる結末。

    著者は1962年生まれ。中学高校を岡山県で暮らす。
    森ビル在籍中に、ニューヨーク近代美術館にも勤務。
    2002年フリーのキュレーター、カルチャーライターに。
    2005年作家デビュー。
    この作品は第25回山本周五郎賞受賞。
    第147回2012年上期直木賞候補作。
    第10回2013年本屋大賞第3位。

  • 読み終えると雫がこぼれおちジーンとしている自分がいました。

    お話は…
    ルソーを愛するMoMAの学芸員ティム・ブラウンは、スイスの大邸宅で、MoMAが所蔵するアンリ・ルソーの大作『夢』とほぼ同じ構図、同じタッチの作を目にする。そこには日本人研究者の早川織絵もいた。持ち主の大富豪は、真贋を正しく判定した者に作品を譲ると宣言、ヒントとして謎の古書を手渡した。リミットは七日間。

    私は美術館が好きです。絵のことは詳しくないけど美術館の空間が好きです。

    物語を読む中で名画が登場します。
    iPad片手に作品を確認しつつ読み進めるのがまた楽しかった。
    Kindle本版は画像リンクとかしてあればいいのにね。

    物語のミステリー要素も愉しい。謎の絵画をめぐる駆け引きも面白い。
    さらにルソーに対する心を感じ取れたこと、美術に浸りながら素敵な読書の時間を過ごしたことが気持ちいい。
    7日間のリミットが終わり、どちらに作品の命運を渡すのかの章でグッときた。
    最終章 織絵の娘 真絵の言葉に連なる心に涙が溢れた。


    美術の世界がさらに好きになりました。
    ルソー、ピカソをじっくりと眺めたくなりました。
    MoMAをまだ訪ねていない。
    いつか行こう。
    楽しみが増えました。

  •  美術のことも、ルソーのことも、ピカソのことも、これっぽっちも知らなかった私でしたが、この作品を通して、美術に触れ合うことができました。

     ルソーって、こんなに素直で子どもっぽくて、自信家だったんだ。絵が売れずに、コンクールにも落ち続けて、周りからは「変な絵だなあ。下手な日曜画家の絵だ」なんて笑われているのに前向きで。親子ほどに年の離れたヤドヴィカに恋をして。

     ルソーやピカソなんて、私とはおよそかけ離れた人間なんだと思っていました。けれど、彼らは私たちと同じように、笑って、泣いて、悩んで、恋をして、そして何よりも絵を愛した。そんな人間だったんですね。なんだか、私とそう変わらないかもなあ、なんて思ってしまいました。

     絵を描くことも、文章を書くことも、誰かに何かを伝えたい、思いを永遠に残したいといった、人間の願いの固まりであるということを、この作品から切に感じることができました。

     

  • カフーにそれほどついよい印象を持たなかったので、原田マハの作品をそれ以降手に取ることはなかった。友人に勧められて読んでみたが、これがびっくり。同じ作家とは思えないほどの成熟ぶり。どうやら作者の専門分野だそうで。
    産業革命当時のパリの生活が生き生きと描かれ、まるで映画を見てるよう。美術に興味がなくても十分楽しめる作品に仕上がっている。
    文句なしに面白かった。

  • この本はアンリ・ルソーの絵画をめぐるアートミステリーです。
    もちろん私はアンリ・ルソーのことをほとんど知りませんでしたし、この本に登場するピカソやその他の画家の絵画についてもほぼ知識がなかったのですが・・・
    この本を読みながらインターネットで絵画を鑑賞していると、不思議なことに絵画にも興味が・・・

    私のような方がいらっしゃるのかもしれません。
    ググってみると『【楽園のカンヴァス】に登場する絵画のまとめ』 なるものがありました。
    おかげで本を読みながら絵画を鑑賞しつつ、普段以上に楽しい読書タイムになりました。

    ルソーの絵の謎をめぐる緊迫した駆け引きと、その謎を解き明かす過程の緊張、その結末の感動。
    【楽園のカンヴァス】、ほんとに面白かったです!!

  • ニューヨーク近代美術館の学芸員ティム・ブラウンは、スイスの大邸宅でありえない絵を目にしていた。MoMAが所蔵する、素朴派の巨匠アンリ・ルソーの大作『夢』。その名作とほぼ同じ構図、同じタッチの作が目の前にある。持ち主の大富豪は、真贋を正しく判定した者に作品を譲ると宣言、ヒントとして謎の古書を手渡した。好敵手は日本人研究者の早川織絵。リミットは七日間―。ピカソとルソー。二人の天才画家が生涯抱えた秘密が、いま、明かされる。
    「BOOKデータベース」より

    すがすがしい.
    この本を読んだ後の第一に浮かんだ素直な感想.
    登場人物と一緒にドキドキして、物語を楽しんで、実際には見てもいない絵画を想像し、ワクワクした.
    研究者たるものの、姿勢を見た.すばらしい小説だと思う.

  • アンリ・ルソーの名作「夢」
    それとよく似た絵「夢をみた」
    そして同じタイトルをもつ革表紙の本に綴られていたのは
    ルソーと「夢」のモデルとなったヤドヴィガ、その夫ジョゼフの物語。
    これを書いたのは? 真意は?
    ピカソとのかかわりは?

    うわあ 面白かった!
    絵画にまつわるミステリとルソーの伝記とをあわせて読んだような充実感。
    先が気になってしょうがない展開 なのにじっくり浸っていたい世界。
    最後の最後まで堪能 静かな感動と余韻

    出会えてよかった一冊

  • この本読んでから、原田マハさんの経歴を初めて知りました。
    実際に美術館に勤めたことがあって、フリーのキュレーターをされていたのだとか。

    ある日、ニューヨーク近代美術館(MoMA)のアシスタント・キュレーターのティム・ブラウンの元に、一枚の依頼状が届く。
    それは、伝説のコレクター、バイラーからの極秘の鑑定依頼だった。
    ティムは、バイラーの大邸宅で、アンリ・ルソーの名作『夢』とほぼ同じサイズと構図とタッチの『夢のあと』を見て驚愕する。
    バイラーの依頼は、『夢のあと』の真贋を見極めること。
    ティムと、同時に招待されていた日本人のアンリ・ルソー研究家の早川織絵は、『夢のあと』と題された1冊の本を、一日一章ずつ、7日間をかけて読むことで、真贋を判定してほしいといわれる。
    バイラーは、最後の真贋の判定講評で、より自分を納得させた者にこの作品を譲渡するという・・・。

    本作は、現在からティムと織絵の過去にさかのぼり、さらに過去の中で作中作が展開するという二重・三重の構造となっている。
    そして、作中作とつながって、現在に至る、その巧妙なつくり。

    作中作は、税関吏として働いていたルソーが、画家になると決め、絵具代やカンヴァス代に事欠く中、絵を描き続ける生活をするところから始まり、変な絵だといって、二束三文で叩き売っていた洗濯女・ヤドヴィガが、『夢』のモデルとなるまでが描かれる。
    当時、ルソーは前衛的で、へっぽこ画家としてほとんど理解されなかったけど、ルソーの絵に強烈に魅かれる人たちがいた。そしてその中にはかのピカソがいた…。
    登場する人たちの、生き生きとした生活、絵への情熱が伝わってくる。

    読み終わって、ネットでルソーの絵を検索し、しみじみと見ました。
     
    カンヴァスに隠された秘密。
    ルソーの愛、彼を巡る人たち。
    そして、コレクターであるバイラー自身の謎・・・。
    ミステリーとして読むと、ちょっと物足りないのかもしれないが、芸術に隠された秘密が徐々に露わになっていくのに興奮する。確かな知識と経験に裏打ちされた、すばらしい作品だった。

    「ルソー展」があったら、絶対に行くと思う。

  • 『アンリ ・ルソ ーの名作を所有している 。それを調査してもらいたい 。』
    何かに呼ばれるようにティムと織江はそれぞれ伝説のコレクターヴァイラーの元へ向かう。
    名作とは、アンリ・ルソーの「夢」とそっくりな「夢をみた」だった。
    二人は、絵と同じタイトルの「夢をみた」という物語を読んだあとに真贋を判断して欲しいと頼まれるが…

    ずっと夢の中にいるような気分だった。
    本を読みながら本の中に出てくる絵画をネットで検索して眺める。
    読む、眺める、眠りに落ちる…数週間この繰り返し。
    「夢」は何度眺めただろうか。
    あの濃く深い緑の中に引き込まれるのは正直怖かった。
    だけど見るのをやめられなかった。
    それは、あの世界が楽園だからだろうか。

    アンリ・ルソー、周りの人から愛され、死後100年近く経った世界ででも真実の友と呼ばれ、いつの時代にも彼と彼の作品を必死守ろうとする人達がいた。
    そんな彼の作品をじっくり見たい。
    私も友になれるだろうか。

    1900年代初め、天才画家たちがまだ認められていなかった頃のパリ。
    彼らはとても貧しかった。
    でも彼らには熱い情熱があった。
    その情熱が素晴らしい作品を生んだのだろう。

    原田マハさんの彼らへの愛を、そしてアートへの情熱を感じて震えた。

  • 表紙の「夢」を見て、胸が高鳴りました。
    リニューアル後ですけど、MoMAで観たの覚えてます。
    2m×3mっていうサイズ感とか幻想的な雰囲気とか。
    平面的だけど引きずりこまれそうな奥行き感とか。

    アンリ・ルソーの生涯と名画が、大胆なミステリーとして書き綴られているこの作品、例のごとく情報をシャットアウトして何やら贋作にまつわる話?くらいしか知らなかったけど、すっごいドラマチックじゃないですか。まさに夢だなぁ。

    物語は、大原美術館の監視員の早川織江のパンドラの箱がMoMAのチーフ・キュレーターのティム・ブラウンによって17年ぶりに開けられるところから始まります。
    17年前の楽園で夢をみたような1週間、読んでるこっちが昂るー。
    伝説のコレクター、コンラート・バイラーの所有するルソーのマスターピースの真贋を調査するためオリエとティムはバーゼルで出会い、ルソーの専門家としてとある物語を読むことになります。
    そこに記されている史実のようで創作のようなルソーと彼の女神ヤドヴィカやピカソらの友人とのエピソード。
    ほんとに「夢をみた」が存在していればいいのに。
    まぁ、ミステリーそのものより、ルソーやその時代の芸術家たちの情熱が素敵でしたね。
    またNYやパリに行きたい!大原美術館にも。

    老け顔でさえないティムのロマンスもなんだかキュートです。
    織江の娘はもしや?と危惧しましたが、さすがにそこまで安っぽい展開にならず、17年後の再会がより素敵なものになりましたね。

    世界的名画もそこそこ目にしていると思うけど、絵画の価値っていうのはその真贋というのはほんと素人には分かんないもんね。
    でも写真で見てた絵が目の前にあると圧倒されることがありますが、まさにそれが情熱なのかな。

  •  美術館、個人的には独りで行くことが多いのですが、いわゆる「美術」に詳しいわけでもありません。それなりに好みはありますが、単純に綺麗だなぁとか、印象的だなぁ、位の感想が関の山です。そんな、よくも悪くも「お気楽な鑑賞」で留めていたのですが、、こちらを読んで、もう少し深く観るようにしようと思いました。

     「絵が、生きている。」、この一言が全てをあらわしていると、そう感じた物語でした。

     大筋としては、アンリ・ルソー作「夢」と同じ構図をもつ一枚の絵画の真贋を、二人のキュレーター(学芸員)が見極めるとの流れ。ただし、蛍光X線分析や質量・史料分析などの科学的な手法ではなく、7日間かけて一冊の物語を読み解いていく、ある種のミステリーとも言える手法をとっています。

     それを担うのは一組の男女、一人はアメリカ人、ルソーをこよなく愛するニューヨーク近代美術館(MoMA)の学芸員・ティム・ブラウン。もう一人は日本人、新進気鋭のソルボンヌ大学院のルソー研究者・早川織絵。そして鑑定の依頼者はスイスの大富豪・バイラー。

     始まりは2000年、倉敷の大原美術館で監視員として働いている織絵が、館長室に呼ばれるところから。そこから一気に時を遡り、1983年にスイスはバーゼルで過ごした、「夢」のような7日間の記憶へとつながっていきます。その「ルソーが描き出した楽園」で二人は、20世紀初頭を舞台とした一つの物語と出会います。

     これら三つの物語がモザイクのように重なりあって、ページを繰る手が止まりませんでした。読後の余韻も素晴らしく、「永遠を生きる」とは、人の生きざまを、情熱を描くとはどういういことか、と楽園の世界にただ、浸っていました。

     例えるのであれば、芳醇なワインのような物語。ミステリーの手法をとりつつも、ロマンスも垣間見えて、主人公の二人にとってはまさに、全てから解き放たれた楽園の7日間でもあったのではないかと、なんとなく。「こんな夢を見た。」なんてフレーズを頭の片隅に思い浮かべながら、「夢をみた」二人の行きつく先は、はたしてどこになりますか、なんて。

     何かを生みだすということ、そして発信するということは、その背景にその人の「人生」がありったけに籠められているのだなぁ、、なんて感じさせてくれる、そんな一冊です。

  • アンリ・ルソーの「夢」がモチーフのミステリー仕立ての物語に加えて、彼の生涯と絵画の魅力を存分に伝える作品。ネットで絵を確認しながら読み進めて彼の絵画の素晴らしさも堪能できました。冒険?あり、謎解きあり、恋心あり、そして芸術の香りが匂ってくる極上のエンターテインメントだったと思います。
    最初に主人公は、早川織絵(オリエ・ハヤカワ)かと思いましたが、実はキュレーターのティム・ブラウンの方だったのですね。(笑)
    ある絵の真贋を鑑定してほしいとの怪しげな誘いを受けた主人公だったが、鑑定方法はある物語の読むことを通じてであった・・・!そして、その絵とは・・・。次第に周囲からの干渉も強まり、驚愕の背景が露わになってくる。小説内小説という凝った構成と、サスペンス的な盛り上がりに加え、アンリ・ルソーの芸術と彼が生きた時代の空気を大いに伝えてくれました。
    ただ読み終わってみると、織絵の立ち位置や物語の存在意義などディテールにおいて、今少し整合性が合わない点が気になりこの点数です。謎解きの部分の半分くらいは予想していましたが、バイラーの正体はいい意味で予想をハズしていて逆に感動できました。(笑)
    20世紀初頭の近代絵画の流れやキュレータという職業の理解もでき、また、ミステリーとしての結末も良かったので、なかなか満足できた作品でした。

  • 「夢」などの代表作が有名なアンリ・ルソーの筆による、未だ世に知られていない名作。
    その真贋をめぐり、学会で名を知られた2名のアンリ・ルソー研究者が鑑定人として選ばれました。
    調査期間は1週間、7日後に双方講評を述べ、優れていたほうにはこの名作の取り扱い権利を譲られる。
    調査方法はただ1つ、7章からなる「ある物語」を1日1章読むこと。
    こんな前例のない鑑定勝負に、読者はあっというまに夢中になってしまうのです。

    芸術品の鑑定なんてわたしにはまったく未知の世界だったのですが、ぐいぐい引き込まれていました。
    2人の鑑定人のやりとりや気持ちの動き、芸術品によって富や名声を得たい人々の暗躍、1日ごとに読み進まれる物語・・・。
    緊張感と高揚感にうながされてページをめくり、最後の一文を読み終わったときには満ち足りた気持ちになりました。

    本作を読み終えた人にとって、アンリ・ルソーは特別な画家になっていることでしょう。

  • 芸術にはあまり詳しくない私にも好きな絵描きがいる。
    アンリ・ルソーだ。
    中学の教科書にも載っていた、「眠れるジプシー女」はNYで2度見たし、東京でも再会した。心地よい湿度と透明度にいつまでもずっと見ていたくなるのだ。そんなルソーだが、つい最近まで彼の作品が評価されていなかったことをこの小説で知って驚いた。

    この小説の核になっている絵画は、ジプシー女ではなくて、「夢」という作品だ。
    この作品と似た作品がもう一つ、闇のルートから出てきて、その真贋をめぐるミステリーなのだ。
    やはりこの作品も、過去と現在、フランスと東京・スイス・NYといった具合に、パラレルに物語が進行し、それぞれの物語が交錯するところでゾクゾクさせられる。

    見たことのない絵なのにその絵の色つやまで頭の中で想像させてしまう、著者の筆力は凄いの一言。

    読書の楽しみの一つには、知らない世界を旅している気分になれることだ。この本を読んで、アートビジネスについてわかった気になれる。

    楽しんで教養が身につくなんて一石二鳥だ。

  • 夢をみていたようでした。
    ほう、っと読後に幸せのため息が漏れてしまうような。
    久しぶりに本の中に吸い込まれるような感覚。

    本当に文章が美味い。素晴らしい。
    静謐さの中に揺るがない情熱があって、ぶれない。
    絵画のこと何もわからないのに夢中になれる。
    ラストのティムと織絵も静かな情熱が最後に相応しい。
    はあー、いい「夢をみた」。
    甘やかで細やかで贅沢な時間をありがとう。

  • 今は日本の美術館で監視員をしている織江は、かつては美術史学会が注目する新進気鋭のルソー研究家だった。
    そんな彼女のもとに、或る時とつぜんMoMA所蔵のルソーの絵「夢」の貸し出しを狙う新聞社と美術館が接触する。なんでも、MoMAのチーフ・キュレーターであるティム・ブラウンが貸し出し交渉の窓口に織江を指名してきたためだという。17年前、ティムと織江はルソー作とされるある絵を巡って闘った仲だったのだ…。

    ダン・ブラウンを思わせるようなスタイリッシュな文章と、美術に対する深い造詣があるからこそ作ることができる練りこまれたプロットを堪能した。
    私は印象派以降の美術(現代アート含め)はからきしダメなので、アンリ・ルソーも「あぁ、あの緑を沢山描いてる画家ね」くらいの印象しかなかったんだけど、やっぱりこうやって誰かが解説してくれるとその後は観る印象が変わってくる。

    あと、私は一時期はユネスコ職員とか学芸員を目指して挫折したクチ(好きな分野が偏りすぎてるのとユネスコ公用語であるフランス語に興味を持てなかった笑)なので、「お仕事小説」としても楽しんだ。
    参考文献として挙げられてた「ミイラにダンスを踊らせて」(←メトロポリタン美術館の館長が赤裸々に美術館経営を語った本)をずっと読みたいと思いつつ読めてなかったことも思い出させてもらった。

    ところでアンリ・ルソーの絵を観ていると、Shaun Tanの絵本『Arrival』を思い出した。ベル・エポックのパリを描いたウディ・アレンの「ミッドナイト・イン・パリ」と合わせてもう一度観て(読んで)みたくなった。

  • 話題作故、大変長い事待った。
    やっと図書館で借りて読む。
    そして、待った甲斐ある面白さだった。

    ルソーといえば、私にとっては哲学者のジャン・ジャック・ルソーである。
    まずはインターネットでルソーの絵画を検索してみる。
    登場する絵画は、芸術には疎い私には「初めまして」の作品ばかり。
    その度に検索。

    内容に引き込まれ、読むペースが速くなってしまうが、
    もったいなくて、あえてゆっくり読む様に心がけた。
    珍しく1冊に1週間の期間をかける。
    読後、まだ雰囲気に浸っていたくて、未読の積本を横目に、手に取る気にならない。


    インターネットで絵画を検索できる、なんて便利な世の中!!と思った。
    が、それは豊かなことか?
    検索すれば、小さい画像で、色合いも異なる絵が無限如く出てくる。
    本当の絵画との出逢いは、やはり本物を見るという当たり前のことだな・・・と本作品を読んで、改めて思う。
    ニューヨークは遠い・・・・

  • 原田マハさんの本は「キネマの神様」に次いで2冊目。この本もかなり良かったです。

    ルソーの絵画をめぐるミステリー小説。

    特にルソーに思い入れはありませんでしたが、読んでいる最中はすっかりルソーのファンになってました。

    原田マハさんが以前勤務していたニューヨーク近代美術館にあるルソーの「夢」が本の表紙の絵になっていて、物語の中でも関わっています。

    読了後、ニューヨーク近代美術館に行ったことがある家内にルソーの「夢」と一緒に写っている家内の写真を見せられ羨ましい限りでした。

    この本の中で謎の本が出てきてその本の中にルソーやピカソが登場してくるのですが、

    全くの余談ですが、「ミステリアス・ピカソ ~天才の秘密」というピカソが絵を描いているのをひたすら撮っているドキュメンタリー映画(1956年制作、アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督)があり、その映画の中でピカソは一度、絵を完成させてその後、その上に絵具を塗って全く違う絵を完成させているのですが、この本の終盤のくだりを読んでいる時にピカソが出ているその映画を思い出しました。

  • 子供の頃、大原美術館に行った事がある。私はそこでエル・グレコに魅せられたのだが…そんな大原美術館から始まり、冒頭は岡山弁での会話なども出てきて、なんだか嬉しかった。そのまま倉敷を舞台に物語が進むのかと思いきや、一気にスイス・バーゼルへ。ルソーの「夢」と似た「夢をみた」の真贋の判定を依頼されると同時に、毎日一章ずつ明かされる「夢をみた」という物語が興味をそそる。
    アンリ・ルソーについて、作品は有名で目にした事はあっても着目した事はなかった。ルソーの面白さ、偉大さをこの本は教えてくれ、読み終わった頃にはすっかりルソーのファンになってしまった。

  • ずっと読みたいと思っていたこの小説。
    やっと読めたのですが、まさかこんなにも面白いとは・・・。興奮がなかなか冷めやらない感じです。
    稀代の画家アンリ・ルソーを巡る謎に包まれた物語で、好奇心を刺激されて続きが気になり、珍しく職場で昼休みにも本に手が伸びてしまったくらい。

    今回初読みの作家である原田マハさんは、自身もキュレーターとして活躍されていた方とのことで、美術界について造詣が深く、それでいて専門的なこともわかりやすく書かれていたため絵画に疎い私でもすんなり読み進めることができました。
    表紙にルソーの「夢」を載せてくれていたのも助かりました。ほかの絵画についても頭でどんな絵かぱっと浮かんだらもっと楽しめただろうけど、「夢」さえわかれば読み進めるのに支障はないです。
    読んでる最中カバーを眺めては、これが「夢」か・・・と何度確かめたことか。

    絵画については詳しくないものの、鑑賞するのは好きです。
    自分の好きな絵を手元に置いて眺めていたい、というコレクターの気持ちもわからないではないです。
    でも、画家に、作品に、どこまでも想いを馳せる登場人物たちのあつい情熱に触れて、これほどまでにか、と身震いしました。
    そんな視点で絵画を眺めたことはなかったけれど、きっと読書についても同じことなんですよね。
    本当に好きだと作家自身にまで興味が沸くし、たとえ世間に評価されていなくても大好きなものは大好きだし、絶対にいいものだと確信してる。

    そう考えると、絵画についても同じように楽しめたら、随分と感性を豊かに自分の引き出しを増やせそう。
    いつか、家に絵画を飾れるような人、それを楽しめる人になりたいです。

    それはさておき、物語としてもものすごく楽しめる小説で、読み終わった後に甘く余韻が残ります。
    図書館で借りて読んだのですが、これはもう一度読みたくなったら今度は買うこと間違いなしです。すごくお勧め。

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楽園のカンヴァスの作品紹介

ニューヨーク近代美術館の学芸員ティム・ブラウンは、スイスの大邸宅でありえない絵を目にしていた。MoMAが所蔵する、素朴派の巨匠アンリ・ルソーの大作『夢』。その名作とほぼ同じ構図、同じタッチの作が目の前にある。持ち主の大富豪は、真贋を正しく判定した者に作品を譲ると宣言、ヒントとして謎の古書を手渡した。好敵手は日本人研究者の早川織絵。リミットは七日間-。ピカソとルソー。二人の天才画家が生涯抱えた秘密が、いま、明かされる。

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