- Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103317517
感想・レビュー・書評
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これは傑作だ。
ルソーに詳しくなくても楽しめるし、今度ルソーに出会う機会があればじっくり対話してみたいと思うようになった。
「夢」「夢を見た」
いつかMoMAにも行かなくては。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
情熱を胸に描き続けた画家ルソーの物語、そして、彼に魅せられ、その情熱に引き寄せられた人たちの物語。
物語は作中作の構成になっているのですが、どちらの物語も、すごく瑞々しく優しく、とても素敵な空気感でした。
滑らかな、絹のような舌触りのドルチェを食べた後のような、胸の奥で感じる満腹感。
伝説のコレクターから、突然突きつけられる、ルソー作品の真贋鑑定依頼。
運命の糸を手繰り寄せそこに集うティムと織絵。
とっても美しい情景です。
ティムの秘密は、そもそも秘密としてあり得ているのか。だって、ねぇ。
それそれ、という感じ。
美術館に行きたくなりました。
今すぐ、あの優しい静寂の中で、カラフルな筆の跡に見つめられたい。
不思議な満腹感と空腹感を覚えて、ため息とともに本を閉じる。
久しぶりにそんな幸せな瞬間を味わうことができました。 -
史実をベースにした美術ミステリー。
アンリ・ルソーの作品『夢をみた』の真贋鑑定とその下に隠されているかもしれないブルーピカソの存在。
ティムと織絵という二人は伝説のコレクター、バイラーに招かれ、ある物語を読んで『夢をみた』の講評をすることに。
この絵を巡っての様々な駆け引きや陰謀。
二人のいる1983年と二人が読む物語でルソーの生きる1900年代前半が交互に描かれる。
二人の推察はもちろん、ルソーのストーリーもとても興味深く楽しく読めた。
結局、ほんとうのところはわからなかったけど、画家の気持ちやもしかすると…という推察で絵の見方が変わるし
美術の奥深さを改めて感じられた作品になりました。
読み応えバッチリです。 -
地方の美術館で一監査員として働いていた織絵の元に、「アンリ・ルソー展」の開催企画の話が舞い込んでくる。その展示会成功の鍵として、ニューヨーク近代美術館(MoMA)が所蔵する『夢』を借りたい。経営陣がMoMAに連絡を取ったところ、チーフ・キュレーターであるティム・ブラウンはその交渉窓口に「オリエ・ハヤカワ」を直々に指定してきた。実は織絵は十数年前にルソー研究の一人者として美術界を騒がせ名を馳せていたその人物であったのだが、ある出来事を機に美術界の一線から退いていた。
舞台は移り、十数年前の“ある出来事”の真相に迫りながら、ティム・ブラウンを主人公に物語は進行していく。
アンリ・ルソー作『夢』―その作品に酷似した彼のもう1つの未発表作品『夢をみた』。ティムと織絵は、『夢をみた』の真贋とその所有権をかけて、7日間対峙することになる。
もともと純粋に絵を見ることは好きだったが、美術小説となると敷居の高さも感じていた。でも冒頭数ページでそれは杞憂だと気付く。ミステリーとしても美術小説としても、純粋な物語として面白い。ルソー作品に魅せられた、様々な立場にいる人物たちの思惑が絡み合い全く先の読めない展開に。
キュレーターとしても活躍され、美術に造詣が深い著者の知識が思う存分に込められた本作は、ルソーや友人ピカソ、『夢』のモデルとして登場しているヤドヴィガに対し、心から愛おしい気持ちにさせてくれる。
全てが複雑に絡み合っているので多くを語れないのが残念ですが、とにかく壮大な物語で読書の素晴らしさに触れられたと感じられる作品。歯車が噛み合い過ぎと思うところもあるが、それを越えて没頭するものがあります。
読後もしばらくその余韻に浸って抜け出せない。手に取って良かった。良作です。 -
絵画には全く知識が無いので、スマホで確認しながら読み進めていきましたが、こんな私でもスッと物語が入ってきてとても読みやすかったです。それに、アートの世界にも少なからず興味が湧いてきました。
恥ずかしながらキュレーターなんて職業も初めて知り、アートの世界もすごく奥深いんだな〜と思いました。
ティムと織絵のルソー研究者としての情熱や2人の間に生まれた絆、長い時間を経ての再会は感動ものでした。
最近涙腺が緩んでいるのか、読み終わった後じんわりと涙が出ていました。
画家の真意なんてものは、いくら研究されても答えは出ないのだろうけど夢がありますよね。とても幸せな読後感でした。 -
ルソーのごとく、ヤドヴィガのごとく、ティムや織絵のごとく、『夢』の世界に引き込まれ、その息吹や匂い、音や感触を感じながら、私も絵の中に入っていた。
読んでいる間は、不思議な世界に入れた時間だった。
ルソーについて、当時の仲間たちや時代について、深く興味を持った。
歴史上の人物ではなく、ルソーもピカソも当時の芸術家たちも、すぐ身近な存在としてそこにいた気がした。
きっとどの時代の人物も、深く知れば知るほど、同じように感じるのだろうと思うと、こういう物語をもっと読みたいと思う。
シヴェルニーの食卓に続いて、原田マハ作品は二冊目。マティスやモネの名前が出てくるだけで何だか嬉しくなった。
とても良い時間を過ごせました♩ -
素敵な映画を1本見終わったような読後感。美術には疎い私でも、すっとその世界に入り込めます。真実を探るべく、登場人物と一緒にルソーの時代にタイムスリップ。彼の描いた森の中をさまよって、ロマンチックなラストシーンへ。
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作者のアートに対する造詣の深さが、ひしひしと伝わってくる本作。この作品はもしやノンフィクションでは?との錯覚すらおぼえてしまうほど。ルソーの思いがやっとヤドヴィカへと伝わった時、圧巻の作品が世に生み出された「夢をみた」。この作品がこの世に実存してくれたなら……と思わず願ってしまった。
誰しもが知るであろうルソーの「夢」。この絵に絵がかれし美しき女「ヤドヴィガ」。現存する「夢」と見間違うほど、うり二つの「夢をみた」をめぐる物語。このお話しの軸となる「7つの物語」とはいったい誰がしたためたのか……
ルソーの作品に寄り添いながら読み進めていくにつれ、登場人物(とともに作者)のルソーへの情熱、それを取り巻く人々のこころの動きが手に取るようにわかるようなそんな一冊。そして、再会できて、良かった♥ -
一枚の絵をめぐる作家と作家を取り巻く人々の物語。
バイラーの正体は最初の方からなんとなく気づいていた。
下にブルーピカソがあろうがなかろうがバイラーはルソーの作品が真作であることを望んでいたのだろうなぁ。愛する妻の絵を破壊されないことと親友であるルソーの絵を守りたいというのが彼の本心だったのだろうと思う。
原田マハの著作を読むのは3作目だが、どの作品も優しさに満ち溢れた作品ばかりだった。