ブータン、これでいいのだ

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103320111

感想・レビュー・書評

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  • ブータンといえば、GNH(国民総幸福量)を掲げる国だということくらいしか知らなかったけれど、Twitterでさんざん「ブーこれ」「ブーこれ」と目にしたので、読んでみようかなと手に取りました。

    ブータン政府の初代首相フェローとして1年間勤務した著者・御手洗瑞子さんの、「ブータン、これでいいのだ」というタイトル通りな視点と、「ブータン、これでいいのか?」な視点とが盛り込まれていておもしろかったです。「幸せの国ブータン」だけに終わらない、愛ある冷静な突っ込みという感じ。

    自信満々で、なにごとも割り切りが早く、仕事の期日を守らなくても平気、失敗は「許す」もの、ストレスかかると逆ギレ……こう書いていくと、そんな人とは仕事したくない……とつい思ってしまうけど、考え方が根っこから違うんだろうなぁ。
    宗教観なんかも関係しているし、明らかに気質が違う気もするし、単純に「日本人もこういうメンタル目指しましょうよ!」てのは無理だろうけど、もっと「これでいいのだ」って自分や周りを認めて、それを外に向かって言ってもいいんじゃないかとは思いました。謙遜は日本人らしい美しさだと思うけど、言霊ってあるから、「私なんてまだまだ」って言ってるより、「これでいいのだ」って言うほうがパワーになりそう。

    いいところも悪いところもあるけれど、「自分さえよければ」ではなく、自分のためには祈らない、家族や親しい友人たちが幸せで一緒にいられることが自分にとっての幸せ、というブータンの人たちの考え方はすごいなと思う。「祈るほど強く願うことがそんな現世の個人的なことだったら、それがうまくいかなかった時、苦しいだろうね」「幸せになろうと思ったらね、自分の幸せを願ってはいけないんだ。自分の幸せを探し出したら、どんどん幸せから遠ざかってしまうよ」って言葉にははっとさせられました。

  • ブータンで金融業を営むのは至難の技だと思った。輪廻転生の精神がいい面・悪い面全てに行きわたっていることを感じさせた。

  • ■解説
    ブータンってみんな幸せそう。現地で公務員として働いたからこそわかる「幸せ」の秘訣。初雪の日はいきなり祝日、仕事は定時までで無理せず残業ゼロ、スケジュール管理は手帳なしで覚えられる範囲まで。だから仕事は遅々として進まないけれど、気にする風もなく、なぜかやたらと自信だけは満々――首相側近を務めた著者が語る、「幸せ」の意味と笑顔のレシピ。問題山積みだけど、ブータン、これでいいんだよね。
    ■感想
    ある雑誌の編集長から、素敵な女性がいると教えてもらったのが、御手洗瑞子さんだった。ブータン首相フェローという職に憧れもあるが、この本を読むと行間からその大変さやジレンマが感じられる。優しい文体でブータン社会を述べつつも、じゃあ日本はどうする?と鋭く課題を突きつけられているような気になる。

  • GNPでなくGNH(Gross National Happiness:国民総幸福量)という概念。それは、設備や環境があるわけでなく、心のあり方が大事になってくる。ブータンは決して夢の国ではない。日本よりも色々不便な部分が沢山ある。しかし、ブータンに住んでる彼らは、みなが「私たちの国っていいでしょ」って言い切れる。
    私も、「日本って最高!」って言える位の心構えになりたい。

    ブータンの考え方の一つが、「幸せを願うなら、自分でなく、周囲の人達の幸せを願わなくてはならない。その人達が幸せになるように、出来るかぎりのことをする。相手を幸せにすることで、自分自身が幸せに慣れる。」という考え方な根づいている。 日本の場合だと絵馬に、受験合格や試合で勝てますようになど、自分のみの幸せを願っている。筆者の言うとおり、そういう意味では、ブータンの人々の幸せゾーンは、日本人よりも広いのだろう。

  • ブータン国王夫妻は被災地の子どもに「ひとりひとりの心の中に人格という龍が住んでいる。それを大きく強く育てよう」と語りかけた。「幸せの国」というキャッチフレーズが独り歩きして、本当のブータン社会のことなど、何も知らなかった。
    環境、社会の構造、歴史・・を知る事で納得すること、理解できることも多い。国のビジョンがしっかりしていること、優秀なリーダーがいることが羨ましいけれど、良い面ばかりではない。幸福という規定にどれだけの人生の豊かな時間が含まれているか、国に対して、そして生活者自身も毅然とした自信のある生活信条があることがステキ。いろいろあっても「ブータン、これでいいのだ」と言い切れる人々のこころの余裕ってとてもいい。

  • ブータンに1年間公務員として滞在した作者のエッセイ。

    ブータンのよい面ばかりではなく、悪い面やこれからの課題も書かれているのがよいな。
    インドや中国との関係も興味深かった。
    ブータン=おとぎの国ではないことがよく分かる。
    でもやっぱり一度行ってみたいな。

  • ブータンにもいいとこ悪いとこがある。それがすべて現れているような本。GNHのために経済成長が進められていることも忘れていは行けない。経済の成長が幸福に繋がるのも宜なるかなである。水力発電を産業として軸にするのは賢いと思った。あとリーダーすげぇ。幸せの範囲の話。

  • 以前からブログを読んでいて気になってた。本になったことでブータン人の考え方や、国としての立ち位置が詳しくわかり、ブータンがもっと身近に感じた。

  • ブータンで暮らした1年間の体験をもとに、ブータンの国やそこで暮らす人々について考察した本。
    実際の体験談だけでなく、一般論だけでもなく、両方が結びついて書かれているので、読んでいて面白いし、説得力がある。
    「8章 お金の話」にて、ブータンが現在バブルであることについて書かれている。現状を、資本主義経済に毒されたと嘆いて終わりにするのではない。根底にはブータン人の、快楽主義、刹那主義の哲学があり、資本主義により突然広がった選択肢に対するブータン人らしい反応である、と考察している。さらに、このバブルに対応するための、筆者なりの提案までなされている。
    今起きている現象だけでなく、その背後にある経緯までも、筋道だって語っている。筆者は、自分の目でしっかり見て、自分の耳でしっかり聞いたことを、自分の頭でしっかり考えられる人なのだろう、とわかる。そんな女性を目指したいと、憧れる。読んでよかった。

    ブータン流の幸福術は、そのまま日本社会に適用すると、不適応をおこしそうだが、柔軟に取捨選択できるといいかもしれない。まだ私の頭の中で、整理がついていないが、印象に残ったのは以下。
    組織モデルとしてのブータンの特徴、1、GNHという、国を運営する上での独自のビジョンを明確に持っている2、グローバルに視野を広げながらも自国の文化を深く理解し国の舵取りができる、驚くほど優秀なリーダーたちがいる 3、国民一人ひとりの「幸せ力」が強い 4、国全体がコミュニティ。
    個人の幸せについては、
    ○幸せゾーンを広くとる(家族・友人、来世)
    →来世は信じてないので、ノーコメント笑。家族、友人の幸せが自分の幸せという視野は、広い…
    ○幸せになりたかったら、自分の幸せを探すのではなく、周囲の人の幸せを探すべき。
    →例えば親の望む進路と、自分の望む進路が異なったとき、自分を押し通すのはわがままなのか?選択した先で、多くの人を幸せにできればいいのか?抽象的な多くの人より、身近の親などを大切にするべきか?
    ○自分の力の及ばない範囲は、「仕方ない」と受け入れる。
    →ブータンの人はさすがにやりすぎだと思うけど笑、範囲をうまく設定できれば、日本社会でも適用可能かも。

  • 戦略コンサル出身の二十代女子が首相フェローの公務員としてブータンに赴任し、等身大の「幸せの国」について綴ったエッセイ。
    国民総幸福量を標榜するブータン人だって逆ギレするし、夜這いもある、実に人間らしい普通の国だ(笑)

    しかし、筆者の「あなたにとっての幸せってどういうこと?」との問いに「家族や周囲の友人が笑顔で幸せそうにしていることさ」とブータン人の皆が答えるくだりは印象深い。
    僕ら日本人が豊かなのに幸福感を感じられないことの答がここにあるから。

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