股間若衆: 男の裸は芸術か

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103321316

感想・レビュー・書評

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  •  現代社会においては逆に規制が厳しいと思われる「猥褻」という概念を裸体彫刻作品の股間部分から(文字通り)切り取ったエッセイ集・・・なのか?
    いや、文化に対する評論とか規制に対する批判を展開するのかと思っていたら「股間表現の多様性」という名の「珍妙な苦肉の策」を紹介する事から始まる。
    その方法、単純に足の位置で隠すことから高度な抽象化・パンツ着用・偶然イチジクの葉がふわりと様々である。

     後半は歴史的経緯や彫刻から一歩踏み込んで写真に出てくる裸体表現についても論じているのだが、全体的な統一感に乏しいと思われたのは三つの独立したエッセイを一冊の本にまとめているからか。
    別に悪くはないのだが彫刻の股間表現についてもっと奥の所まで踏み込むのかと思っていたので肩透かしを喰らった印象だ。

  • いったいどこから、こんな曖昧模糊とした股間表現が生まれてきたのか...その持ち主が一糸まとわずなぜ駅前に立っているのか、通行人の多くはなぜ目を留めようとしないのか、という惹句が、面白いと思った。
    所々の記述や考察は面白い。男性裸体彫刻には理由がいるとか、彫刻自体はメッセージ力が低いので題名に頼るとか、東郷青児の二科展の無茶とか。
    でも最初の命題のもっこりはどこから来たのか、何故駅前にあるのか、なぜ無視されているのかに対する答えは見つからなかった。
    歴史的な経緯は分かったのだが、「何故」これと言うのが曖昧模糊なんである。

  • <目次>
    第1章  股間若衆
    第2章  新股間若衆
    第3章  股間漏洩集
    第4章  股間巡礼

    <内容>
    先に続編の方を読んだので、インパクトには欠けた。最初にダジャレの要素があったようで(「曖昧藻っ糊り」とか。ちなみに「股間若衆」はわかると思いますが、『古今和歌集』。「股間漏洩集」は『和漢朗詠集』…)、でも近代日本画突如、西洋風に「裸はイカン!」となったあたりが語られ、芸術家、特に彫刻家が反発した様がわかる(続編では、黒田清輝の反発の様が克明に語られるが…)。
    逗子市立図書館

  • 公共スペースに設置された女性の裸体彫刻がフェミニストによって糾弾された90年代から下ること20年、ついに男性の裸体彫刻が探求される時がやってきた!
    「新股間若衆」「股間漏洩衆」という章名や「曖昧模っ糊り」というフレーズに脱力しつつ、トンデモ本かと手にとってみれば、どうして、脇目もふらず真剣に美術における男のコカン問題に取り組む本なのでした。西洋からの近代美術輸入とともに始まったヌード問題。しだいに性器と毛に焦点化されていく官憲の規制を逃れるべく、「とろける股間」あり、万有引力を無視する葉っぱあり、謎の物体あり。
    面白いことは面白いんだけど、話題がバラバラでもひとつ突っ込みが足りない。でも要するに、政府の規制に対しては「美術だ」と言って反論しつつ、実は男中心の美術界の中では、女のヌードは無条件に美であることを前提する一方、男性のヌードについてあまり真剣に考察してこなかったんではないかということだよね。戦中にしろ戦後にしろ、力や高邁な理想といったジェンダー化された価値観を負わされすぎてきた男性ヌードを解放してあげたのがゲイたちのエロスのまなざしだったと言ったら、まとめすぎでしょうか?
    美術における男性ヌード論としては、最近の写真家たちの作品まで含めて、コカンにこだわらずに突っ込んだ議論を読みたいところではあるけれど、それは本書の範囲外。たくさんの図版にくわえておまけの「股間巡礼」まで、たいへん楽しめる本ではあります。

  • 初登録のこの本は2/23うろこ会定例会でプレゼンした本です。
    内容が内容だけに想像以上の反響があって驚きました。

  • 曖昧模糊とした股間表現に疑問をいだいた著者の股間巡礼記録と考察。官憲の干渉だったり芸術表現だったり「目のやり場」に困らないような配慮だったり。まじめに歴史を紐解いていると思うのですが、表現や切り方が愉快なので、どうしても「愉快な本」の方向に捉えてしまいます。股間若衆は、このあたりにいそうだな、と思ったら、だいたいいる。今度見つけたら、おそらく曖昧なその模っ糊りがどんな風かきちんと見て、背景を想像してみよう。

  • 男の裸は、いつだって哀しい。手ぶらでは全くさまにならず、結果、円盤投げの円盤に落ち着くという下りは笑った。

  • 異性も同性もみんな気になる股間。

  • (後で書きます)

著者プロフィール

東京大学大学院人文社会系研究科教授/静岡県立美術館館長

「2018年 『動物園巡礼』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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