- Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103322719
作品紹介・あらすじ
二百以上の都市が潰滅し、九百八十万人の被災者、三十三万人の死者を出した本土空襲。瓦礫の平野に佇んだ日本人は、そこから「国のかたち」をどのように作り直したのか-。残された貴重な文献を繙き、東京、仙台、名古屋、広島などの具体例から検証する。
感想・レビュー・書評
-
戦災復興というのは、日本の100以上の都市が、市域のかなりの部分を焼失したところから同時に復興するという、現在では考えられないような事態であったとこに、まず改めて思いをはせざるを得ない。
その中で、特にプランナーが何を考え、どのような形で復興を進めていったのかが、代表的な4都市(仙台、名古屋、広島、東京)の事例を基に描かれている。
戦災復興については、非常に大規模なグランドデザインを描き一気呵成に実現を目指す大風呂敷型と、焼け出された人々や復員者の生活の場の再建を目指す現実主義型の大きく2つの意見があった。
それぞれの都市において、そのいずれが優勢になるかが異なり、その結果が今の都市構造にも受け継がれているということが、本書を読むとよくわかる。
特に、幅員100mの大通り空間の形成は各都市のプランナーによって計画されたが、それが実現したのは、名古屋の2本と広島の1本だけである。
プランナーが何を考え、市民がそれをどう受け止めたのか。このような非常事態であったからこそ、それぞれが真に迫った意見を表出していく中で実現される形が決まっていくという生々しい過程が描かれており、非常に身につまされた。
また、筆者が都市計画の専門家ではないため、都市計画の分野で第一人者とされる各都市のプランナーに対しても、忌憚のない評価をしている点も非常に良かった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
日経新聞の編集委員の井上さんが、わかりやすく、各都市の戦災復興の経緯、実績を説明。
後藤新平とか関東大震災のあとの震災復興の本はよくでているが、戦災復興をわかりやすく説明した本がでたことがうれしい。
また、名古屋とか仙台とか、むしろ政令指定都市レベルで土地区画整理事業が先行していたため、東京のように大規模な中断にならずに、現在の広幅員の街路が整備できたことも丁寧に説明している。
その際の先人の都市計画専門家の努力にも頭がさがる。
その上で、東日本大震災、あるいは首都直下の復興にあたって土地区画整理事業がうまく機能するのかどうか、悩む。
(1)東北の都市などや東京などで、街路の幅員を広げても、増進はないし、時間もかかるだけといわれないか。
(2)震災、戦災のときと違って、厳しい経済の国際競争に曝されているときに、時間がかかる手法よりも早く、産業復興をとげる必要性がでてくるのではないか。
(3)人口減少、都市の縮小という観点からは、都市が将来コンパクトになることを前提にして、核となる部分を買収方式ではやく整備し、その周囲は、グリーンベルトにするなど、都市縮小にあった仕組みが必要ではないか。
もちろん、この本自体には、そんな問題意識はないのだが、ひごろ、悩んでいることが思わず頭に湧いてきた。