かくも水深き不在

著者 :
  • 新潮社
3.24
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本棚登録 : 81
感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103324812

作品紹介・あらすじ

いっぱいに涙を溜めた眼。救いを求める眼。そのとき僕は鬼の眼を見たのだ。闇に咲く光。記憶の底の人影。忌まわしい事件。暗い淵を見つめるそのまなざしの行方は?精神科医・天野不巳彦が遭遇した4つの怪しい物語。真相もまた深い淵の二重写しに…存在の不安を呼び覚ます、鬼才の恐怖譚。

感想・レビュー・書評

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  • 精神科医の天野不巳彦(あまの・ふみひこ)が、彼のもとを訪れた四人の患者たちの身に起こった事件を解き明かす連作短編です。最終章の「舞台劇を成立させるのは人でなく証明である」では、主要な登場人物たちが一堂に会して、天野の推理とその意外な結末が明らかにされます。

    第一章の「鬼ごっこ」は、ホラー小説のような緊迫感の漂う展開に、思わず物語の世界へと引き込まれてしまいます。第二章「怖い映像」と第三章「零点透視の誘拐」も、精神科医が探偵役を務めるということでサスペンス性の強い内容になっており、おもしろく読めました。

    四つの物語が一つにつながるという展開はおもしろいのですが、設定やそれぞれの章の締めくくりの叙述などから、結末のおおまかな方向性は見えていた読者もすくなくないのではないかという気がします。もっとも、ある意味では予定調和的なオチですので、むしろ結末の方向性を示唆しておくことで、ご都合主義的な印象を薄めようとしたところに、著者の手腕を見るべきなのかもしれません。

  • ホラーであり、ミステリでもある、不思議な作品。最後を飾る「舞台劇を成立させるのは人でなく照明である」で物語が一つになる。以下に詳しい感想があります。http://takeshi3017.chu.jp/file6/naiyou6807.html

  • 精神科医が語る話で進んでいくミステリー。ホラーっぽいと言うか怪しい空気が漂っている。
    1・2話は繋がっていると思っていて、3話で離れたと思いきやまた最後に全て繋がってくる。鬼ごっこの最後の辺りが下手なホラーより怖かった。
    装画:林タケ志

  • 最初の『鬼ごっこ』の世界観と文体が見事に融合していて、妖しさに引き込まれました。
    続く短編では繋がりが有るように思うのに、その次では無さそうに思えて混乱しましたが、あの結末ならそれも納得です。
    色々と謎に感じる部分が残っているから軽くもやっとしますが、不思議と読後感は悪くなかった。

  • 精神科医天野のもとに犯罪にかかわる人々がひとりずつ話をしにくるといく展開のミステリー。4話までは毎回途中までは面白く、ラストで意味不明な表現になるのが不満だったが最後の章ですべての意味がわかるようになっている。
    が、最後の章はすべて解決のようでスッキリしない。

  • あるページで唖然となるが、気を取り直して読み進めてみると……明かされた真実に脱力するか感心するか、読み手によってけっこうはっきり分かれそうなタイプの小説ではないかと思う。ホラーやサスペンスタッチの展開は楽しませてもらったが、ありがちでもあるので、過度な期待は禁物かもしれない。

  •  3編目までは興味シンシンで読めたけど、その後がどうもねぇ・・・。
     最後の編ではそれが覆されるかと思ったけど、駄目でした。そして納得いかない結末に残念な気分。。最後に話がつながる短編は大好きなのに、こういうつながり方は好きではないんだと思いました。

  • 天野先生がうまいタイミングで出現し、難問を解決する短篇集だが、あまりにも出来すぎな展開がやや不満だ.

  • うはー、めっちゃ好き。
    竹本氏、なんだかんだでちょいちょいしか読んでへんなあ。
    いずれ全部読みたい。

  • ただのミステリー小説ではありません。
    4つの怪奇事件を精神科医が暴いていき、
    点と点が線でつながる。
    最後はえっ、まさか・・・!という展開。
    おもしろかったー。

  • 一見したところ、ホラーっぽい短編集。記憶の中からじわじわと湧き上がる恐怖が描かれたものばかりです。
    それぞれの物語は単独でも十分に読めます。というよりむしろ、繋がっているような繋がっていないようなとても曖昧な雰囲気なのですが。
    最終話を読むと「なるほど、そうだったのか!」と。ネタ自体はありがちといえばありがちなのですが。これは気づかなかったなあ。

  • 久々に竹本健治をを読んでみた。
    めまいのするような幻想譚とミステリが混ざり合っている感じは、やはり好きです。

  • 精見られたものが鬼になる……。神科医・天野不巳彦が遭遇した四つの怪しい物語に隠された秘密とは……。
    それぞれの恐怖譚と、そこに仕込まれたミステリ的仕掛けが絶妙。特に「零点透視の誘拐」のロジックには唸らされる。竹本健治ならではの、足元がグラグラと崩れ去っていくかのような不安感が味わえる連作短篇集。

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著者プロフィール

竹本健治:
一九五四年兵庫県生れ。佐賀県在住。中井英夫の推薦を受け、大学在学中に『匣の中の失楽』を探偵小説専門誌「幻影城」上で連載。デビュー作となった同書は三大奇書になぞらえ「第四の奇書」と呼ばれた。
ミステリ・SF・ホラーと作風は幅広く、代表作には『囲碁殺人事件』『将棋殺人事件』『トランプ殺人事件』の「ゲーム三部作」をはじめとする天才囲碁棋士・牧場智久を探偵役としたシリーズや、自身を含む実在の作家たちが登場するメタ小説「ウロボロス」シリーズなどがある。近著に大作『闇に用いる力学』。

「2022年 『竹本健治・選 変格ミステリ傑作選【戦後篇Ⅰ】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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