慈雨の音―流転の海〈第6部〉

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著者 : 宮本輝
  • 新潮社 (2011年8月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (413ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103325154

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慈雨の音―流転の海〈第6部〉の感想・レビュー・書評

  • 流転の海シリーズの6部です。
    このシリーズの本は数年に一冊ペースでしか出版されないので、いつも読み始めは前の話がどうだったか忘れてます。
    だから読んでいる内に以前の話を思い出しながら読むという形になりますが、前回の5部は珍しくはっきりとストーリーを覚えてました。

    5部で主人公の熊吾は駐車場の管理人という職を得て、妻の房江は小料理屋で働く。
    それで魔窟の如き「蘭月ビル」に住む熊吾の妹に一人息子の伸二を預ける。
    何故ちゃんと覚えていたかというと、前作のラストが印象的だったからです。
    その「蘭月ビル」に住む、いかにも癖のありそうな美少女が最後に出てきて、その少女の佇まいに海千山千の熊吾ですらゾクッとなる。
    というその場面が強烈に記憶に残っていて、多分次はその少女が熊吾一家に大きく関わると思ったからです。
    でも想像は全く外れてしまいました。
    名前がちょこっと出てくるだけで実際に登場しない。
    肩透かしにあった気分でした。

    毎回、熊吾一家は何かと事件に巻き込まれますが、今回は特に大きな出来事もなく静かな印象を受けました。
    だけどそれは嵐の前の静けさのような気もします。
    今回からまた熊吾は中古車のブローカーという新しい事業を始めます。
    それに伴う新しい事件や人間関係が生まれそうだし、多分例の美少女も後々登場しそうな予感がします。
    とにかく、今回はタイトルの慈雨の如く静かに淡々と流れるお話でした。

    前回は房江さんは我慢強くて賢い人だと思いましたが、それに加えて今回は優しく思いやりのある人だと思いました。
    彼女の唯一の欠点は生家が貧しく教育を受けられなかったという猛烈な劣等感があることですが、長所に比べたらそんなもの、短所とも思えない程度のものだと思います。

  • 尼崎蘭月アパートから舞台が大阪市街地に移り、熊吾一家の生活も豊かになったので安心して読めた。
    学歴コンプレックスを持つ房江が中年になってペン習字の通信教育を始めるくだりがすき。

  • 流転の海の第6部。
    伸仁も中学生になった。体が弱かったのに病院に通って丈夫になってきたようだ。これは、今後が楽しみ。
    逆に父親の熊吾は糖尿病のようで、ちょっと気を付けなくてはという状態。
    父と息子の関係がどうなっていくのだろうか?
    まだまだ続きそうです。
    話が完結したら、また第1部から読み直したい。

  • 著者である宮本輝の自伝的大河小説「流転の海」の第6部。
    明治30年頃愛媛県に生まれた松坂熊吾。
    大阪に出て、自動車部品を中国に輸出する事業で成功を収めるが、
    戦時中の空襲で大阪のビルも神戸の屋敷も失う。
    戦後、大阪に戻り、混乱の続く中、再起を目指し奮闘する。
    50歳にして初めて授かった病弱な息子の信仁を立派に育て上げることが、
    事業の再建と同じほど大事な仕事と思う熊吾。
    そんな父と息子を綴ったお話。

    この第6部「慈雨の雨」は、息子の信仁が中学生になったところから始まる。
    妻の房江と信仁の3人は、知人が経営するモータープールの管理人として雇われ、
    そこに住み込んでいる。
    夫婦は食が細く発育が遅い信仁を案じるが、様々な人との関わりの中でどんどん成長する信仁。
    熊吾は新しく事業を起こす計画を着々と進める。
    そんなふたりをあれやこれやと心配しながら、一切余計なことを言わず、見守る房江。
    皇太子ご成婚、東京オリンピックに湧く日本。
    対外的には、日米安保や在日朝鮮人の帰国等を織り交ぜながら、お話は進んでいく。
    戦前からの知り合いや新しく事業を起こすにあたり知り合った人々、
    一時信仁を住まわせていた朝鮮人が住むアパートの人々との関係が、
    信仁の成長に欠かせないもので、人間の持つ厭らしさ・感情の機微等を知っていく。

    第1部の「流転の海」が発売されたのは20年前。
    「地の星」「血脈の火」「天の夜曲」「花の回廊」と続き、やっとこの第6部まで来た。
    20年間、何度も読み返してきた大好きな小説。
    主人公の熊吾のキャラの魅力はもちろんだけど、妻房江の感情はとても理解でき、
    私の気持ちを代弁してくれもする。
    何より作者宮本輝自身である信仁の成長を私まで見守っている気になってくるのだ。
    お話には戦後の時代を象徴する事柄が含まれているので、歴史的背景も勉強できる。
    ああ、早く続きが読みたい!

  • 大好きなシリーズ、大ファンの登場人物。
    それゆえに、ゆっくりと凋落してゆく過程がつらい。
    読んでいて、落ち着かなくさせられる。
    いつものようなアフォリズムに感嘆するというよりも、
    人生の後半に焦れる主人公の気持ちに、哀しく共感してしまう。
    そんな読後感。
    次回作が待たれるけれど、少しつらい想いもある。

  • 9月6日~12日
    皇太子御成婚や日米安保、東京オリンピックのニュースに沸く昭和三四年、松坂熊吾の駐車場経営は軌道に乗り、新事業に手を広げていく。妻房江も日々の暮らしに明るい楽しみを見出し、中学生になった息子伸仁は思春期を迎える。かたや北朝鮮へ帰還する人々との別れがあり、戦後より数々の因縁があった海老原太一の意外な報せが届く。大阪の町に静かな雨が降る―。人は真摯に生きるとき、諍いの刃を受ける。しかし己れが春の風となった微笑めば、相手は夏の雨となって訪れ、花を潤す。戦後の時代相を背景に、作者自らの“父と子”を描くライフワーク第六部、大阪・隆盛編。

  • ずっと読み続けている流転の海、
    熊吾一家がまたわたしの心の中に住みついてしまった感じ
    熊吾の力強さがあまり感じられなくなってきたことに淋しくなり
    熊吾と房江の間に少しづつ溝を感じてきて、悲しくなった
    また、たくさんの大切な言葉に「はっ」とさせられたり
    涙したり、温かい気持ちになったり
    たくさんの付箋がついた本を、大事に大事に再読しています
    あと3部、早く読みたいけど、終わるのがこわい
    いつまでも続いてほしい、素晴らしい小説です

  • 超長編「流転の海」がくらしの一部になってしまった
    それぞれの時代で ここに自分の暮らしも重ねて読んでいる

    熊吾・伸仁・房江 他登場人物全ての動きが自然で
    全員が宮本輝の身の回りに実在した人物に思える

    言葉使いもこの本の楽しみのひとつ
    テレビに毒されていない純粋の大阪弁・伊予弁が魅力的

    宮本輝さん 自叙伝のつもりで書いている?

  • 自分の中では
    もうどういう流れだったか曖昧な流転の海シリーズ。
    でもイメージが変わらないのが熊吾。
    なんか勝手、だけど義理堅い。わがまま。
    知識欲が深い。乱暴者。裏を知っててってカンジ。
    房江さんってどう絡んでったっけ…。
    伸仁ももう少年やなぁ。

    熊吾の生き方をみてると、
    この時代は生きるのが大変なんだろなって感じるし、
    と同時に疲れる。いつも上ばっか目指してるカンジが。
    そんなん熊吾にちょっと飽きてきたのかもしんない。

  • 人間の縁や性を強く感じます。今後の展開が、とても気になります。

  • やっと読み終わりました!長かった~ここまで長いお話かくのすごいなぁ。

  • 第5部を読んでから、だいぶ経っているので、これまでの話を思い出しながら読みました。面白かったです。まだ続きますよね?

  • 慈雨の音 宮本輝(著)  流転の海 第六部

    熊吾は モータープールの管理人となり
    平穏な 日々を おくった。
    そして、中古車販売の 仕事を 少しづつするようになった。
    慈悲の雨 
    慈雨 という言葉が 沁みるような 静かな物語。

    因縁の人々が 多くは死んでいく。
    ヨネ が 死んで ムメばあちゃんも死んだ。 
    美恵 と 正澄 も 丸尾に引き取られた。
    麻衣子は大きな転機を迎える。

    蘭月ビルは 朝鮮半島の二つの国の争いが
    およんで、北朝鮮に かえる 人がでてきた。
    香根は おさなくして死んだ。
    月村敏夫も 光子も北朝鮮に行くと言う。

    熊吾の気にしていた 海老原太一は 国会議員に出馬声明したが
    自殺をしてしまうことに。
    何か,あっけないのである。

    伸仁は 小学生から 中学生へ。
    小さなで虚弱な身体が 小谷医師の治療により
    しっかりした 身体に。
    鳩の糞が落下したり,花火で目の付近を直撃したが 失明せず
    琉金、犬、鳩の 世話を焼く。

    これから、伸仁が 思春期を迎える。
    今までの物語では 一番 しずかだった。
    熊吾も 色気が抜けた。
    なにか それが物足りなくもある。 

  • やっぱりモータープールの管理人だけでは終わらなかったな。伸仁の身体も強くなってよかった。熊吾の脚もどうなるかと思ったが、無事でよかった。どちらも小谷医師のおかげだな。海老原太一は本当に自殺?ケンが絡んでいるのかと思ったが、違うようだ。房江の劣等感はかわいそうだ。いい妻であり、お母さんなんだからそれで十分なのに。この一家はこれからも逞しく生きて行くんだろうな。

  • みなさん書いていますが、前作までが思い出せないッ!
    こんなに長い期間この物語を創作し続けることがスゴイ。
    作者の頭のなかには熊吾一家が実在しるんだよね。
    いつか全部通して読むことができるだろうか…。

  • 終わっちゃってさみしい。ぐいぐい引き込まれたすばらしいシリーズでした。

  • 流転の海の第六部 松坂龍吾と房江の大阪福島での日常 1960年代の関西という世界を覗き込む面白さはあるがやはりシリーズを読まないとイマイチ

  • 2012年12月西宮図書館

  • いい長編小説に出逢うと
    いい人生を送れるような気がする
    日々の生活の中で
    その小説の中の人物達が
    寄り添ってくれているような気がする

    宮本輝さん と
    同時期に 生きていることの
    喜びを感じている

  • 実の父を筆者が描く壮大なる人間大河小説の流転の海シリーズ六作目。主人公松阪熊吾が戦前大阪にて自動車部品の商売で成功をおさめた頃からシリーズは始まる。事業家というよりは山師。成功者にありがちな豪放磊落な面と緻密な面を持ち合わせ時代を生き抜く。人間としての魅力を一瞬にしてみせる理知的な部分として時に織り混ぜる。 本編は敗戦から15年たった急激な変化の時代の渦に巻き込まれながらも慈しみの雨に助けられる一家の様が丹念に描かれている。このころの記憶が筆者に鮮明に残っているからかなのか。それにしても20年以上かけて書き続ける情熱は感嘆です。

  • 流転の海シリーズ第6巻です。
    これまでとは違って全体としては穏やかな印象ですが、多くの人間の死が描かれ、病魔も熊吾を狙っている感じで不気味でした。
    その分伸ちゃんが元気でね。
    房江も麻衣子も以外に図太くたくましいし。
    世代交代を感じました・・・

    海老原太一と熊吾の対決シーンを予想(期待)していたので、自殺する展開には驚きました。
    が、太一の自殺は熊吾のせいなのに、彼がそう受け止めていないところに違和感を感じた!
    なぜ?
    熊吾はいつでも太一には理不尽だと思う。

  • やっぱり熊吾、房江、伸二の、この家族を愛して止まない。自分が生まれる年までもう少しと言う時代設定で、知るはずは無いのですが、いろんな意味で家族、取り巻く人々との関わり方など自分の記憶の原風景に通ずるのです。宮本輝さんの小説で『春の夢』ってのが大好きなのですが、何となく時間軸がつながってゆく予感が。宮本輝さんが並外れた感性をお持ちの方だとして、だから小説家になられたのだとして、その感性はこんな慈雨に育まれたのだなと納得してしまうのです。続きが読みたいような、怖いようなの第六作でした。仮に熊吾と言う人がある時代を生きたのだとして、ご本人は本当にこの物語を喜んでいるでしょうね。「私は夫々の雨を決して忘れない。」 読ませていただいた私も忘れません。

  • 自分の祖父と同じ時代を生きた人間が主人公の作品だけれど、私にとってはとても惹きつけられる作品です。

    最後の幽霊騒動の部分には笑ってしまいました。あの松坂熊吾も、声を上げて驚くことがあるのかと。

    作中、房江が熊吾の「人間は必ずいつかは死ぬんじゃ」という言葉に、戦場に身を置いたことのある人の死生観とはこういうものなのだろうかと、思いを巡らせる場面がありますが、私自身も少し想像しがたいというか、実感することができない価値観です。
    また、亀井周一郎が自身の命の間際にいたって、なぜあの戦場で死んだのがとなりにいた大村で、自分ではなかったのかと自身の過去を述懐する場面もあります。若いとき、ごく身近な、自身と変わらない若者の死を見ていると、なぜ自分がこうして生きているのか、そう考えずにはいられないくなるのは、なんとなくわかるような気がしますが・・・。

    このシリーズはすごく好きなのですが、感想を書くのが難しいです。

  • やはりこのシリーズ、面白いです。
    熊吾の短気、人情、冷静さ、先見性、人柄。
    そして歳を取った・・・
    いろんな意味でいいですね~
    大将!!

    つくづく流転の海、いいですね。と感じます。
    長編ですけど、地道に読んで
    いろいろな物を味わえる物語ですね。
    まだまだ若輩者ですが人生の機微を少しでも感じられる気がする
    と思ってしまいます。

    息子のノブちゃんに奥さんの房江さんもいいですわ~

    このお話、心が温まるし、おのれもやるぞ~なんて
    気持ちにさせてくれるっす。

    次も楽しみです。

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慈雨の音―流転の海〈第6部〉の作品紹介

皇太子御成婚や日米安保、東京オリンピックのニュースに沸く昭和三四年、松坂熊吾の駐車場経営は軌道に乗り、新事業に手を広げていく。妻房江も日々の暮らしに明るい楽しみを見出し、中学生になった息子伸仁は思春期を迎える。かたや北朝鮮へ帰還する人々との別れがあり、戦後より数々の因縁があった海老原太一の意外な報せが届く。大阪の町に静かな雨が降る-。人は真摯に生きるとき、諍いの刃を受ける。しかし己れが春の風となった微笑めば、相手は夏の雨となって訪れ、花を潤す。戦後の時代相を背景に、作者自らの"父と子"を描くライフワーク第六部、大阪・隆盛編。

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