流転の海 第9部 野の春

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103325192

作品紹介・あらすじ

執筆37年、シリーズ累計230万部の大作「流転の海」、第九部でついに完結。自らの父をモデルにした松坂熊吾の波瀾の人生を、戦後日本を背景に描く自伝的大河小説「流転の海」。昭和四十二年、熊吾が五十歳で授かった息子・伸仁は二十歳の誕生日を迎える。しかし熊吾の人生の最期には、何が待ち受けていたのか。妻の房江は、伸仁はどう生きていくのか。幸せとは、宿命とは何だろうか――。感動の最終幕へ。

感想・レビュー・書評

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  • 著者、宮本輝さんの作品、ブクログ登録は10冊目になります。

    宮本輝さん、どのような方か、ウィキペディアで再確認しておきます。

    宮本 輝(みやもと てる、1947年(昭和22年)3月6日 - )は、日本の小説家。本名は宮本正仁。兵庫県神戸市に生まれる。後、愛媛県、大阪府、富山県に転居。関西大倉中学校・高等学校、追手門学院大学文学部卒業。

    1947年(昭和22年)、自動車部品を扱う事業を手掛けていた宮本熊市の長男として生まれる。

    今回手にしたのは、著者の実父を主人公にした、自伝的な小説になります。
    全9巻という、著者のライフワーク的な作品と言われています。
    ようやく、本日、最終第9巻のレビューを投稿します。
    第1巻のレビュー投稿が2018年6月9日なので、最終巻に至るまで、4年以上かかってしまいました。

    で、本作(流転の海 第九部)の内容は、次のとおり。(コピペです)

    執筆37年、シリーズ累計230万部の大作「流転の海」、第九部でついに完結。自らの父をモデルにした松坂熊吾の波瀾の人生を、戦後日本を背景に描く自伝的大河小説「流転の海」。昭和四十二年、熊吾が五十歳で授かった息子・伸仁は二十歳の誕生日を迎える。しかし熊吾の人生の最期には、何が待ち受けていたのか。妻の房江は、伸仁はどう生きていくのか。幸せとは、宿命とは何だろうか――。感動の最終幕へ。


    ●2023年5月8日、追記。

    昨日の聖教新聞に、著者のインタビュー記事が載っていた。
    本作の登場人物は、全9巻を通じて、1200人を超えるそうです。

  • たったいま読み終わり、まだ滂沱の涙が止まらない。敬愛すべき作家の37年にも渡る作品の最後の一行が終わってしまった。虚脱感と、別れの涙だ。「流転の海」。最後の巻のタイトルは「野の春」。まだ10代で読み始めた物語は、今では、主人公の熊吾がたった一人の息子、伸仁を得た50歳という年齢さえ超えてしまった。この子が20歳のなるまでは何としても生きたいと誓った歳だ。そして、願い通り成人した息子に、熊吾はなんと、自分でも後で歯ぎしりする様な酷い言葉をぶつけてしまう。そして、それを償う機会はもうない。あれほど手塩にかけて、生きる目的でさえあった息子なのに。人生とは、いつまでも、そういうものであり続けるのか。この本からもらった言葉の数々は、もう数え切れないけれど、それはいつも、人間の力も弱さも、優しさも酷さも、すべてあった。宿命というもの。抗えないもの。大切なもの。強さと脆さ。もう1度、通して読み直したら、きっとまたたくさんの力を貰えるに違いない。本は力だとあらためて思わせてくれる、まさに珠玉の作品。

  • 父が亡くなった朝、穏やかな父の顔を目にした途端、涙が止まらなかったことを思い出しました。

  • 二十歳の頃に初めて「流転の海」を読んでから、毎回毎回楽しみにしていたシリーズが終わってしまった。自分にとっては30年の年月が流れ、病弱だった伸仁は二十歳になった。
    こんなにも長い間見つめ続けた小説は他にない。30年も楽しませてくれた作者に感謝したい。

  • 戦後を生きた人々の、「ひとりひとりの無名の人間のなかの壮大な生病老死の劇」(著者あとがき)を描いた「流転の海」シリーズ最終巻。

    37年に及ぶ執筆期間を、著者と共に生きてこられた読者の方々にも敬意を表したい。

    ホンギの台詞「私は大将と話していると、たっとばれているという気がします。」熊吾の魅力は、そこなんじゃないかと思う。
    熊吾の蒔いた種があちこちで芽を出している。それなのに本人は...とラスト呆然としたが、それが熊吾らしいのかな。

    改めて表紙を眺める。
    房江さんの目に写る「いつもいつも春だけの野」。
    たくさんの間違いと、たくさんの後悔がある。宿命という自分の中の「手強い敵」もある。
    そういうものと対峙しながら、熊吾の「なにがどうなろうと、たいしたことはあらせん」という声に励まされて、読者はそれぞれの生を生きていく。

    榎俊幸氏の素敵な装画。

  • 流転の海第9部にして最終巻。37年に渡って書き続けられた小説は幕を閉じた。
    正直なところ、こちらの記憶力が怪しくなっていて、総出演といった趣すらある登場人物や、彼らにまつわるエピソードはあまり覚えていなかった。でもまあ、彼らと松坂一家との間に生まれた絆は伝わってきた。そして……熊吾さんの、あまりに寂しい終わり方に、涙が止まらなかった。
    できれば、最初から全部読み直したい。

  • 終わってしまった。
    感無量。言葉が見つかりません。
    流転の海を読むといつも地に足をつけて生きて行かなければと自分を鼓舞する力をもらえていた。今すごい精神的に落ちていて、このシリーズも終わってしまったことでなんか自分がこの先頑張り続けられるか不安でいっぱいです。
    典型的ないい人なんて評価されて私の人生なんなんだろうと思う。色んな人の頑張る生き様を読んだのになんて弱い私…。

  • 著者のワイフワーク、大長編の流転の海が”野の春”をもって完結。
    何年かに一冊出版されるこのシリーズを楽しみにそして心して読んだ小説。多少の感慨をもって読了。
    熊吾の末路を知ってるだけに糖尿病が悪化していくのが切なかった。
    倒れてからそう長患いせずに逝ったのが救い。
    倒れる間際まで博美の行末のこと、木俣のチョコレート製造を軌道に乗せることを考え、根っからの才長けたプロデューサーだったんだろうな。人情にも厚く。
    そんな父親がなんで精神病院で最期を迎えなければならなかったのか、ずっと気になっていたと、その病室に一歩足を踏み入れた瞬間、いつか自分はこのことを書かなくてはいけないと何かのインタビューで言っていた。
    この父親なくして作家”宮本輝”は誕生しなかっただろう。
    熊吾が二十歳の息子に”お前は他の誰にもない秀でたものがあると思ってきたが、それは俺の思いすごしだった”と放つシーン。
    これを言われた著者はショックだったろうな。
    でも熊吾が見立てたとおり、息子には格別な才能があったことを天国で見届けているだろうか。

    著者の奥さんとなるべき女性も(冴子さん)登場。
    熊吾編は完結したけど、冴子さんとの恋愛、結婚、
    パニック障害を経て作家になるまでのノブ編(自叙伝)が読みたい。

  • 37年間本当にお疲れ様でした。ライブで読ませて頂いたこと。松坂熊吾さんの息遣いを身近に感ずる時間を過ごせたことに感謝しています。ありがとうございました。

  • 20代の頃、夫におススメされて読み始めた本作。ついに最終巻を迎えました。

    本巻では私自身が松坂熊吾の最期を看取ったような気持ちになり、20年以上読み続けてきた物語が完結したんだなあ、と今は感無量です。
    読み終えるのがもったいなくて、感慨深過ぎて、かなりゆっくり読んでしまった(笑)。

    主人公の熊吾は、戦中も、戦後の混乱の中も逞しく生き抜き、その過程で得たと思われる自身の哲学を柱にして多くの人と接していきます。
    周辺からの評価は人徳者で情が厚く、商才もあってエネルギッシュ。
    こんなに素晴らしい人間でありながら、一方で脇が甘く、何度も使いこみをされ、何度も会社を倒産させ、何度も浮気をし、自分の健康管理も疎か。
    妻の房江にはDVを繰り返し、最愛の息子には人生最大の失言をする・・・
    羽振りがよく大金持ちだった頃の面影はなく、最後は事業を縮小し借金をかかえ、たいして好きでもない愛人宅の借家で暮らし、持病が悪化していく。
    そして最期は精神病院で迎えなければならず、ひっそりとあっけなく旅立ってゆく・・・

    たくさんの人に慕われながら、本当に親しい人たちに見送ってもらえたことで清々しい気持ちになったとはいえ、今までの経歴を考えるとこの最期はなんだかさみしかったです。
    人の一生って何なんだろうなと、思わずにはいられません。

    一方で、妻の房江の変貌ぶりには驚愕さえ覚えます。
    あんなに儚げだった彼女が、苦労を乗り越え、自ら仕事を取り仕切りながら生き生きと働く姿は1巻では想像できませんでしたね。
    やっぱり人の一生ってわからないー

    願わくはノブちゃんが幸せな人生を・・・と思ったけど、ノブちゃんは著者自身でしたね。
    宮本輝さん、お父様からのコトバを上手に昇華して、私を揺さぶる素晴らしい作品をありがとうございました!
    これからも応援しています。

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著者プロフィール

1947年兵庫生まれ。追手門学院大学文学部卒。「泥の河」で第13回太宰治賞を受賞し、デビュー。「蛍川」で第78回芥川龍之介賞、「優俊」で吉川英治文学賞を、歴代最年少で受賞する。以後「花の降る午後」「草原の椅子」など、数々の作品を執筆する傍ら、芥川賞の選考委員も務める。2000年には紫綬勲章を受章。

「2018年 『螢川』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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