- Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103325420
作品紹介・あらすじ
大人の男は、なかなか泣かない。では、なぜ下田保幸(47) は、ひとりで涙を流しているのか? 元、いや現役のクラリネット奏者、年収はパート並だが狭小住宅所有。スーパーの安売りと朝食海賊が数少ない楽しみで、一心同体だったはずのクラリネットに触ることはほとんどない。でも――。その夜の警察からの電話が彼の記憶を揺さぶる。もしかして――。すべてをあきらめていた男が、もう一度人生を取り戻すまで。その一年間の全記録。
感想・レビュー・書評
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ザ・小野寺史宜さんな作品
若干のスパイスはあったりするかも
今作は大きな波が立ち上がりそうな気配をところどころに匂わせつつも平常運転
そこがにくい
そこが楽しい
そこがなんかむずがゆい
でもそれがいいのだ
主人公が週に一回通うファミレスの朝食バイキング
お互いに見知った顔で目線を交わしたりするが特に話したりはしない
なにかのきっかけで話をしたとしてもその後じゃあ一緒に食事をとはならないそれぞれの席に戻っていく
まさに小野寺史宜さんと読者の距離感
のような気がする
でも小野寺史宜さんの物語に登場する人たちはちょっとだけ動いてみる
ちょっとだけ前に踏み出してみる
横にずれてみる場合もある
とんでもない結末にはならない
んでもちょっとだけ幸せな結末になる
それでいいのだ
それがいいのだ詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
地味な生き方を書かせたら天下一品と思っています。本屋大賞で大健闘した「ひと」、最新作「ライフ」も地味な生活を描き続けて少しのアップダウンで話が終わる本でしたが非常に面白いし、胸の中が温かくなる佳作であります。
本書は食パンでちくわを挟んで食べる描写が何度も出てくる位、じみーな日常を繰り返すものの、ミュージシャンが山盛り出てくる音楽話なので実際は派手な話なんだと思います。でも彼が書くとどこか牧歌的です。
音楽興味無い人は面白いかどうか判断付きませんが、音楽的な部分が濃厚なのでミュージシャン的な視点で読むととても面白く読めます。
牧歌的とはいっても、出会いや別れ、過去との再会、恋愛色々バランス良い話で彼の本としては起伏に富んでいます。でも不思議な事に彼の本は起伏無くてもなんだか面白いんです。 -
自ら「富めないもの」と言っていてなんとなく静かな生活を送っている下田保幸が 音矢の出現で変わっていく
主人公をクラリネット吹きにするあたりがなかなかマニアック。クラリネット吹きを6年やっていた自分もこちらよりか。
前半淡々と、後半にグッと惹きつけられた感じ。
「人には必ず一つは大切なものがある。それだけは絶対に守るべきだ」
ちくわはやってみる気は…ないかな 笑 -
小野寺離れというか、最近積極的に手を出さなくなった作家さん。図書館でたまたま目に入って読むことにしたのですが、これがなかなか良く。
主人公は中年のディキシーランド・ジャスのクラリネット奏者。バンドは解散し、音楽教室の教師として無気力に細々と暮らしている。そこに伸び盛りのギタリストである昔の彼女の息子が現れて・・・という話。
ディキシーランド・ジャスには興味もないけど、コンサートの雰囲気などはすごく伝わってきます。全体的には大きなうねりは無く、むしろ淡々と綴られる物語~如何にも小野寺さんらしい~なのだけど、いつの間にやら引き込まれます。設定上の無理もあるのだけれど、それがあまり気になりません。
世の中の片隅に生きる中年男の、どこか爽やかな再生の物語です。 -
若い頃の希望と情熱を忘れて惰性で生きる中年男の再生を描いたヒューマンドラマ。
* * * * *
・ 少し(かなり?)浮き世離れした主人公。
・ みつば、四葉といった東京郊外の(架空の)
町。
・ 人物や物品、店舗等、他作品と共通する小
道具。
・ 人との縁やつながりが広がり人生が転がり
出す。
という小野寺流の定石を使った作品でありながら、終盤に息もつかせぬ展開を持ってきたところが新鮮だった。
それにしてもかつての縁が何十年後かに結実する様の描写は見事で、小野寺さんのストーリーテラーぶりに改めてヤラれてしまいました。 -
<楽>
なんだ小野寺史宣は音楽も遣るのか。この本はまさにその音楽で一杯にあふれている。かく云う僕も少しは音楽を遣る。まああれだギターも弾いて歌もうたうサラリーマン技術屋さん って感じかな。なので小野寺には今まで以上に親近感を感じてしまった。僕が感じるだけで向こうはそんなこたぁ知っちゃいないだろうがなんか嬉しい。
あ,またもやまともな感想ではなさそうな様子だ。こりゃすまぬ事になるかもしれない。
ところで僕の知人に,フォークソング系の弾き語りを演るのだけれどクラリネットもそのステージで吹くミュージシャンがいる。彼曰く「ギター弾き語り演奏の途中で遣るクラリネットは飛び道具ですから!」 公共交通機関で旅をしながらライブ活動をする彼は荷物になるのにアコースティックギターやその他器材に加えて必ずクラリネットを持参する。僕等はそのクラリネットの演奏がとても楽しみなのである。
本を読みながら紙面に縦に印刷されたジャズの名曲 ”Do you know what it means to miss New Orleans?” をYouTubeで探して聴いて涙した。そういう具合に思いついたらすぐに聴きたい曲が聴けるとはなんていい時代なんだ。
でさてこの後いつもの僕ならこの本の値段の話を したり顔 で書くのだが今回はやめておこう。なんだか小野寺が そういう話はかなりリアルなのでやめてくれ!と云っている様な気がしたから。再びすまぬ。 -
最初の1ページ目で、惹かれました。どうして、47歳の男が泣いているのか?途中で、少しだらけるような気がするのですが、最後の20ページあたりから、若干、予定調和的ではありますが、そうなのかと思わせます。主人公よりも10歳も年上で、主人公以上に、くすぶっている自分もなんとかしなくてはと考えました。
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クラリネット吹きの男。
若い頃のようにがむしゃらに走ることはできないだろうが、歳を重ねたからこそ出来ることは増えたのではないか。
最期の教えを守っているのは分かるが、もう少し周囲とうまくやっていかなければ何度も繰り返すだろうな。 -
音楽、夜、バンドってやっぱり合うなぁ。どのジャンルでも壁を越えれる人が近くにいると自信無くしちゃいますよね。
結構、好きな本です -
クラリネット。久しぶりにその名前を聞いた。ジャズでも使われているのだな。 食生活の書きぶりが凄い