ひらいて

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著者 : 綿矢りさ
  • 新潮社 (2012年7月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (168ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103326212

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ひらいての感想・レビュー・書評

  • これが綿矢りさか!
    いいのか悪いのかは別にして勢いが半端なかった。
    中盤からは疾走感が溢れて一気に読んだ。
    エキセントリックな主人公と言い、予想を覆す展開と言い、いい意味で裏切られた感じ。
    でもこれって純文学?
    純文学とも読めるけど笑っちゃう感じが少女漫画みたいで。

    ストーリーや構成は他の作家では味わえない独特な感じもあって、またそれぞれの登場人物の個性の描写が冴えわたってこの作家の才能を感じさせる。
    ただ、ちょっとレトリックに凝り過ぎてないだろうか。
    あまりにもしつこくて読み進めるのにげんなりする。
    話が展開し始め勢いがついてくると気にならないし、会話の部分の言葉の選び方は文句をつけようがない。
    ただちょっと主人公の心情の比喩がしつこくて。
    シンプルに書いたらもっと良くなるだろうに。
    この辺は好みの問題だろうけど・・・。

    高校生特有の傲慢さやナイーブさ、大人になる一歩手前の純粋な心が残っている感覚。
    これをナイフのように鋭く描く綿矢さんはやはりすごい。
    これからどんな作家になって行くのか非常に楽しみ。
    これからも追いかけて行きたい作家になった。

  • 高校3年生の愛は、目立たないクラスメイト・西村たとえに恋をしている。
    話すらうまくいかない日々。ある夜、愛は夜中の学校に忍びこみ、彼の手紙を盗み読み、彼には同級生の美雪という恋人がいることを知る。
    彼に近づくために、美雪に近づき、友達になった愛だったが…。

    この主人公も暴走していた。
    でも、「かわいそうだね?」でのコメディのような暴走ではなく、まっすぐ盲目的に、狂気さえはらんだ暴走ぶり。愛は台風みたいな子だ。

    結婚式でよく耳にする、聖書の有名な一節。

     愛は忍耐強い。愛は情け深い。ねたまない。愛は自慢せず、高ぶらない。
     礼を失せず、自分の利益を求めず、いらだたず、恨みを抱かない。
     不義を喜ばず、真実を喜ぶ。
     すべてを忍び、すべてを信じ、すべてを望み、すべてに耐える。

    そんな「愛」の名前を持つ主人公。
    でも恋と愛は根源的に違うんだなと思った。
    恋はいらいらしたり舞い上がったり、めまぐるしく揺れ動くし、直情的で。
    相手よりも自分の気持ちが優先で,身勝手で、盲目的で、嫉妬して。
    甘酸っぱい恋もある。うきうき華やかな恋もある。
    でも恋とは、一皮めくれば、そこにあるのは生々しい激情。
    相手に好かれたい、振り向かせたいという気持ちと表裏で、相手を傷つけたい、壊したいと熱望する。
    器用に立ち回れて男女ともに友達がいて、大学を推薦ももらい、大学でそこそこの男を見つけて卒業後に結婚するのが理想の生き方だったのに。
    醜態だ、みじめだと思いながらも、もう自分では止めることはできない。

    “今しかこの恋の真の価値は分からない。人は忘れる生き物だと、だからこそ生きていられると知っていても、身体じゅうに刻みこみたい。一生の一度の恋をして、そして失った時点で自分の稼働も終わりにしてしまいたい。二度と、他の人を、同じように愛したくなんかない。”

    荒くて粗い。絶対自分だったらこんなことしないけれど、でも本当に感情の赴くままに動いたら、こうなるのかもしれないなんて、妙な納得をしてしまった。

  • ──心を「ひらいて」、からだを「ひらいて」
    過剰なまでの自意識と欲望は、いつか無意識という名に変わる。

    註:新潮5月号でこの作品を読んでのレビューです。
    それにしても、雑誌掲載から僅か2ヶ月で単行本になるなんて。

    「ひらいて」というタイトルを聞いたとき、ふと官能的な響きに聞こえたのは何故だろう。
    自分でも不思議だ。ぼんやりと淫靡なイメージが頭に浮かんだのだ。
    綿矢りさの小説だというのに……。

    それにしても、やはり綿矢りさはすごい。

    自意識の塊のような女子高生が、同級生の男の子に寄せる秘かな思い。
    思い描くことは、ある意味ハチャメチャで、自分勝手な妄想世界だけでの苦しみと、それとは真逆な破天荒さが入り混じった意識の塊が肉体を作り上げているような主人公。
    その意識の表現が素晴らしい。まさに綿矢節である。
    言葉の一つ一つに無駄がない。心に染み渡ってくる。
    かと思えば、思わず爆笑したくなるような表現が突然出現。
    本当にこの人の頭の中はどうなっているのだろう、一度脳みその中を覗いてみたいものだ。
    そのうえこの作品は意識だけではなく、主人公の行動までもが驚くべき方向へ向かう。
    「蹴りたい背中」では行動にまで及ばなかったが、この作品は違う。もっと進化した意識。
    片思いの男に振られた腹いせに、その彼女と……。
    ──かかってきなさい、気分は博打女郎だ。
    という表現は彼女の何の作品だったろうか。
    まさに怖いものなし。
    綿矢りさ、長年の苦しみを乗り越えて、書きたいように書いた作品だと思う。

    途中で「まさかねえ……」と読み進めたら、そのまままっしぐらに突き進んで行った主人公の行動には驚いたが、それもとりたてて小説の流れとしては不自然ではない。
    合間合間に挟みこまれた独特の表現やたくみな比喩も相変わらずだし、シリアスな場面であるにもかかわらず、時として吹き出しそうな笑いを誘う表現もあったりと、まさに小説を読む醍醐味を思う存分感じさせてくれる作品。

    この作品のテーマは“愛”なのでしょうね、やはり。主人公の名前も愛なのだから。
    その愛は、彼女の場合、いつも途轍もなくいびつな形で表現される。
    「蹴りたい背中」然り、「勝手にふるえてろ」また然りだ。そして、この「ひらいて」でも。
    綿矢さんは登場人物のネーミングも秀逸だ。「たとえ」君とか、普通思い浮かばん。

    ストーリー的に、核心の部分に少しでも触れるとネタバレになり、この小説の面白さが半減すると思うので、この程度までにしておきます。

    とにかく、面白い小説を読ませてもらった、という読後感。
    最後にお約束の、この「ひらいて」に出てくる綿矢りさ『名文・名表現・名比喩集』を載せておきます。
    美しい文章も、官能的な描写も、笑える表現も、すごいですわ、やはり、この人。
    あんな可愛い清楚な顔をしてるのに。
    講談社で出会った生綿矢さんの顔を思い出しながら読んでいました。

    1. どんなものでも丁寧に扱う、彼のゆったりした手の所作。付き合う人も、あんな風に大切に扱うのだろうか。
    2. ぬるい水で何倍も希釈された薄くけだるい午後の授業のなか──
    3. 「女子は帰って勉強しろ」(中略)やだ~、なんて言ってみるけど、私は推薦入試だから、実はそれほど勉強しなくていい。
    4. でも少しでも食べ過ぎたと感じると、透明なジェル状の後悔が、体の表面にたっぷりと垂れて皮膚を覆い、(中略)ポテトの二本目を食べ終わると、満足感が急激に同じ体積のまま後悔へ変質していく気配があったから──
    5. 男の子みたいにふるまうと、男の子は喜ぶ。仲間だと思うのだろうか。
    6. 手だけはつないだ、というリアルな告白に、自分から聞いたくせに腹が立つ。
    7. 嬉しそうな美雪の顔... 続きを読む

  • 評判は聞いていたけど、今までの綿矢作品と違い
    ちょっと爽快、疾走を感じました。
    若いって素敵だな~(もう中年には真似できない・汗)
    全身全霊で人を愛して、ひりひりするくらいの恋って素敵だ。
    未熟で不器用だけど、この時期じゃないと出来ない愛。

    恋の矢、想いが重過ぎて愛が突き抜けているような
    相手の身体ごと刺してしまうくらいの愛の矢だけど
    読んでいて楽しかった。
    愛に形なんてないからかな?

    つい引き寄せられて一日で読んでしまいました。
    好きな作品だな、と思いました。

    ラストの「ひらいて」って問いかける部分も
    私の(読者の)心を揺るがす鋭い巧みさに
    ノックアウトされてしまいました。
    「愛してる」って10回言われるよりも、一度「ひらいて」って
    言われた方が、深く心を揺さぶられる。

    『ひらいて』というタイトルも好き。
    表紙も素敵です。

  • 白を基調とした装丁とは程遠い衝動的な主人公。その行動は狂気だ。
    嫌悪を抱いてまで美雪を抱き全裸でたとえに迫る愛も、たとえを受け入れ愛を受け入れひらいていく美雪も、愛に怯えながら一緒に来いと告げるたとえも私には理解し難い。恋愛と呼ぶにはあまりにも違和感がある作品。ただ、読み手を鷲掴みにする何かがある。
    心に残る暖かい作品ではないけれど、ガツンと鈍器で頭を殴られるような衝撃がある。ジンジンと揺れが響いて、その揺れが収まらないままに読み終えた。文学なんて難しい読み方は出来ないけれど、文学として評価できる作品なんだと思う。

  • 面白い、綺麗、つまらない、わからない、という言葉で片付けるにはもったいない作品。
    主人公のする全ての行動に理由がついて回らない。
    彼女や私達が理由をくっつけてあたかも理由があるように威張るだけなのだと思う。
    若くて多感で、走り回っているような主人公。
    自分の心や気持ちよりもっと内側で深い底にある何かに正直な主人公。
    私も彼女と同じように急いてページをめくりました。
    きめの細かい作者の言葉が、じわりじわりと気持ち悪さを伝えます。
    読後は言い訳のできない気持ちがねっとりと残ります。
    読まないとわからない気持ちです。
    この気持ちが作品や作者の魅力だと思います。

  • 高校3年の「私」は同じクラスの男子、西村に恋をし、彼の特別さに気付いているのは自分だけと思い込む。

    別のクラスの美雪が彼の恋人であることを知り、「私」は恋人への接触を試みる。

    思い込みで作り上げた彼への気持ちは彼女を走らせる。
    彼女は彼の前で裸になるが彼の心はひらかない。彼の恋人は心も体も簡単にひらいていく。

    思い込みの恋愛が作る破綻劇。

    -----------------------------------------------------

    狂気といってしまえばそれまでなんだけど、そういう強い言葉で片付けられないのは誰もが通る道というか、誰にでも起こりうることだからだと思う。

    感情の多くは思い込みで、いやだと思えば心は閉じるし、好きだと感じれば簡単に心も体もひらく。

    『君の顔が好きだ 君の髪が好きだ 性格なんてものは僕の頭で勝手に作りあげりゃいい』
    と斉藤和義が歌ったように、話したことなんてなくても、いくらでも勝手に思いつめるような恋愛はできる。

    『会えない時間が愛育てるのさ』
    と郷ひろみが歌ったように、美雪と西村は二人の世界を作っていた。

    思い込みで練り上げた感情は理性を鈍らせ、倫理観も働かなくなる。
    主人公「私」はその感情の行き場をどこに向けていいかわからず、暴走してしまう。自分が心をひらいてほしいひとには拒否されるのに、その恋人は心も身体も簡単にひらく。
    「私」はすごく痛い存在なんだけど、それは誰もが感じる痛みだからリアルなんだと思った。

    彼女たち三人の未来に、よろしく哀愁。

  • 読み終わっての感想は「なんかすげーな、綿矢りさ…」って感じでした。

    高校生の、どこに向かっていくか分からない激しい感情がよく表現されていたとは思います。
    ただ、勢いがあるというか、文章から伝わってくるものが濃くてちょっとお腹いっぱいになってしまった。

    だけど、嫌いじゃないんですよね~。特に後半にかけては疾走感があって、今まで渦巻いていた屈託した感情がすーっとほどけていく感覚で読んでいて気持ちよかったです。

    う~ん、不思議な作家さんです。

  • 綿矢りささんの作品を読むと、いつも複雑な気持ちになる。
    その原因の一つとして、誰しもが一度は似た感情を持ったことがあるのではないかと思われる難しい年頃によくあるあの青臭さ。あの青さを思い出して、もやもやそわそわしてしまう。
    子供の頃、特に高校生の頃によく感じた、心の中に留められない苛々。
    抑え込む方法や消す方法を探しては見つからず、または見つける気もなく、結局なにかに当たり散らして、よく爆発させていたように思う。
    その時の複雑な気持ちが、この ひらいて でもよくわかる。
    一見おかしな行動ばかりとる主人公、もちろん自分は彼女のように動き回る心の強さはない。けれど、どこかしらで同じ気持ちを共有できるんじゃないだろうか。
    恋愛感情から変化していく過程がとても良い。逆に嫉妬心から変化していく、「美雪」への思いもとても好みだった。
    人を好きになるって、なんなんだろう。

    等身大の女の子である主人公に、いつの間にか気持ちが寄ってしまうお話だった。

  • 恋愛は破壊だと思う。正確に言うと、破壊になり得る、と思う。
    この話の主人公、愛は破壊した。関わる人との関係性も、そして自分自身も。強く惹かれたクラスの男子のたとえが、糖尿病を患う美雪と付き合っていたことを知った愛。たとえと近づくために美雪に近づき、ついには美雪と体の関係をも持ってしまう。急降下する成績、たとえに否定される自分、たくさんのものを失い、そしてこれから失うかもしれないという絶望感がありながらも、それを自分ではどうすることもできない。コントロールできない。制御できない。
    認めてほしい。受け入れてほしい。そして一つになりたい。そんなある種の"承認"行為こそが恋愛であるとするならば、それが実るのはかなり難しい。所詮他人は他人、その距離は埋められないから。いや、これは恋愛だけではない。人は個で存在しながらも、個では生きていけない、でも個であるしかない。
    人と繋がるというのはこんなにも難しいのか。言葉というものが人間にはあるのに。いや、言葉があるからこそなのだろうか。

  • 面白い。
    スリリング。

    一気に読みました。何が面白かったかここに表現したいのですが、言葉がうまく思い浮かばない。

    狂気、病的な行動をとる主人公には、なんというか、恐怖を感じました。病的なんだけど、衝動的であり、そんなに無理を感じない。ワケもなく止められない感じです。なんか惹きつけられた。

    利己的、自己中心な行動なのですが、わかってやっているというか、罪悪感がうすいというか、ある意味では自身の感情や倫理観に正直であるということが貫かれている。
    人は誰しも不自由なものだと思うのですが、この主人公はリミッター外れた自由さがあり、その危うさに人間らしさを感じるのです。

    つまり、自分の中にも潜んでいる人のサガに共感してしまうために、スリリングであり、リアルであり、イヤな気分になりそうになりつも面白いのである。

    人に対して嘘をつくことは、ひらいてないからなのか?ひらくことなんてできるのか?対人により部分的にひらいても、すべてを開くことなんてできるのか? 答えはどうでもよく、どっちでもない。聖書の文章は読み手によりどう感じるかが違うものかもしれない。ひらかれているか否か。野球少年に、が、ひらいているのはなぜか?

  •  何より一番驚いたのは、他の方の書いたレビューが本当に素晴らしいというところです。私の言いたいことどころか、本書の深層にある綿矢さんの意図を汲み取った感想はもちろん、そういう感想を抱いてそれを人に伝わるような文章にできる方、そしてそういう感想を引き出せるような作品を書かれた綿矢さんも、とても素敵だと思います。
     本書において思ったのは、「想い」というのはすごいものだな、ということです。本当は「恋」と書きたいところですが、主人公が自身の気持ちは恋とも愛とも呼べない、と思う場面がとても印象的でしたので、このように表現しました。「想い」は行動力を高め、低め、性格を良くも悪くも変えてしまい、自分の未来さえ大きく揺さぶる。そういう可能性の幅がどこまでも広がってしまう、なんだか恐くもあり、力強くもある存在だなと思いました。

  •  こういう表現がいっぱいできる人の頭の作りって、いったいどうなっているんだろう・・・話の主軸は「恋」なのに、その表現が何十通りも出てきて、本当に目を見張った。「恋」を「矢」と表現するその鋭さは、本当にすごい。

     熱く激しい10代女子の恋。行き場のない絶望的な思い。その思いの向かった先は、好きな人の彼女。主人公の、そのどうしようもない思いを、私は笑えなかった。あの衝動、あの狂気、あれを一度でも味わったことのある者は、彼女のことを笑えないはずだ。彼女の行動を、私は他人事とは思えなかった。

     だれか、あの思いの飼い慣らし方を知っている人がいたら教えてください。

  •  女子高生の百合モノ、というよもやの前情報があって、りさたんに何があったのだろう…と思いつつ、初めて発売日に購入。
     ざっくりしたストーリーは性格悪くて気が強い女子高生がクラスの草食系男子に恋をしてストーカーまがいのことをしたのち、彼の恋人(もちろん女です)に近づいて籠絡するという耽美なんだか何なんだかよくわからないもの。
     りさたんご乱心か…と思ったら、もう、胸をザクザク刺された。死ぬ。
     私にとっての綿矢りさのよさ、すごさっていうのは、その観察力と言葉のセンスで、大事件が起きるわけでもない、どこにでもある日常を、性格が悪くて感受性の豊かな人間(要はこれが綿矢りさだと私は思っている)のフィルターを通して覗かせてくれるところ。そして、「悲しい」、「苦しい」、あるいはそういった言葉でくくれない複雑な感情を、比喩を駆使して伝わるレベルにまで練り上げるところ。
     『蹴りたい背中』はまさに、ハツのにな川への恋でも嫌悪でも仲間意識でもない、全部がぐるぐるないまぜになった微妙な感情を絶妙に言い表して表現していた。それが新しかった。冒頭の「さびしさは鳴る。…」あの書き出しは、本当に秀逸で、この言葉のセンスは『勝手にふるえてろ』以降、ギャグとしか昇華されていなかったのが、『ひらいて』では身を焦がすような女子高生の恋愛を通してほとばしりにほとばしっている。
     りさたん、こんな熱量のある小説、書けたのね…。
     『蹴りたい背中』のハツを100倍激しくしたような女子高生が、辺り全てを焼野原にする勢いで恋をする。ありふれた高校生活が、恋愛が、綿矢りさにかかればこれほど濃密で色鮮やかで破滅的か。
     同級生『たとえ』を愛してるはずの主人公『愛』は、ものすごいパッションで動き回るのに、何にも”ひらけ”ていなくて、全ての行動が自己愛にしか見えなくて痛い。人に向かって”ひらく”方法や思考を知らない分、気持ちが自分の中で熱くなって大きくなって自家中毒のようにひどい、矛盾していないのに矛盾している方向へと向かっていく。
     それを絶妙な言葉のセンスで書くものだから、もう世界観が圧巻。何もよせつけない綿矢ワールド。
     
     ひとつだけ残念なのは、舞台が再び『蹴りたい背中』と同じ高校に戻ってしまったこと。これについては本人がインタビューで「この主人公を置くにはやはり多感な10代、そして高校という装置が好き」みたいなことを言っていて、それはわかるんだけど、やっぱりひとつ脱皮できていない印象は拭えない。金原ひとみもそうだけど、自分の目で見て体験していない世界は彼女らにはやはり文章にできないのだろうか。彼女が一人称を使い続ける以上無理なのかなー。三人称に挑戦した『夢を与える』惨敗だったもんな…。
     ともあれ、この作品を読めたのが嬉しい。あと3年くらい出さなくてもいいから、このまま、大御所になってください。 

  • 綿矢さんの描く女性はなんでこう独りよがりなんだろう。

  • 綿矢さんの描く女性の良くあるパターン。
    強くて、優秀で、プライドが高くて、繊細で、したたかで。。。
    『蹴りたい背中』の頃から一貫した一つの女性像。

    女は、これくらいの強さや計算力がないとやっていけないのだろうなと思う。
    私は、綿矢りさという女性はきっと苦手だ。
    読むと女の怖さがずっしりとのしかかってくる。

  • 愛、美雪、たとえくん。3人の心のひだを上手く表現していることに、時間を忘れて読みふけった。綿矢りささんの独特な...というより鋭い心の読み方に、自分までもが見透かされているような感覚になる。学生の頃を思い出しながら、自分が通っていた校舎を重ねながら読めたことがドキドキ感を更に増し、興奮の内に読み終わった。他の作品も読まなければ!

  • 初めての本気の恋をした女子高生・愛。でも彼の気持ちは別の少女に。それを知り、少女へ接近する愛。

    なんというか…
    そこそこモテて、学校の成績もまあ良くてうまくやってる自分が、特にモテるわけでもない地味な彼に特別なものを見出したんだから、彼も私の方を見てくれなきゃ。みたいな歪んだ独占欲?承認欲求?が透けて見えてちょっと嫌な気持ちになった。
    しかも彼が選んだ相手は、美女で病気持ち。なんであんな子を?って。

    この主人公の言動は衝動的で破滅的で破壊的。
    若さゆえか純粋さゆえか。
    主人公は、彼を彼女を傷つけたかったのか愛したかったのか。受け入れて欲しいのに、あんなやり方しかできない。
    でも、刹那的な感情のうねりに流されながらも向き合う主人公の姿はなんか綺麗だな、と思った。
    …自分がすっかり大人になってしまったからか、共感はできなかったけれど。

  • 思い込みの激しい女子高生の狂気。
    たとえ君に片想いする愛が、告白し振られ、勢いにまかせて彼の恋人である美雪に迫り体の関係を持ってしまう。

    主人公の行動が計算高いようにみえて、短絡的すぎる。
    自分を振った相手を呼び出して裸で待ち受けたり、恋心を抱いていない相手に嘘の告白をしたり、暴走を繰り返す主人公なのにどこか繊細で共感できるところが多い。

    愛の想いは実らなかったけど、たとえ君も美雪も失わずに済んだラストには驚いた。
    ここまで極端ではなくても人間、特に若い女にはこういう自分の中で増幅してしまってどうしようもない感情があるんだろうなぁと思った。自分も含め。

  • 片思いの偏愛をこんなにいびつに描ききった描写にあっぱれといいたい。表現は珊瑚礁の星の砂を天にばら撒くように繊細なのに、やっていることは思いっきり身勝手だ。ドロドロになる一歩手前で踏みとどまっているのは、高校生というまだ人間的に完成されていない登場人物達のおかげだろうか。
    久しぶりに読んだ官能小説笑にドキドキ。

  • 「恋をして初めて気づいた。私は今まで水を混ぜて、味が分からなくなるくらい恋を薄めて、方々にふりまいていたんだ。いま恋は煮つめ凝縮され、彼にだけ向かっている。」こういう文章が読めるから、綿矢りさをやめられない。

  • 女子高生の恋愛ものだけれど
    王様のブランチでピースの又吉さんがお勧めしていたので
    おばさんが読んでもいいのかな、と思って読んでみました。

    というか、先に
    娘が学校の読書時間に持っていく本ない?
    と言うので渡しました。

    娘、曰く
    う~ん、ずっとねちっこいまま。
    それにこういうの、薦めるのどうかと思うよ、
    と言われ、その後あわてて読みました。

    確かに…薦めるのは。
    しかも学校の読書の時間に…(^_^;)

    片思いの男の子には彼女がいることがわかって大暴走。
    彼女を寝取ってしまう。
    でも二人の間に入り込むことが出来ないことを自覚させられるだけ。

    で、なんであのラスト? なにを「ひらく」の?
    共感できないし、よく分かりませんでした。
    ただ、一気読みできるだけの、なにかがあるのかもしれません。

  • この衝動と、激情!これぞ綿矢りさです。久しぶりに震えました。勝手に震えときます←←←

    感情移入するには難く、けれど主人公のふと見せる表情や行動に深く共感せざるを得ない。綿矢りさの書く女性は、歪で、それなのに惹かれざるを得ない魅力を持っています。歪んでるから魅力的なのかしら(OvO)

    歪な三角関係を自分本位に変容させる主人公は、完全に悪者です。思い合う男女の完璧な絆の仲に割り込み、あまつさえ「彼女の方に」手を出して2人の仲を割こうとする。悪いわー←
    そんな倒錯した行動に対して見せた彼の反応や、その後の展開はまあ辛い。その時初めて、「感情移入できねーわこりゃ」な主人公にたっぷり入れ込んでる自分を確認しました(OvO)ありゃ

    「あんたら変よ!」と高らかに叫んでいた主人公が、反対に歪を抱えていたと指摘された時のカタルシスや、それまでどことなく「綺麗なお人形さん」の装いを纏っていた彼と彼女が、一転生身の人間として主人公と対峙した時の衝撃が痛快です。爽快です。

    それまで自分の恋心や嫉妬心、体を重ねた彼女への思いでグチャグチャになった主人公の感情が、一気に「ひらかれ」る最後の数ページ、主人公が解放されるこの数ページだけでも読んでほしい。でもこの感覚を心の底から満喫するには、やっぱり冒頭から主人公の感情と向き合ってこそですよね…。



    悲しい目をした男の子。私が恋した彼には、密かに文通を交わす恋人がいた。ある日、彼の机からその手紙を抜き取り、秘密の恋人の正体を知った私は、彼女に接触を図るがーー。

  • 綿矢りさの作品を読むたびに進化(成長と言った方がいいのだろうか)を感じる。
    他の作品に比べ、最初の一文で心を掴むというようなインパクトはあまりなく、静かな出だしだったが、途中からぐんと心を捕まれたまま、目が離せなくなった。


    おもしろいじゃないか。最後までその勘違いに付き合ってやろう。私はカップルの両方に告白する変人になってやる。
    103ページ


    ここから言葉通りグッとおもしろくなり、思わず笑ってしまった。綿矢節炸裂、戦いのゴングが鳴った。
    ここまでは、前作「かわいそうだね?」と変わらない。バッタバッタと全てをなぎ倒し、めちゃめちゃにする。
    その後、「かわいそうだね?」では「しゃーない」で終わらしていたのが今回はそれから少し進歩している。


    私はまだ失っていない。この向こうみずの狂気があれば、なにも怖くない。
    154ページ


    その若いが故の狂気を利用することを思い付くのだ。そして、その先に結論を導きだす。


    正しい道を選ぶのが、正しい。でも正しい道しか選べなければ、なぜ生きているのか分からない。
    165ページ

    今後、綿矢作品の登場人物がどう成長していくのか本当に楽しみだ。

  • なかなかにエキサイティングでした。
    熱い想いを矢で刺し貫く、暴力的な恋だ。
    これは恋と呼ぶのだろうか。

    「絶対にあきらめきれない想いなんか、あきらめてしまえ。」

    恋という破壊的な気持ちを、殴る、蹴る、壊す。それが綿矢りさの恋愛小説なのか。

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ひらいての作品紹介

やみくもに、自分本位に、あたりをなぎ倒しながら疾走する、はじめての恋。彼のまなざしが私を静かに支配する――。
華やかで高慢な女子高生・愛が、妙な名前のもっさりした男子に恋をした。
だが彼には中学時代からの恋人がいて……。
傷つけて、傷ついて、事態はとんでもない方向に展開してゆくが、それでも心をひらくことこそ、生きているあかしなのだ。

本年度大江健三郎賞受賞の著者による、心をゆすぶられる傑作小説。

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