- Amazon.co.jp ・本 (157ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103327219
作品紹介・あらすじ
男友達もなく女との恋も知らない変わり者の中年男・本田の心を捉えたのは、レズビアンの親友・七島の女同士の恋と友情。女たちの世界を観察することに無上の悦びを見出す本田だが、やがて欲望は奇怪にねじれ-。濃く熱い魂の脈動を求めてやまない者たちの呻吟を全編に響かせつつ、男と女、女と女の交歓を繊細に描いた友愛小説。『親指Pの修業時代』『犬身』で熱狂的な支持を得る著者5年ぶりの新作。著者26歳の時に書かれた単行本未収録作も併録。
感想・レビュー・書評
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表題作と「変態月」の2編を収録。ちなみに「変態月」は1985年の作品。「ナチュラル・ウーマン」の前だからけっこう初期ですね。
それもあるからか、だいぶ懐かしい感じでした。松浦さんの作品自体、かなり久しぶりでしたが。このむず痒い感覚とまどろっこしい感じ、思い出しました。好きなんですけどね、私にとっては忍耐になります。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
この人の小説を読むのは高校生(「ナチュラルウーマン」や「セバスチャン」を読んだ)以来だから、25年ぶりくらいになるのかな。
ルームシェアしている女友達の女友達に嫉妬する男の心理を、生々しく滑稽に描いた中編小説。
女性同士の友情に対する憧れが歪に募っていき、
ついには盗聴行為に及ぶのだが、
不思議とこの男に対する嫌悪感を抱くことはない。
プライドをあっさり捨て去った清々しいまでの独白により、
男のひととなりがリアルに浮かび上がり、
男が自分の10年来の知古であったかのような錯覚を覚えるからだろう。
衒いのない淡々と落ち着いた文体が非常に心地よい。 -
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/58529 -
中年男と同性愛者の女性との不思議なルームシェア。女の世界を覗き見することに喜びをもつ本田。ルームメイトの七島は同性の女友達を連れてくる。二人の生活は不思議な色合いを帯びてもつれて行く。
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男友達ナシ嫁も彼女もナシの中年男が、レズビアンの女友達へ尋常ならざる友情を抱く表題作と
思春期女子のお話の、中編ふたつが入った本作。語弊があるかも知れませんが、どんな変態野郎が出てくるか…と思っていたのですが(笑)
読んでみると「しっくり来る」という感想でした。言いたいこと分かる、そういう気持ち分かる。
思春期女子のほうも「あるある」でした。ギスギスしていないので読みやすいけど
心の中には他人に言えない秘密が渦巻いている感じ、共感する部分が多かったです。 -
二編とも同性愛が描かれている作品。表題作は、私自身が自分の友達の交友関係に嫉妬をすることがないので共感はできなかったけど、本田さんと似た感情を抱く人はきっといるのだろう。ただああいう行動に走ってしまうかどうかの違いだけであって、抑えがたいほどの衝動を含んだ友情の気持ちも存在するのだなぁ、と。
『変態月』の方は、私にはより印象的だった。恋する気持ちが強い欲望、そして執念にまで繋がる怖さと脆さ、繊細さがひたひたと伝わってきて良かった。