沈むフランシス

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著者 : 松家仁之
  • 新潮社 (2013年9月30日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (184ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103328124

沈むフランシスの感想・レビュー・書評

  • 北海道東部を舞台にした大人の恋愛小説。
    東京の商社を退職し北海道で郵便配達員となった桂子。
    川のほとりに一人住んでいる和彦と出会い、二人は恋に落ちる。
    田舎特有の周囲の目や、それぞれが抱える事情などを乗り越えて二人はどうなるのか。恋は成就するのか。

    前作同様、何よりも自然描写が美しい。
    真っ暗な闇に瞬く星。オレンジ色の夕日。そして結晶のまま地上に降りる雪。
    話の展開を追うのではなく、作品の中に丁寧に描かれている世界に中にどっぷり浸るのが醍醐味。
    と言うのも、平凡と言えば平凡なストーリーだから。
    それでもここまで読ませるのはさすが。
    それに表紙の犬の写真がいい。なんで犬なんだろうと思い読み進めると、なるほど合点がいった。

    前作が素晴らしかっただけに、今回はどうだろうとちょっと不安だったが期待に違わない作品だった。
    ただ、個人的な意見として和彦は主婦顔負けの料理を披露し、インテリアにもこだわり、庭仕事も怠らない。そしてオーディオマニア。
    ちょっと気持ち悪い、完璧すぎて。実際いたら、引くかも・・・。
    まあ、いいんだけど小説だから(笑)

  • 情景を描写する表現がとても静かで上品。大人の恋愛小説という感じでした。

  • ただただ、水に流される景色。その音、色、速度が語られる冒頭そのままに、一組の男女の時間が流れていきます。


    非正規雇用で貯金を切り崩しながら懐かしの地で暮らす女性と、時間も収入も余裕のある男性。
    一見真逆のように見える二人ですが、しかし自分の希望する時間(スタイル)を生きているという意味では同じだと思えます。


    どこに繋がっているか分からない、どこまで続くのか分からない、このままずっとどこまでも続くとも思える川の流れのような二人の時間。
    しかし、突如堰き止められてしまった冒頭の景色のように、その時間も終わってしまう。。いや、終わりはしないけどもその時間を覆うものがガラリと変わってしまう。


    結末としては、ありふれた展開の恋愛小説ですが(この作品は恋愛小説なのか?という疑問はありますが)、その言葉(文章)から溢れる洗練されたとてもキレイな時間・空気を楽しむことができると思います。


    ※最初にタイトルを見たとき「沈むフランス」と読んで、興味を持ったというのは内緒です。。。

  • 沈むフランシスというどこか不安な気持ちにさせるタイトルと、
    同じく不穏な空気をはらむ冒頭のシーン。
    けれど読み始めてみれば淡々と静かに物語りは進んでいく。
    広大な北海道の道東地方らしい地域が舞台になっていて、
    そこの空気がうまく伝わってくる文章だった。
    とくに秋から冬にかけての描写はとてもよかった。
    主人公の二人もどこか色彩がぬけたような生活観を感じさせない
    人物設定のせいか、静かな北海道の景色にしっくりと溶け込んでいた。
    現実逃避をそうとは自分にも感じさせないように日々の細かな働きに手を抜かない二人。
    そんな二人がゆっくり現実に向きあっていく様子がとてもよかった。
    そして気になったのが長谷川の夫がなにを送りつけてきたのか。
    なにかを録音したものではないかと思うけど、その内容を思うとぞわりと怖い。

  • 『火山のふもとで』で鮮烈なデビューを果たした松家仁之待望の第二作。期待にたがわぬ出来映え、といいたいところなのだが、前作に比べると、よくできた小品という印象が強い。相変わらず叙述の技巧は冴えわたり、読む快感を堪能できる仕上がりなのだが、前作がオードブルからはじまってデザートに至るフルコースだとしたら、今回の作品はア・ラ・カルトの一品といったところか。しかし、よりいっそう深みを増したその味わいは賞味する価値あり。

    東京で会社勤めをしていた桂子は、思うところがあって父の仕事の関係で中学三年間を過ごした北海道に越してきた。人口八百人ほどの小村で非正規雇用の郵便局員としてはたらく。仕事は郵便物の配達だ。ある日、小包を届けた先で、「音」を聴いてみないかと誘われる。寺富野和彦は真空管アンプの製作ではマニアのあいだで知られており、小包の中身はカートリッジだった。

    気ままな独り居を楽しむ二人が付き合うようになるのは自然のなりゆきだった。桂子は川岸に建つ和彦の一軒家を訪ねるようになり、ときには泊まることも。二人はそこで和彦の集めた「音」を聴き、手作りの料理を食べ、愛しあう。しかし、せまい村のこと、二人の交際は人の口の端に上るようになり、桂子も和彦のまわりに気になることが増える。そんなある日、事件が起きる。

    フランシスとは誰か。それは小説のはじめの方で明かされる物語の鍵を握る大事な名前だ。この話はフランシスにはじまり、フランシスで終わる。前作では浅間山麓の高原地帯が大事な背景として物語を彩っていたが、今回は北海道東部が舞台。湧別川が森を切り裂いて流れる、もともとは原生林であった土地を開拓民が切り拓いたのが安地内村。川にかかる橋を渡り、林道をなおも進んだ川沿いの一軒家に一人暮らす和彦は何をしている男なのか。

    北海道の小さな村の四季の移ろいが、結晶のまま降ってくる雪や、エゾシカやヒグマ、ヤマメやアメマスといった獣や魚の生態を通して清冽に浮かび上がる。透明感のある文章は、この作家の持ち味である。不必要なものは絶対に持ちこまない極端なまでに削ぎ落とされた小説空間のなかに、選び抜かれたものだけが座を占める。真空管アンプを中心にしたオーディオシステム、黒曜石の石斧、冷凍でないオックステールで作ったコムタンクッパ。

    冒頭、水路を流される人の挿話が唐突に提示される。水路のなかに取りつけられた鉄柵に引っかかって止まったそれの独白のように誰とも知れぬ話者がつぶやく。「ここから先へはもう進めない。進まなくていい」と。おそらく、これが主題提示部にあたるのだろう。

    東京から来た女はもちろん、車で一時間ほどの距離にある町から来た男も、この村へ流れ着いた漂着物という点では同じである。過去を捨ててはきたが、ここを終の棲家とするというほどの覚悟はない。だから、身の回りには必要最小限のものしか置かない。動物が生きるためにしなければならないのは食べることと交わること。流れに乗って運ばれてきた魚が柵に行方を遮られたように、二人はただたゆたっていた。

    限られた数の人物しか登場しない小説の中で、特別な役割を担う御法川さんという老婦人がいる。目が見えないかわりに、この人には桂子自身も気づいていない心のなかが読める。その言葉を借りれば、桂子は冬眠中に起こされた動物のようなものらしい。冬眠の途中に起こされたシマリスは覚めてもやがて死んでしまう。御法川さんは言う。「無理をして起きあがろうとは絶対にしないこと。どんなに大きな音がしても、どんなに揺さぶられても。だまされてはだめ。あたらしいほんとうの音をきくようにこころがけなさい」。

    三十過ぎの女が、男と東京の生活に嫌気がさし、北海道でひとり暮らしをはじめた。それは冬眠に入ったようなものだ。冬眠中に「音」を聞かされた女は... 続きを読む

  • 北海道を舞台に描かれる大人の恋愛小説。
    一作目同様キレイな世界観で、読んでいてなんとも心地いい。
    印象的なのは、「音」の描かれ方。「音」が胸に残る。
    なんだろう、このキレイさ、この心地よさ。

  • 久しぶりにイッキ読みした。モノガタリに呑み込まれる快感に浸る。

  • 北海道の田舎というと、なんだかすごく特別な感じがする。もちろん全くの偏見なんだろうし、まぁ良い意味でだけど、ある意味思い込み。でも実際のところどこも一緒なんだよなぁ、と。何もなくてやることないんだから、そうすっと本能的に人間がやりたいことって話になって、もう世界どこ行っても田舎なら文化の違いとかなくてなんとかなるんではないか。
    しかしどこ行っても田舎は一緒だー、と言ってもやっぱ北海道の大自然は特別って言うか、10度切っただけで寒いわー外出たくないわーとか言ってるのに、くっそ寒い北海道には行ってみたくなるという不思議。

  • この小説に限らず、符丁を駆使した当たり障りのない性描写は、描く必要があるのでしょうか。そのことばかりを頭の中に巡らせてしまう、私にとっては「問題作」でした。

  • 北海道 フランシス水車

  • 40間近の男と女が現実逃避してる話。物語としては読めたけど、全然共感できない。サブキャラの夫妻とかガソリンスタンドの人とか町の人がきになる。

  • 東京から一人で、北海道の田舎街で郵便配達員として新しい生活をはじめた桂子。

    穏やかな風貌の和彦に惹かれて関係を持つまではあっという間で、
    次第に彼がなぜそこに一人で暮らしているのかが見えてくる。

    親が経営している電力会社が本社で
    発電所を気ままに管理して、別居している妻がいる。

    都会とは違う、北海道の田舎での閉塞感と親密感に胸がいっぱいになるときもあって
    曖昧な和彦との関係と、災害で沈んでいったフランシス水車。

    沈む水車、そのまんま!
    陰影のある雰囲気が大崎善生っぽい=村上春樹っぽい印象だった。

    ちょっと展開が読めてぐぬぬ、ってなって
    和彦が最初嫌いだったけど、最後は二人とも印象がよかった。嫌いでは、ない)^o^(

  • さらさら流れる川みたいな話。特にこれ!ってストーリーを言えるわけじゃない辺りがなんとも川っぽい(海に流れ着くまでにあっちいったりこっちいったりするもんね…)御法川さんのパートがすごく好き

  • 松家さんの著書を読むのは『優雅なのかどうか、わからない』に続いて2冊目。訳ありの男と女の恋愛とも言えない大人のやりとりが、北海道の自然 (Nature) のたゆたいを通じて語られる。北海道、自然、という雄大さの象徴と対比される、登場する男と女の付き合いの移り変わりは、少しペースが早く、読者としては取り残された感が残る。

  • 道東の自然を求めて移住してきた女と男。女は都会の喧噪と人間関係に疲れて、男は違った事情がある。女は純然と道東の自然とノスタルジアを求めているが、男は私生活が複雑だ。そして生き方も趣味的だ。そんな2人が出逢って愛し合う事に筋書き場の整合性を求めても無駄だろう。「女と男はそう言う物」と作者は思っているに違いない。
    それは精緻を極める道東の情景描写で判る気がする。
    しかし、作者の自然描写力には息を呑む。同じ箇所を何度も読み返して嘆息してしまった。そして、その間に2人の性描写がちりばめられ、艶めかしさを増す。
    女と男の恋心に付きものの様々な揺らぎ、それを傍らで見ながら、「フランシス」は独立している。2人に干渉する事も無いが、自分の都合で2人を邪魔する事も有る。「フランシス」は自然の中で只淡々と『生きている』。
    女と男のように人間は自然と調和しようともがく。でも、それはそれで良いのだと、沈んだフランシスの残した星空の結末で思った。

    久しぶりに小説を読んだが、これは良かったなあ。

  • 読みやすいけど、主人公2人に共感できない。寧ろ上司である局長の人柄の良さが印象に残った感。

  • タッチはなんだか、無駄な形容を多用する村上春樹に似ているかな?
    読後の感想は、ふ~ん...。
    こんな感じの漂う感、北海道、小説としては無くもないかな。

  • ある程度、成熟したフタリだからこそのやり取りと空気感。そんな風に読んでいきました。ただただ、読んでいました。私にはまだ分からないことばかりで・・

  • 情景が浮かぶ文章を楽しませてもらった。ストーリーは思ったよりシンプルで、終わり方も良かった。短編小説を読んだような軽い感覚。少し物足りないので、次作は長編を期待します。

  • 風景が目に浮かぶようなきれいな小説だった。
    どことなーく、村上春樹っぽいけど、村上春樹よりあっさりしていて読みやすい。軽い。
    実写だったら誰が麻生久美子と長谷川博己なんかがいいかなと想像しながら読んだ。

  • いやー、こんな男、まーったく魅力を感じられないんですけど。

  • 2014.9.5読み終わり。よかった。けど、火山のふもとでのほうがよかったな。相変わらず、描写はきれいで、好きだけど。

  • 北海道が舞台。美しい風景が目に浮かぶ。
    出てくる食べ物がおいしそうで。

    こういう生活が気負いなくできたら、最高だなぁ。

  • 出だし読んで、恋愛ものではなく、サスペンスかミステリーなのかと思った。
    雪がしんしんと降り積もるように坦々と物語が進んでいく。桂子にも和彦にも共感できなかったけど、風景の描写はとても細やかで引き込まれる。
    表紙カバーを見て、フランシスは犬だと勝手に思い込んでいた。

  • 北海道の800人の小さな村に、臨時の郵便配達人としてやって来た桂子。水車『フランシス』で水力発電を管理している男和彦。二人の恋愛のそこここに広がる自然、風景描写がすばらしい。

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沈むフランシスの作品紹介

森をつらぬいて流れる川は、どこから来てどこへ向かうのか――。『火山のふもとで』につづく待望のデビュー第二作。北海道の小さな村を郵便配達車でめぐる女。川のほとりの家屋に暮らし、この世にみちるさまざまな音を収集する男。男が口にする「フランシス」とは? 結晶のまま落ちてくる雪、凍土の下を流れる水――剥き出しの自然と土地に刻まれた太古の記憶を背景に、二人の男女の恋愛の深まりを描きだし、五官のすべてがひらかれてゆくような鮮烈な中篇小説。

沈むフランシスのKindle版

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