- Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103329619
作品紹介・あらすじ
長崎県壱岐島の安国寺、兵庫県の鶴林寺…日本各地の寺院から次々と盗まれる高麗仏画や経典。それらは韓国で高額で売買され、一部が堂々と国宝に指定されたという疑惑も。「元々は我々のもの、取り戻して何が悪い!」と開き直る韓国古美術商や、注文を受けて暗躍する窃盗団たち…。ヴェールに包まれた闇世界に踏み込んだ、意欲的ノンフィクション。
感想・レビュー・書評
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時折、各地の寺社から仏像や経典などの骨董品が盗まれたと云うニュースを見ることがあるが其れら盗品は何処へ行くのだろうか?とかねがね疑問に思っていた。ほとぼりが冷めてから密かに収集家に売られるのかな、とか勝手に想像をしていた。それに対する一つの回答例が韓国への持ち出しというのだ。
韓国で日本から盗まれた高麗時代の仏教美術品が水面から顔を出し、韓国国宝に指定されるという騒ぎが起きたことから韓国美術界に取材を行い、終にはその窃盗の実行犯であろうと強く推測される人物にまで迫るというノンフィクションが本書である。
そもそも高麗時代の仏教美術は日本に数多く所蔵されており、日本渡来の経緯は別としてそれを窃盗という手段を通じてでさえ韓国に取り戻すことを肯定的に捉える国民感情があり、更にはそれを高額で買い取る収集家が存在することがこうした窃盗を後押ししているようだ。否、それ以上に高額で買い取ることを前提に日本への窃盗旅行費用を工面したりすることすらされていることが取材の過程で明らかになっている。
著者は日本女性でありながら韓国の怪しい骨董品屋、収集家そして別件で逮捕された窃盗容疑者自宅への取材はもとより警察、留置場、そして刑務所まで日本から盗まれたであろう犯人・美術品の消息を求めて取材する執念には感服する。
骨董美術界でニセモノ・贋作の存在は日常茶飯事、騙されるのは鑑定眼がないからという「常識」が通用する魑魅魍魎の世界というのは恐らく日本も他の国も一緒なのだろうが、良くぞこうやって追いかけたという感じだ。ちょっとばかり本書のタイトルが最近の日韓関係を反映してのことかセンセーショナルな感じもするのだが、飽くまでも地道かつ長期に亘る取材は敬服に値するジャーナリスト魂でもある。