何様

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著者 : 朝井リョウ
  • 新潮社 (2016年8月31日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103330622

何様の感想・レビュー・書評

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  • 「羊と鋼の森」以来、約10か月ぶりに小説のレビューを書きました・・・・・・。

    朝井リョウは確かに成長しているのだろう。
    でもその成長の仕方は辻村深月と似ているように思える。

    小説を読む意味はどこにあるのだろう。
    心が折れそうになったとき、どうしていいかわからない時、僕は小説を読む。

    どこかに答えはないか? 
    胸が打ち震えるような感動を与えてくれるものはないか? 
    どこかでカタルシスを感じさせてくれないか? 
    ある意味、現実から逃避するように僕は小説を読む。この年になっても、いやこの年だからこそ悩むことがたくさんがある。
    仕事であれ、プライベートであれ、多くの問題が今でも存在する。

    直木賞受賞作「何者」のスピンオフ短編集とも言えるこの本は、初出を調べると一作目から最後の作品までかなりの時間が経っている。そこには彼の変遷が読み取れる。

    「桐島部活やめるってよ」から始まる、類稀で光り輝くような表現が駆使されていた初期の時代。
    そこには人の心を動かす言葉がたくさんあった。
    心を揺さぶられる感動の場面がいくつもあった。
    でもこの作品集の中で僕が本当に感動したのは2作目だけである。

    もちろん他の作品も、人間の心理の奥底を鋭く突いている言葉で表現されているものがほとんどで、なるほどと唸るような場面がたくさんがあるのだが、最後に感動するという思いには至らなかった。

    どちらかと言えば、心が重たくなり沈みがちな作品の方が多かった。

    文学的な完成度で言えば、おそらく後半部分の最近書かれた短編の方が高いのだろう。
    ただ小説の読み手の1人として考えたとき、読み終えた後の満足感、充実感、カタルシスは若い頃の作品のほうがより多くあったように思う。

    そこでいつも考えるのだ。

    小説は何のために書かれるのかと。
    小説は誰のために書かれるのかと。
    世に出た小説は誰のものかと。

    「桐島、部活やめるってよ」「もういちど生まれる」「少女は卒業しない」「星やどりの声」。
    彼の初期の作品で迸るばかりにあふれていたキラキラと輝く比喩や文章が最近の作品では少なくなってきたと感じるのは僕だけだろうか?
    今までの作品ほど感動しなくなってきたと思うのは僕だけだろうか?
    文学の完成度とはいったい何なのだろう?

    この短編集を読み終えたとき、ふとそんなことを思った。

  • 短編。6編。「何者」(直木賞受賞作品)のアナザーストーリー集。
    バンドにハマるばかりで大学受験勉強がおろそかになってしまうタイプの神谷。夢を追い続ける彼を見つめていた女性。(水曜日の南階段はきれい)
    「何者」では面接をされる側だったが、本作で面接をする側に回り、自分に採用面接をする資格などあるのかを自問自答する克弘。(何様)
    さらっとした感じで描かれているのだが、鋭い人間観察眼はさすが朝井節といった感じ。「いったい何様なんだよ」とうなずくことも。
    一番面白かったのは、最初の「水曜日の南階段はきれい」だった。

  • 「何者」のアナザーストーリー6篇、一気読みしてしまいました。どれも「何者」絡みの登場人物のストーリーだが、それぞれ微妙に手触りの違いを感じた。
    一番気になっていたのは一話目『水曜日の南階段はきれい』、光太郎が何故就職先に出版社を希望していたのかの理由が明らかになる。高校時代のキラキラした日々が眩しくて、甘酸っぱさがパ~っと心に広がっていく描写が印象的。この短編は発表が「何者」より先だったのか。
    理香と隆良の出会いを描いた『それでは二人組を作ってください』、本作のみ「何者」を読む前に別アンソロジーで既読。そのときから印象的な作品だったけど、「何者」読了後、そして映画を観た後に改めて再読すると、その痛さがハンパない。心の内側を引っ掻かれるようだ。見栄やプライドの高さで動いてしまう大学生女子の心情、何でこんなによくわかるかな朝井さん。
    『逆算』(サワ先輩)『きみだけの絶対』(ギンジ)『むしゃくしゃしてやった、と言ってみたかった』(瑞月の父)、「何者」絡みの登場人物は脇役のため「何者」感は薄いけど、それぞれに心がざわざわする短編ばかりだった。いや~苦い苦い。
    そして最終話『何様』。人事部が舞台、人を選ぶことに逡巡する新入社員の克弘。どこか煮え切らない、やたら「当事者」に拘る彼の理由が後半明らかになり、もう一度読み返して色々と腑に落ちる。朝井さんの視点の鋭さと構成の巧さに唸らされた。
    朝井さんの作品を読むと、自分が無意識のうちに蓋をしていたネガティブな感情がちょっとずつ漏れていくような気持ちになる。その都度軽い自己嫌悪に陥るけど、それでもページを捲る手を止められないのだよな。

  • 少し前に「何者」を読み返しておいて良かった。
    まったく別物の本を読む気分になってたと思うから。
    「何者」のアナザーストーリーなんだよね、これ。
    最後の「何様」だけ、どこに誰が???だったけど今いろいろ検索して納得しました(笑)

    最初の「水曜日の南階段はきれい」が好き。

  • 図書館にて。
    最近子育て中のためたまにしか読めていない小説だったが、久々に堪能。
    ほかの方のレビューを読むと1話目の「水曜日の階段はきれい」が高評価のようだったが、わたしは「むしゃくしゃしてやった、と言ってみたかった」が好きだった。
    ただ残念ながら元の「何者」を読んでから時間が経ちすぎていた上、申し訳ないが「何者」はあまり印象に残っておらず、なおかつ後日談を求めるほど多分当時も登場人物に愛着を感じていなかったため、逆にこの本が何かの続きって言うんじゃなかった方が良かったなという気が今はしている。
    もう一度「何者」を読んでみたら違うんだろうか。
    それには今の自分が就活の頃から変わりすぎていて、あのテンションや環境を描いた小説を読みたいと思うほど余裕がない気がする。
    この本のせいではないけれど、ちょっと残念。

  • 他人を見下すことで自分の位置を確認する。あるあるネタだと思うけど誰もそんなことしてるなんて言わない。自分の汚さをわざわざ晒す必要ないし、そんなことをしたら自分が見下される。
    自分より下だと思ってた人が本当は自分よりしっかりとした考え方や、行動をしていたときのダメージは大きい。

    『何者』のスピンオフらしいけど、そういうの関係なしに面白かった。朝井さんはデビュー作から一貫して、感情の醜い部分をトリックとして使うのが上手な作家さんだ。

  • 『何者』を読んでからこの本を読んだ方が良かったかな。読んでないものは仕方なく。続きものでなかったので救いかしら。私にとっては、普通の短編集となっていまいました。
    作中あるよう、「大きい物語として」ではなく「生きづらさ」に「寄り添う」、「自分一人じゃない」と思えるような内容で書いていているのかなあと。若者の心の中をうまく書いてはいますが、嫌な面でもうまく書いてますね。ドロドロしすぎていないのがいいとこです。ただ、<むしゃくしゃしてやった、と言ってみたかった>は30代女性が主人公で、これは浅い。朝井さんが描くのは少々無理があったのでは。

  • 自意識にとらわれて悩む6人の男女の姿を描いた短編集。

    『何者』のサイドストーリーとのことだが、個別の登場人物についての記憶がないため、独立した作品として読んだ。
    立場はそれぞれだが、他人の目、評価を異様に気にするという点ではみな共通する。自意識の塊のようなタイプが足掻く様を、じくじくと追い詰めていく息苦しい展開は、相変わらず健在。ただ、短編のためオチがあってさらりと次にいくので、読み手の気分としてはラクだ。
    こういう青臭い悩みは、年齢を重ねるとともに消えていくものだが、作者のような感覚の人にはずっとついて回るのかも。

    表題作の本気の一秒がスタートになるというポジティブな捉え方は、何をするにも励みになっていいな。

  • 『何者』のアナザーストーリー。短編集・全6編。
    ●水曜日の南階段はきれい ●それでは二人組を作ってください ●逆算 ●きみだけの絶対 ●むしゃくしゃしてやった、と言ってみたかった ●何様

    何者を読んでからだいぶ経ってしまったので、主要メンバー以外のことはもう忘れかけており…。最初の2話以降は特に覚えてなくても差し支えなさそうでした。

    朝井さんの描く若者たちはみんな自我が強くて人間の負の感情が多く、読んでいてずーんとします。なにかしらの圧力を感じます。
    それでも最後はからっとした爽やかさがあるのだけど、今作はもやっとした部分も結構ありました。

    「むしゃくしゃ~」は、まあ主人公の言いたいことはわかるけど・・・親に可愛がられたいってばっかりで親の誕生日すら忘れてて妹に嫉妬して自分しか見えてない、結局自分一番かわいいって人なんだなと。
    自分から知ろうともしなかったくせに、そんなの言ってくれなかった、知らない聞いてないとひねくれる。
    それで表題のようなこと言われてもあまり同情できません。
    終わり方もなんだかすっきりしませんでした。こういう毒はあんまり好きではありません。
    「それでは二人組~」は心の中で嗚咽あげてしまいました。こういう毒は好きです(ぇ
    理香に幸あれ・・・。

  • 人間関係の悩みの答えがすべて詰まっていた。

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何様の作品紹介

生きていくことは、何者かになったつもりの自分に裏切られ続けることだ。光を求めて進み、熱を感じて立ち止まる――今秋映画化される『何者』アナザーストーリー六篇を収録。光太郎が出版社に入りたかったのはなぜなのか。理香と隆良の出会いは? 瑞月の父に何があったのか。拓人を落とした面接官の今は……。「就活」の枠を超えた人生の現実。直木賞受賞から3年、発見と考察に満ちた、最新作品集。書下ろし作品も収録。

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