避難所

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103333722

作品紹介・あらすじ

なして助がった? 流されちまえば良がったのに。3・11のあと、妻たちに突きつけられた現実に迫る長篇小説。乳飲み子を抱える遠乃は舅と義兄と、夫と離婚できずにいた福子は命を助けた少年と、そして出戻りで息子と母の三人暮らしだった渚はひとり避難所へむかった。段ボールの仕切りすらない体育館で、絆を押しつけられ、残された者と環境に押しつぶされる三人の妻。東日本大震災後で露わになった家族の問題と真の再生を描く問題作。

感想・レビュー・書評

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  • 2011年3月11日、東日本大震災で被災した3人の女性が避難所で知合い協力しながら暮らし仮設住宅に移るのですが、ここにでてくる男はゲスが目立ちました。実際にここまでゲスがいるとは思えませんが、視線をあわせるのも嫌悪感がするくらいはっきりキャラ設定されてたり。
    体育館って底冷え厳しいし、世代間の考え方の違いってかなり溝があるようで生活空間に仕切りのないのは耐えがたい。
    福子は55歳で、夫は津波で死んでくれ解放されたと思った矢先にふと現れ亭主風吹かせながら義損金を使い込む道楽者。
    遠乃は28歳、夫と姑を亡くし赤ん坊をおぶり、舅と義兄で避難所にやってきた。この舅が嫁の遠乃を大声で罵って虐めるは義兄と結婚を画策するは、義兄もその気になり夜這いにくるは、好感度0なのに攻略ルート無理すぎでしょ、その前に職探せよ。舅は義損金は渡してくれないし、家事と育児は遠乃に任せっきり。
    渚は40歳、離婚後郷里に帰りスナックをして小学5年の昌也と暮らしていたのですが虐めにあい不登校に。
    天災にあい、避難してきたのに人災からは逃れられないのか。
    被災前から地方に眠っていた高齢化や、就職難、少子化の問題等々が鮮明に現れてきてどこまで逃げたら落ち着いた暮らしができるんだろうって思ってしまった。

    ゲスランキング堂々1位は、遠乃の舅なんですが、遠乃が受取るはずの義損金が世帯主にまとめて送られるとゆう行政の不備もあるのですが、どうやって取戻したのかそこらへん簡素な記述だけでは納得いかなくてモヤってしてしまいました。

    今年は能登でも震災があり避難生活を送ってみえる方も大勢みえると思いますが1日も早い復興をお祈りしています。

  • 非常に巧みな小説。
    能登の震災を経て、この本の紹介を見かけて気になり手に取った。
    現在は、女たちの避難所 に改題された文庫もあるらしい。

    2011年の東北の震災に遭った3人の女性、その避難所以降の出来事をメインに描かれている。
    被災するのは住む土地によるが、その後の暮らしのあり方に、男女でこんなに差異があるのかとゾッとさせられた。
    特に、絆、家族も同然と声高に主張して、仕切りのダンボールを使わせなかった、ある避難所の男性リーダー。
    男たちは苛立っているから襲われても悪く思うな、そのために緊急ピルがあるから欲しければ自分(男)に言って取りに来い、と。
    もう、こんなに屈辱極まることはない。
    震災で生き延び、津波に耐えたのに、そこにあるのは更なる地獄。
    そもそも、田舎で、男たちに足を踏まれ続けた女性たちの身の上がベースにある。
    いや、もう本当に、頭を抱えてしまう。
    最近でも生理用品の配る数もわからないのに男たちが俺たちを納得させられたら生理用品を渡してやると、言わんばかりの言説を見て、どっとため息が出たところ。
    ばっっかじゃないの。
    しかもこの本では、遠乃の死んだ岳春以外の夫はみんなクズ。
    はーーーあ。
    ふだんの社会でいろんな人権が守られているのは余裕があるからに過ぎず、ひとたびそれらが瓦解すれば、あらゆる人権意識は消し飛び、女子供の弱者に皺寄せがやってくる。隠されていたものがあらわになっただけ。
    うーわー。

    ラストは新たな「避難所」で助け合って生きる女性たちの連帯に未来があってよかったけど、これも長続きするかはわからない。
    けれども都会では自尊心を自力で守ることができそうだ。
    でも、いじめられっ子だった小6の彼は、震災で東北から来た、でまたいじめられないかはちょっと心配。
    マスノや昌子はどうなっただろう。知人の配慮、行きずりの人の親切もまた印象に残る。

    途中、ずっと頼りになった高齢女性が、クズの男リーダーに同調してしまうのが寂しい。
    50代以下とその上の間にも深刻な溝があるわけで。主にお金で。

    仮設住宅の設備と、必需品の細々としたリストアップが興味深い。
    なるほど。赤十字やNGOがこういうことをやってくれるわけだ。

    それにしても、能登の震災のあとの政府がダメすぎて辛い。
    こんなに震災の多い国で、体育館が避難所なのがもうダメ。
    最近、何度か小学校の冬の体育館に行ったが、あんなに冷たい床で眠れるわけがない。手をなん度も洗うコロナ以降の学校で、お湯が出ないのもそもそもおかしい。
    子供の人権を守れない普段の小学校だから、避難所としてうまく機能できるはずがない。

    自民党のおじさんおじーさん、みんな1週間あそこに泊まってみるべきじゃないか。どうせ国会では寝てるんだから。

  • 東日本大震災の時を、想定して、描いたものと思われるが、……

    今年、まだ、お正月気分にこれからと、いう時に 能登半島の地震である。

    なんと、関西でも、揺れを感じた位だから、相当の地震であると直ぐに察知した!

    凄い地震で、その後も地震が続いて起きたのだろう。
    テレビに釘付けになった。
    東北地方も能登半島も縁者はいないけど…心配である。
    救急活動も 山崩れなどで道路分断 通れないらしいと!
    停電!孤立!続く揺れ!寒さ!
    この1年で、一番のハレの時に、なんと天は、無慈悲なのだろう。

    あれから、もう10日を過ぎようとしているが、救援もままならない。

    この本を読んでいても、現実と重なような気がして、読むのが止まらない。

    義援金が、続々と集まっても、家族、縁者、家、今までの者や物が、アッという間に、瓦礫の下に……
    悲惨な光景をテレビが映し出す。

    この本も、作者垣谷美雨氏が、いつもなら、法律絡みに、描くのだが、今回はそれは無かった。
    しかし、未だ 男尊女卑的なそして、家系の長なる強さが、描かれている部分もある。
    今回の能登半島地方は、どうなのだろう。
    先ずは、インフラが、重要であるが、今、出来る事は……と、考える。

    寒さを凌ぐのにどうしているのだろう。
    食べ物の救援物資も届いているのだろうか?

    宅配も、最近は、人手不足で遅れる時代。
    優先的に、能登半島地方に 届けて欲しいものだ。

    作者にも、今度は 被災者への救援に 何をしたらいいのかをテーマに書いて欲しい。
    みんな 何かしたいと思っても、何を為べきを悩んでいる。

    この本では、最後に、受け入れてくれる子供が居て、優しい知り合いが、一緒に生活を共に出来るから、不幸中の幸いなのだろうけど、いつまでも続く事は出来ないだろう。

  • 東北大震災で同じ避難所で出会った3人の女性。地震や津波の際の逃げ惑う描写は本当に小説だと分かってても悲しく辛い。避難所での息苦しい生活、どんどん疲弊していくさまが読んでいて苦しくなりました。特に遠乃の置かれた環境が辛くて辛くて…舅と義兄には腹が立って気持ち悪くなる。最後は強く生きていく逞しさも見られて良かった。

  • 忠実な取材に基づいた、ドキュメンタリータッチの小説。
    「避難所」という題名だけれど、文庫本バージョンが「女たちの避難所」となっているように、登場人物や視点はすべて女性です。
    彼女たちの目から見た3.11の被災地や避難所は、どんなふうだったのか。
    その一端が垣間見える小説です。
    巻末の参考資料を、いつかあたってみたいと思います。

  • 被災地の方々が同様の体験をされたのかと思うと
    胸が詰まります。
    日本人は被災地で皆で助け合ったなどの美談が
    マスコミで報道されていましたが、実際は性的な
    被害に遭われた方も居たのだろうと。
    まずは命が助かって良かったですが、その後の
    生活を考えると怖くもありますね。
    それにしても垣谷さんの描く男性像はクズばかりで
    自分に置き換えてそうならないようにしたいと
    思います。(笑)

  • 津波を潜り抜けた様子、避難所の様子が目に浮かぶようだ。震災当時、自分が自宅でのんびりテレビを見ていた時にこんな思いをされていた方々がたくさんおられた事実に胸が苦しくなった。

    これでもかというくらい辛い思いをした3人の女性達が皆逞しく歩み始める。とても清々しい読後感に加え、垣谷さんの温かな視線もとても好き。

  • ボランティアのこと、避難所のこと、被災地のこと、2013年の楽天優勝のこと、色々考えた一冊でした。
    ボランティアのあり方って、難しい。よかれと思っても、受け取ってもらう側にとって喜んでもらえるとは限らないんだと実感した。
    2013年、頑張ろう、東北!!って。楽天が日本一になって、田中マー君の力投に涙したけど・・・この本を読むとそれも空しい。
    あれから防災グッズを自宅にといわれるようになったけど、前から思ってたけど、どこにおいたら確実に持っていけるんだろうと。重いだろうし。
    この本では持ち出せてなかった。
    達乃の言葉が心に響きました。
    震災で前からあった問題が鮮明になったと。
    抱えていた問題を打破しようと前向きに進む3人。
    東京が避難所だった、幸せを掴めそうな終わり方でほっとしました。
    なき夫に書いた手紙がしみました





  • 震災のことを忘れかけていました。私の故郷も少なからず被災しました。あの先の見えない不安な日々。ライフラインが復旧した時の安心感を今、ありありと思い出しました。

    この物語は3人の女性ヒロインの視点で物語が進んでいきます。地震発生から避難所の生活までリアルに描かれています。
    震災から救援物資の数々のが届くのが早い。そのうち物資もどんどん運ばれてくる。自衛隊にボランティア、日本ってすごい国だと思います。
    一方で東北の男尊女卑の封建的社会にはびっくりです。もう私まで恥ずかしくなってしまいました。舅や夫の威張り方は想像以上です。震災で何もかも、大切な人までも亡くしてしまった。だから、心が荒んでしまったのでしょうか。人間の「獣性」が露見したのでしょうか。下着泥棒を避難所ではたらく、セクハラをするなど人間の情けない面も露になります。昔、私も身近でセクハラの話を聞いてあり得ない!と驚いたことを思い出しました。けして許されることはありません。

    ちなみに私の周囲では奥さんの地位の方が高いです。柔道部の仲間みなそうでした。私など飼い犬からも下に見られる始末\(゜ロ\)(/ロ゜)/

    とくに男性に辛辣な垣谷さんですがもちろん実直でまともな人が大半かとは思います。
    3人の女性が絶望の中から自立していこうとする姿にエールを送らずにはいられませんでした。
    3.11は他人事ではないです。今一度その気持ちを新たにできました。

  • なんか、色々納得。被災者って言っても色んな人がいるよね。

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著者プロフィール

1959(昭和34)年、兵庫県生れ。明治大学文学部卒。2005(平成17)年、「竜巻ガール」で小説推理新人賞を受賞し小説家デビュー。結婚難、高齢化と介護、住宅の老朽化などの社会問題や、現実に在り得たかもしれない世界を題材にした小説で知られる。著書に『リセット』『結婚相手は抽選で』『七十歳死亡法案、可決』『ニュータウンは黄昏れて』『夫のカノジョ』『あなたの人生、片づけます』『老後の資金がありません』『後悔病棟』『嫁をやめる日』『女たちの避難所』『四十歳、未婚出産』などがある。

「2023年 『うちの父が運転をやめません』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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