これでいいのか、日本のがん医療

著者 :
  • 新潮社
4.33
  • (3)
  • (2)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 22
感想 : 5
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103334316

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • がん医療は日本の縮図?

    先進国でありながら、がんの先進医療が受けられず、がん難民が発生する国、日本。元国立がんセンター研究所長、元医療イノベーション室長を経験した中村氏の指摘は頷ける。日本のがん治療を取り巻く問題点の根は深い。霞が関の縦割り行政の弊害などはがん治療だけの問題ではない。日本の精密機械の技術が医療機器の開発に殆ど生かされていないのも悲しい。それにしても、朝日新聞が中村氏に対して行ったがんワクチンに関する誹謗記事の目的は何だったのか?

  • 著者は世界的にも有名なヒトゲノム計画の研究者であり、日本の癌研の所長を務めたような方。自分の生い立ちから、日本の医療事情を告発する本。

    生い立ちの部分では、医者を目指した自分の怪我からの回復、臨床医として救えなかった命の数々、そこからくる人として医療に挑戦するエネルギーの源泉について語られている。また、若いときにユタ州に留学し、ヒトゲノム計画の立ち上げにかかわる部分も描かれている。

    日本の医療事情では、癌研等の研究所として携わった仕事、20世紀から21世紀の創薬の形が分子レベルとなり、狙い撃ちする薬に変わっているのに日本の製薬会社がついていけていないこと、リスクを過剰に恐れていること、政治家が国家プロジェクトとして認識できないこと、官僚は、実験が文科省、認可が厚労省、企業の管轄が経産省などの縦割り行政の弊害が生まれていることを官僚の谷間と表現している。

    著者は、現在シカゴ大学にいるが、トップを務めた医療イノベーション推進室で、仙石官房長官辞任、3.11の大震災がなければ、多少は進展していたかと思うと残念な気がする。本自体は平易に書かれており、日本の医療行政を理解することができた。現代にあわせて変わってくれることを願う。

著者プロフィール

1952年生まれ、医師、医学博士(ゲノム医科学・がん)。東京大学名誉教授、シカゴ大学名誉教授、公益法人がん研究会がんプレシジョン医療研究センター所長。90年代より人の個性に基づくオーダーメイド医療(プレシジョン医療)を提唱し、推進に取り組む。大阪大学医学部卒、外科医として勤務後、渡米。87年、米国ユタ大学人類遺伝学教室助教授、89年、財団法人癌研究会癌研究所生化学部部長、91年大腸癌抑制遺伝子APCを発見。94年、東京大学医科学研究所教授、翌年より同研究所ヒトゲノム解析センター長。2000年から遺伝子多型研究プロジェクトを率い、2002年世界で初めての全ゲノム相関解析を報告。2005年、理化学研究所ゲノム医科学研究センター長を併任。11年、内閣官房参与・内閣官房医療イノベーション推進室長を併任。12年よりシカゴ大学医学部教授、個別化医療センター副センター長。2018年帰国、公益法人がん研究会がんプレシジョン医療研究センター所長、18年に内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)プログラムディレクターに就任、「AIホスピタルによる高度診断・治療システム」プロジェクトを率いる。

「2020年 『ディープメディスン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

中村祐輔の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×