爪と目

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著者 : 藤野可織
  • 新潮社 (2013年7月26日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (125ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103345114

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爪と目の感想・レビュー・書評

  • 私、体の中で一番嫌な器官、目なんだよね。目とか眼球ものの小説って、ホラーよりも苦手。なのになんでこれ借りちゃったんだろう…。こわいもの読みたさ?

    最初のページを10回以上は読んで反芻した。意味が分からない。めまいがした。ざわざわする。「爪と目」…あなたとわたし、父と母だけの世界に古本屋が出て来て「麻衣ちゃん」って人物の名前が呼ばれた時、なぜかとてもホッとした。…人の世界に戻ってこられた私って思った(笑)

    わたしとあなたの視点がめまいを起こす。二人の視点や記憶が入り混じってよく見えない。だけどたぶん「爪」が「わたし」で、「目」が「あなた」。「わたしとあなた」ってことなのかな…と感じた。詮索や深読み次第で、どのようにも推理できる設定が入っているような気がして面白いって思った。

    ウンベラータは花言葉が「すこやか」、伝説のように言いつたえ的な(商用的な)花言葉は「永遠の幸せ」。意味深すぎる。捨てられたウンベラータと一緒に子供をベランダ(場所が場所だし…)に出した時点で、もうすこやかに育つように扱っていないから…。それ。

    昨日読み終えた「悲しみよこんにちは」に、なんか雰囲気が似ているような…気がした。


    「しょう子さんが忘れていること」は、序盤が間接的にかなりエロかった。直接的な時?よりも艶めかしかった。妄想なのか過去なのか今なのかよくわからないけどね。(病気で入院していた時、同室の脳梗塞後の患者さんの行動は、実際に一部ホラーが入っていました。考えられないことを言ったり、やったりする。)


    問題なのが「ちびっこ広場」「ちびっこ」や「広場」とかけ離れたお話なので、ストレートにこわい。これからお風呂入るんだけど…後ろが気になるー。髪洗えないかも?いや~いきなり現実的になるとこがこわい。「呪怨」的、じわじわクル。(面白いけどね)

    どんなジャンルでも書けるって器用な作家さんなんだなぁ。今すぐに読み返したくはないけど「爪と目」は無意識に迫ってくる圧迫感がある。もっとゆっくりと読みたいから、いつか再読したいな。「ちびっこ広場」はすぐに読み返しする。

  • 表題を含む短編が3作品。
    どれも、いつまでもずるずると記憶をそのままにされてしまうというか、
    凄く想像力をかき立ててくれて、で?で?で?って続きを自分で考えないといけないもどかしさ。
    じわじわと来る恐ろしさ。
    不思議さがずっと頭を回っている。

  • 第149回芥川賞受賞作。
    「あなた」は目が悪かったので父とは眼科で出会った。やがて「わたし」とも出会う。その前からずっと、「わたし」は「あなた」のすべてを見ている。史上もっとも饒舌な三歳児の「わたし」。選考会を震撼させた、純文学恐怖作、ホラー。
    表題作『爪と目』と、『しょう子さんが忘れていること』『ちびっこ広場』の三篇が収録されています。

    友人から借りて読了。正直言いますと私には合わないなと。
    『爪と目』はあらすじを読んで興味をそそられていただけにちょっとがっかり。
    「わたし」が語部で義母を「あなた」と呼び、父を「父」と呼ぶが、まずそこを理解するのにちょっと時間がかかり、変な言い回しに意識がそがれることしばしば。
    けれどなぜか引き込まれる不思議。気づくともう読み終わっている。
    頭の片隅に思い浮かんだのは森見さんの『きつねのはなし』で、同じような暗さがあるなと。幽霊のようなホラーではなく、後味が悪い気持ち悪さ。
    「わたし」も「あなた」も「父」も「母」もみんな人形のよう。
    さらさらっと流して読んでしまっていたのか、最後の意味は分からず・・・。
    もう一度読み直せば分かるのかしら。

    『しょう子さんが忘れていること』はさっぱり意味が分からんです。
    ん?ん?なに心臓?え? 結局どういうことだったのでしょう。
    『ちびっこ広場』は意外と面白かったです。
    最後のオチは確信をもってこうだったんだろうとは言えませんが、あれ?それは幽霊の女の子がお母さんに、、あれ?こういうのは結構好きです。

  • 起こったことをそのまま記録する記録係でありたいと思うとどこかのインタビューで語っていた通り、淡々と「わたし」から見た継母「あなた」の日常や「わたし」からだとわかりようもない視点の「あなた」のことが綴られていく。「パトロネ」でかなり藤野可織さんを好きになり、今作も「パトロネ」の怖さにはまった私を裏切らなかった。最後の一文が素晴らしい。それで気づかされるんだけど、「あなた」と「わたし」の実母は本妻、愛人というお互い面識はないライバル同士のような関係で、性格も好みも正反対で、もちろん「わたし」に対する熱の入れようや興味の持ち方も違うんだけど、言葉に対する姿勢だけはほとんどおなじ。本は物語ではなく実母にとってはインテリアでしかなく、「あなた」にとってはたまたま実母が折り曲げたままにしておいたページの都合の良い文章を引っ張り出してきて「わたし」に利用する単なる道具でしかない。置き去りにされた本文がまるで「わたし」のようだと感じた。

  • 選評で川上弘美さんが仰っていたように非常に「ていねい」な小説でした。

    一見、得意な文体で書かれているように見えますが、読み終えてみると平明な美しさを湛えた文章だと気づかされます。二人称は実のところ三人称に置き換えても成立するように書かれていて、この二人称は「わたし」と、作中人物と読者という二人の「あなた」が同化し、迫り合うという企図でしょう。見事でした。
    ただ、また借用ですが、タイトルの『爪と目』が作品の暗喩になりきれていないという宮本輝さんの指摘はもっともだと思いました。後半のメタファーを成立させるためのくだりはやや蛇足で、そこ以外はとても楽しく読めました。

  • 「爪と目」考えさせられた。想像力を持たない大人の思考回路や行動ってこうなんだ、と逐一読まされた感じ。語り手の「わたし」を通して。内容よりも、こんなに想像力が欠けていても生活できる、またこういう大人が珍しくないであろう今が、怖い。自戒も含めて。

    「ちびっこ広場」ラストの母と息子のやりとりに、これまた考えさせられた。私だったら、添い寝してあげて終わりにするけどな。そこは、母親が入り込んじゃいけないと思う。それに、真夜中の公園なんて、見えなくても絶対に何かいるでしょう。怖いよ。

    他ももう少し読んでみよう。よい作家さんだと思いました。

  • また美人芥川賞作家かよ! とか思いながら読んだら、逆に、これは取るわ……と打ちのめされました。ものすごーく面白かったです。しかもぜんぶ。爪と目ももちろん、「しょう子さんが忘れていること」、「ちびっこ広場」、どれも「やられた……」と。
    意見としては、古本屋に目をいじられる場面と、「わたし」が「あなた」の目をいじる場面と二回あるのだけれど、ラストシーンの強烈さが古本屋のせいで少し失われているのではとか思うものの、それはまあちょっとしたツッコミであり、文句なし。(偉そうだけど)
    母親を殺したんじゃないか。母殺しの話じゃないかというのがいい。
    しょう子さんの、あの正体不明の、夜に抱きついてくる存在も、その正体は薄々感づくものの、まさかそうじゃないんじゃないか? というのがいい。
    そしてちびっこ広場。これもとてもよい。
    クラスの子と大樹。結婚パーティーの面々とお母さん。その図式のなかに存在する「広場の幽霊」。それを二人で観に行くこと。す、素晴らしい……。とくにいいのは、その少女の幽霊がなんで少女なのかも、何なのかもまったくわからないということ。

    藤野氏の小説は一番の中心がわからない不気味さをうまく書くのがすごい。だからホラー作家っぽくなるのだろう。
    ベランダで死んだ母。自殺なのか、娘が殺したのか。なんで死んだのか。
    毎夜抱かれるきょう子さん。抱いているのはいったい何なのか。なぜなのか。どうなるのか。
    広場の幽霊。観に行って二人はどうするのか。
    一番の中心が消えていて、それでいてそのまわりがぼやけていたりハッキリしていたり、実に丁寧にできているなという印象。
    あー面白かった。

  •  3歳の「わたし」の視点から、父の後妻として血の繋がらない母となる「あなた」を始めとした人間を描写する文体やストーリーテリングは、ホラーのようなシュールさと独特の緊張感を持っていて、読み手に期待を抱かせる。しかし、その後の展開は予想を超えるものではなく、爪と目という身体のパーツの接近を通して「わたし」と「あなた」の関係性の均衡の破綻に収束してしまう。全体的に完成度の高い文体と表現で、芥川賞をとったこと自体は驚かないが、なんかこうクライマックスに向けての盛り上がりの割に物足りなさを感じてしまった。ホラーっぽい怖さを全面に押し出した方が良かったのじゃないか、と思った。つまり、せっかく3歳の「わたし」の視点を得ているのに、その未成熟な人格ゆえに成り立つ不条理さと不気味さみたいなものとは遠い、繊細で多感なのになぜか行動に理性と必然性が感じられるところ(これは「わたし」の回想録という設定もあるのだろうが)が、ちょっともったいない気がするのだ。

     そして、僕が女流作家を好まない理由である「出て来る男がみんなダメ」は、この小説でもご多分に漏れず。

  • わけのわからない作品に幾度当たっても懲りずに芥川賞を読み続けるのは、やはり結構な確率でこういう、舐め回したいほど何回も何回も読み続けたい文章に出会えるからだ。純文学ホラー、といえばそうなのだろう。ぴったりなキャッチフレーズでありつつ、純文学はどことなく全部ホラー的な要素があるのではないかと思う。

    違和感、不快感、恐れ、衝撃、このすべてを本当に美しい筆質で書き上げ、理解を超越している部分を理解しようと何度も再度読ませるこの作品は、シュールレアリズム絵画的な美しさがあると私は思う。

    表題作の爪と目
    「あなた」という表現を使うことによって、いとも簡単に過去や現在を超えて、長く続く二人の関係を浮き彫りにする。少なくとも、隠喩する。この小説の成功は、この手法を見つけたときから確立していたのだろう。
    天才的な独裁者であれば、見ないようにすれば痛みも傷つきからも逃れられる。でもそうでない以上、どんなに鈍感でも、どんなに見ないことから逃げていようと、痛みは追いついてくるのだ。浮遊する「わたし」は、そのことを知っているけれども、それでも見ないふりをし続けていたということでは、「あなた」と同じ。
    「あなた」の悪意のない無関心と、本質的な愛情のない愛顧の描き方がとてもリアルながら、文学的。

    しょう子さんが忘れていること
    老女とセックスの欲望のお話。身体という荷物を脱ぎ去り捨てたいのに、その身体がつきまとう。でも、心臓の鼓動を感じ、また自分の心臓の鼓動を受け止める人をいつまでも求め続けるのは、本来受け入れてしまえばとても素敵な話なのに。

    ちびっこ広場
    人は現在の自分を完全に認めきれていない時に、何度も言葉で自分の満足と幸せを再確認する。一見、完璧な母親像を描いた本作だけれども、語り手である彼女は本当に信頼できる語り手なにかを読者は疑わなければならない。呪い、という言葉もなんとも象徴的だ。末尾の彼女は、そして子供は、呪いから無事でいられるのだろうか。

    共通して描かれているテーマは、見ないようにしていること。共通して使われている手法は、信頼できない、あるいは揺らぎ続ける語り手。
    三篇の短編を通じてのテーマ性もキュレーションも素晴らしい。

  • 150812読了。
    コンタクトレンズをつけた義母・あなたと、爪を噛む幼女・わたし。何かと共感の多い作品で、久々に食べた好物のようにぺろりと平らげた。
    コンタクトレンズについては、私にとって明確なメタファーを持ち得なかったが、いつも痛みと傷を連想させるものだった。眼科でことが始まり、コンタクトが汚れ、目が痛み、でもそれがないと顔はぼんやりのっぺらぼうだ。同じような景色を私も見ている。その薄皮のような一枚で目を覆っただけで、なんだかうそみたいに他人行儀で無責任になれるかのようだ。
    爪を噛む「わたし」から、真っ先に思い出したのが中学の頃の記憶。友人が、「○○ちゃんは言葉遣いが乱暴で、鼻もほじるし爪も噛むからかかわらない方がいい」と言っていて、”かかわらない方がいい”なんて、当時の女子が嫌いとははっきり明言しないいやらしさを感じるが、私はそれを聞いてすぐに「それは私も人のことは言えない」としっかり距離を置いた。私だって、家で人が見ていなければ、鼻をほじるし爪を噛む。私の爪を噛む癖は、中学から高校の、勉強にいそしんでいる頃がピークだった。大学に入って、無為に伸びた爪に気が付いて、爪を噛むことは私にとっては反骨だったのだと身に染みた。
    少し前にこれを読んでいたら、私は幼女のわたしの目線をもっと強く感じていたのかもしれないが、私はいつの間にか義母のあなたに心が重なっていった。
    器用に浮気し、無関心になることは到底共感できないものの、かつてその空間を作っていた、今はいない以前の女性に盲目な関心を寄せることはまったくもって同じ気持ちを味わった。私はそれらの面影を少しずつ埋葬してくタイプだったが、あなたはより忠実に復元していく性分のようだった。その、少しの手がかりをもって、しらみつぶしに調べ上げて、追いかけていくところがなんとも、一緒だなぁと思った。
    物語はわたしの、あなたへの仕返しによって終幕する。少しずつ残酷なふたりが、最後には重なり合っていくのが、なんとも面白い。

  • ちょっと怖い作品。

    こうゆう出来事が本当にあったらいやだなと思う。
    どこか漫画的なエッセンスを感じました。

  • 藤野さんの作品を読むのは3作目。芥川賞受賞作。表題作の他に短編2編。藤野さんらしいですが私の既読の藤野さん作品がすごくインパクトあるので静かに感じました。でもその静けさが怖い。「爪と目」は二人称でずっと語られていき、淡々と語られていくのがとても物語にあっていました。母の死後、父の不倫相手の「あなた」と三歳の「わたし」。痛そうで怖かったです。「しょう子さんが忘れていること」はユリイカの女子とエロ特集で書かれたものとの事で納得!「ちびっこ広場」は読む人によってどちらにもとれそうですね。藤野さんやはり個性的!

  • 芥川賞って、わっかんないな〜(笑)。これまでの受賞作もそれほど読んでるわけじゃないけど、概して読後感が良くない印象があります。どんな評価基準で選出してるのかしら…(°_°)

    今作では冒頭の一文から、「え、どういうこと?話し手、誰目線?」と軽く混乱してしまいました。
    日本の小説には珍しい、二人称の短編小説です。

    「あなた」の義理の娘である幼稚園児の視点で語られる「あなた」は、あらゆることに無頓着な女性として描かれます。
    刹那的な人間関係、周囲の自分に対する評価、そして自身の感情に対してすら、関心を寄せていないように見えます。浮気相手と結婚した後、今度は自分が浮気をされても「ま、いっか」。結婚相手に連れ子がいても、「ま、いっか」。
    そんな彼女自身も新しい浮気相手を見つけるのですが、時を同じくして巡り合ったあるサイトにのめり込んでいく描写がホラーです。その心の機微はわかんねーぞ…と慄きながら読んでいくと、本当の恐怖は最後に待っていました。痛ーーーい!!!
    最後の最後の描写は、何が言いたいのか良く分からなかったです←
    ガラス板(コンタクトレンズ?)が身体を腰から真っ二つ…??うーん???笑

    そんなこと言ったら、次の話もどういう意味か分からなかったし、やっぱり芥川賞は良くわっかんねーな〜と己の読解力の低さを嘆くのでした(°_°)



    ◉爪と目…あなたは私の父と結婚をした。コンタクトレンズでしょっちゅう目を痛めているあなたと、ベランダを恐れている私の物語。

    ◉しょう子さんが忘れていること…川端くんは、とても面倒見が良い好青年。の筈だった。

    ◉ちびっこ広場…友人の結婚式に参加している私に、自宅から一本の電話がかかってくる。息子の大樹の尋常ではない様子に、私は慌てて家に帰ることにしたが…

  • じりじり怖い3編入り。

    怖い話だと知らずに読み始めたので結末にびっくり!
    変わった目線で描いていのがぼんやり気持ち悪かったのはこの結末に繋げるためか!となかなかの仕掛けではないか。
    ほどよい短さで無駄がない。他の作品も是非読みたい。

  • 20140117読了
    心がざわざわして、終始落ち着かない気持ちで読み進めた。登場人物のみんな、なにか欠けていて不安定で気味悪く感じた。

  • ホラーっていうか狂気と依存のこわさ? しかも、傍目からみると、「こんなの普通」あるいは「いいお母さんじゃん」みたいな? すっきり言い表せない。

    爪と目
    いちばんわかりやすかった、いちばんわかりやすく、こわかった。
    引き込まれるけどこわい。
    あらすじで「3歳のこども視点」と聞いていたけど、「だいぶあと」「さらにあと」の話があるから、おとなになったヒナが3歳の子の目から語っているのだ。
    「あんたもちょっと目をつぶってみればいいんだ。かんたんなことさ。どんなひどいことも、すぐに消え失せるから。見えなければないのといっしょだからね、少なくとも自分にとっては」p61

    これをどんな気持ちで言ったのかなーと思うと。でも、ラストではさらにそのシーンも過ぎ去って、今度は自分の番なのだ。

    しょう子さんが忘れていること

    ちびっこ広場

    読んだけど理解できていない感。ちびっこ広場は母親であること、内外の抑圧とか狂気を感じた。

  • ぞっとする。直接的に恐ろしい表現は何もないのに。家族と言えない家族の日常…爪と目に表れる狂気。読者の想像力に委ねられている。

  • 初めて芥川賞受賞作品を読んだ。
    3作品とも、見えている、読み取れる表面上の事象だけではなく、もしかしたら何かの例えなのか?
    だとしたら私には真実を汲み取ることも読み解くこともできなかった。
    (表面的に捉えていいのなら特に難しくはないから。「しょう子さん〜」も、ただ夜這いされてるという話ではなくて、もしかしたら心臓だけが動いている植物人間が横たわっていて、自分が植物人間になっていることを忘れてるってことなの?と考えてしまう。)

    これを入試の国語の題材に使うのだけは勘弁してほしいと思う。
    (設問と解答を著者本人が作らない限りは)

  • 芥川賞受賞作の作品は、この状況をこんな風に描写するのは大変難しいのでしょうね。

    誰が一番「気持ち悪いか」で、評価や感想が分かれそうですが…
    まあ三歳児も不倫女も父親もみんな気持ち悪いです。
    不倫女もとい継母が、三歳児の本当の母親の生活様式をたどって行くところが何とも言えないいやらしさというか、必死さというか、病んでるというか。
    好きか嫌いだけで言えば最近の芥川賞作品なら「abさんご」の方が好きだし、「共食い」の方が面白いと個人的には感じました。
    あと、一緒に収録されている他の作品の方が馴染めました。

    私の読解力が足らんのでしょうかねぇ…。
    しかし芥川賞はいつからこういう筋より「文体勝負」みたいになったんですか?こういう風に書かないと駄目なんでしょうか…。

  • はじめは二人称という書き方のおかげで、かなり混乱。「あなた」と「わたし」を理解するまで時間がかかった。一方、描写がとても分かりやすくて、入り込みやすい。三歳の私が、義母をあなたとして見て、生活のすべてを大人になってから綴ったような書き方。実際はどうなのかは不明。
    凄く難しいけど、納得いくまで読み込みたくなるような作品。

  • 母を亡くした「わたし」の前に、「あなた」は現れたー。継母と娘の関係は静かに、このまま続いていくようにも思われたが…。

    純文学的ホラー、と帯に書かれていたがその通り。淡々とした文章の方が恐怖をあおるというのは本当だ。幼い娘の視点で描かれているというのも、褒め言葉として気持ちが悪い。好きなタイプの作品ではまったくないが、タイトルの爪と目、も最後まできちんと貫かれていて、すごい。芯の通った気持ち悪さ。

  • リアルな関係の欠如した「バーチャル」世界。その手応えのなさを嘆いているのは、私だけなのかと思っていた。
    1998年。「98」と呼ばれた国産のOSが、Windows98に瞬時に席巻され尽くした。情報漏洩に過敏な今日の企業社会からは信じられないことだが、ワードやエクセルで作りかけの資料をメールに添付したり、USBメモリーに保存して、多くのビジネスマンが自宅のPCで「持ち帰り仕事」をしていた。だから、家のPCもOSはマイクロソフトであることが鉄則であった。世界中を隷属させたマイクロソフト社はそののち8回もOSの衣替えを繰り返し、重い年貢を巻き上げ巨大化した。しかし、iPhoneとiPadの勃興により少なくともパーソナルユースの領域はれ独立した新たな連邦を形成しつつあるかに見える。話がそれつつある。本題に戻ろう。

    『爪と目』を読み解く鍵の一つは、男女や親子の人間関係までもが「疑似バーチャル化」してしまったことへの違和感と苛立ちであると思う。本来は生なましく、心の通い合いが伴うはずの人間関係が、ネット上での匿名のやり取りや通販のような、完全予定調和の安気な関わりに終始している今日の社会への「そうじゃないだろう」という違和感である。

    ブクログと毎日新聞の書評を併せて読んだ。だが、それらの中に本書の本当の含意を正しく斟酌しているものはひとつもなかった。多くは「芥川賞作品だから読んだが、くだらない、わからない、ありえない」といった、2、3行の暴言に近い書き込みばかりであった。自分の読解力の欠如は棚に上げ、一方的で乱暴な雑言を書き殴る。これらは、殴ったら殴り返されることがない世界でだけ通用する身勝手な憂さ晴らしにすぎない。まともな読者は、きっとこういう言い放しのメディアからはすでにに離れてしまっているのだろう。

    新聞の書評も、「解ってない」と思えた。
    曰く、主人公の「生母の死因は何か。古本屋はなぜ義母のコンタクトレンズを舐め取ったか。主人公の復讐じみたいたずらはなぜあの形を取ったのか。理由は最後まで明かされていない」
    という。
    だがそれは、直接言及していないだけで解りすぎるほど分かり切っているではないか。
    父との夫婦関係が完全に冷め切っていた生母。だが、ひょうひょうと平静にネット通販で好みの品々を買い揃え、その自己満足をブログにつづる。その母に文字通りよい子に躾られた3歳の「私」は、大人の期待を裏切るような感情の発露のない気持ち悪いほどのよい子だ。義母は、肉体関係さえない夫と、なさぬ仲の幼子を「夫」と「子」として極めて平静に関係を保つ。愛人の古本屋とは肉体関係だけの割り切った関係で、相手が僅かに情緒に訴えてきた瞬間にもうその関係が嫌になる。本来リアルであるはずの人間関係が全て「疑似バーチャル」の一方的で安気で危機の迫る可能性のまるでない世界なのだ。
    物語の書き手が提示した「問い」の「解」はだからきわめて明解だ。
    生母の死因は謎ではない。彼女が残した愛読書に残された小さな折り込み、そこに記された箴言を義母が読んだとき、それは彼女自身の精神の奥底に潜む真実を明確に語っているのだ。見逃してしまいそうな三角の小さな折り込みこそ、彼女のリアルな心情の吐露の証なのだ。だから死因は謎なのではありえない。
    『爪と目』の目は、目そのものではなくて目と現実との間に緩衝材として介在するハードコンタクトレンズを象徴しているのに違いない。だから、身体の関係だけと割り切ってあっさり捨てられそうになる古本屋の男は、精一杯の抵抗としてその疑似バーチャルの象徴たるコンタクトレンズを乱暴に舐め取るのだ。
    「聞き分けのよい大人しい子」という型枠に押しとどめられている3歳の「私」が、その枠からはみ出そうとする情動の発露が「爪噛み」であることが解れば、『爪』もまたも... 続きを読む

  • 非常に刺激的で、久しぶりに初めて読む作家でいい読書ができた。文章は堅苦しい言葉を使ってるわけでもなく平坦な感じだけれども、区切り方の影響や言葉をだすタイミングか、なんだか独特の雰囲気がある。匂いがするかんじもある。これだけで結構いいなあと思うのだけれども、物語もまたいい。描写がしっかりとしていて、その中でこの人物がどういう人間なのかはっきりと、手に取るように、想像することができる。節々にアクセントがあって、それが最後に回収される。上手いと同時にこわい。帯にはホラーと書いてありますが、よく言うホラーではないかもしれない。近いのが柳美里的なホラー、人間の怖さ。しかしそれがまた見事な描写で忠実に書かれているのです。いや、とても好きになっちゃった。これからの作品もたくさん読みたい。

  • 怖かった。私もコンタクトレンズ使用者なので、目の乾くツラさ・異物が入った時の痛さは身に沁みてます。第149回芥川賞受賞作品。こういう文体でこういう内容を書かないと芥川賞は取れないんだろうなぁと思える典型的な作品だった。三歳児の「わたし」が父親の浮気相手を「あなた」と語る奇異感、若い継母が浮気しつつ前妻の好んだインテリアをなぞる異様さ。壊れかけの継子、ラストの仕打ち。印象的かもしれないけど気味悪かった。あと父親がここまで放任する背景が希薄。

  • この二人称小説は、『プライベート・ライアン』的な構造矛盾を抱えているような気もするけど(「信頼できない語り手」ってことなのか?)、『キャリー』的なラストのカタルシスは個人的にはよいと思う。純文学好きの評判は芳しくないだろうけど全体を通してみても、割りと好きな作品。

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