ブラックライダー

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 40
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  • Amazon.co.jp ・本 (604ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103346517

感想・レビュー・書評

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  • 壮大な世界観といい文体といい最高だった。詳細は省かれているが、どうやら核戦争から気候変動が起き一度は文明が崩壊したらしいアメリカ中西部からメキシコが舞台。崩壊直後には大量に人が死に、食料の欠乏から人肉食まで行われるようになった大混乱から、少し時間がたち秩序ができつつあるという時代設定らしい。食力不足を補うために牛と人間の遺伝子を掛け合わせた「牛」まで作り出し、その「牛」と人間が交うほどの狂った世界だ。私たちの倫理観を皮肉るかのように、男たちは生きるために殺人、盗み、果ては強姦しまくる。この弱肉強食の世界では命はとても軽く扱われるのに、捜査官のバードや強盗団のレイン兄弟たちは、家族の絆に執着する。善悪の判断を超えて人間の業みたいなものを感じた。「人肉を食べる時に感謝するのは当たり前だが、自分が食べられる時にも感謝しなければならない」という言葉が印象的だ。あらゆる生物は他者に生かしてもらい自らも他者を生かす存在であり、それは人でも牛でも虫でも変わらないということなのか。しばらく読後の余韻から抜け出せそうにない気がする。

著者プロフィール

1968年台湾台北市生まれ。9歳の時に家族で福岡県に移住。 2003年第1回「このミステリーがすごい!」大賞銀賞・読者賞受賞の長編を改題した『逃亡作法TURD ON THE RUN』で、作家としてデビュー。 09年『路傍』で第11回大藪春彦賞を、15年『流』で第153回直木賞を、16年『罪の終わり』で中央公論文芸賞を受賞。 17年から18年にかけて『僕が殺した人と僕を殺した人』で第34回織田作之助賞、第69回読売文学賞、第3回渡辺淳一文学賞を受賞する。『Turn! Turn! Turn!』『夜汐』『越境』『小さな場所』『どの口が愛を語るんだ』『怪物』など著書多数。訳書に、『ブラック・デトロイト』(ドナルド・ゴインズ著)がある。

「2023年 『わたしはわたしで』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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