- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103347316
作品紹介・あらすじ
「人間関係」を、脳はどう捉えるのか? 斬新な脳科学の可能性がここに! 『つながる脳』(毎日出版文化賞受賞)で、脳やコミュニケーション研究に一石を投じた著者が開発した、SRシステム。「現実」と「代替現実」を視覚と聴覚を通じて自在に切り替え、脳のリアルな反応から、目の前の「現実」を検証する――。相手との関係性や状況で、脳は認識を次々と拡張していく。あなたの「世界」を大きく変える一冊!
感想・レビュー・書評
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著者の研究分野は、人と人との関係の中で脳がどのようにふるまうかという「社会脳」を明らかにすることである。。この「社会脳」というテーマを探索するためには、再現性を担保することが困難であるという「一回性の問題」があるために、従来の脳科学の研究手法では解明が困難であった。そこで、著者藤井博士は全く新しいツールを生み出すことで、その問題を突破しようとしている。それが、現実では起こっていない状況(代替現実)をつくり出す「SRシステム」と呼ばれるツールだ。このユニークかつオリジナルなツールを使って、辿り着いた境地はSFの世界そのものである。
著者は本書終盤で「ツールに何を使うかによって、ぼくたちがどこまでいけるのかが決まる」という印象的な言葉を残している。過去にもインターネットやスマホといった画期的なツールにより、我々の生活は一新されたといっても過言ではない。本書では何とも不思議な「SRシステム」というツールが頻繁に登場するが、「このツールで何かが起こせることを既に知っている」という「メタ認知」があなたの脳にも起こるかもしれない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「社会の中で脳はどうふるまうのか」
例えば裸で踊っている人がいるとする。ひとりだと周り(社会)はバカ扱いするだろう。ところがひとり、ふたりとフォロワーが増えると様子が変わってくる。いつしかそれは集団となりムーブメントとなる。このとき一人目のフォロワーがはじめに踊りだした人をリーダーとするのだ。フォロワーの存在が鍵となる。
このように脳は集団の中でどうふるまうかを判断している。
我慢を適切にコントロールする能力。それこそが本当の賢さだと著者は言う。
本書は社会学を脳科学からアプローチした本だと言えるだろう。様々な実験によってヒトの脳が社会の中でどうふるまうのかを読み解いている。 -
☆社会脳の研究。データはウェブで公開。研究者は論文の欠点を見つけられるおそれがあるため、データの公開に反対するのが、アメリカですら一般的反応。
(著作)つながる脳、『ソーシャルブレインズ入門』 -
貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784103347316 -
藤井先生なんで脳科学者なのにSRやってるんだろうと思ってたけど、人の社会性を脳の働きとして明らかにするというのを読んでなるほどと思った。面白かった。
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人の社会性を脳の働きとして明らかにする
知っているということを知っている。メタ認知。 -
色々な脳の研究方法を知ることができた。第5章「ほんとうの賢さとは」が大変面白かった。
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5月新着
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Substitutional Reality(SR:代替現実)の実験をベースに脳の機能を研究している過程を詳細に述べている.SRを体験してみたくなった.平面型の電極(ECoG電極)を活用して、脳を精密に調査できる手法を開発する過程は、既存の壁に阻まれるよくあるパターンを打ち破る事例であり、読んでいて著者の馬力に感心した.得られたデータを公開するという考え方も、非公開を常とする日本の社会の現実を打破する立派な試みだと感じた.
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筆者が研究している脳科学の先進的な分野を紹介。とても興味深い本です。
筆者の主な主張は2つで、
・脳の活動の分析はこれまで点的な分析が主流だったが全体の面的な分析をしないと見えてこない分野があるのでその視座での研究が必要。
・「社会脳」と呼ぶべき、他人との双方向的な関係によって生じる文脈について反応する脳活動がある。 -
視覚・聴覚から入る情報を切り替えて代替現実を作り出す「SRシステム」が面白い。
童心に返ってワクワクさせられてしまった。
脳が環境に応じて変化していく以上、社会脳の研究において「再現性」はどうしても大きな壁になるのではないかとも思うけど、これが足がかりとなってメタ認知の仕組みに迫れたらいいなと、心から思う。
多次元生体情報記録手法やECoG電極の活用、データ共有、データマイニングによるビッグデータ解析など、柔軟な発想でツールを磨き上げ続けようという姿勢、後進へ技術を残そうとする姿勢が素敵だ。 -
これまで読んできた脳科学の本とは異なり、読後の爽快感が少ない。しかし、これは批判的な意味あいではなく、著者が述べるように一般向けの脳科学本はあまりにも平易に書かれていたり、人々に誤解を与えるような構成になっているのかもしれない。
物理学よりも400年遅れていると揶揄される脳科学とのことだが、今後指数関数的に明らかになることが増えていくことを強く望みたい。 -
私も、「どうして自分はこんな風になっているのか?どういう仕組みになっているんだろう?」と思って医者になって脳の研究をしたいなーと思っていたことがあったことを思い出した。
探検バクモンでSRシステムを体験しているのを見たけど、すごく不思議な感覚になるし怖いだろうなぁと思う。
SRシステムから脳の研究の仕方まで幅広く書かれていたけど全部「社会脳」に繋がっていて、そこはものすごく面白い分野だろうなーと思う。
地球ゴマとトランプの話が好きだ。 -
実際に現実を入れ換えるとどうなるか?って実験を科学未来館でやってて、すごく行きたかった。その実験をやってた人の本。その部分も最初に来て面白いんだけど一番かっこよいのは社会的弱者が我慢をするというのが社会の基本である。そこから隙を狙うという知能が発達するって言うことを実験で検証するところ。
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話の導入としてSRシステムを持ってくところが上手く、興味を持って作者の意図する研究を理解することができた。この書き方は相当うまい!
研究者としての、実験環境から作ってしまおうという姿勢には敬服する。 -
社会脳を研究している著者。ビックデータをとって研究する。またそのデーターを公開して、他者にも使わせる。精度良く取られた大量のデーターを取り扱うアプローチは脳科学に限らず、(ポスシステムにも限らず)多くの科学に応用されるべきか。またデータの再現性を確保するための実験手段への取り組みも素晴らしい。SRシステム、エンターテイメントにも使えそうだが、、、
面白かった。
実験されたサルのウエダ君とエーサク、上位のものが偉いのではなくって、下位のがしっかり状況判断して賢く動いている。面白い考察。また、社会性の中で、協調や利他的行動より、まず我慢が最初に来る、なるほど。 -
この本を読んで、女性が清潔、栄養、コミュニケーションにこだわるのは子供の発達のために必要な進化の結果である事がよく分かった。
また、ヒトとは、社会脳、すなわちコミュニケーション能力の獲得に対して、進化においても、個の発達においてもかなりのコストを支払っていることも分かった。
簡単に言えば、赤ちゃんに手がかかるのは当たり前だということである。
エイリアンベッドを使ったSRを作った人が社会脳の研究をしているとは思っていなかった。そういう意味で驚いた。
本を読むと、中二病全開のネーミングセンスや、SFなどからの着想など、大変共感が得られた。マッドサイエンティストはこうあるべきだ。(^.^) -
自分の研究のことだけを、これだけ楽しげに書いた一般向けの本というのは案外ない。他分野の研究者も、もっとこんな風に書いてくれれば、世の科学への関心も高まるのではないかな。
社会性の起源は協調や利他でなく我慢。
ツールから作る。技術は残る。
スケーラビリティのないことはやりたくない。
などなど、研究者心得としても興味深い。こんなふうに研究を進めたい。 -
脳研究のための技術開発、高精度で多種類のデータを収集した中から答えを探していく。SRシステムは、エンタメや経験アーカイブにも活用できる。
いろいろな分野から脳科学に参入することで、更に研究が進む、そういう分野になっているのですね。 -
理研の研究者が自身の研究内容をまとめたものです。前著「つながる脳」以降の研究の進み具合が分かります。脳関係の本は多くありますが、ほとんどが、他の方が行った研究をまとめたもので、自身の研究のみを書いたものは少ないと思います。そのためか、参考文献がありません。
内容は独自性が強く、エキサイティングです。研究毎度をくすぐられるものでしょう。おおむね2つから構成され、1つがSRシステムで、バーチャルリアリティのようなものを感じられる装置で、もう1つが、多次元生体情報記録手法で、脳や社会情報をまるごと全て記録し、解析するもので、書くと、簡単そうだが、非常に苦労が多く、誰も手を出さない所だろう。
研究データを全て公開しようというのも現代的な気がします。アクセスすると、何か面白いことがあるのでしょうか?
非常に多くの可能性、広がりについて、書かれており、今後の進捗が期待されます。子どもの頃に、こういう内容を見れば、こういう所で研究できればと思うのかもしれません。