その日本語、ヨロシイですか?

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著者 : 井上孝夫
  • 新潮社 (2014年1月17日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103350712

その日本語、ヨロシイですか?の感想・レビュー・書評

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  • 「本の雑誌」1月号恒例企画「わたしのベスト3」で、著者が恐縮しつつこの自著本を挙げていた。「『日本語誤用指摘本』と思われている誤解を解きたい」とあり、あらま、てっきりよくあるその手の本だと思っていたらそうじゃなかったの?と読む気になったのだが、いやいやこれは!予想を上回る面白さであった。

    著者は、「本の雑誌」2013年9月号「いま校正・校閲はどうなっておるのか!」や、2011年6月号「新潮社に行こう!」にも登場していた、新潮社校閲部長。(どちらの企画もすこぶる面白く、特に出版社訪問シリーズは近年ではピカイチではなかろうか。) 新潮社校閲部は六十人をこえる大所帯で、装幀部とともに新潮社の屋台骨とも言われているそうな。本書は校閲部一筋で長いキャリアを持つ著者が、校閲の現場から見てきた日本語について語ったものなのだった。

    なによりいいのは、「言葉に対して素人であることのプロ」に徹する著者の姿勢だ。日本語の研究者のように学究的立場から「これが正しい日本語だ」と指摘するのではなく(もちろんそうした研究が大事なのは言うまでもないが)、今の時代に生きている言葉として、出版物に使われる言葉が適切かどうかを考えるのが校閲者の役割だという。その具体例が非常に面白い。

    たとえばルビの振り方、送り仮名の付け方、仮名遣い、どれ一つとっても一筋縄ではいかないなあと思わされる。とりわけ、漢字。「常用漢字」なぞというものがあるために、エラクややこしいことになっているというのはよく聞く。新聞なんかのヘンテコリンな交ぜ書きや、妙な字体はコイツのせいだが、じゃあどう使えばいいのか? これが難しい。正解がない中で、日々本や雑誌はどんどん出る。そして何より、校閲者は「作者」ではなく、あくまで黒子。いやもう、ご苦労お察しします。

    第7章第8章には、期待通り(?)「その日本語ヨロシイですか?」と言いたくなるさまざまな例があげられているのだが、さすが、またその言葉?というのはほとんどなくて、言われてみればなるほどなあというものが多かった。わたしがドキッとしたのは「圧倒的」という言い方。「圧倒的な映像でお送りする…」などという使い方に、特に違和感を感じず、自分でも使ったりするが、確かにこれは「圧倒的な迫力の」を略したものだ。こういう略し方って嫌いなはずなのに。うーん。

    もう一つ、確かに!と膝を打ったのが、鉄道会社による「名詞化」というやつ。「踏切への『人立ち入り』により停車します」などという言い方のことだが、「人が立ち入りましたので」と言わず名詞化することで、さもよくあることのような印象を与えようとしているのではないかと言う。専門用語にはこの手の名詞化が多く、いかにもそのことに慣れっこになった「通」の会話といった雰囲気をかもし出すという指摘は、まことにうなずける。鉄道会社がこれを多用するようになった意図は、はて?

    最初は微妙なニュアンスを表す表現だったものが、じきに手垢にまみれて陳腐化し、気持ち悪ささえ帯びてくるのが流行語の宿命だとして、最近でのその代表例として「癒し」「想い」があげられている。ほんと、そうだよなあ。「気付き」とかも付け加えたい。実にキモチワルイ。「これらは大切な基礎語です。しばらく休ませてリハビリさせるしかないでしょう」同感同感。

    最後にちょっと言いにくいことなんだけど…。この本について著者は「もう一つのライフワークであるマンガ・イラストと文章の融合表現の実験でもあります」と書いていて、各章の始めなど、随所にマンガが挿入されている。えーと、このマンガがですねえ、んー、なんというか昭和の香りたっぷりで、昔学習漫画にこういうのあったなあと言う感じでですねえ、あのー、いらないんじゃないでしょうか。

  • 新潮社校閲部の部長さんが挿入された漫画の中の「架空の会社の校閲部に入った2人の新人」を見守りつつ、自分の経験を語ります。
    辞書編集者の書く日本語本と違うのは、「何が正しいか」ではなく「何が届けたい相手に届くのか」を一番に考えていること。
    この本の真骨頂は最後の最後、奥付けの上に表れます。
    校閲者の自負と謙虚さこもごもに、言葉の素人であることの面目躍如の文章です。
    この本の最大の効果は、読んだ人に「本を出すときは新潮社から出したい」と思わせることかな?

  • お勉強し直そうっと、、、

    新潮社のPR
    「「圧倒的な映像」「手練れの職人」「余生を振り返る」ってどこがヘン?

    川端康成『雪国』の有名な冒頭の一文、「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」。さて、この「国境」の正しい読み方は「こっきょう」? それとも「くにざかい」? そして 「チゲーよ!」はなぜおかしい? などなど日々「正しい言葉」探しに格闘している新潮社校閲部の部長が、奥深〜い日本語の世界にお連れします。」
    ブログ「スケッチ貯金箱」
    http://blog.goo.ne.jp/sketchmoneybox
    言語のある生活
    http://polyglotreader.blog109.fc2.com/

  • 図書館の新館コーナーで手にとった本

    若者言葉を否定するような本かと思って、パラパラとめくったのですが
    そうではなさそうなので借りてみました。

    校閲という仕事について、ベテランが紹介しています。

    実は私、ドラマ『地味にスゴイ!校閲ガール』で、校閲の仕事を知りました。

    ルビの振り方、旧仮名遣いでの苦悩や
    ネットが発達する前と今とで確認する範囲が違ってきたとかの裏話もありました。

    また、タイトルから想像した「若者言葉を否定するような」ものではなくて
    テレビや、鉄道で放送される言葉などが挙げられていて
    へぇ、と思いました。

    随所にマンガが挿入されているのだけれど、これが微妙というか
    文章の内容を補足したり、エピソードを盛り込んでいるとも感じられず。
    そして著者が描いたというのですが、…
    言いにくいですが、マンガは無い方がよかったのではないかと思います。

  • 校閲者の適正がある人
    「座り続けていられて、言葉に興味があって落ち着いて仕事ができる人」

  • 「重版出来!」からの派生。校閲のお仕事。書き手、校閲者の実に細かなこだわり、自然言語であるが故の判断つきかねるレアケースが、プロならではのストックでどんどん出てくるのが面白い。
    仕事には敬意を表するが、東条英機の「機」が「樹」になってたから全部刷り直し、っていう時代はもう終わるべきだろう。食品の異物混入と同じく、一定のエラーを許容できる社会になることが望ましい。

  • 重版出来6巻のあとがきで紹介されてたので読んでみました。
    校閲って仕事についてその道のベテランが紹介する本。

    ネットが発達する前は資料が少なくて校閲といえども専門的な内容にはあまり手を出せなかったとか、
    校正から校閲になったのがここ30年ほどのことで、校正の頃はとにかく原稿と同じに印刷されたかチェックする仕事だったとか、
    ルビの振り方や旧仮名遣いについての出版側の苦悩とか、いろいろ面白い出版裏話が聞けます。
    なんと文中のマンガも著者によるもの。多才だ。

    校閲は「国語学者」ではなくて「国語の素人のプロ」だそうです。
    正解を判断するのではなくて、世間ではどう使われている言葉なのか、それを調べる仕事。
    そうか、そうだったのか。
    「舟を編む」で辞書作成について読んだけど(あっちはフィクションですが)、こっちはまた別の仕事の紹介でした。

  •  その日本語、ヨロシイですといえないのが何とも日本人として理不尽でしょうがない。

     世の中には言葉を扱う職業は数多くあるが校閲という仕事は広く浅くゆるくきつく縦横無尽の広がりの中書かれた相手の立場にも気遣わなければならない大変な仕事だと感じる。

  • 意外とわからない、知らない、出版における日本語表記のしかた。ルビの振り方、「盆踊り」の翻訳、「ちりがみ」は死語?校閲部から見た、日本語がわかっちゃいます。【中央館2F 749.13/IN】

  • 「間違いをみつけて「けしからん」と思っているわけではないし、粗探しをして喜んでいるわけでもないのです。良いものを、世の人が素直に「良いね」と言ってくれるように願って点検をし、磨きをかける。それが校閲の仕事なんです」(P15)
    「自分を専門家だ、日本語の知識は誰にも負けない、などと思っている校閲者は、はっきり言ってダメな校閲者です。己れを疑わない校閲者に、校閲はできません」「「テキストと自分自身を、上手に疑う」能力は、校閲者の大切な資源です」(P16)
    「ウィキペディアは」「信用しきっているわけではないが、他に確認の代替手段を見つけるのが困難で、それが文意に大きな影響を与えない箇所である場合に限って、やむをえず確認手段とする」(P38)
    「新しく制定した当用漢字(今は常用漢字)グループの中では、「俗字」という簡単な字形のある漢字は、その簡単なほうを「新字」ということにして、難しい形の「正字」は「旧字」と名を変えて引退させましょう、ということになった」「当用(常用)漢字以外のグループでは、昔ながらの決まりどおり、難しい方の「正字」を使うのが正しい」「ああ面倒ですね」(P75)
    「餅」「餌」「遡」「遜」「謎」「鬱」「瘦」「麵」「曾」「麴」(P76-)
    「歌謡曲のタイトルに「シクラメンのかほり」というのがありますが、「かほり」(香り)というのは旧仮名としてはおかしい。旧仮名は「かをり」です」(P97)
    「「言う」は旧仮名「言ふ」。その活用形なのでハ行になる」(P103)
    「「ギョエテとは俺のことかとゲーテ言い」という川柳もあるくらいです」(P137)
    「カルガモの写真につけられたキャプション「カモ」」「キャプションというものが、写真や図版の、「見ても分からない」部分を補足説明するものだ、ということが忘れ去れています」(P152)
    「圧倒的な映像でお送りする」「「いったいどういう点が「圧倒的」なのかはっきりしない」「比較する性質が次の語で示されるか暗示されないと、落ち着かないのです」(P158)
    「そもそも「それは存在しない」とか「無い」という証明は不可能なのです」「逆にそういう言い方は「存在する」「有る」という証明は簡単です。信頼できる実例を一つ見つけさえすればよいのです」(P168-)
    「アパレル業界はシーズン毎に服が売れてくれないと困るので、次々と新しい呼称を考え出して差別化するのだろうけれど、言葉の世界から言うと、ちょっと問題です」(P174)
    「校閲ってのはさ、つまり…服の裏地を作る職人みたいなもんだ。外からはよく見えない。しっかり出来ていて当たり前。でもその出来具合で本物かどうか分る人には分る」(P188)
    「判定者になるのではなく、「素人であることのプロ」(迷い、調べ、考える人間)であり続けること。どんな時代になろうが、日本語を前にして、そういう作業をする人間は求められるだろう、と私は予測しているのです」(P219-)

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