解縛: しんどい親から自由になる

著者 :
  • 新潮社
3.09
  • (6)
  • (19)
  • (19)
  • (17)
  • (4)
本棚登録 : 215
感想 : 35
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (187ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103351115

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • タイトルの「しんどい親」というところが中心ではなく、小島慶子自身の生き方について書かれたような本。

    よくここまで赤裸々に自分がどんなふうに育ち、どんな風に考えて生きて来たかをオープンに記したなと。
    普通だったらもう少し取り繕ったり美化したりするような部分も感情丸出しで記載してあるところがこの本のすごさ。

    人の弱さを認められない、人が何を考えているのか妙に勘ぐってしまう、競争心が強い
    などの要素が常に絡み合って生きにくくなっているんだなと。
    頭が良いので、その状況を自分なりに理解できていつつ、エモーシャルに突き進んでいるような。

  • 幼い頃から達観しているというか、とても冷静で自分の感情を整理し、自覚している。
    「こんなにつらい幼少期でした」というよりも、「こんなふうに当時思ってたんですよね。我ながらアレですけど。」みたいな。それが結構大変な状況だったりする。そりゃ大小あれ子供なりに口にできないこととか空気読むこととか違和感感じても自分を言い聞かせてしまうこととか。子供だってすべてありのままをアウトプットしてるわけじゃないけど、著者はそれが振り切れてる。大人でもそんなふうに考えられない人もいる。

    自分の自尊心としっかり向き合っている。でもそれが早すぎたのか、自尊心むき出しの幼少期の女子グループや青年期のクラスカーストの中では、それゆえに悩むことも多かったと思う。
    仲間に入れてもらいたい、羨望の眼差しを向けられたい、羨ましい、恥ずかしい、情けない。そういった心の動きの動き。

    一般的には、自尊心に対して無自覚に目を背け、傷付いたり付けられたりすることが多いのが思春期ってやつ。それを真正面から受け止めている学生時代。後から気付く人は多いだろうけど、著者のようにタイムリーに真正面から、ときにドライに向き合える人は稀有だと思う。

    自分に自信を持つって難しい。
    著者は特に母親から自己肯定感を高めてもらえないような育てられ方をしたように思う。父親も姉もそこから救う存在ではなかった。だからこそ自信を身につけるために、心と頭を動かし続けた。でも、そうして得られたものはさもすれば正論ハラスメントの匂いがしてくる。「だって、○○でしょ?何か間違ってる?」って。必死に身につけた自己肯定感や自信は、根拠のない自信があるような明るく根っからポジティブな人には敵わないのかなと、自分と非常にシンクロしてしまって、考えさせられた。

    フェミニストと聞くと過度に偏りのあるかんじがしてあまり好きではなかったし、今でも好きでは無いが、子供を産んでからは少し気持ちが分かるようになってきた。
    「子供産んだことないでしょ!?息してるかな?寝返りで窒息してないかな?ミルク飲まないなぁ…。うんち出てないなぁ…。離乳食たべてくれないなぁ…。そんなことで神経削ってストレス溜めて一喜一憂する毎日。「今日1日食べないくらいで死なないよ」?それができる昨日までの安全健康と明日以降の安全健康を私が世話してるから、初めてその理屈が通るんであって、やってねえ奴が言っていいセリフじゃねえ!
    と思いつつも、みんななんとか当たり前の顔をして毎日を生きている。仕事のストレスとは別の種類のストレス。集中すれば5分で終わることが1時間もかかったりする。今日やりたかったことが一切できなかったりする。片付けても片付けても片付かない。もちろん人によるだろうけど、私は年収600万くらい稼いでた頃の仕事のストレスの方がまだマシだなぁと思ったりもする。子育ても結婚も向いてないなぁと思ったりもする。
    このストレス分からねえだろ?!って責めるようなことはいちいち思わないけど、何かの意見を聞いた時「まぁそりゃ、このストレス経験したことないですもんね。ま、仕方ないですけど。」と頭にはちゃんとよぎるくらいにはフェミニストなのかもしれない。私は37歳で子供を産んだけど、その10年の間に性格が丸くなったと自分でも思う。もし10年前に産んでたら、SNSで偏った攻撃的な意見を発信する立派なハラスメント的フェミニストになってたかもしれないなぁと思う(笑)

    本書の中にある「真剣に育児をしていれば、何かあとひとつきっかけがあれば虐待してしまうかもと思う瞬間がみんなある」って言葉に涙がぽろぽろ溢れた。


    タイトルからして親のことばかり書いてあるのかなぁと思ったけど、そんなこともなく。著者の幼少期からのエピソードと考え方が多く書かれていて、悩むことや社会とぶつかることが増えてきて、そういう考え方に何故なるのか?を辿ると親に行き着くというお話。
    親側からすると「親の思う通りには育たない」と思うけど、子供は親の影響を大きく受けるなぁともやはり思う。

    著者はADHDらしく、私もそうだしうつ病と不安障害を経験してるので、その部分もとても共感しながら読ませてもらいました。




    ◆内容(BOOK データベースより)
    幼い娘に理想を押し付ける美人の母。9歳上の姉の平手打ち、父の恫喝。女子アナとして振舞うことへの違和感と葛藤。大人になった私は、不安障害を発症した。光を求め続けた魂の半生記。つらい子ども時代を手放すための手記。

  • 小島慶子さんの追想の書。まえがきを読んでもう打たれたような気持ちになる。

    〈私たちは、どうあがいても自分の身体から自由にはなれません。身体が違うということは、実感が違うということ。それぞれが、自分にはこう見えた、自分にはそう思えた、という積み重ねの上に世界を描き出します。人は、思い込みの家族を生きるほかないのです。それで苦しむこともあれば、幸せにもなれる。修羅場にも聖地にもなるのが家族なのですね。そしてそのどちらにも、逃げ場はないのです。〉

    〈いつか私の息子たちも、私の知らない家族の思い出を語り始めるでしょう。どれほど思いを尽くしても、彼らは私が見ているのとは違う家族を生きる。その彼らの物語と私の思いの、どちらが本当かを決めることは出来ません。〉

    〈そう認めることは、なんと切なく、もの狂おしく、勇気のいることか。この手記を書いたことで、それを引き受けざるを得ない親の気持ちが、ようやくわかりました。〉

    親子、家族の関係は本当にこれ。
    近ごろは「毒親」という言葉が浸透してきて、主にSNSでさまざまな毒親エピソードが語られているけれど、それだって申し訳ないけど主観でしかないよなぁと感じていた。
    母と娘のあいだで交わされた言葉をはさんで向かい合う時、それが真逆、裏表の意味になってしまうことは、不可思議でありながらも当然なんだ。
    どうしたって同じように家族を捉えることは大抵の家族においてできっこなくて、それは悲劇でもあるけれど、だからこそ同時に救済にもなり得ると私は思ってる。最近特に。

    小島慶子さんは綺麗で聡明で、輝かしい経歴をもつ女性なのに、これほど苦労と障壁の多い人生を歩んできたんですね。
    読み終えて、人生観も、言葉の選び方も素敵だと思った。この世界の物事の捉え方は、幼少期の彼女もひっくるめて共感できる部分がすごく多かった。
    この本を出版するのにも様々な困難があったと思うけれど、血肉を削ぐように書いてくれてありがとうございます、とお礼を言いたい。
    小説は読んだことがあるけれど、他のエッセイもいろいろ読んでみよう。 

  • 孤独な脳
    わたしはわたしの家族を描いている
    一つの明快な正解ではなく、考え方、見方が増えると捉える
    曖昧さを受け容れる
    私は私と二人きりである
    などなど、ハッとする言葉がたくさんだった
    表現の仕方が好き
    これ読み始めたの一年前だけど、一年前の自分は母親を恨んでいたんだなあ

  • 小島慶子の自伝。
    彼女の本はこれで2冊目。

    彼女が記した『わたしの神様』という女子アナが主役の小説を読んだとき、鋭い描写と感じると同時に、何でこんなに屈折した人物ばかり出てくるのだろうと思ってたけど、これを読んでわかった。
    つまり、彼女の実体験がベースだったのだなと。
    今までこの手の本は何冊も読みましたが、世間的には成功者として見られる彼女が、ここまで過酷な経験をしてたとは露知らず。

    転勤族の娘として生まれ、癖のある両親と姉に育てられ、転勤のたびにスクールカースト→いじめに遭遇し、15歳で摂食障害となり、女子アナになったはいいけど男性社会で虐げられ、結婚して子供を持つと今度は不安障害で葛藤する。
    そういう中で、女子アナを「男性優位社会に依存して特権を得る女の象徴」、家族を「愛の債権者」と言い切る彼女独特の鋭い感性と、家族に認められなかったことに由来するガラスのハートが作られたのだなと。

    そして、毒親の元で生まれ育った以上、そういう運命から逃れられないと感じた。
    最終的には自分で乗り越えるしかないのだと。

  • すごく共感。

  • 一文一文に込められた意味が濃密なのに、そのまま頭に入ってくるところは、さすが正確に言葉を伝えることを長年の使命として、それを果たしてきた人だからだなぁと大変感心した。
    また、言葉の端々に他人からのさまざま呪縛が滲み出ており、読んでる方は苦しくなる。
    私も自己愛だけの強い母親に育てられてきたため共感する点も多いが、作者のように、多くの出来事を毎回ここまで徹底的に掘り下げて消化していたら苦しかっただろうし、家族に分かり合える人がいなかった様子も彼女の悲劇を深めたと思う。

  • 779

  • 小島慶子さん、私は好きでテレビに出てたら見ちゃうんです。
    強そうでキレイな女性っていうのが見てて気持ちよくて憧れます。
    天海祐希とか江角マキコとか木村佳乃とか。

    さて、この本は自伝的エッセイで家族との関係について書かれていますが、すごく共感できます。
    私もですが、同じような『家族を諦めてる』人って、結構いると思います。
    だから、自分で作った家族をすごく大切にしたいという気持ち、子育てに関してもかなり真剣に真面目にやってしまって更に自分の首を絞めてしまったり。
    多かれ少なかれ子育ては誰もが苦しい思いはするかと思いますが、何かにつけて『自分が悪い』と思い込んでしまうことが私にもありました。
    あとがきを読みながら涙してしまいました。
    私も誰かが欲しがっている言葉を言ってあげられる人になりたいと思いました。

    細部に渡って、なんとなくモヤモヤと感じていたことを的確な言葉で書いてあるので、読んでいて自分のことも客観的にわかったりして、スッキリしました。

  • 昼間にTBSラジオでたまたま小島慶子さんの番組を聴いてファンになりました。
    小島さんの独特の透明な率直さと明るさが好きなのですが、いろいろと大変なことがあった人だったんだとびっくりでした。

著者プロフィール

エッセイスト、東京大学大学院情報学環客員研究員。学習院大学法学部政治学科卒業後、95〜10年TBS勤務。99年第36回ギャラクシーDJパーソナリティ賞受賞。独立後は各メディア出演、講演、執筆活動を幅広く行う。ジェンダーや発達障害に関する著述や講演をはじめ、DE&Iをテーマにした発信を積極的に行なっている。2014年より家族はオーストラリア、自身は日本で暮らす。連載、著書多数。近著に対談集『おっさん社会が生きづらい』(PHP新書)。

「2023年 『いいね! ボタンを押す前に』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小島慶子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×