BUTTER

  • 1325人登録
  • 3.50評価
    • (39)
    • (136)
    • (126)
    • (30)
    • (7)
  • 159レビュー
著者 : 柚木麻子
  • 新潮社 (2017年4月21日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (460ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103355328

BUTTERの感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • ここにオンナの一生の全てがある。
    母と娘の、父と娘の、女と女の、そして男と女の、愛と憎。
    子どもの、思春期の、適齢期の、女としての価値とその揺らぎ。
    シングルマザーの、働く女の、子を欲する女の、悩みと迷いと決意。
    その全てを濃厚なバターでくるみ、これでもかこれでもかと突きつけて来る。
    あの、木嶋佳苗の事件があった時、私は何を思ったか。なぜ多くのオトコがあの決して若くも美しくもないひとりの女に溺れ、そして死んでいったのか、と首をかしげたはず。なぜだ?と。
    なぜこんな女に、と。そこに彼女を、そして男たちを見下す視線はなかったか。
    この物語を読んでいる間ずっと、肌を突かず離れずの距離でなでる生温かい手を感じていた。気持ちよくはなく、かといって鳥肌が立つほどでもない、そのざわざわとした得体の知れない居心地の悪さは自分が木嶋がモデルの梶井真奈子にからめとられていく恐怖だったのかもしれない。
    普段、自分のためだけに食事を作る事なんてほどんどない。外に出かける予定のない休日には化粧もせずだらしない時間を過ごしている。
    私も「自分のために」何かをすることを放棄している女のひとりだった。もしもどこかで彼女と出会っていたら、間違いなくその圧倒的肉感的楽観的自己肯定感にひれ伏し、嫌悪しつつも飲み込まれていっただろう。もしかすると彼女から見放されることに恐怖し、ひたすら動かされる駒になっていたかもしれない。そしていつか彼女に興味を示されなくなったとき、この命を落としていたかもしれない。どこかでとどまらなければ、飲み込まれるなと自分を引き止める声を聞きつつ読んだ。おいしそうな料理の数々に恍惚となる、けれどその裏側に人間の恐ろしく弱い業が口を開けて待っている。
    クチから始まりクチで終わる。自分を現実につなぎとめるために今日も私は料理を作り、そして食べる。

  • 雑誌記者って職業は大変だ。
    取材対象の半生を調べ、自分がその人になってしまう勢い。
    主人公だけじゃなく、親友も半端ない。
    だけど里佳は殺人こそしないけど、梶井を超えた気がする。

    タイトル通り、とっても濃い内容だった。
    私は本当に美味しいバターを食べた事はあるのだろうか・・・

  • タイトルのBUTTERそのままに
    こってりと胸焼けしそうなストーリーがどこまでも続き、
    このまま読んでも読んでも終わらないのではないかと思えてくるほど濃厚な物語でした。
    なぜこんなにも読んでいて胸につかえるのか・・・
    自分の価値すら自分で決められないことにもがく主人公の姿は身に覚えがあるものばかり。
    「~でなければならない」ことばかりがどんどん増えて窮屈になっていく世の中で
    まわりの価値基準に合わせて生きていたら
    自分の「適量」さえも見失ってしまうだろう。

    小説のモデルとなった木嶋佳苗が逮捕された時
    私たちが心穏やかでいられなかったのは
    彼女が犯したとされる犯罪そのものよりも
    自分の容姿や生活を他人の尺度ではかることなく
    自分はそれだけの価値のある美しい女だと揺るぎない自信を見せつけられたからだったのではないか。

    心の中に投げ込まれた小石の波紋が
    読み終わった後いつまでも広がり続けています。

  • 木嶋佳苗をモデルにした連続殺人犯梶井真奈子と、獄中の彼女に人生を狂わされる女性記者、里佳とその友人で妊活に悩む玲子。3人の女性の物語は、読み進めるにつれ濃厚に展開していく。カジマナが愛して止まなかったバターのように。女性として生きていくときに課せられるハードルやレッテル。そんなものに立ち向かう2人を、奔放な獄中の女が翻弄する。「羊たちの沈黙」のような印象。実際の事件を下敷きにしながらも、この小説で語られるのは今を生きる女性たちの生きる息苦しさ。いくつかエピソードが多い気もして、読み進めるのが苦痛なところもあったが、筆致は見事。他の作品も読んでみたい。

  • 濃密、という言葉がぴったりの作品だと思います。
    460ページなので長編としては標準的なページ数だと思いますが、読み終えるのにそれなりに日にちを要しました。
    面白くなかったとかいうわけでは全然なくて、どんどん読み進めるタイプの作品ではなかったからです。
    とにかく主人公を含め、カジマナに翻弄される人たちの心情の揺らぎがリアルで、かつ重い。
    本書は個人と世間体といわれるものとの距離感の取り方もテーマの一つになっていますが、自身の常識、価値観と照らし合わせて読むとより心に響くと思います。
    柚木さんって読者の気持ちをぐらつかせるのがうまいですね。
    個人的には物語中盤、主人公の友人の女性が単身である行動を起こすところが読んでいて一番スリリングで面白かったです。
    ただ、それ以降はやや平板というか、心情の変化という意味では予想を超えるものではなかったかな。
    物語の展開自体はカジマナの復讐があったりしてそれなりに起伏に富んではいるものの、できればもうひと驚きさせて欲しかったと思いました。
    それでもこのテーマを描ききった柚木さんの勇気に敬意を表して、星5つとさせていただきました。

    それと、本書は装丁も素晴らしいですね。表紙の紙質もこれしかない!っていう手触りでGOODです。

  • とにかく重量のある作品。
    読み終えるのにすごく時間かかったなぁ。
    なんだか、殺人自体はどうでもよくなってくる
    男の人たちも幸せだったのかもなぁ
    なんて、思ってしまう。

    柚木さんってこんなに文章力があったのかと
    改めて感じた。
    バター醤油ごはんしかり、
    食べ物の描写はすんばらしかった。
    こんなにバラエティに富んでいて
    的を得るのはすごいことだと思った。

  • 記者と殺人容疑者のやりとりで、前半は面白く感じたが場面が進まず、特に大きい事件も起きず、話が長く感じた。記者の心が変化していくのを楽しむ物語なのかなと思った。食べ物に関する記述が多く、作者が食べたかったのかな?と思った。美味しいバターを、いつか一度食べてみたいと思った。

  • 面白い‼
    冒頭よくある女友達の話かと躓きそうになるがカジマナが
    登場すると一転引き込まれた‼
    やり手週刊誌記者の里佳はスレンダーで食に関心ががなく、荒れた肌で潤いがない。拘置所の中の梶井真奈子はデップリ太って白い柔らかい肌で潤っている。取材の為カジマナの言うとおりバターを食べた里佳はその美味しさに取り込まれて行く。
    カジマナと親密な関係に近づくにつれドンドン太って行く里佳。
    食堂カタツムリは誰かの為にその人の為の料理を作ることで癒されていく話。こちらは自分の欲望のまま食べる。どっちも食や料理の話だけどまったく違って、両方面白い❗

  • 美味しそうな料理ばかり出てきて何という飯テロ小説...いやそれだけではなく、食べるとは、幸せとは何か、色々詰まっていた。
    料理教室の生徒さんの「旦那や子供にフレンチ作ってもねえ」という台詞超わかる!
    伶子の変貌ぶりにびっくり。
    余談ですがとあるゲームの滝山城というキャラが伶子っぽい。色白で細身で家事が得意。

  • バターかけご飯の美味しさに引きずり込まれる様は魅力的でも、おそろしいひとに引きずり込まれる様は読んでいてヒヤヒヤものだった。

全159件中 1 - 10件を表示

柚木麻子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

BUTTERを本棚に登録しているひと

BUTTERを本棚に「読み終わった」で登録しているひと

BUTTERを本棚に「積読」で登録しているひと

BUTTERの作品紹介

木嶋佳苗事件から8年。獄中から溶け出す女の欲望が、すべてを搦め捕っていく――。男たちから次々に金を奪った末、三件の殺害容疑で逮捕された女、梶井真奈子。世間を賑わせたのは、彼女の決して若くも美しくもない容姿だった。週刊誌で働く30代の女性記者・里佳は、梶井への取材を重ねるうち、欲望に忠実な彼女の言動に振り回されるようになっていく。濃厚なコクと鮮烈な舌触りで著者の新境地を開く、圧倒的長編小説。

BUTTERのKindle版

ツイートする