金魚鉢の夏

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 206
感想 : 47
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  • Amazon.co.jp ・本 (327ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103358916

作品紹介・あらすじ

「ジージ、早く解決して温泉行こう!」オーバー還暦捜査員と孫娘が福祉施設の闇に挑む。社会福祉の大胆な切り捨てで経済大国に返り咲いた近未来の日本。警察の経費削減で捜査を委託された元刑事の幸祐は、孫娘の女子大生・愛芽と共に、老婆の死亡事故が起こった山奥の福祉施設を訪れる。単なる事故死のはずが、閉鎖的でクセのある施設の人々と接するうち幸祐の勘が騒ぎだして……スモールタウン・ミステリの傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 予算削減を名目に社会福祉や刑事罰などで、大胆な改革が行われた日本の近未来が舞台。元刑事で捜査を依頼された一之瀬は、生活保護廃止に伴い設置された「希望の家」での死亡事故を調査する。すると次々と犯罪が明らかになっていき・・・
    社会改革、恋愛、領土問題、経済問題など、風呂敷を広げすぎの感も。なんとなくすっきりしないまま読了。

  • うーん、何だろうなあ、これは。
    私の最も好きな作家である樋口有介。

    彼が第一回サントリーミステリー大賞で、故開高健氏より「コクがあるのにキレがある」といったような表現で絶賛されたデビュー作「ぼくと、ぼくらの夏」を初めて読んで以来、その独特のハードボイルド文体に魅了され、新作が出るたびに胸躍らせていた彼の最新作なのだが------。

    探偵は、警察をとっくに定年退職した民間の老人。
    しかも時代設定が不可解。
    北朝鮮が日本に実際にミサイルを撃ち込み、そのお蔭で日本がバブル以来の好景気に沸いている時代という設定。
    ラストなどは、某国軍が或る国の島に攻め入って上陸したという終わり方。
    近未来小説なのか、これは?

    貧しい人たちの福祉施設で起こった不可解な死亡事件。
    目撃者の証言から謎は深まり、美しい施設長夜宵の存在もあり捜査にのめり込んでいく民間老人探偵一之瀬幸佑。
    この施設には由希也と蛍子という幼馴染の少年少女もいた。

    まず、キャラクターにそれほど魅力を感じない。
    幸佑然り、由希也と蛍子また然りだ。
    文章も、これだけの老人になるとハードボイルドタッチにするのも無理があるのか、作者独特のキレのいい文体ではない。
    70の爺さんに色気を感じるアラサーの若くて美しい施設長というのも、
    違和感ありありだ。
    どことなく陰のある少年由希也と彼を慕う蛍子の心情の掘り下げも浅い。

    うーむ。
    最後のオチさえも、それまで張り巡らせえた伏線を、広げっぱなしにしたままで、全く回収する意図さえ見えない。
    どうなんだろうね、これは。

    ここ数年の作品は、どうにも今一つ楽しく読めなくなってきたのだが、ここまで来ると、もはやあきらめの境地だ。
    樋口さん、沖縄に隠居したせいで年老いてしまったのかなあ。
    もう一度、ヒット作の「柚木草平シリーズ」にでもチャレンジしてくれないだろうか。
    さもなければ、苦しいかと思うが、高校生あたりを主人公にした青春ミステリーに。
    このままでは私の最も好きな作家が消滅してしまうことになる。
    時の流れとはいえ、それは悲しい。

  • 北朝鮮がミサイルを撃ってきた後の世界
    生活保護施設での転落死から
    事件が思わぬ方向に転がって…

    話の動き出しが遅いし、
    最後までモヤモヤした感じで終わった気がする。
    そんな終わり方でいいの?

  • *社会福祉の大胆な切り捨てで経済大国に返り咲いた近未来の日本。警察の経費削減で捜査を委託された元刑事の幸祐は、夏休み中の孫娘・愛芽と共に、老婆の死亡事件が起こった山奥の福祉施設を訪れる。単なる事故死で片づけるはずが、クセのある施設の人々と接するうちに幸祐の刑事根性が疼きだして…ノスタルジックな夏休みの情景に棄てられた人々の哀しみが滲む傑作ミステリ*

    一言で表すならば「ぎっしり」。これでもか!と言うくらいに色々なネタや仕掛けがぎゅうぎゅうに詰め込まれている感じ。近未来の設定も、まさに今起こりうるような展開も面白かったし、樋口ワールドも堪能したけど、ネタが多すぎて収束しきれていないのがもったいなかった。とは言え、さすが樋口ワールド、蜃気楼の向こう側に揺れるようなラストが心地いい。

  • 生活保護法が廃止されるなど、社会福祉を大幅に路線変更した近未来の日本。生活保護の対象となっていた人々は「希望の家」なる福祉施設へ集められていた。そこで起こった老女の転落事件。ただの事故で片づけられるはずが、突き落とされると主張する職員が現れたことで、元刑事(とその孫娘)が呼び寄せられることになる。
    という導入から始まる、ミステリ…というより、仮想のこの設定をもとに、「歪んでいる社会」を照らし出した物語、といいましょうか。
    祖父と孫娘のミステリという売りのようでしたが、それを期待するとあらあらという方向へ物語が進みます。途中、施設の少年と孫娘のふれあいがあってしんみりするのですが、それも途中でぶつ切り感があって…あえてぷっつりと断つことで、置かれた立場の違いを表しているともいえるんでしょうが…。
    話のコアは、極端な福祉政策を取り「みんなが幸せとなるような社会」となって経済大国となった日本の、同時に抱えているいびつな幸せの裏側を照らし出すことにあります。状況はあくまで仮想下ではありますが、格差社会といわれている現代社会のリアルにおいても、まったく起こりえないとはいえない真相がそこにはあり、ぞわりとした嫌な感覚を持たせます。
    装丁から感じ取れる爽やかさ切なさをもとに読み始めると意外に重い終盤の展開に沈むかもしれませんし、謎が解決してすっきりという話でもないので、ぱっと見より重たいし人を選ぶ物語だと思いました。
    個人的には老(元)刑事と所長の恋物語…的な要素はあまりどうかなあと…。よほど先に書いた、少年と孫娘の出会いと別れをもっと書いてほしいなと思いました。

  • 帯と表紙に惹かれて読んだ。正直それほど期待していなかったのに次々起こる怪しい事件に心を躍らせ読み進めた。

    **ネタバレ**
    おじいちゃんホームズと孫娘ワトソンか、新鮮だな(*'ω'*)と読んでみたら全然違う…!設定はリリー・フランキーの短編を思い出した。こんな世界になればいいのにって思っちゃうのは自分が恵まれているからなんだろう。名探偵役を期待したひとは普通の女子大生と普通の元警官でしかなかったし、頑張ってみても結局名探偵はいないんだと衝撃を受けた。謎解き部分がしっかりしてないからミステリ色は強くないのに、やたら考えさせられる。おじいちゃんは頑張ったし、ちゃんと事件に迫ったけれど肝心のところはうやむやなまま。神の視点からしかわからない事件はまるでタイトルの金魚鉢のようだった。
    そのわざわざタイトルになっている金魚鉢。小さな金魚鉢で泳いでいるのは誰なんだろう。由希也と蛍子はいつか罪に窒息するのではないか。夜宵のことを知った蛍子が由紀也への束縛を強くしそうで、気持ちを繋ぎとめるために、共犯で居続けるために殺し続ける未来が見えてしまった。

    ただ説明に出てくる海外の描き方がいまいち。近隣諸国を嫌いなのは別にいいのだが、小説で押し付けられちゃうとちょっと引く。私だって好きではないけれど、いちいち地の文に作者の影が出るのはきつい。あと、人名が読みにくい。愛芽を何度「あいめ」「まなめ」と読んだことか。夜宵って字面は綺麗だけど弥生でもいいじゃん…。設定が突飛なのはミステリにはつきものなので、それを差し引いてもおもしろかったけど、私が編集者なら直すかなあ。

  • 生活保護制度が無くなった近未来日本のお話。
    児童ポルノ、臓器売買、殺人事件、等々盛りだくさんの割にはすべて隠蔽される。そのことに納得する元警察官探偵。
    生保が入れられる「希望の家」ここは自立できる人だけ、その先の施設もあるようだけど、深入りしないでよくあるパターンの虐待からの親殺し、なんかなぁ~。
    もっと堀下げてほしいのに元警察官探偵の孫やキャリヤ官僚所長との話に紙面をさいて中途半端な終わり方のような気がする。
    刑務所が無くなって流刑になってもお金があれば免れることができる。
    某国のミサイル攻撃から始まり、某国の尖閣諸島上陸と、何が言いたいのかわからない。

  • 樋口有介作品初読み。救いが有りそうでない感じ。私は韓国朝鮮にさほど興味がない(特に芸能界、ただし主張がまともでないなと思うことは多々あり)が嫌韓と言うほどでもないのですが、作者は嫌韓嫌中なんだろうなあ。。。刑務所は最悪で死ぬより辛い生活が待っている社会だと犯罪者が減るだろうなというのは同意かな。

  • 夏といえば樋口有介さん!しかも青春ミステリ!
    で、期待して読んだのですが、時代設定に力が入りすぎたのか登場人物が薄っぺらい印象…。
    由希也にもうちょっとヘラヘラ感が欲しかったな。って無理だわ。

  • 近未来の日本。なんかついていけなかった… 2014.7.11

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著者プロフィール

1950年、群馬県生まれ。業界紙記者などを経て、88年『ぼくと、ぼくらの夏』で第6回サントリーミステリー大賞読者賞を受賞しデビュー。『風少女』で第103回直木賞候補。著書に『礼儀正しい空き巣の死 警部補卯月枝衣子の思惑』、「船宿たき川捕り物暦」シリーズの『変わり朝顔』『初めての梅』(以上、祥伝社文庫刊)など。2021年10月、逝去。

「2023年 『礼儀正しい空き巣の死 警部補卯月枝衣子の策略』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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