アメリカ最後の実験

著者 :
  • 新潮社
3.38
  • (5)
  • (32)
  • (28)
  • (4)
  • (5)
本棚登録 : 262
感想 : 33
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103398110

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 父親を捜すためにグレッグ音楽院を受験する主人公と、ライバルたちそれを取り巻く人々の、「音楽」で一体何ができどこまで行けるのかを模索した物語。

    SFっぽくあり、でもSFっぽくなく、現実っぽくもあり、架空っぽくもあり、小説なので全て架空なのだが、この境界をいったりきたりする感じで音楽の持つ面白さがうまく強調されていて、不思議とこの世界観に浸かってしまう。

    本物のピアノでは決して出せないと言われる特殊な音程を出せるシンセサイザーと言う架空の楽器がまたたまらなく、現実の楽器そのものがそもそも過去と現在をつなぐもので、まるでそこに特殊な音程を出せるという未来の楽器が登場したような描かれ方はワクワクしてしまう。

    音楽も進化しているから、いつかきっとこういう楽器も生まれるんだろうなぁと。

    陰謀論的な部分はあまり好きな感じではなかったが、未知の楽器の登場とライバルたちとの演奏バトルめちゃくちゃ面白かった。

  • 宮内悠介の描写する、砂漠や岩山の風景が好き。盤上の夜にもあったよね。
    ひび割れるくらい乾燥しきった叙情。

  • ピアノとジャズを主体に音楽を大きな背景にもつ小説。

    「蜜蜂と遠雷」と共通する部分を感じつつ(こっちの方が先に刊行された小説なんだが)、こっちの方がとんがっていてニヒルでクールな味わい。そこはやっぱジャズとクラシックというジャンルわけなんだろう。

    伏線回収が少々荒っぽいのが残念。ほったらかしにはしていないんだけど、もっと掘り下げても良かったんじゃないだろうか?あっさりも味わいのうちなんだろうが、まだまだしゃぶれそうな素材なのに、なんだか勿体ない気がする。
    つまり、続編というかこの世界観の小説をもっと読みたいぞっ、てことだ!

    ドのシャープとレのフラットが区別できるような聴覚と感性、それを演じ分けられるような技量。そういう天性と努力をもって磨き上げられた奏者…カッチョ良いよなぁ。
    怠け者で凡人の俺には、まったくもって届かない世界ではあるが。

  • 音楽がテーマのミステリ/SF。演奏シーンの描写もよかった。

  • 嫌いじゃないけど、好みじゃない。
    出会いの妙で「盤上の夜」「アメリカ最後の実験」という順で読んでいたら宮内悠介はマストバイリストに入らなかったな。

  • ピアニストの櫻井脩はグレッグ音楽院の試験に挑むが,試験会場でマッシモとザカリーに会う.脩の父俊一もピアニストだったが,アメリカへ遁走して消息不明.ザカリーはシュリンク財閥の子供だが素晴らしい.テクニックを持っている.ザカリーのお目付け役のアルノから俊一の消息を聞き,リザベーションでパンドラと称する俊一が愛用していた楽器を見つける.ジャズ用語がふんだんに出てくるが何とか分かったので,楽しめた.試験の過程で殺人事件が発生し,模倣犯も多数現れる.脩は万一を考えてパンドラの予備器を調達しておいたが,それが功を奏して最終試験に臨んだ.全編にアメリカ西海岸の空気が満ち溢れている感じの描写が多く,楽しく読めた.アドリブを含めた音楽を文章で記述しているにもかかわらず,音が出てくるような感じがした.

  • 失踪した父を探してアメリカのグレッグ音楽院を受験しにきた脩。父は一時期、謎の楽器”パンドラ”を使うジャズピアニストとして知られていたことがわかり…
    脩や受験する仲間たち、失踪した父やその関係者たちそれぞれの音楽に対する思いが心を打つ。音楽とは何か、音楽は人をどう変えるのか、という重いテーマのわりに読みやすくエンタメ性が高い。登場人物それぞれの背景はそれだけで一冊の本になると思うのだが、ストーリー展開とともにあっさりしすぎでもったいない気がする。
    もう少しで大傑作だったかも。

  • 直木賞候補となった『盤上の夜』『ヨハネスブルグの天使たち』に続いて手に取った3作目の宮内作品です。初出が『yom yom』ということも影響したのでしょうか、これまでの作品と比べるとSF的な要素が薄まったエンタテイメント寄りの内容で、随分と読みやすくなっているように感じました。
    本作のメインテーマは「音楽」です。主人公である脩の家族の問題、グレッグ音楽院の試験を通した脩の音楽に向き合う心情の変化、そこで発生した殺人事件、さらにはタイトルである「アメリカ最後の実験」の意味など、「音楽」に関連した出来事が重層的に読者の前に現れます。私、音楽の本質的なところは全然知らなかったのですが、特段問題なく楽しめました。純正律の転調の話などはトリビア的な視点でも興味深く読めましたし。
    前述のように様々なものを内包しているにもかかわらず、分量的にみると非常にコンパクトに纏め上げられており、密度の濃い内容の作品に仕上がっています。それでいて読後感は重くありません。このバランスの良さは本作の美点だと思います。

  • 20160401読了。

  • 理論と感覚の間のような表現。
    ほとんどの登場人物で展開される親と子の物語。
    音楽に対してのSF的な視点。

    すっきりと読みやすく、マンガのように楽しめる作品でした。

著者プロフィール

1979年生まれ。小説家。著書に『盤上の夜』『ヨハネルブルグの天使たち』など多数。

「2020年 『最初のテロリスト カラコーゾフ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

宮内悠介の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×