原節子の真実

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著者 : 石井妙子
  • 新潮社 (2016年3月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103400110

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原節子の真実の感想・レビュー・書評

  •  一気に読んだ。本書の特徴は過去のインタビューを丹念に読み込み、本人の声を丁寧に拾っていることにある。そこから、本人の考え方や仕事に対する客観的な姿勢が良く見えてくる。労作。

  • 「原節子の真実」かどうかわからないけど、原節子の評伝。原節子って、現役時代もそれなりに有名だったんだろうけど隠遁したことで伝説と化し名を上げた面が強いんじゃないだろうか。大根役者と呼ばれた時代も長かったようだし、評価する人がいた一方、非難する人や大衆も常にいた感じ。動いている、つまり映画での原節子をほとんど見たことがないことあって、自分の印象としては動よりも静で美しい、そして主張のない人というイメージだった。『李香蘭と原節子』(四方田犬彦著)に影響された面もあると思う。
    でも、この本を読むとそんな原節子の印象がちょっと変わったかな。戦前の活動時は、電車で撮影所に通うなどいい意味で女優らしくない人だったよう。そして自分に学が足りないからと撮影の待ち時間は常に本を読んでいるようなとても真面目な人。だからだよね、人受けが悪かったりもする。
    真面目さゆえか気性のものか、戦前から水着グラビアを断ったり、俳優を色眼鏡でなく見てほしいといった主張もしているし、引退間近の頃の出演作や役柄をこき下ろすインタビューの引用などではヤケクソかと思えるほどの発言。
    何だかこの引退間際の40歳前後の原節子の振る舞いには、何だかシンパシーというか今の自分と似たものを感じた。人並み(恋愛して結婚して家庭つくる)でない生き方を何となく選択的に歩んでいるんだけど、何だかモヤモヤと逃した感、うつうつとした焦燥感や虚無感があるのよね。
    この本を読んで、演技や俳優という仕事に真摯に向き合おうとした姿は本物だと思った。一方で、義兄の熊谷久虎への盲目的ともいえる信頼や、戦中の国策映画への出演から戦後の民主主義を体現した映画への出演のあたりの気持ちの切り替えなどはどうしたんだろうと不思議にも思う。前者は真面目さゆえの盲目的な信頼とも考えられるけど、後者は演技に真摯に向き合うような性格が原節子の本質だとしたら、どう消化(昇華)して戦後も映画に出続けたのだろうか。著者が推察するとおり、戦後の活躍はある種の悔悟だったのだろうか。そうだとすれば、自身の出演作や役柄を酷評したのはなぜ……。
    結局、不思議な原節子像のまま。もう一度、『李香蘭と原節子』を読んでみようか。それとも出演した映画を見てみるべきか。

  • 内容(「BOOK」データベースより)

    小津との本当の関係、たったひとつの恋、空白の一年、そして引退の真相―。伝説を生きた女優の真実を鮮やかに甦らせた、決定版本格評伝。

  • 美しさ、強さ、優しさ。独身であることに理由が求められるのは何故かしら。

  • ▶新潮社より
    その存在感と去り際、そして長き沈黙ゆえに、彼女の生涯は数多の神話に覆われてきた。真偽の定まらぬままに――埋もれた肉声を丹念に掘り起こし、ドイツや九州に痕跡を辿って浮かび上がったのは、若くして背負った「国民的女優」の名に激しく葛藤する姿だった。伝説を生きた女優の真実を鮮やかに甦らせた、決定版の本格評伝。

    石井妙子 イシイ・タエコ

    1969(昭和44)年、神奈川県茅ヶ崎市生れ。白百合女子大学卒、同大学院修士課程修了。約5年の歳月を費やして『おそめ』(新潮文庫)を執筆。綿密な取材に基づき、「伝説の銀座マダム」の生涯を浮き彫りにした同書は高い評価を受け、新潮ドキュメント賞、講談社ノンフィクション賞、大宅壮一ノンフィクション賞の最終候補作となった。著書に『日本の血脈』(文春文庫)、『満映とわたし』(岸富美子との共著・文藝春秋)などがある。

  • 実は原節子さんという女優のことは、まったく知りませんでした。もちろん、小津安二郎監督の〝東京物語〟は観ていましたが、そのときは監督の方に関心がわき、小津監督に関する本を読んだりしただけでした。
    映画界を退いて半世紀以上、その間いっさいマスコミの取材に応じることもなく隠棲されて、それでも、いまなお〝伝説の女優〟とか、〝永遠の処女〟などと呼ばれている原さんて、いったいどんな女性だったのでしょう?遅ればせながら、すこ~し興味がわいて読んでみました。
    もともと原さんは裕福な家庭にお生まれになったようですが、家業が傾き、生活のために14歳で映画界に入られたようです。兄姉は良い学校を卒業されたにもかかわらず、末っ子の彼女だけが違う道を選ばざるを得なかったみたいですネ。戦前の映画女優というのは卑しい職業とされていたようで、その扱われ方もひどかったそうです。言うに及ばず、戦前の日本は封建的で、男尊女卑が当たり前。閉鎖的な映画界にあっては、なおさらのことだったでしょう。映画自体が低俗なものとして扱われていたのですから、女優の立場なんて想像以上に劣悪だったようです。しかし原さんは、ひょんなことからドイツと日本の合作映画に主演するチャンスをつかみます。無名の新人が、このことを機に映画先進国であるドイツやフランス、ハリウッドを巡ることになります。戦前のことですから、海外旅行をする人だって、ごく少数の限られた人だけだったでしょう。彼女の女優としての自覚は、その経験によって培われたのではないでしょうか?海外を旅した若い女性の言動は、その後さまざまな誤解も生んだようですが、それでも戦前・戦中・戦後、そして今に至るまで、銀幕のトップ女優であったということはスゴイことですネ。
    原さんは、随分ストイックな方だったんじゃないかと想像できます。映画には関心がなく、好んで女優業を続けたわけではないのに、それでも、仕事となると全身全霊で打ち込む。引退されてからはいっさい公に顔をさらすこともなく、生涯独身のまま、質素な生活をされていたとのこと。
    原さんは女優という職業を好きではなかったようですが、彼女は女優になるべくしてなった、天から選ばれた女性だったという気が、本書を読んでいたしましました。


    べそかきアルルカンの詩的日常
    http://blog.goo.ne.jp/b-arlequin/
    べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ”
    http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2

  • 原節子という人物をより深く知りたくなる、きっかけの一冊。

  •  本書のユニークなところは原節子を成功者としてではなく、「挫折した人物」として捉えていることだろう。自立した精神をもったキャラクターを演じることを望みながら、定型的な「お嬢さん」「お嫁さん」の枠内から最後まで抜け出せなかった絶望を主観的な筆致で描いている。小津安二郎の比重が従来の原節子研究に比べて低く、小津作品を彼女の代表作とは認めていない。引退の直接原因も小津の死ではなく、眼病に求めている(「成功」と発表されていた白内障の手術は実は失敗していたらしい)。総じて日本映画界が戦前も戦後も彼女の個性を生かせなかったという「恨み」が通奏低音のように響く。

     一般に「黒歴史」扱いされる戦前・戦時下の動向(反ユダヤ主義・国粋主義運動との関係を含む)に紙幅を割いているのも本書の特徴だが、「移動演劇団にも加わらず、軍隊慰問に行った形跡も見られない」(p.131)という点はどうなのか。兵士として従軍した私の亡くなった祖父が、戦中の慰問に原節子が来たという話をしていたのを父を通した又聞きではあるが聞いたことがある。確かな史料根拠がないので、身内に言うのもなんだがホラ話の可能性が高いが、映画本数の激減する大戦末期の「空白」の動きについては、「文化人の戦争協力」の問題の視点からも、さらなる事実究明が必要であろう。

  • 「美は美を意識した瞬間に失われる」だからでしょうか、原節子は自分の美を無造作に扱い、美にとらわれまいとしたそうです。大正9年(1920)会田昌江として生まれ、昭和10年(1935)14歳で原節子(女優)としてデビュー、昭和37年(1962)42歳で銀幕を去った「原節子の真実」をノンフィクション作家石井妙子さんが膨大な資料、綿密な取材をもとに、優しいまなざしで描いています。独身を貫き、ゴシップもなく・・・。平成27年(2015)9月5日、半世紀にも及んだ隠棲の末、生涯に幕を下ろしました。(享年95)

  • 原節子物語ってとこか。

  • 2016年の「新潮ドキュメント賞」を受賞した作品。伝説の女優 原節子の評伝。
    私が物心ついたときには既に銀幕から引退していたので、実際に活躍していた当時のことは実感としてない。しかし未だ伝説の女優、永遠の処女と形容され、実際どのような人生を送ったかは謎といえる。
    著者は現存する出演作品のほか、関係者や残された資料等で彼女の真実に迫る。まさに第二次大戦を挟み、戦前戦後を生きた女優であり、戦争に翻弄された女性でもあったと感じた。中年にさしかかった頃に表舞台からいつの間にか(引退宣言等していない)フェイドアウトしていった。そしてその後取材等も断り続け、二度と表舞台に出てこなかったことにより、より神秘的で偶像的な伝説となったともいえる。
    本論とは外れるが、この本に引用される過去の本、雑誌記事の文章(特に会話文)のゆったりとした美しさを感じ、半世紀くらいで言語とはこれほど変化していくのかと驚かされた。

  • 今年、DVDで「東京物語」を観てヒトメボレした、原節子。
    どんな人なのか気になって本書を手に取った。
    表紙の写真(早田雄二氏撮影)のがとびきり美しい。
    そんな原節子は、写真が嫌いだったという。早田氏には、
    「ポーズをとって、にっこりとほほ笑んで、『私、美しいでしょう』だなんて、こんなに醜悪なことはないわ」
    と語ったエピソードが紹介されている。
    真面目で一本芯の通った現代女性。
    写真からはそんな人柄が伝わってくる。

    終戦直後の食べ物がない時代、占領軍会相手に歌や踊りを披露すれば、食料品や生活物資が手に入ったらしいけれど、原節子は、それは女優の仕事ではないと断り、栄養失調でふらふらになりながら、飢えに耐えたという。

    原節子の美しさは、誇り高く潔癖な、魂の美しさに裏打ちされたものだと思う。

    反面、率直にものを言うので誤解を生んだり、生意気と言われたり、不器用で世渡り下手で。

    損をすることになっても自分の信念(道徳観)を通すことのほうが大事、という生き方は、周囲に理解されにくく、生きづらい人生だったのではないかと思う。

  • 平成27年9月5日、原節子こと会田昌江さんは亡くなった。享年95歳。
    しかしその死が公にされたのは約三ヶ月後の11月。
    これからもわかるように、引退されてからの動向は全くというほど表には出てこなかった。
    原節子の固い意志の表れである。
    その原節子の真実・・・このタイミングで。
    原節子が生きていたら、こういうたぐいのものはきっと却下されただろうな、「わたくしのことをとやかく書かないでいただきたいわ」などと。
    しかしその内容はというと、掘り下げすぎというか、綿密な取材のなせる技というか、原節子を取り巻く時事や時代にまで広がり、少し退屈な内容も織り交ぜられている。
    まあそうでなければ、週刊誌のゴシップネタのようなものになってしまうのだろうけど。
    原節子のファンにとっては、目新しい事実はないのかな。

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原節子の真実の作品紹介

小津との本当の関係、たったひとつの恋、経歴の空白、そして引退の真相……。その存在感と去り際、そして長き沈黙ゆえに、彼女の生涯は数多の神話に覆われてきた。真偽の定まらぬままに―― 埋もれた肉声を丹念に掘り起こし、ドイツや九州に痕跡を辿って浮かび上がったのは、若くして背負った「国民的女優」の名に激しく葛藤する姿だった。伝説を生きた女優の真実を鮮やかに甦らせた、決定版の本格評伝。

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