- Amazon.co.jp ・本 (159ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103500315
感想・レビュー・書評
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世界でこんなに苦しんでいる人たちがいるのに、それを知らずに今日まで生きてきた自分を恥じた。
どんな理由があったとしても罪のない人を傷つけ殺すことは許されない。つい最近まで平和な暮らしをしていたシリアの人たちの自由が奪われていることに強い怒りを感じたが、この怒りが戦争の連鎖を生んでいるのかと思うととてもやるせない気持ちだ。
「ねえ知っているかい?僕たちはチェスの駒なんだよ。チェスって駒ばかり傷つくだろ?そしてチェスを動かす人間たちは、決して傷つかない」シリアの少年の諦めたような悟ったようなこの言葉に胸が締め付けられた。シリアで苦しむ人たちのために自分に何ができるだろうと考えさせられる作品だった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
シリア。2017年の今も戦火が飛び交う。人口2000万人ほどの国で1000万人が避難生活を送っていると言われる。その難民となった人達の思い、叫びを記している。
掲載されている写真の中の人々、特に子ども達を見ると、1日も早く内戦が終わってと願わずにはいられない。
内戦が始まる前のシリアの風景、そして破壊されたシリアの風景。心が痛みます。
シリアの他にも、紛争が絶えない地域は他にもあります。どうして紛争は終わらないの?そう問う著者にイラクの青年の言葉に目を覚まされる。
「人間だから、じゃないよ。どうせそういうものだって諦めてしまう、人の心がそうさせるんだよ」
諦めてしまう。それはどうして?相手があまりにも強すぎるから?それもあるだろう。でも、もっと大きな理由は自分たちが"忘れ去られている"と感じてしまうからなのかもしれない。
「そこに生きる人々の声を伝えることで、彼らを孤立させない」と著者が言うように、忘れてはいけない、無関心になってはいけない。直接には何も出来なくても、世界の何処かにまだ、自分たちのことを気にかけてくれている人達がいる、と分かれば、少しは力になるのかもしれない。そんなことを考えた一冊です。 -
シリアと聞けば内戦や難民のイメージが強い。もともと気候に恵まれた農業国は、2011年の反政府デモで一気に状況が悪化する。米、露、トルコによる空爆が起き、シリアから大量の難民が国内外に逃れた。残った人は武器を取る他に選択肢がなかった。ヨルダンへ逃れ、先の見えない難民生活に疲弊しているシリア人。難民キャンプの環境の悪さ。負傷した身体。引き離された家族。殺された友人。人間である限り、争いはなくならないのかと問うと、こう返答される。「人間だから、じゃないよ。どうせそういうものだって諦めてしまう、人の心がそうさせるんだよ」
p85
反政府デモが広がっていった当初、その多くが武力ではない、言葉や歌での抵抗だった。けれども、容赦なく降り注ぐ爆弾を前に、人々が続けていた非暴力の抵抗の精神は打ち砕かれていったのだ。彼らが望んで武器を手にとりはじめたのではなく、そうするより他ない状況にまで追い込まれているのだ。