最後の秘境 東京藝大:天才たちのカオスな日常

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著者 : 二宮敦人
  • 新潮社 (2016年9月16日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103502913

最後の秘境 東京藝大:天才たちのカオスな日常の感想・レビュー・書評

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  • 世界最高水準・日本最高峰の芸術専門大学である「東京藝術大学」に通う学生たちとの対談をまとめたもの。

    普段はなかなか知りえない藝大の内側を垣間見ることができて素直に面白かったです。自由な校風と恵まれた環境、限られた時間とお金を存分に駆使して、全力で何かを表現しようとする学生たちの姿がそこにありました。本書では確かにななめ上の行動も多々紹介されているのですが、それぞれ自己実現に向かって真摯に取り組む真面目な人が多い、という印象です。

    奇人変人当たり前、非凡な学生たちをドーンと懐で抱える藝大。支えはするが後押しするわけでもなく、全力で向かってくる者を全力で受け入れ、指導するというよりは背中で魅せる鬼才溢れる教授たち。そして音校と美校、個々で並外れた技量を持ちながら互いに個性を認め合う学生たち。
    ゆるく正しく構成されたこの世界から秀でた才能が生まれ、それを今後も各分野で遺憾なく放出してくれると思うと、なんとなく日本の芸術分野は安泰だなと思ってしまうのです。

    来年は学祭にお邪魔してみようかな。半分は純粋な魅力と、半分は怖いもの見たさで。

  • 予約本。ふざけてやるのではなく本気。常にピュア。真剣でマジメなところに驚いた。みな学長みたいに「愛だ!芸術は爆発だ!」的なものを思っていたけど、離れたくても離れられないとか、芸術の方から選ばれたり、呼ばれる何かがあるのかもしれない…そう感じた。ブラジャー・ウーマンが苦しそうで切なかった。才能があるというのも大変なんだな。

    自由、才能があふれて天才、神みたいな天才が多いんだろうなぁ…と勝手に思っていたけど、才能とやるべきこと、向かう方向性などと常に押し合いへし合いしていて重圧に苦しくなったりするんだなぁ…と。著者の奥さまが個性的で、妙に落ち着いていて素敵でした。あと学園祭楽しそう!読んでいてちょっと自由の風を感じた。

  • 藝大生の妻をもつ著者の東京藝大潜入レポート。
    ネタ本かと思っていたら、取材やインタビューに基づき、藝大生のリアルな姿を教えてくれる1冊でした。

    多彩な専攻があることにびっくり。
    作曲、音響心理、アートマネジメント、舞台芸術…など何でもありの音楽環境創造科。
    言葉で音楽を表現するための知識を身につける楽理科。
    「芸術大学」という言葉から想像していた以上に、さまざまなジャンルを学ぶことができる場であることを知りました。

    印象的だったのはインタビューに答えている学生さんたち。
    目標に向けて邁進する人もいれば、将来に対して悩みを抱えている人もいる。
    ものづくりや音楽の才能がある人は特別だ、と思いがちだからこそ、本書に描かれていた「普通の若者」の一面に親しみを感じました。

  • あの東京藝大のルポなのだからして、もう興味津々。確かに「秘境」と言ってもさほど大げさではない気がするほど、実態が見えない大学だ。いったいどんな天才奇才たちが生息しているのか?

    さぞかし変わった人がいるのだろうという予想は、半分当たりで半分外れ。確かに、いやもう天才と呼ぶしかないよねという優れた才能の持ち主や(「口笛で藝大に入った」人がいる)、ちょっと他ではお目にかかれないファッションで構内を闊歩する人とか(この女性が一番のインパクトだった)、すごいわ~としか言いようのない方々が次々出てくるのだが、トータルな印象としては、多くの学生が真面目で真摯で、「普通の」若者なのだと感じた。

    一般人から見れば抜きんでた才能を持つ藝大生も、その道のプロとして生きていくのはとても難しい。それでも一生懸命制作や練習に打ち込む姿に心を打たれ、「珍物件」拝見、という最初の気持ちは、読み進むにつれてすっかりなくなった。若者がひたむきに何かに取り組んでいる姿って、本当にいいものだとしみじみ思う。

    音楽・美術それぞれに、思っていたよりもたくさんの学科や専攻があることにも驚いた。ピアノや油画のようなメジャーなものと並んで、古楽や三味線を学ぶ学生や、「先端芸術」という、何それ?という学科も登場する。なかなか内側を窺い知れない大学だけに、非常に興味深かった。



    ・これは是非見たい!と思ったのが、学園祭である「藝祭」。1年生による神輿パレードは、ニュース映像でちょっと見たことがあるが、やはり実物を拝まねば。

    ・東京藝大の入試はすさまじい倍率だが、国立なのだからしてセンター試験も受けねばならない。以前から成績も良くないと合格しないのだと思っていて、そこがまた藝大の値打ちをいや増すものだと有り難がっていたが、実技がずば抜けていたらそれで通ると書いてある。え~、そうだったの。

    ・友人知人で東京藝大出身者は一人だけ。楽理科卒の彼女の結婚披露宴で、声楽科卒の友人が歌声を披露してくれた。曲は「イッヒ・リーベ・ディッヒ」。みんな、もううっとり。次に指名された新郎側の友人が「新婦が藝大の人だとは知らなくて…僕も歌を歌うんですけど…スミマセン」と恐縮していた。彼が何を歌ったかは忘れた。

  • 高校一年の娘が、芸術コースを選択したいと言ってきたので、どうも売れてるそうでもあるこの本を手に取った。それまでは、藝大が音楽コースと美術コースの両方あることも初めて知った程度の知識。いまだにどこにあるのかわかってないけれど。

    藝大生(彫刻専攻)を妻に持つ小説家が、妻の伝手もあって藝大生へのインタビューを行ってその内容をまとめたもの。表紙や煽りからもっとはっちゃけているのかと思ったけれども、インタビューを受けてくれるような学生はまだまともな人たちなのか、飛んでいる知り合いの話は出てくるけれど、本人はいたって真面目な人が多い。もちろん、専攻する分野に関して究めるためにはある種の真面目さが必須の要件なのだろう。

    これだけ切望する人がいるところで短時間の受験で合否を決めるのは大変というか何か問題ありそう。それでも口笛で入学したという人もいたりするのは、フレキシブルな入試制度が必要だということなのかも。

    娘は藝大志望ということではなさそうだけれど、希望しているいわゆる美大も面白いのかもしれない。現実的にはこの本にも出てきたデザイン科であれば、仕事には困らなそうだし。そもそも娘が何をしたいのかわかってないんだが、何より楽しそうだ。最後に書かれた音校と美校が交わって協力して何かをクリエートしていく状況は、大学の意義というか、やはり素敵であると思った。

  • 話題の本。
    一般的な大学生活とは懸け離れた東京藝大の学生たちの日常に迫るノンフィクション。
    タイトルはキャッチーだが、取材者である著者の真摯さに支えられた好著である。

    東京藝大は芸術系の大学の最高峰といってよいだろう。
    数多くのアーティストを輩出してきた殿堂。
    しかしその内情は、外部の者には窺い知れない。

    著者の妻は彫刻科に通う藝大生であり、著者はホラー小説やエンタメ小説を書く作家である。
    奥さんとの日常は不思議に満ちている。テーブルを自作したり、自分の体で型を取ったり、家に「生協で買った」というガスマスクが置いてあったり。奥さんネタだけで1冊本が書けそうなくらいだが、その奥さんの伝手で、著者が藝大のあちこちを見学し、何人もの人にインタビューしてまとめたのが本作である。

    まず、藝大には音楽を専攻する音校と美術を専攻する美校があり、各々のカラーがかなり異なるという観察がおもしろい。ざっくりいうと、音校は洗練されてスマートかつ勤勉、美校は型破りで何でもありな破天荒タイプが多い。

    藝大は難関というが、具体的にどう難しいのか。センター試験で高得点が必要だというわけではない。建築系やデザイン系など、センター試験である程度の点数を取る必要がある学科もあるが、センター試験が散々でも、実技試験が好成績であれば入れてしまう学科が多い。だがその実技試験が桁外れである。「人を描きなさい(時間:二日間)」「自分の仮面をつくりなさい」「自己表現しなさい」といった難問が出される。もちろん、「模範解答」などない。採点者の教授をいかに唸らせるか、表現者としての力量が問われるわけである。

    狭き門をくぐって入ってくる学生たちはそれぞれユニークである。
    口笛を楽器としてクラシックに根付かせたいと思う者。グラフィティアートに没頭した後、ホストクラブで働き、結局日本画がやりたいと藝大を目指した者。絡繰り人形を作りつつ、漆を学ぶ者。
    理論派。感性派。情熱家。天才肌。
    カラーもそれぞれだが、彼らに共通するのは、「自分にとっての芸術」を突き詰めようとする姿勢だ。

    破天荒に見えても、楽天的に見えても、その戦いは厳しい。おいそれと自分のやりたいこと、すべきことが見つかるはずもない。
    奮闘し、あがき、空回りし、中には自分を見失うものもいる。
    厳しい戦いを勝ち抜いて入学したはずの藝大生だが、卒業生の半数程度が「行方不明」という。フリーターになる者。旅に出る者。バイトをしながら目が出るのを待つ者。失踪する者。
    多くの者の「敗北」が積み重ねられ、数年に一度、「天才」と目される者が出る。累々たる屍の上に、時折、栄光が煌めく。

    藝大のあちこちに目を見張り、多くの藝大生の声を聞く著者のまなざしは、一貫して素朴な驚きに満ちている。揶揄する姿勢がないのが好感を持って読めるところだ。
    それは、著者自身が、フィールドは違えど、やはり表現者であることによるところが大きいかもしれない。
    そのまなざしは、「人にとって芸術とは何か」という、深い問いを孕む。

    終盤近くに触れられる、学園祭「藝祭」の様子が圧巻だ。まさに爆発。これぞ混沌。
    尖り過ぎて自分にはまったく理解不能ではないかと危惧しつつ、若き才能の片鱗に触れに、いつか覗きに行ってみたいような気もしている。

  • 凄過ぎる、凡人の私には何度も読み直さないとうまく受け入れられない。
    とにかく藝大に行ってる方々は自分が何をしたいのか、早いうちから出来上がってて、もちろん行きながら模索してる人もいるだろうけど、脳の使い方が違ってる気がする。
    天才たちの集まり。そんな藝祭に行ってみたいものだ。

  • 数十年前の大雪の降った冬の日。当時勤めていた編集事務所で何度か
    電話をかけていた。相手はレイアウトをお願いしていたデザイン事務所。
    コール音はするものの誰も電話に出てくれない。

    雪だしね。電車も遅れていたし。でも、あそこの事務所は誰かしら泊まって
    いることが多いからまだ寝てるのかな。しょうがない。徒歩圏内だし、雪だ
    けど取り敢えず行ってみるか。

    雑居ビルの半地下にあるデザイン事務所の前にはスタッフがほぼ全員、
    外に出ていた。雪かきか。そうだよね、半地下だもの。階段で滑ったりし
    たら大変だ。

    でも、違った。確かに雪は綺麗に片づけられているのだけれど、嬉々とし
    て雪像造りに励んていた。「さっぽろ雪まつり」ならぬ、「表参道雪まつり」
    である。みな、小さいけれど精巧な雪像である。

    我に返って声をかけると「あれぇ、この雪の中、どうしたの?」という声。私
    は今日入稿予定のレイアウトを受け取りに来たのですが…。

    瞬間、数名のスタッフが我に返ったように手にしていた割りばしやら定規や
    らを放り出して、事務所の中へ突進して行った。そうか、そうか。石造造りに
    夢中で仕事は上がってなかったのね。

    このデザイン事務所、代表も含めてほぼ全員が東京藝術大学の卒業生
    である。そういえば、高校の同級生にもいたなぁ。

    確か3浪して藝大に入って、在校中は毎年、個展の案内はがきを送ってくれ
    た。出来る限り足を運んだが、油絵をやっていたはずなに途中からオブジェ
    の展示ばかりだったな。尚、藝大卒業後は音信不通だ。本書にも書かれて
    いるけれど、藝大卒業生の半分は行方不明だそうだ。

    悪魔の森の奥深くにあるのは「蝋人形の館」(@聖飢魔Ⅱ)だけれど、東京・
    上野の森の奥深くにあるのが東京藝術大学である。れっきとした国立大学
    である。

    入試倍率は東京大学の3倍。超難関だ。そんな藝大の内部や学生たちの
    生態(?)をレポートしたのが本書だ。面白いんだな、これが。音楽にしろ、
    美術にしろ、私は才能ゼロなので楽器が弾けるとか、絵が描けるとか、
    それだけで凄いと思ってしまうのだが、藝大の学生さんたちは「凄い」なん
    て言葉を遥かに飛び越えていた。

    本書では藝大の過去の入試問題がいくつか出ているのだが、既にこの
    入試問題の時点で不可解。不可解なのにそれに合格してるんだもの。

    そうして入学したと思ったら「芸術は教えられるものじゃない」だもの。
    まぁ、そうなんだけどね。学生が個性的なら、教授陣も個性的。いや、
    そうじゃなければ藝大は目指さないのかな。

    「練習のし過ぎで肩を壊した」と言っても野球のピッチャーではなく、
    ピアノ奏者である。音楽系も壮絶である。楽器の特性に合わせて
    体が変わるって何よ~。

    音楽系なんて3歳くらいから英才教育を受けて、見事藝大に合格しても
    プロとして食べて行けるのは、ほんの一握りならぬ、ひとつまみだとか。

    音楽にしろ、芸術にしろ、表現をすることは難しいことだと思うんだよね。
    でも、本書に登場する学生さんたちは思考が硬直することなく、興味を
    幅を次々と広げているところが凄い。

    可能性は無限なのだと思う。だから、彼ら。彼女らはチャレンジし続けて
    いるんだろう。「それが何のためになるの?」なんて無粋な疑問は持って
    はいけない。一見、無駄だと思えることでも突き詰めて行ったら私たちの
    生活に欠かせないものになるのだもの。

    尚、本書を読んでも藝大の受験対策にはなりません。

  • 高校のとき、まじめに受験勉強する私の隣でずーっとデッサンばかりしてた友達が三浪して行った東京藝大。今は誰も消息を知らない彼女を思い出してつつ一気に読んだ。お昼抜きで。

  • 日本の芸術教育機関の最高峰である東京芸術大学。
    そこに憧れる芸術家の卵は日本中にいるため、とてもハイレベルであり、入るのがとにかく超難関。
    何浪もする人が多いということは良く知られています。

    ただ、その狭き門を通ってからの学生たちのキャンパスライフについては、謎に包まれていました。
    この本は芸大生を妻に持つ著者が、その不思議さに目を留めてまとめあげたルポルタージュ。芸大生たちは、普通の大学生から見ると確かにずいぶんサイケデリックな日々を送っています。

    音楽と美術に大別される芸大。さらに14学科に分かれた多くの学生たちの話をまとめ上げているため、混沌とした内容になっています。

    入学時にすでにその芸術性を認められている学生たち。
    一人前の芸術家となるべく、大学ではその才能を磨き、高めようと、彼らが日々努力している様子がうかがえます。

    学生へのインタビューから、芸大生の特殊性が見えてきます。
    コンクールの前に掌一杯の砂糖を食べるピアニストや、卒業制作用に60万円くらい貯金をする漆芸専攻者、親の期待に応えて芸大を卒業し、その後はきっぱり別の道を行く人など。
     
    著者の妻は、入試の際、6時間のデッサン試験途中でおなかが空いたため、トイレに行ってソーセージを食べたそうです。
    「トイレにはたばこ禁止とは書いてあったけど、おやつ禁止とは書いてなかったから」だそうですが、そこまで過酷なのかという驚きと、そうやってしのいだのかという驚きがないまぜになりました。
    カンニングができない実技試験だからこその話でしょう。

    ピアノ科の学生が、一日ピアノに触らないと、三日戻るというのはわかりますが、それだから旅行はせいぜい一泊二日しか行けないというところも驚きました。
    みんな、自由にのびのび過ごしていそうですが、実際には楽しみを削って自分を高めるために一心に努力を重ねているわけですね。
    そのプロ精神には頭が下がります。

    芸術をいかに自分らしく表現していくか、様々に研究を重ねる様子は、端から見れば突飛なことをしているようでも、本人は至って真面目。
    奇をてらっていないからこそ、端から見ると変人めいても見えるのでしょう。

    そんな風に努力を重ねながらも、実際にアーティストとして名を馳せられるのはほんの一握り。日本一の芸術の殿堂を卒業したとても、その後ほとんどがフリーターになってしまうというという厳しい世界が待っているとのこと。
    将来が見えない不安と日々闘いながら、自分の感性を頼りに修練を重ねる彼らの努力が実を結ぶことを願わずにはいられません。
    それにしても、専門性の高い人って、味があっておもしろいものですね~。
    なかなか芸大に比するところはないものの、ほかの大学の専攻学科の学生の話も読んでみたいものです。

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最後の秘境 東京藝大:天才たちのカオスな日常はこんな本です

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