ライムスター宇多丸の映画カウンセリング

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103505617

作品紹介・あらすじ

人生、カベに当たっても大丈夫。だって映画があるのだから! 「カツラを外すタイミングが摑めなくて……」「だったらズバリ『スーパーマン』です!」。ラジオ界を席巻するトークマスターにして“映画ウォッチ超人”こと宇多丸が、悩めるあなたにオススメ作品を伝授する! 部下の指導法からヤンキーがモテる理由、生きる意味まで、40超の相談を収録。人生悩んだら、映画に訊け!!

感想・レビュー・書評

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  • ヒップホップ・グループ、『ライムスター』の宇多丸さんが読者からのお悩み相談に‘効く’映画を何本か紹介してくれる、一風変わった映画ガイド本。

    宇多丸さんはラジオでの映画評論が絶大な人気の方らしい。
    スキンヘッド&サングラスという姿から想像されるような‘オラオラ感’も全くなく(超偏見)、多角的で視野の広い映画の見方=出来事の見方を教えてくれる本でした。

    視野狭窄に陥っている相談者の‘お悩み’の真意と‘お悩み’に隠れた‘思い込み=偏見’を見抜き最適な、あるいは意外な映画をおすすめ。そのラインナップに唸ったり、自分ならあの映画を勧めてみる!と興奮したり。

    例えば30代の仕事もできるセクシー美女。
    実は隠れこじらせ女子、という女性には『ロミーとミッシェルの場合』と『ヤング≒アダルト』をダブルおすすめ。
    グッジョブ、宇多丸さん!

    他には
    「小説を結末から読んじゃう癖を治したい!」
    「30歳ですが、ヒーローになりたいんです!」
    「なぜかお年寄りが寄ってきます」

    とニッチなものから

    「あがり性のため、人前でうまく話せません」
    「全てを捨てて、旅に出てしまいたい」
    「ふとした瞬間、虚無感に襲われます」

    と割りと真面目なものまで多種多様。

    お答えする宇多丸さんの背後にある思考、哲学も好き。映画には絶対的で客観的な『評価』より鑑賞者との相性と観るタイミングの方が大事、と考えてらっしゃる点も自分とおんなじだ~と嬉しく思った。

  • 宇多丸さんが人生相談に対して、色々な映画を処方箋として出すというような形で、映画の紹介をします。

    宇多丸さん、ラッパーなので、荒々しかったり、時にふざけたりするタイプなのかと勝手に思っていましたが、そんなことは全然なく、質問に対して、至って真摯に真面目に答えます。

    論理的な、よく考えた上での文章。
    以前、Brutusの記事でラジオの映画評の為に3回は同じ映画を見ると書いてあったのですが、その真面目な人柄がよくでています。(凝りだすとかなり熱中してハマりまくるタイプなのだろう。)

    内容としては、流石にいろんな映画が出てきます。様々な年代、様々なジャンルの映画が。

    何度もおすすめに出てくる「シングルマン」という映画、あと傑作といっているくれよんしんちゃんの映画、「隣る人」というドキュメンタリー、が特に観てみたいと思った。
    あと、ウルトラマンのジャミラの話が、こんなに深く、悲しい話だとは。

    ずいぶん昔に観ていいなと思った映画「動くな、死ね、甦れ!」今は内容を忘れてしまったが、「繊細極まりない名作」と紹介されており、また観てみたくなりました。

    一つの相談に何本もの映画が紹介されるのですが、内容があまり多く触れられないものも多いので、もう少し一つの映画に突っ込んだ解説が聞きたい。

  • パンチラインの嵐。流石はラッパー。
    <blockquote>
    ちなみに色々中田からの相談を拝見していると、実は問題は相談者本人ではなく、その人を取り巻く人間関係や社会の方にあるんじゃないか、と思えることが結構多いんですよね。恐らく、自分の置かれた状況に「悩む」というその時点で、周囲より鋭敏に、そこにある何らかの歪みを関知しているから、なんじゃないでしょうか。(P.70)</blockquote>
    なんせこれである。
    前半部分でもう総括している!

    <blockquote>
    僕なりに噛み砕いた定義を試みるならば、理系というのが、様々な物事を理解し解決していくための、言ってみれば「手段」を切り拓いてゆく分野なのに対して、文系の学問とは、それに先立つ「理念」を探求する世界、と言えるのではないかと。(P.114)</blockquote>
    流石はB・U・N・K・E・I最強のパイセン。

    (AKBはメジャーなのにそれを取り上げるBUBUKAなどはサブカルとみなされるのに触れて)つまり今の時代、その対象がメジャーかマイナーではなく、<B>それを扱う手つき、分析の角度や掘り下げの度合い、熱量の高さ</B>が昔で言う「サブカル」的であるかどうかを決する、ということではないのかと思うのです。ていうか、もはやそれ以外の分類はほとんど無効化しているんじゃないか、そう考えるとすべて腑に落ちる。(P.130)

    "ただしイケメンに限る"の裏返し。オタクだからキモいのではなくて、キモいからオタクである(同じアニメ好きでもキモくなければ良い)的な。

    <blockquote>ミもフタもない結論を言ってしまえば、本来「国家」は、我々が主体的かつ批判的にコントロールすべきものであって、それに対して「愛国心」と言うなの服従を誓え、なんてのはホント、本末転倒もいいところなんですよね。個人的には、最初に言ったような「生まれ育った風土」に対する「愛着」程度がギリギリ、大抵のことでは揺るがない具体的な実感としての「愛国心」の・ようなものであって、皆さんもそれくらいにしとけば? って思います。(P.162)</blockquote>
    この件なぞは往年の『第3会議室』を思い起こさせる言説だ。K DUB SHINEと言い争う姿が目に浮かぶ(笑)


    ことほど左様に(←宇多丸特有の言い回し)映画を紹介するという体で著者のモノの見方、考え方が窺える一冊である。映画というサンプルに自分の主張を載せる…という意味ではヒップホップ的だ、と言えるかも知れないがそれは穿ち過ぎかもしれない。

    気になる点は一点。表紙が宇多丸が涙している姿なので「泣ける映画が知りたい」という人には肩透かしを食らうだろうということ。まぁ、そういう人はそもそもサングラスハゲの本なんて買わないだろうからいいとして、そういう内容を予想して嫌な感じを感じた人は潜在的な読者であろうと思われるので勿体無いなと思う次第であります。

  •  『月刊コミック@バンチ』の連載コラムをまとめたもの。
     読者から寄せられた「こんな私にオススメの映画を教えてください」という相談に、人生相談の回答的なことを述べ、その回答の中で次々とオススメ映画を紹介していく……という趣向のコラムである。

     つまり、「うまくいけば、映画ガイドであると同時に人生相談本としても楽しめて、一石二鳥だ!」という企画意図なのだろう。
     その意図は残念ながら失敗していて、映画ガイドとしても人生相談本としても中途半端に終わっている。

     ラジオの映画コーナーでのトークをまとめた『ザ・シネマハスラー』はすごく面白い本で、映画評論集としても上出来だったが、本書は面白さが半減以下。読者からの質問にクダラナイものが多いし(「カツラを外すタイミングが分かりません!」とかw)、宇多丸の回答もわりと陳腐。

     また、一回のコラムで2本から数本の映画に言及しているため、一本一本に対する掘り下げが非常に浅く、その分つまらない。

     まあ、本書によって「この映画、観てみたい」と思うものが数本見つかったので、読む価値はあったと考えよう。

  • 毎週映画1本をラジオで分析を発表している宇多丸さんが、様々な質問に対して映画を絡めて面白おかしく回答するという内容。宇多丸さんは映画に関する造形が無茶苦茶深いし、記憶力も半端ないし、かつ質問に対する回答の切れ味が半端ないので、読んでいて非常に痛快だし面白い。毎週土曜日のラジオも面白いので、今後も楽しく聞き続けたい。毎週のラジオによる映画評は公式の文字起こしもされているので、ご興味がある方は読んでみるのをオススメします。

  • 悩みを切り口に出てくる映画の数、幅広さに驚く。細かなシーンをはっきり記憶しているあたり、宇多丸師匠はたくさんの映画をきちんと観られているのだろう。一本に対する解説が非常に短いので、長い解説も読んでみたいところ。

  • 勧められた映画を見た人の反応が知りたいか。

  • 悩みを聴いて、その内容にあった映画を紹介する本。

    映画のレビュー本としては、一作品に割いてる分量は少なめなんだけど、「悩み相談を受けて」というスタイルならではで、切り口が面白い。

    正直言うと、この本を読んで新たに見てみようと思った映画はほとんどなかったんだけど、「なるほどあの映画にそういう視点があったか!」という事で、もう一回観たくなった作品は結構あった。

  • 相談に対して映画を何本も紹介。よく知ってるな…。見てない映画がほとんどなので、そうそう!と共感できないのが残念。

  • 宇多丸さんの映画の話ってだけでも楽しいのに、カウンセリング!
    楽しすぎ

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著者プロフィール

1969年生まれ。ラッパー/ラジオパーソナリティ。1989年にヒップホップグループ「ライムスター」を結成。日本語ラップの黎明期よりシーンを牽引してきた。また豊富な知識に基づいた分析力と鮮やかな切り口のアイドルソング評論、映画評論が人気で、ラジオパーソナリティ、TVコメンテーター、文筆家としても幅広く活躍中。メインパーソナリティを務める『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』にて、第46回ギャラクシー賞「DJパーソナリティ賞」を受賞。著書に『ライムスター宇多丸の「マブ論 CLASSICS」 - アイドルソング時評 2000~2008 - 』(白夜書房)などがある。

「2016年 『R&B馬鹿リリック大行進 〜本当はウットリできない海外R&B歌詞の世界〜』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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