ただしくないひと、桜井さん

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 107
感想 : 22
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  • Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103505716

感想・レビュー・書評

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  • 客観的なニュアンスのタイトルにもかかわらず、桜井さんの主観から始まって最初から「おや」と入り込む。

    初読の作家さんですが、ことば運びや描写などの細かい違和感が一切なくて、気を散らさずにスルッと世界に入り込めました。
    プロの書いているものばかりを読んでいても、これは当然じゃなく「当たり」なんだ、と再認識するこのごろです。

    嫌な違和感はまったくない文章なのに、ちょうどいいレベルのヒントがパラパラと細かくちりばめられていて、さらっと読もうとして「いやいやちょっとまて」と意識が数行前に戻る。でも先を読みたくて目は次の行を走っていて楽しい焦燥感にジリジリしました。

    「この子は行間が読める。」この感覚に桜井さんと自分が僅かにリンク。
    良い本と出会ったとしても、登場人物の誰にもシンパシーを感じずに終わることもよくあるんですが、細かいことでも「うんうん」と思えるポイントがあるのはうれしかったりします。
    たとえその人物を好きではなかったとしても。

    そして知らないことをすぐ調べてしまう癖は考えものだと学習しました。
    あるものの性質をググってしまったせいで、かなり早い段階で大事なポイントに気づいてしまった。

    にもかかわらず、終盤にかけて小出しにされるヒントに、やっぱりかと思いつつも「うわあ」と思わされてしまうのは間違いなく作者の筆力だと思う。

    そして予想は的中しつつも、きちんと裏切られた。
    いや、細かい描写を頭で反復していると、他のいろんなこともすべてこの人間性に繋がることはわかっていた。なのに「くあー」と呟いてしまう。(確信が持ててないんですが、一見無関係に見えるあの彼も実はこの彼ですよね?自己申告してるもんね?)

    いやー、おもしろかった。読後、タイトルに無言で頷いてしまうのも良作の証しかと。

    余計なことですが、うまいと思う作家さんが自分より年上だとなんだか安心してしまいます。

  • 急展開でびっくりしました。
    「!?」が脳内で交差するうちに気づいたら一気読みしてました。

    人の人生が、他人に及ぼす影響と繋がり。
    おもしろかったです。

  • 久しぶりに一気読みするほど面白い本、読んだ気がする。それほど随所に魅力が散らばっている。出てくる人がみんなただしくない。ただしい人間が存在するのかもわからないけど、問題児と一言で片付けることができないくらいの問題を抱えた人たち。
    桜井さんのすたれた熟女でしか抜けないというはじめらへんに語られた性癖に触れられることがなかった気がするのですが読み落とした??
    丸山さんと桜井さんの最後、予想もしなかった。予想できたかもしれないのに、ラスト急展開すぎて話についてけなくて何度も読み直して読み直して読み直して、やっと腑に落ちた。ただしくなさすぎて泣ける。どうしようもない話すぎて震える。みんな愛に飢えてて、愛だけでなく様々な欲から飢えていて、愛されたい欲求が強すぎて目眩するくらいに。
    とんでもない本でした。新しさはないけど簡単に誰かがかけないような作品。R文学賞の読者賞だったんですね、彩瀬まるさんのように活躍してほしいなと思いました。

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