ただしくないひと、桜井さん

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103505716

作品紹介・あらすじ

きっと、これは、ただしくない。わかっているのに、どうしようもない。学童保育でボランティアをする桜井さんは、やる気がなさそうに見えて、子供たちからなぜか人気。平穏な日々を破る突然の出来事に、彼は――。不倫、援交、育児放棄……その裏にある、切実な痛み。読者から圧倒的支持を得たR-18文学賞読者賞受賞作をはじめ、抗えない感情を抱え生きる人々をそっと掬い上げたデビュー作。

感想・レビュー・書評

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  • 子供の居場所作りボランティアに参加する桜井と、その周囲の人達の連作短編。

    2、3編目の話は、悲しい出来事に囚われてしまった人が、性に逃げた話。
    彼らが求めていたのは温もりで、その寂しさが痛いほど伝わる良作でした。

    1編目と4編目が桜井さんを語る話。
    名前が義人で正しい人。
    びっくりする事実かあり、確かに桜井さんはただしくないひと、と言うことになるんです。
    意外性に引き込まれました。

    好きなテイストの話。
    良い出会いでした。



  • 正しくない人との遭遇。
    『波』2017.1にて。

  • 足掻いてもどうにもならないことを抱える人の剥き出しの寂しさや、裸の性(さが)が呈される。傍に居てほしい、愛されたい、大切にして欲しいという原始的な欲求は、どうすれば適切に満たされるのか。『結婚したり子どもを産んだりって、わざわざ失いたくないもんを拵えるってこと。そのぐらい人は1人じゃ生きていけない』寂しい生き物の人間。思うに任せぬ人生---冤罪、親子関係の不全、失業等を目の前にして、人は絶望し、救いのない孤独感に耐え切れず善悪を一瞬にして越える衝動に駆られる。そんな人間の脆さや儚さが決して他人事ではない。

  • ただしいひと、なんているのだろうか?

    正義のみかた・あーこういう感じでただしくないひとってこと?
    茜さすみどり・切ないだけでは言い表わせない。表に出ることじゃない部分、きっとずっと表に出ない部分。大介さん、ずっと持ったままでいてください。
    それも愛・おばあちゃんって切ない。何も知らなかっらよかったのに…
    聖なる、かな・結果やっぱただしくないひとってこういうことか。丸山さん怖いな。ウザい感じの藤崎さんがまとも?
    罪を犯して罪を背負って、罪を重ねて生きて行こう。
    そんなに身体の温もりって大事かな…

  • 話題になっていて、気になったので。今後も少し追いかけてみようかなと、思う作家のひとりになった。

  • 「女による女のためのR-18文学賞」の作品を読むのは2作品目になる。
    窪さんの作品は表現が過激だったので、私としては滝田さんの方が読みやすかったかな。

    4篇からなる連作短編集。
    心の奥にある寂しさや虚しさを、人肌の温もりを求めることで癒されようとする人達。
    求めた温もりから得られたものは、どれもが悲しい結末で切なくなる。
    この物語の主人公達は、悪い人ではないけれど『ただしくないひと』かもしれない。
    タイトルが気になって読んだのだが、思わず納得してしまった。

  • すごく面白く読めた。が、最後の展開は…。それこそがタイトルに込められたものだったのだろう。今回読んだ本がどちらもハッピーエンドとは程遠かったため、疲れてしまった。ハッピーエンド、時々バッドエンドが私には合っている…。

  • スラスラ読めたが切なくなる。斜視について気になって調べた。
    それぞれの話がつながっていき、徐々に謎が解けていくのだけれどやっぱり切ない。

  • 最後の章でぐぐっと引き寄せられた。

    なんとなく兄妹なんじゃないかと、うっすら感じはしたけどまさか桜井さんまでが認識しているとは思わなかった。
    お互いがお互いの関係性に気付いたのはどの時点か、この場面では?あの場面では?と何度も読み返してしまった。

    ただ血の繋がった妹にする生殖を目的としない交わりは、それは正義ではなく自己保身でしょう。
    でも彼女がそれを正しいとするのなら、それは正義になるのかもしれない。
    というか熟女好きの設定はどこへいったのか…。

    心のどこかに小さくひっかかって、読み終わった後もなんだか気になってしまう作品。

  • 1ヶ月くらい前に立ち読み。終盤の展開が良い。

  • 客観的なニュアンスのタイトルにもかかわらず、桜井さんの主観から始まって最初から「おや」と入り込む。

    初読の作家さんですが、ことば運びや描写などの細かい違和感が一切なくて、気を散らさずにスルッと世界に入り込めました。
    プロの書いているものばかりを読んでいても、これは当然じゃなく「当たり」なんだ、と再認識するこのごろです。

    嫌な違和感はまったくない文章なのに、ちょうどいいレベルのヒントがパラパラと細かくちりばめられていて、さらっと読もうとして「いやいやちょっとまて」と意識が数行前に戻る。でも先を読みたくて目は次の行を走っていて楽しい焦燥感にジリジリしました。

    「この子は行間が読める。」この感覚に桜井さんと自分が僅かにリンク。
    良い本と出会ったとしても、登場人物の誰にもシンパシーを感じずに終わることもよくあるんですが、細かいことでも「うんうん」と思えるポイントがあるのはうれしかったりします。
    たとえその人物を好きではなかったとしても。

    そして知らないことをすぐ調べてしまう癖は考えものだと学習しました。
    あるものの性質をググってしまったせいで、かなり早い段階で大事なポイントに気づいてしまった。

    にもかかわらず、終盤にかけて小出しにされるヒントに、やっぱりかと思いつつも「うわあ」と思わされてしまうのは間違いなく作者の筆力だと思う。

    そして予想は的中しつつも、きちんと裏切られた。
    いや、細かい描写を頭で反復していると、他のいろんなこともすべてこの人間性に繋がることはわかっていた。なのに「くあー」と呟いてしまう。(確信が持ててないんですが、一見無関係に見えるあの彼も実はこの彼ですよね?自己申告してるもんね?)

    いやー、おもしろかった。読後、タイトルに無言で頷いてしまうのも良作の証しかと。

    余計なことですが、うまいと思う作家さんが自分より年上だとなんだか安心してしまいます。

  • 急展開でびっくりしました。
    「!?」が脳内で交差するうちに気づいたら一気読みしてました。

    人の人生が、他人に及ぼす影響と繋がり。
    おもしろかったです。

  • 久しぶりに一気読みするほど面白い本、読んだ気がする。それほど随所に魅力が散らばっている。出てくる人がみんなただしくない。ただしい人間が存在するのかもわからないけど、問題児と一言で片付けることができないくらいの問題を抱えた人たち。
    桜井さんのすたれた熟女でしか抜けないというはじめらへんに語られた性癖に触れられることがなかった気がするのですが読み落とした??
    丸山さんと桜井さんの最後、予想もしなかった。予想できたかもしれないのに、ラスト急展開すぎて話についてけなくて何度も読み直して読み直して読み直して、やっと腑に落ちた。ただしくなさすぎて泣ける。どうしようもない話すぎて震える。みんな愛に飢えてて、愛だけでなく様々な欲から飢えていて、愛されたい欲求が強すぎて目眩するくらいに。
    とんでもない本でした。新しさはないけど簡単に誰かがかけないような作品。R文学賞の読者賞だったんですね、彩瀬まるさんのように活躍してほしいなと思いました。

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