ビニール傘

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著者 : 岸政彦
  • 新潮社 (2017年1月31日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (124ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103507215

ビニール傘の感想・レビュー・書評

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  • 「ビニール傘」と「背中の月」2編。
    とても読みやすい。写真もあって。
    大阪が舞台だし、なんだろう2編ともとてもリアル。
    若い子が田舎から出てきて、寂れた街で人間関係に悩みながら1人暮らしていく。

    突然伴侶を失い、妻の存在を思いながら毎日淡々と暮らし・・・

    ちょうどいい厚みでサクッと読めるけど、結構心にずっしりくるかも。

  • 帯の文に惹かれて購入。すごく不思議な小説だった。著者の本業が社会学者だというのも、関係あるのだろうか。
    「パッチワークを作る時、普通は柄の違いに気を取られるが、岸さんは縫い代を見ている」という小川洋子さんによる帯の一文がとてもしっくり来る。
    表題作には、名前のない男と女が複数登場する。1人でいたり、カップルでいたり。その人物(たち)がパッチワークを作る1枚の布だとしたら、たくさんの布によって構成されるパッチワークの、まさしく縫い代の部分を描いているように感じる。
    人は濃かったり薄かったりする人間関係をたくさん持っていて、その中で予想外の人同士が繋がっていたりする。たくさんの組み合わせの布で作られるパッチワーク。現実の人間模様も、そのように構成されていると思う。

    これは実際読んでみないと分からない感覚かも。毎度レビューは書いているけれど、言葉で説明するのがこれほど難しい小説と久々に出逢った。
    ストーリーがどうとかで語れる類ではないのは確か。
    表題作ともうひとつの「背中の月」にもよく読むと繋がっている部分があることに気づく。
    短い2作のみの薄い小説だけど不思議な感触が印象に残った。

  • 『断片的なものの社会学』が結構よかったのでこの本も予約してみた。あの本の中で……とある町の夫婦が小旅行に出かけて、防犯のために日常の音声を録音し、それを流したまま出発し、そのまま事故に会い二人とも亡くなってしまい、事故のその瞬間も二人が発見されて身元が判明するまでも、その町の二人の家の周囲の日常や風景は普段と変わりない………というエピソードがあって、それがすごく好きだった。そんな雰囲気の小説でした。純文学っぽいような……。

    短編が二つあるけど、どちらも大阪が舞台。関西系の言葉に馴染めなかった。『ビニール傘』は、女のブログのような日記のような回想ぽい感じ。『背中の月』は男が心の中でひとりごとを言っているような物語。『背中の月』に共感した。ところどころリンクしていてさらに日常なのか夢なのか過去なのか想像なのかわからなくなる部分があって少しこわい。

    “誰にでも脳のなかに小さな部屋があって、なにかつらいことがあるとそこに閉じこもる。”=92ページ=

    こういうところが、ふわっと柔らかくて優しいな…と思った。

  • 芥川賞候補作、(受賞したのは、山下澄人の『しんせかい』)

    『ビニール傘』と『背中の月』の短編2作が、連作短編とまではいかないがほんの少し交差している。

    只々、何気無い会社勤めの若者が大阪という地方で生きていくさまが描かれている。
    読みモノとしてみれば考え抜かれた文章で、読み易く、面白い部類だと思うが、この120頁の中で何を描きたかったのかが伝わって来なかった。
    今の時代の標準偏差的な生活を並べたうえでの絶望や悲惨さだったのか、はたまた希望だったのか。
    その辺が『ビニール傘』から見る景色のようにボヤけていたように思う。

  • 大阪で生きる若者の姿を描いた作品。
    何かでっかいことをやり遂げるわけでもなく、だからといって感動的な何かがあるわけではない。
    そんな暮らしを描いた作品だったように思う。
    人生とはなんぞやと考えさせられる作品だった。

  • 叙述的な、んー。違うな。

  • 【ビニール傘】
    『俺以外の全員がタバコを吸い、スポーツ新聞を広げ、コンビニおにぎりを食っている。みんなゴミを吸い、ゴミを読み、ゴミを食っている。』

    『怖くなってもういちど横を振り向くと、彼女もこっちを見上げて、どうしたん? と聞いた。おれはますますポケットのなかの手をぎゅっと握りしめた。痛いやん。彼女は笑いながら、自分もありったけの力で握り返してきた。おお、意外に握力強いやんか。笑いながらもういちど握り返すと、彼女は大きな声でいたたたた、ごめんごめん、とゲラゲラ笑いながら手をポケットから出し、つないだまま大きく前後に振りながら歩いた。』

    『俺たちが暮らしているのはコンビニとドンキとパチンコと一皿二貫で九十円の格安の回転寿司でできた世界で、そういうところで俺たちは百円二百円の金をちびちびと使う。』

    『誰かが携帯の画面を親指でなぞるたびに、どうでもいいことがどうでもいいひとたちに流れていく。』

    『もっといろいろな人と付き合ったら、そのうち幸せになれたんだろうか。でも、誰かと一緒にいるあいだは、ほかの誰かと一緒にいることができないから、ある人と付き合っているあいだに、時間ばっかり経っちゃって、そうしてるうちに私を幸せにしてくれる人は、とっとと誰かと付き合っちゃうんだろう。』

    【背中の月】
    『誰にでも脳のなかに小さな部屋があって、なにかつらいことがあるとそこに閉じこもる。』

    『妙な話だが、幸せなとき、楽しいとき、遊びにいっているときよりも、急な葬式が入ったとき、人間関係でめんどくさいことがあったとき、仕事上のトラブルに巻き込まれたとき、ああ俺たちはふたりなんだなと思う。』

    『隣のベッドの、美希がかつて寝ていたところに置いた手の甲に、月の光が当たっている。また行きたいね、あの店なんだっけと言いながら俺たちは結局、あの街にも、あの店にも、あの海にも、二度と行くことはなかった。俺はベッドから起き上がり、窓をしめてから、また横になった。大阪にまた、夏がやってきた。毎年のことだが、大阪の夏は今年もまた、耐え難いほど蒸し暑い。交通事故、交通事故、定休日。キャメルのコート、廃屋、環状線。夜の海の、白い魚。』

  • たぶん、登場人物は実際に生きている人たちの多くの人生の断片を写し取って描かれていて、だから少ない登場人物であるにもかかわらず、読んでいてある種の混乱を巻き起こすんだと思う。この人の文体は優しい、そしていつも寂しい。それがクセになる。

  • 全体的に寂しさが漂う小説。あっという間に読めるページ数なのだけど、ところどころで状況がよくわからなくなります。脈絡なく変わる状況に私の頭はついていけない箇所も多々あった。あれ?これはさっきの人と違うの?全く違う話?繋がってる?でもちょっと違う?と混乱。

    この本はきっと詳細を読み込むよりも、全体に流れる寂しさを感じとるもの、そんな風に思います。

  • 二つの物語。
    「ビニール傘」「背中の月」

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ビニール傘の作品紹介

共鳴する街の声――。気鋭の社会学者による、初の小説集! 侘しさ、人恋しさ、明日をも知れぬ不安感。大阪の片隅で暮らす、若く貧しい〝俺〞と〝私〞(「ビニール傘」)。誰にでも脳のなかに小さな部屋があって、なにかつらいことがあるとそこに閉じこもる。巨大な喪失を抱えた男の痛切な心象風景(「背中の月」)。絶望と向き合い、それでも生きようとする人に静かに寄り添う、二つの物語。

ビニール傘のKindle版

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