- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103507611
感想・レビュー・書評
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東芝の不正会計をモデルにした経済小説。
三田機械の不適切会計を捜査二課管理官の小堀が調べ始めると、背後に一人の男の存在が。彼は、バブル崩壊を経て財テクの失敗から負債にあえぐ企業に対し、損失を先送りる“飛ばし”を紹介するコンサルタントをしていた古賀だった。調べを進めると、かつて彼の周囲で不審な事件がいくつも起こっていると同時に、政財界へ豊富な人脈を持っていることも分かる。小堀は古賀を捕らえられるのか・・・
バブル前、バブル期、そしてバブル崩壊から現代まで、実名ではないものの世間を騒がせた複数の企業が話に加わり、非常に興味深く読めた。ヤクルト、オリンパス、山一證券、クレディ・スイスなどなど、当時の報道を思い出した。
単に善し悪しでは語れないのだろうが、ラストは小説というより事実よりなのかなと。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
東芝の不正会計をモデルにしたフィクション小説。フィクション小説でありながら、登場している企業名や重要人物はすぐに実在の人物が思い浮かぶため、物語に入りやすい。本書は、東芝の不正会計に協力した自称金融コンサルタント古賀と、古賀を追う警察組織の攻防が描かれています。古賀は、資金繰りが窮している企業に取り入り、企業の債務が解消されたかのように見せる「飛ばし」という金融手法を用いて、裏の世界を暗躍していきます。
東芝に限らず、あらゆる日本の企業は自社の債務を隠すために、ありとあらゆる手を尽くしており、それが「不発弾」として明るみに出ていないのである。
以下に興味深かった点を幾つか述べておく。
①オプション取引をたくみに使うことで、債務が解消されたかのように見せかけることができる。
プットオプションの売りを購入しておけば、オプション料を手にすることができ、かつ、相場が行使日までに下落していれば、オプション料の利益を得ることができる。仮に、90億円から60億円に目減りした資産をA社が持っている場合を考える。まず、60億円に目減りした資産をB信託銀行が買い取り、この資産を原資としてオプション取引を含む仕組債を発行する。A社はΒ信託銀行より資産の買い取り価格60億円とオプション料を手に入れることができる。この取引によって、A社は90億円を資産として手に入れることができ、行使日までに損失を隠すことができる。このように、権利行使日までに債務を隠すことができるという意味で、「不発弾」と呼ばれている。しかし、相場が行使日に上昇してしまうと、無限大に損失が膨らむため、不発弾は爆発し、企業を破綻に追い込むのである。
②東芝の名誉会長を務めている西室は、日本郵政の社長に就任している。
国策として原発事業を推進する必要があった日本は、東芝に米国の原発メーカーを買収するように交渉した。この原発メーカーがのちに、東芝に巨額の負債をもたらすことになる。そして、日本郵政の社長に就任した西室は、オーストラリアの郵便会社トールを買収した。しかし、このトールも業績悪化により4000億円の赤字を計上している。果たして、この2つの買収に関与したのが西室であることは、まったくの偶然と言い切れるのか?
③東芝名誉会長の西室と安倍首相は蜜月関係にある。
戦後70年談話の座長を西室が務め、安倍首相の積極的平和主義を支持する主張を述べている。東芝が不正会計問題でも上場取り消しとならないのは、安倍首相による何らかの下支えがあるからなのだろうか? -
経済学部出身だけどあまりわからなかった。ちゃんと勉強しとけば良かったー。全体を通しては面白かったので無念。古賀のことはあまりマイナスな人物としては捉えられず、それよりも巨額の損失を出しても潰れることなく高給をもらい続けている輩に嫌悪感を抱く。白くて柔らかい手を持っている奴がこの国を支配している。間違いないね。作者の作品にはハズレが無いので安心して読める。
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ひ~!難しいよ~~!!!と言いつつ・・・もう、わかんないとこはそのままでガンガン読めちゃう不思議さww
若き警察キャリア、捜査二課の小堀クンが頑張るわけなんだけど、事件の背後には一人の金融コンサルタント古賀遼の姿が・・・「不発弾」ヤバい~~!!!
大企業のマネー・ゲーム、な~んて言われるとなんだかなぁ~って感じだけど、そのツケが個人に及ぶとあっちゃ黙ってられない~~!!!
確かにそんなんでリストラや給与カットなんて目にあっちゃたまんないし、絵空事じゃないので震撼((((((; ゚Д゚));
小説的には古賀も悪者とも犯罪者とも思えず、小堀クンを応援しつつも逃げ切って欲しいと思っちゃったりw
人気の相場さんだけどお初だったので、遡って読んでみます~♪ -
金融用語は難しい。。そして難しいからこそ、知るものと知らざるものの格差がえげつなく広がる。
持てるものと持たざるもの、知るものと知らざるもの、それによってうまれる埋めようのない格差。それをわかっているかどうか。見ようとしているかどうか。
相場英雄って『ガラパゴス』書いたひとなのね。納得です。 -
バブルに踊り、サブプライムに懲りず、パナマ文書が暴露されても、我関せず! 懐がますます寂しくなってきた!!
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小説を読むということは、読者が追体験することだ。
加えて良い小説とは、読前と読後で読者の知識が増えたと思わせる小説だ。
その意味で言えば本書はまさしく、読み応えのある小説だ。
誰もが記憶に残っている某大手電機メーカーの不適切会計事件を題材としている。
事件の萌芽がバブル期の東証から語られている。
また、あれほど騒がれた事件がなぜ収束したのか。
後日談も語られる。
これは小説か、ノンフィクションか。
その境界を限界まで突いてくる。
元記者が描く事件象は余りにも現実味がある。
三田電機の不適切会計について、警視庁捜査二課第三知能犯捜査係を統括する小堀はある男を追っていた。
男は会計コンサルタントを名乗る、古賀遼。
事件を追うにつれ、古賀は三田電機のみならず、バブル崩壊まで遡り財界の影で暗躍していことが突き止めていく。
地銀や信金が破綻を繰り返した二千年代初期、企業も銀行も財政テクの巨額損失を隠すため、飛ばしという手法を使った。
隠せるものか隠したがる。
巨額損失という、いつ爆発するか分からない不発弾。
「古賀は絶対に逮捕起訴に持ち込めんよ」
情報筋が小堀に警告する。
事件を追う小堀の視点と、昭和後期から語られる古賀の視点。
その視点の交点に、不発弾が二重の意味だと読者は知る。
バブル崩壊から山一證券、北海道拓殖銀行に続く金融機関の経営破綻、そして現代に続くオリンパス、東芝の粉飾会計。
昭和後期から平成前期にかける財政事件を追体験し、現代にも不発弾が残されていると警告する。 -
この40年ぐらい、日本の金融・財界・政界の裏側で悪巧みをしてきた奴らの告発本、といった内容の小説。自動車業界、派遣業者と官僚・政界を舞台とした著者の前作「ガラパゴス」に続く第二段といった趣。偽名が使われれているものの、本書に出てくる銀行・証券会社、企業はほとんどがモデルとする実在の企業があり、かつ、述べられている内容はモデルとしているというよりも、ほぼ史実通りとなっています。名前を読み替えれば小説というよりドキュメンタリーのような内容です。どこまで本当でどこまでフィクションなのかその境界はどこまでも溶け合って霞んでいます。本書にモデルとされる直近の問題企業としては「東芝」であり、「オリンパス」だったり。そして政界からは安倍晋三。日本の現状はなぜ生まれたのか、その歴史が本書の登場人物達の織りなすストーリーとともに語られていきます。バブル期の投資損失を先送りして生き残ってきた大企業が、巧に国民に負担を押しつけつつ、粉飾ではなく不正会計として他の損失に混ぜ込んで処理をしているというしくみを本書がひもといているのかもしれない。