劇場

  • 1173人登録
  • 3.54評価
    • (55)
    • (99)
    • (111)
    • (29)
    • (8)
  • 152レビュー
著者 : 又吉直樹
  • 新潮社 (2017年5月11日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103509516

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

劇場の感想・レビュー・書評

  • すっっっごく良かった。好き。まじかーーー又吉。
    「報われない人間は永遠に報われない」とほんのり似てた。
    それにしてもデビュー作とくらべると気持ちのいいほど肩の力がぬけている。
    ちゃんと書きたいことを冷静にとらえて、話題性とか批評とか、そういう煩悩に惑わされることなく書き上げたんだろうなと思う(私だれ目線なんだ)。
    小説そのものもとても好感がもてるし、これを彼が書いたのだという事実もぐっとくる。
    本当にさりげなくそっとはさまれるジョークが絶妙にシュールで、芸人としての矜持も感じた。

    東京で劇団を立ち上げ脚本や演出をするも一向に売れない永田と、それを献身的にささえる天真爛漫な彼女の沙希ちゃん。
    永田の脳内をのぞいているような奇妙な生々しさが文章から滲み出ており、独特の世界観を纏って話はすすむ。
    永田は自意識過剰で卑屈でどうしようもない男だ。明るくて優しい沙希ちゃんがとにかく不憫でならない。
    だけど永田が感じている劣等感や焦燥も、読み手の私にはどうしようもなく伝わってきてしまって、素直になれない彼が滑稽で、可哀想で、情けなくて、不甲斐なくて仕方ないのだ。
    空気に触れるべき言葉こそがでてきてくれないもどかしさがまた切ない。
    ラストシーンはそういうあれこれ全てが苦しく押し寄せてきて涙がとまらなかったです。

    現実だって、どんなセリフを吐き、どんな演技をするか、すべて思いのまま。ここは劇場だ。

  • 「火花」で又吉は本物だと思って次作も絶対読もうと思ってやっと読んだところ。
    in one sittingで読みました。珍しいんだよね、一気読みできる本ってそうそうない。
    太宰感がプンプンするけど私はそれは大好物なので快感しか覚えず、精緻な描写からは主人公のねっとりした自意識が読者に読みながらにして空気を通して入ってくる。いい。
    人間凸凹で寄りかかり過ぎるともうどこまでが自分でどこまでが相手なのかわからなくなって、自己と他者が恋愛によって結合すると切り離すのはレゴブロックのように簡単にはいかず。
    昔子供の頃粘土細工した時に、胴体先に作って手足を後からつけたら接着が難しくて、なんとか水つけながらつけて、もう一度手を作り直したいと思って取ろうとしてもその時にはもううまく取れなくなって諦めて粘土ぐしゃって潰すはめになる、みたいな感じ。

    テレビで、火花の時読みにくいという読者の声をたくさんもらったから読みやすくしたって言ってて不安になったけど、全く又吉節は消えておらずなんやねんって思った。テーマはただし身近になったかな。

  • 針先くらいの大きさしかない、つまらない、大したことない自己顕示欲にがんじがらめになっている主人公が大っ嫌い。
    今まで読んだどの本の主人公より、「こいつ嫌いだわ」って思った。

    心の狭さ、器の小ささ。
    逃げることでしか保てない自分の軸。
    でも、その人間臭さに惹きつけられた。

    うだつの上がらない毎日を、
    丁寧にしたいのにどうしたらいいかわからない恋人との日々を、
    自分で自分の首を締めながら生きてる様は、
    たとえ悪あがきだろうと、
    演劇という拠り所を通して「生きてる」そのものだったんだろうな。

    終盤の畳み掛けの熱量がすごい。
    登場人物たちの人となりはしんどいけど、結果、すごく良本。

  • 出だしから引き付けられた気がする。

    永田の小難しさ、沙希のおおらかさ。
    辿っていくであろう未来が想像されるけど、そうなってほしくない感じ。

    文豪に例えるサッカーゲーム、らしいな~

    永田と青山のメールでの罵り合い。メールでって。

    最後の沙希の部屋でのシーンはグッとくるかな。

    「火花」より好きかもって思った。

  • 冒頭の技巧的な装飾的心理表現は辟易としたが、ストーリーが転がりだしてからの展開は凄くいい。主人公の彼女への想いを語るところはグッとくる。全体的にはよくあるストーリーで、そう思わせるのは作者の力量を感じた。

  • 私は永田のような人物は好きではありません。自分勝手で周りにいる大切な人を振り回して傷つけて、取り返しがつかない状況になってからやっとそれに気づき反省する。だったら初めから大切にしろと思います。甘えるなと。ただそれはとても人間らしいとも思います。隣にいるパートナーが眩しすぎて、自分がひどくつまらない人間に思い、それを事実だと自覚しているからこそ逆につらく当たってしまう状況というのは私自身身にも覚えがあります。分かるだけに、それでも彼女を苦しませないでほしい、なんとか頑張ってほしいと思ってしまいます。

    この作品全体に流れる空気感は、前作「火花」と似ているところがあるように感じました。芸人と舞台という、ともに先が見えない職業をテーマにしているからでしょうか。主人公の永田も、読みながらただの又吉じゃねーかとつっこみをいれてしまいました。(サッカー好き、文学好き、分析が多く、人見知りなとこなど)

    最後の2人の会話にはぐっときました。彼からの一方的な思いだけではなく、彼女にもちゃんと彼を必要とする理由があったんだなというのが分かりました。ただ夢を追いたい彼と応援したいが現実も見えてしまう彼女がすれ違うのは必然だった気がします。彼女はその葛藤で相当苦しんだと思います。2人の今後は描かれていなかったのですが、とにかく彼女が幸せになることを願うばかりです。

  • 文芸紙に載っていたものを読んでみた。花火も読んだが、こちらの方が小説としてレベルが高いように思う。

    主人公のクズっぷりを読んでいると、だんだんこれは自分のことが書かれている本だという錯覚に陥った。

    愛しかたは人それぞれなのだが、愛しているが故に歪む事は多々ある。それは相手に対しての甘えということでも、我儘ということでもなく、その人の心からの愛の1つの発露として、何故か、そうなる。

    話題性だけではない、この作者の非凡な才能を感じた。

  • どんなに人を好きになろうとて、1番は常に己である…
    自己険悪に気づかされるほど人に思われていても尚、自己愛に溺れ、その深みに浸かれば浸かるほどに大切な人との距離が出来てしまう。
    日常的に過ぎていく物語は過去の物としてそこに存在するがそれは決して自分を変える未来の糧にはなりえない。 それはまるで劇場の様に振り返ることのみで語られる、儚く忘れられ事の出来ない衝撃だけを僕に与えてくれた…

  • 火花より良かった。最後の会話を書きたくて、この作品を書いたんだなと思わせるラストでした。

  • 劇場
    火花がかなり良かったので読んでみたが、正直期待よりはかなり普通だった。なんというか、面白くないといえばそれまでなのだが、火花ほどみんなが楽しめるストーリーではないなというイメージ。太宰治や芥川の様な極めて文学的な言い回しと、ストーリーがかみ合っていないようにも感じてしまった。

  • 又吉さんが書いているという時点で、既にその世界に入れている、入らされている?
    独りよがりの主人公の胸が締め付けられる切ない物語。
    サッカーゲームの選手名を作家さんにして、イタリア、ブラジル代表と戦わせるシーンは又吉さんのセンスが光る。やはりツートップは芥川と太宰か。

  • 主人公の卑屈さ、彼女に対するクズさに嫌気がさしましたが、最後は感動してました。
    時より出てくるユーモア、劇の構成は面白く、クズだけどすごい才能を持っているのではないかと思わされました。計算してのことだと思いますが、アイデアすごいです。
    自分の評価は低めですが、純文学があまり好みではないので、好みの問題だけです。

  • 屈折しているのに、大事な人を傷つけているのに、そんな主人公を客観視しない潔さ。どこかで間違えたはずなのに、ふと我に返る暇も与えず、剥き出しの激情だけで駆け抜けてゆく。
    ただ読者だけが冷静に、それを眺めている......そういう劇場なのだろうか。それでも最後ばかりは胸が締め付けられた。

  • ある週末に発売日を知った。
    普段はそこまでこだわらないのに2作目は初版を買おうと決めていた。
    発売日の朝に目が覚めて、書店の開店時間と同じくらいに買いに行った。
    書店と名のついたレンタルショップに着くと目当ての本がちょうど棚に並べられようとしていた。
    荷台から取り出すのは気が引けたので少しCDや他の本の棚を見て、その本が棚に並べられてから手にとった。
    会計を済ませて店内にあるカフェでアイスコーヒーを買って窓際のカウンターで読み始めた。
    打ち合わせ中の会社員や会議中のおばさんたちの会話が聞こえていても読んでいた。
    同じカウンターに座った女性の顔が気になっても本から目を離せなかった。
    駐車料金がかかってしまうことも気にはなったが読むのをやめなかった。
    アイスコーヒーの氷が全て溶けてしまっても読み続けた。
    トイレに行きたくなっても読むのをやめたくなかった。
    又吉劇場の支配人はきっかけ作りこそ下手でも実はしっかり恋愛ができる人なのではないかと思った。

  • ずいぶん前に読んだので、印象がぼやけてしまったが、売れない劇団員と暮らす女性を、可哀想だと感じたのは覚えている。どうしてこういう男を好きになってしまうのかな・・・・。

  •  読み始めてからしばらくは、なんて読みにくいんだ、と思った。文体が独特で。
    何?何??と同じところを何度も読み返したり。
    ため息をつきながら、なんとか乗り越えてみると、もうその先は止まらなくなった。
    止められない、ぐいぐい感たるや・・・。

     永田をどうしようもないクズだな、ダメな男だな、とバッサリ言うのは簡単だけれど、それだけではない。

     たまに東京に行くと、あまりの街の大きさに、人の多さに眩暈がすることがある。
    この大都市で生きていくのは、大変だろうなと思ったりする。そういう、生き辛い街で、好きな事をして生きていくという選択。
    決して才能があるわけでもなく、闇雲に努力するでもなく、こういう風にしか生きられない、といわんばかりに同じところに留まるだけの、不器用で怠惰な男。程度の差はあるにしても、こういうどうしようもない人間もいそう。

    そして、永田のダメっぷりは、随所で誰の意識にも実はあるんじゃないか、と思えて凹む。
    最愛の人との関係を、とことん自己中心的にふるまい、甘えることで壊してしまう幼稚さと不器用さも、腹立たしくはあるけれど、どうにも切ない。

     あんなに献身的に自分を支えてくれた沙希に引導を渡された永田は、この後随分苦しむのだろうな。
    喪失感と後悔。
    大きな失敗を糧に、もうちょっとしっかり生きろよ永田。

  • 嫉妬の感情がとても丁寧に描かれていた。永田はさきちゃんに依存していて、どうなの?と思ったところはあるけれど、随所に「さすが」という表現がちりばめられた感じ。
    うまくいかなくなる恋愛の終わり、というものをみたように思う。

  • (図書館本)お勧め度:☆6個(満点10個)。うーん、前作に引き続き、あまり感情移入が出来なかった。どうも、文章字体があまりにも抽象的でリアリティがなさすぎる。もうすこし、文学的な表現はやめて、すっきりとした表現ができないものか?と思うのは私だけだろうか?
    内容的にはどうってことない恋愛小説を読まされているみたいだったけど、主人公の永田ってえらいむかつく、劇作家だろうが何だろうがいかにも屁理屈ばかりで彼女を困らせ、要するに呈のいいヒモじゃないか。最後の最後で彼女の存在にはっきりと誠意をもって答えられたのはめでたしめでたしだったけど、要するにヒモが女と別れた話だったのかな?ちょっと違うきもするけど・・。

  • まだ読んでる途中だけど、これ、フェリーニの「道」と同じだ。
    こういうのは本当にダメで、カラダの中身が水みたいに溶けて、全部目から流れ出ちゃいそう。悲しくて、切なくて、申し訳なくなる。

  • 火花を読んだとき、表現することうまいなあって思ったけど、それほど騒がれる本かな?でも又吉さんと友人になりたいってずっと思ってた。
    この作品は火花より私好み。3回以上クスクス笑って、こんな会話できる彼女と彼氏って最高やなって思ってた。まさか最後でじーんとくるなんて。次もいい作品書いてほしいな。

  • 主人公が嫌いです
    心がざわついて
    何度も「もうやめよう」と本を閉じた
    でもまた読みたくなって
    沙希ちゃんいい子過ぎ
    演劇って何?
    ラストがよかったなあ

    ≪ 不器用な二人の未来祈ります ≫

  • 恋愛小説と聞いていたので、男女が出会って互いに惹かれ合い、いちゃついて、でもいろいろあって最後はくっつく…みたいなお決まりタイプかなと勝手に想像していたが、いい意味で完全に裏切られた。

    ここからは思い付くままに雑多な感想を。

    ラスト近くの夕日のシーンが鳥肌立った。日常の取り上げるまでもないどこにでもあるような風景をこんなにもドラマチックに描けるのか。

    遠足での教頭先生とのエピソードほっこりさせられたなあ。又吉さんの実体験なのだろうか。

    嫉妬や自己嫌悪、自尊心その他諸々がごちゃまぜになってどうしょうもない永田の気持ちに感情移入して読んでて苦しかったけど、もつれ合う繊細な感情の表現は立体的に胸に迫り来るものがあった。

    随所に見られる演劇への考察、演劇とはなんぞやについて考えさせられた。p196にあるように、犬の遠吠えが演劇を経由することによって意味を持つようになるということ。演劇って日常の行為、事柄、存在に『意味』を与えるのか。確かに大道具、小道具、照明、音響全てに根拠があって舞台という空間は成り立っているもんな。逆に意味を与えないということも、ひとつの意味付けにもなりうるのだな。読んでて発見があったな。

  • 火花に続き読んでみましたが、独特の文章が自分には合わなかった。恋愛ものと言っていたけど、どちらかというと日常の話っぽい

  • 「永田…なんでそれ言わないの〜」っていう場面がたくさん。大切なことほど後回しにしてしまう不器用なひとという感じで、悪いひとにはどうしても思えなかった。(そんなことないか。勝手な男だな。)最後のシーンも。あれが永田の中のどれほどのことかと思ったら、ウルっとしました。

  • 資料番号 : 00013682
    請求記号 : 913.6||MAT
    配架場所 : 上階書架
    NCID : BB23560606

全152件中 1 - 25件を表示

劇場を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

劇場の作品紹介

一番会いたい人に会いに行く。こんな当たり前のことが、なんでできへんかったんやろな。演劇を通して世界に立ち向かう永田と、その恋人の沙希。夢を抱いてやってきた東京で、ふたりは出会った――。『火花』より先に書き始めていた又吉直樹の作家としての原点にして、書かずにはいられなかった、たったひとつの不器用な恋。夢と現実のはざまでもがきながら、かけがえのない大切な誰かを想う、切なくも胸にせまる恋愛小説。

劇場のKindle版

ツイートする