塑する思考

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著者 : 佐藤卓
  • 新潮社 (2017年7月31日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103510710

塑する思考の感想・レビュー・書評

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  • 実際のデザインの話がおもしろかった。デザインは人の本能と事物をつなぐ深い仕事だなと

  • 佐藤さんがデザインの仕事の中で感じた「デザインは装飾であるという誤解」の危機感と、デザインを通して考えた人の営みについてエッセイ的に書いた本。
    「デザインが一切関わっていない物や事はひとつもない。どんな分野のどんな物事にも、すでにデザインがある。デザインとは水のようなもの。」と語る点は大変同感。

    「塑」の意味ですが、デザインの仕事をしていく中で、無理に守らねばいけない我なんてなくて、
    弾性(元に戻る)よりもむしろ塑性(そのままの形になる)ほうが「剛より強い柔」なのでは。という意味のようで、
    デザインをアートと取り違えて自己表現を重ね合わせがちな立場なので、この考え方はいいなあと思いました。
    デザイナーでなくとも、中身のあるいいものをつくりたいなとお考えのひとにおすすめです。

  • 佐藤氏のデザインへの考え方がよく分かる。主義主張を押し付けるばかりの自己満足はやめよう。大変、参考になるデザイン論。

  • 養老孟司先生が新聞の書評で「この本を読んで、自分もデザイナーになってみたくなった」と書かれていたのを読み、自分もこの本を読んでみたくなった。
    これは、ニッカウィスキーの「ピュアモルト」明治の「明治おいしい牛乳」ロッテの「クールミントガム」などのデザインを手がけ、日本を代表するグラフィックデザイナーの一人である著者が(私は門外漢でお名前を存じませんでしたが)、それらの仕事を通じて思考し、たどり着いたデザイン論である。そのポイントを一言で表すとすれば題名にあるとおり「塑する思考」という著作オリジナルの言葉になるのだろう。「塑」とは、外部からの力に従ってどのような型にもなるが、決して元の型に戻ろうとしない、そもそも元の型というものがないという意味で、同じ「柔軟」ではあっても絶えず元の型に戻ろうとする「弾力」とは分けて考えるべきだという。柔軟に思考することは大切だが、デザインにおいては「塑する思考」すなわち、自分とか個性を表現しようとするのではなく、そのものに内在する価値を引き出すこと、いわゆる付加価値とは逆の発想こそが大切だというのである。和食の職人が素材の味を引き出すとか、仏師が仏様を彫るのではなく、木の中から仏様が現れる、などと語られることがあるように、いわゆる達人が語る言葉には分野を超えて通じるものがあるようだ。そもそもデザインとは絵画とか工芸とかいわゆる芸術の一分野に分類されるものではなく、人が生み出すあらゆるものに関わっており、その意味で人と物を仲介する「水」みたいなものだという。水は方形の器に隨う、たしかに「塑」だし、この惑星では普遍的に存在する生命の源でもあるから、デザインを論じるととても深い世界のことまで想像力が働いてしまう。養老先生がデザイナーになってみたくなったというのも、あながちお世辞ではないと思える。
    この本にはグラフィックスという2次元の世界を超えて、奥行きと含蓄に満ちた言葉が溢れている。

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