- Amazon.co.jp ・本 (201ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103534112
感想・レビュー・書評
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£2.00
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神の子どもたちはみな踊るのです。
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神戸の地震がポイントポイントで出てくる。
きれいな話。 -
これも短編として秀逸な作品。
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村上印の"僕"を封印し、一貫して神の視点"3人称"で語られる野心的な連作。
時期的にちょうど阪神大震災と地下鉄サリン事件がおこった、たった数か月に書かれた全6作品。
ぽいぽいスピーディーに短編を量産するのは、氏が自ら影響を公言するフィッツジェラルドの手法だし、「蜂蜜パイ」で描かれる主人公にも、そのスタイルが投影されている。
というのは、広告批評のロングインタビューでの後知恵。 -
神戸での阪神淡路大震災が全ての話に出てくる。
うーん、いまいちわからんなあって思う作品もあるんだけど、魅力的で次のページ次のページってページをめくる手が止まらない。
どれも素敵だけど「蜂蜜パイ」が特によかった。
かえるくんは元々ファンだからね!いいね、かえるくん!
出てくる登場人物が、輝いてる底抜けに明るい人間ではなく、どちらかというと素朴に生きて落ち着いていて派出てていない人ばかり。
不思議な雰囲気がする。
こわいなあ、ぶきみだなあとか思いながらも
読みたくて仕方なくなる。
なんか神秘的な匂いがするんだ。 -
蜂蜜パイがいちばんすきです。
地震とそれぞれの短編。 -
村上春樹の作品で一番好きみたいです。
いつも何かを考えさせられるから好きなんですが、なんか今回は。いや今回も考えさせられましたがね。なんか晴れやかな、いつもと違う感じがしました。
これはいい!! -
村上春樹と出会うまでに自分は随分と道草を食っていたように思う。そもそも流行りのものに飛びつきたくないという天邪鬼である。それは昨日今日始まったことではないし、ただ単に狭量なだけとも言えるけれど、ノルウェイの森が巷間話題になっていた頃既に自分の活字人生は、小説をほとんど読まない、技術書の時代に入っていたことも一因である。しかし今こうしてこの歳になって初めて読む村上春樹は決して遅すぎたという感がない。むしろ極めて適時だとすら思える。「意味」を求めつづけていた頃の(その形容は決して完全な過去形になってしまったわけではないけれど)性急な自分に、今、村上春樹を読んで味わえている「何か」を感じられただろうか。その疑問に対する答えが否定的であることは、余りにも確信可能である。
求める、という言葉で、「意味はどこかにきちんと存在していて、ちゃんとした手順を踏めば目の前に現れてくるものだ」という認識のもとに取る行動を、ここでは指しているつもりなのだが、そこには、意味という存在を何か命名し得るものへ還元することのような心持も含んでいる。つまり、本を読めば文字があり、文字を辿れば論理が立ち上がり、論理の結果ないしその過程全般が「意味」ということなのだ、という認識だ。若い時、その明快な過程に投影し得ないものは理解の対象外であり、無意味であると思ってきた。
もちろん意味は決して、記号と実体という直線的な二項間の関係の中に存在するものではない、と今は気づいている。解るということは、不意に何かの投影された像が、記号と実体の間に飛び込んでくる、ということである。それを文脈のなせる業といってしまえば言い得るのかも知れないが(そして「神の子どもたちはみな踊る」において阪神淡路地震がその文脈なのかも知れないが)、意味なんてものは頭が理解するより先に身体の中に入り込んでしまうものじゃないかと思うようになった今では、そんな還元的な言葉の外にあるものが(そしてそんな判り易すぎる隠喩じゃないものが)意味であって、若い頃の自分が無意味と投げ捨てていたものを丁寧に手にとってみようとする行為が、行為そのものが意味を成り立たせているんだろうと思うのである。還元することはどこまでも平たいけれど、行為は立体的な次元を付与する。
そんな頭の隅の思いをちらちらと振り返りながら村上春樹の短篇を読んでいると、この中途で投げ出されたような文章たちの結末が、実にきちんと意味を持っていることに気づくのだ。それは単に文章を読むということを越えて、何か描かれている行為を追従するような心の動きによって初めて立ち上がる「意味」で、ひょっとするとそれがどういうことだか言葉には還元し得ないようなものなのかも知れないと思う。それは決して常に同じ答えに辿り着くような過程ではなくて、もっと開かれた何かを志向している文章だ。翻訳された文章のようであると評されることもある村上春樹の言葉遣いは、その記号に染み付いた「意味」様のものから自由になるために必要なことなんだろう。少なくとも自分にとってはそう作用する。
と同時に、何故自分が柴崎友香やレイモンド・カーヴァーを気に入っているのか、その理由も教えてくれる、そんな村上春樹読みなのだった。